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「シッ!」
案の定、ダンジョンの穴から2体目のオーガがぬっと顔を出しました。
僕はそれに向けて、矢を放ちます。
矢は狙い通りに顔面、それも眼球を貫くコースを辿り──オーガの腕に突き刺さりました。
オーガは強引に矢を抜き取ると、その腕の傷がたちまち塞がります。
……再生速度が速いです。
むぅ……。
チラリと、ヴィッキーたちの方を見ると、最初に出てきたオーガと戦闘中です。
高い再生能力を持つオーガを相手に、なかなか致命傷を与えられないみたいで、苦戦はしていないけれど、倒しきるのにもう少し時間がかかりそうですね。
あそこに新たに出てきたオーガが乱入したら、均衡が崩れてしまって、ヴィッキーたちが怪我するかも。
ふむ……。
ならばこのオーガは、僕が足止めしておきましょう。
──『ディグ』──
オーガが僕に近付いてこようと1歩足を踏み出したところに、魔法で落とし穴を作ります。
先日はミスってしまったので、今回は同じようなことがないように、ちょっと魔力を多目にして、深い穴にしました。
5mくらいの穴だけど……その気になれば簡単に出てこられそうだから、
──『コンヒューズ』──
──『フィアー』──
──『ブラインド』──
──『ヘビーグラビティ』──
状態異常魔法を連続で使いました。
混乱させ、恐怖を感じさせ、視界を奪い、体重を増加させます。
オーガは穴の中にいるので、効果は倍増かと思われます。
これだけやれば、そう簡単には穴から抜け出せないでしょう。
では、続いて。
シアに作ってもらった火炎瓶を取り出します。
ただの火炎瓶と侮るなかれ。
魔術のあるこの世界だからか、僕のよく知らない謎の薬品を使用しているため、恐ろしい威力になっています。
実験で試したら、火柱が10mくらい上がりましたから。
ただし、威力に比例して値段も上がっているので、乱用はできません。
ここぞ、というときに使いたいと思います。
今回は初の実戦投入なので、大盤振る舞いです。
「そりゃ」
ポーン、と穴に向かって放りました。
ガチャン、と瓶の割れる音がして──轟! と大きな火柱が上がります。
実験で見たときよりも、派手になっている気がしますけど……。
「うぅん……。
少し手を加えてみたけれど、あまり威力は変わらないかもぉ……?
それに、オーガみたいな体力のある魔物には効果がないかしらぁ……?」
シアが頬に手を当てて、ブツブツと呟いています。
ふむ?
考えてみたら、あれだと皮膚がヤケドする程度ですよね。
オーガならすぐに治っちゃいますか……。
そう考えると、魔物を燃やすのは非効率かもですね。
魔術なら、魔力次第でどうにかできるのでしょうけど……。
これじゃあ、せっかく作った火炎瓶は、お蔵入りになりそうですね。
あーあ。
高かったのになぁ……。
しばらくすると、火が消えました。
でも、魔物の反応は残っているし、やっぱり仕留められませんでしたね。
んー。
僕たちのパーティーの弱点が、露呈してきてますね。
どうにも、決め手に欠けます。
僕の主武装は弓矢ですが、遠距離から攻撃できるメリットは大きいですけど、破壊力が足りません。
刺さっても、出血を強いるのは難しいので、ピンポイントで急所を狙わないと、なかなか倒せないのです。
他に攻撃手段がないわけではないですが、決定打とは言い難いのです。
ヴィッキーは細剣なのですが、これも破壊力のある武器ではなく、軽さを活かして、何度も切り付けて出血させ動きを鈍らせたあとに、急所を貫く戦法です。
オーガのように再生能力の高い魔物には、ちょっと相性がよくありません。
彼女には【魔術剣】という切り札がありますけど、今のところ多用できませんし。
一番期待ができるのがルナなのですが……。
竜言語魔術という強力な魔術が使えますが、多用すると魔力が足りなくなり、動けなくなってしまいます。
短槍を使い始めたので、魔術だけではない攻撃手段を得たので、前衛で攻撃に参加していますが、一緒に戦っているヴィッキーとの連携が甘く、決定打を繰り出せていません。
また、前衛にいるので、下手に魔術を使うと、フレンドリーファイアの恐れもあるので、使用に躊躇っているようです。
