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ストッ!
ゴガン!
僕が放った矢は的の中心に命中し、『マリオネットアーム』で作った魔力の腕から投げられた石もまた同様に、隣の的の中心に当たりました。
ストッ!
ゴガン!
ストッ!
ゴガン!
何度か続けてやりましたが、百発百中ですね。
動かない的なら、もう外すことはないかと思います。
弓と投石を同時に行うのにも慣れましたし、次に行きましょう。
──『マギマテリアライズアームズ』──
魔法を使い、魔力の剣を作り出します。
刀身は250cm、柄も100cmはあろうかという長大剣です。
剣幅も広く分厚いので、尋常ではなく巨大な剣に見えます。
これを2振り作り、『マリオネットアーム』の2本の腕に持たせて振らせます。
魔力でできたものなので重量は見た目ほどありませんが、空気抵抗があって、少々取り回し難いですね。
ただ、それもしばらくすると慣れてきました。
コツというのとは違うかもしれませんけど、なんとなく、ここなら大丈夫、というポイントがあって、それをなぞるようにして振ると、さほど抵抗なく振れました。
恐らくですが、あまりにも巨大な剣なので斧っぽい扱いになり、【斧術】の影響下にあるのではないかと思います。
僕自身の身体は全く動かさずに、夢中になってしばらくブンブンと振っていると、離れた場所にシアが立っているのに気付きました。
髪の毛が乱れに乱れていますけど……なにかあったのかな?
素振りを止めると、シアが近付いてきました。
ここはエマーソン家のお屋敷の裏庭です。
屋外鍛練場として、かなり広く作られていて、弓の練習ができるので、使わさせてもらっています。
髪を整えながら、シアは僕の元にやって来ました。
なんか少し機嫌が悪そうですけど……?
「これはどういうことかしらぁ……?」
「えっと……?」
「ぴゅ?」
なんだろう、口元は微笑んでいるのだけど、目が笑っていません。
ときどき小説などで今のような表現の文章がありますが、まさか、この目で見ることになるなんて……。
マシロと顔を見合わせます。
「お茶の準備ができたからわざわざ呼びに来たのに、全く気付かずに剣を振り続けて、あまつさえセットに時間のかかる髪を乱してくれるなんて……」
どうやら巨剣を振り回した際に生じた勢いが強風を起こしてしまい、シアの綺麗にセットされた髪を乱してしまったようです。
…………。
「は、はは……」
「うふふ……」
笑って誤魔化されてくれないみたいですし……ここは、素直に!
「ご、こめんなさい!」
僕は頭を下げます。
不可抗力ではありましたけど、そんなことを口に出したら、どうなることやら……。
恐る恐る上目でシアを見ると、腕を組んで、僕から目を逸らしていました。
そう簡単に機嫌を直してはくれないようです。
ならば!
──『ドライヤー』──
僕は〈道具〉から櫛を取り出し、温風を掌から出す魔法を使って、シアの髪の毛を直します。
少し癖のある髪の毛を、丁寧に櫛ですいていきました。
前に回って櫛を使っていると、シアが僅かに体重を僕に預けてきて抱きつくような姿勢になります。
若干やりにくいけど、そんなことはおくびにも出さずに、シアの髪を直しました。
うん。
これでよし!
綺麗になりました!