あまり巻き込む恐れのない魔術もありますが、そういうのは総じて威力もないですし。
やっぱりゴブリンやコボルト程度の魔物とは、大違いですね。
そして、今後はこういった強力な魔物との戦闘が増えてくる可能性が、大いにあります。
もっと研鑽を積まなければ、いずれ大変なことになってしまいそうです。
まぁ、未来のことは後回しにして……今はオーガとの戦闘ですね。
「ルナ、下がってください。中級の竜言語魔術の準備を。
ヴィッキーはウィルフレッドを盾に、オーガに攻撃をし続けてください。ルナの準備ができたら合図するから、オーガから離れて。
シアは穴に落ちたオーガに注意しててください。上がってきたら教えて」
「はい、です」
「わかったわ!」
「はぁい……」
──『バインド』──
僕は魔法で、オーガの下半身を拘束します。
腰から上は自由なので手にした大剣を振り回すのはできますが、その状態ではまともに当てられないでしょう。
動きが阻害され、イライラとした様子で、オーガは大剣をウィルフレッドの盾にぶつけます。
もはやあれでは、斬る、という動きではないですね。
ルナを見ると、コクリと頷きました。
準備ができたようです。
「ヴィッキー」
合図を出すと、ヴィッキーはレイピアでオーガの顔面に突きを放ちました。
オーガは大剣でそれを弾くようにして避けますが、ヴィッキーは既に後退しています。
その隙に、ウィルフレッドがシールドバッシュを繰り出しました。
『バインド』の効果もあり、オーガは避けきれず、もろに直撃します。
ウィルフレッドはその反動を利用して、オーガと距離を取りました。
そこに──
「『■○◆□●◇』」
ルナの中級竜言語魔術が放たれました。
『熱光線』というその魔術は、一直線にオーガの上半身を貫きます。
いかにオーガといえど、胸に大きな穴が空いたら、生きてはいられないようです。
ゆっくりと倒れていきました。
──『ディバイトマギパワー』──
僕は即座に、ルナに魔力の補充をします。
この間に別の魔物に乱入されると、面倒ですからね。
ふぅ……。
なんか疲れました。
……っていうか、最初からこうしていれば良かったです。
「むぅ。
せっかく槍をおじーちゃんに習ったのに、全然役に立たなかったです……」
「というか、あたしとの連携が全然できてなかったわね……。
ちょっと練習の必要があるわね、これは」
「もっと言うなら、オーガ1体に2人も戦うことはなかったですね。
ルナはシアの護衛にいてもらって、隙を見て魔術を放つ、という方がよいかもしれません」
「それはなんかイヤです。
私はバンバン戦いたいです!」
…………。
「うぅん……なら、ルナちゃんが1人で前衛をした方が良いわぁ……。
それなら、槍を使いつつ、魔術でトドメをさせるからぁ……」
ふむ?
そうなると、ヴィッキーは遊撃になってもらいますか。
まぁ、僕たちの中では最も経験のあるベテランなわけですし、自分の判断で動いてもらった方が良い……のかな?
「あたしは、ルナには中衛で槍と魔術で戦ってもらいたい……のだけど?」
「むぅ……。
善処する……です」
「ぴゅっぴゅっ!」
渋々とルナが頷きました。
への字口をしている彼女に、マシロが慰めるように声をかけます。
穴に落ちているオーガにみんなでトドメを刺して、死骸を回収してから、帰ることにしました。
まだまだ精進が必要なんだなぁ……と反省する1日なのでした。
名前 :シータ
種族 :ハイエルフ
年齢 :21
レベル:18(+1)
クラス:冒険者LV.14(+1) 操蛇者LV.12(+1)
生命力:546(250+10)【+26】【+260】
魔力 :0
精神 :60(28+1)【+2】【+29】
敏捷 :88(40+2)【+4】【+42】
幸運 :42(19+1)【+2】【+20】
攻撃力:48(22+1)【+2】【+23】
防御力:48(22+1)【+2】【+23】
スキル:自動治癒
身体強化
劣悪環境耐性
全ダメージ軽減
全状態異常耐性
必中
投擲
弓術
斧術
称号 :フォレストドラゴンの祝福
装備 :鉄の弓 鉄の鉈 鉄の大剣 鉄のナイフ
ミスリルの小盾
鋼鉄の全身鎧
ミスリルの鎖帷子
フード付きの外套