完了しましたよ、というように髪の毛と一緒に背中を撫でます。
シアは僕から離れて、前髪をちょっと触って整えて、
「うふふ、役得だったわぁ……」
フワリと微笑んで言いました。
……少し頬が赤いから、照れているみたいです。
まぁ、役得だったのは僕もそうなので、なにも言いませんが。
「こほん。
えっとぉ……訓練してたのかしらぁ……?」
「はい」
「ぴゅっ!」
先日のオーガとの戦闘で、もうちょっとできたことがあったのではないかと考えて、いろいろと試していたのです。
僕は質量のある攻撃方法が欲しかったので、まずは投石を磨くことにしました。
石は比較的どこにでもあるし、〈道具〉に仕舞っておけば、邪魔になることはありません。
とてもコスパの良い攻撃方法です、威力もそれなりですし
ただ、これだけだと不安なので、もう1つ考えたのが、『マリオネットアーム』の腕を伸長して、離れた場所から武器を振り回す、というものです。
これは以前に少し試していましたが、弓での攻撃手段を手に入れたら、使わなくなったものです。
遠距離での攻撃は、弓で十分だと思っていたのですけど……そうでもないなと気付かされたので、再び脚光を浴びることになりました。
巨大な剣にしたのは、まず質量が欲しかったことと、その方が広範囲に薙ぎ払えることを目的としたからです。
前衛で戦うヴィッキーたちのさらに前方、魔物のいる中心で振り回すことができれば、かなり効果が見込めるだろうと思ったのです。
スキルには【斧術】があるので剣ではなく斧にしようかと思いましたが、狭い空間での戦闘もあるかと考え、突きの放てる剣にしました。
刀身を分厚く巨大にした結果、斧的な扱いになったのは嬉しい誤算でしたね。
今の訓練では『マギマテリアライズアームズ』で魔力の剣を作りましたが、実際には、鉄で作られた剣を使います。
その方が質量があって、破壊力があるからです。
持ち運びには〈道具〉に仕舞っておくから、負担にはならないですし。
「じゃあ、わたしはあの大きさの剣を作れば良いのかしらぁ……」
「はい、お願いします。
材料はこちらです」
僕はそう言って、魔法を使いました。
──『サモンソイル』──
──『メイクメタル』──
魔法で土と砂を出し、それでさらに魔法でなんやかんやして鉄のインゴットを作り出しました。
理屈はわかりませんけど、良い鉄が欲しいと念じたらできちゃったのですよ。
こんなことまでできるのだから、魔法はスゴいです。
まさにチートですね!
この調子でいけば、そのうちにミスリルなんかも魔法で作れるのではないか、と期待して、いろいろ試しています……まだできそうにないのですが。
しかし、精進すればイケるんじゃないかと思うので、頑張っていきたいと思います。
「うん……なかなか良い鉄……あらぁ……?」
僕の作った鉄を確認していたシアが、首を傾げました。
「ぴゅ?」とマシロも真似して、首を傾げています。
「どうしました? その鉄、おかしいですか?」
なんせ魔法で作ったものです。
不具合があっても、おかしくありません。
しかし、シアは顔を横に振りました。
その表情は、とても真剣です。
「ううん。とっても良い品質よぉ……。
それに、これは……魔鉄……?」
ん?
魔鉄?
……聞いたことのない単語が出てきました。
「魔鉄というのは、その名の通り、魔力の宿った鉄のことよぉ……。
普通の鉄に比べて、強くて丈夫なのぉ……。
ミスリルと同じように、魔力との相性も良いわぁ……」
ふむ?
僕的には鉄を用意したつもりなのですが……魔法で拵えたから、魔力を宿らせてしまったのですかね?
……結果オーライ?
「重量以外は、ミスリルにも劣らないわぁ……。
このインゴットは純度も良いから、作るものによっては、ミスリルよりも良いかもぉ……」
ほほぅ。
それは良いことを聞きました。
僕たちみんなの装備も、これで充実しそうですね。
「ヴィッキーちゃんの剣にするには魔鉄じゃ重いから、やっぱりミスリルが手に入るまでお預けだけどぉ……」
…………。
あの人が無双できる日は、まだ遠いのですね……。
「あとぉ……、魔鉄はそんなにたくさん出回るものではないから、下手に市場に流すと混乱するわぁ……。
これでお金儲けはできないわよぉ……」
くっ!?
釘を刺されました……。
元手のかからないので、無限に増殖させて、売り払おうと思ったのに!
僕の顔を見て、呆れた様子のシアでしたが、諦めたように溜息を吐きました。
「……少しだけよぉ……」
「ぴゅ〜」
あざーっす!
よし!
資金ができました!
このお金でミスリルインゴットを買って、魔法でミスリルを作る参考にしましょう!
ふふふ。
ふはははは。
この調子でいけば、金属に関して、今後困ることはなさそうです。
少量なら売る許可を得ましたから、お金に関しても同様です。
ゲームとかでも、こういう裏技チックなやり方を序盤に発見できると、とても楽しいのですよね。
攻略が楽になるし。
よーし!
やってやるぞー!
僕は気合いを入れて、これからのことについての計画を練るのでした。




