表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/193

65

「オーガ……ですか?」


「ええ、『紅の森』で目撃されたようよ』


「『紅の森』……」


 まさか、豚はいないですよね……?


「……どこから聞きましょう?

 えと……まず『紅の森』というのは……?」


 こくり、とコーヒーを一口飲んで、ヴィッキーは話し出します。

 僕は、イチゴのショートケーキを切り分け、口に運びました。

 うん、美味しい。

 酸っぱさのあるイチゴが良いアクセントです。


 今日は久し振りに良い天気なので、エマーソン家にお世話になっているお礼に、お屋敷の周囲の雪掻きをしていました。


 まぁ、パッと魔法で済ませたので、そこまでは手間も時間もかかってないのですけどね。


 ヴィッキーはその間に冒険者ギルドに行って、良さそうな依頼がないかを見てきてくれていました。


 その報告を、ティータイムと称して、庭に面したテラスで聞いてきます。

 寒さは魔法で防げるので、なかなか快適で優雅な時間を過ごせています。


「ここから南にある森よ。

 『紅樹』(こうじゅ)という赤い木たくさん生えているから、そう呼ばれるようになったわ。

 特に今の季節は、とても綺麗なの、白い雪と赤い木が」


 へー。

 珍しいものがあるのですね。

 いや、異世界なら珍しくないのかな?


「『紅樹』は樹液まで赤いから、昔は血を流す不吉な木として、恐れられてたのよぉ……。

 今ではその樹液は、薬の材料になるから、重宝されているけどぉ……」


 ふーん。

 さすがはシア。そういった知識は強いですね。

 もぐもぐとおはぎを食べているけど、シアは洋菓子より和菓子の方が好きなのかな?


「そこで、オーガが目撃された……と」


「そう。

 この辺りにオーガはいなかったから、ダンジョンが新たに発生したんじゃないか? って、調査のために……」


 んん?


「ちょっと待って。

 話が飛んでません?

 なんでダンジョン?」


「え? ……ああ、そうね。知らないのか。

 んー。どこから話そうかしら?」


 ヴィッキーは視線を宙に向けて、しばし考えています。

 僕はその間にコーヒーを飲み干しました。

 シアがお代わりを淹れてくれます。


「まず、オーガはこの辺りにはいない。

 だけど、オーガが目撃されたということは、どこからかやって来たということ。

 そこまでは良い?」


「はい」


「うん。

 で、じゃあ、そのオーガがどこからかやって来たのか?

 山でも海の方からでも良いのだけど、その場合、移動している途中で目撃証言がないとならない。

 でも。そういった報告はなし。

 ならば、『紅の森』に唐突に出現した、ということになる」


 ふむ? そうかな?

 目撃されずに移動するのも、不可能ではないと思いますけど。


「この季節だからね。

 雪が積もっているから足跡は残るし、食べ物を得るのだって難しいから、なんかしらの痕跡は残るの。

 もし、そういったのがあったら、周辺の村は警戒するから、隠密できないオーガはすぐに見付かるのよ」


 ……なるほど。

 聞けばオーガは、体長2mを越える立派な体格の持ち主だそうで、こそこそ行動できないから、発見は難しくないのだそう。

 実際に、『紅の森』ではすぐに見付かっているし。


「で、『紅の森』で見付かったオーガは、じゃあ、なんなの? ってことになると、こういう場合のセオリーとして、ダンジョンが疑われるってわけ」


「次に、ダンジョンってなに? という疑問に答えるとぉ……」


 長く喋って疲れたヴィッキーに代わって、シアが話を引き継ぎました。


「ダンジョンは魔物なのではないか? というのが、定説になっているわぁ……。

 ダンジョンコアという、人でいうところの心臓があって、それが周囲の魔力を吸収して成長するのぉ……。

 人とかの魔力は吸収率が良いから、人を内部に誘き寄せるために、洞窟とかを模している、と考えられているわぁ……」


 んー。

 そういえば、先日ダンジョンの話になったとき、あまり研究が進んでいない、みたいなことを聞いたような……?


「そうなのよぉ……。

 個体差が大きいみたいで、生態がはっきりしないのよぉ……」


 ふんふん。


「わかっているのは、突然出現して、魔物を生み出し、ダンジョンコアを破壊すると倒せる、ということなのぉ……。

 時間が経ち過ぎると、魔物が溢れて、ダンジョンから出てしまって、周囲の人が集まる場所を襲撃するから、危険なのよぉ……」


 むぅ。

 では、見付けたら、即座になんとかしないとダメなのですね。


「そういうことぉ……。

 でも、良い面もあって、アイテムが自然発生することがあるのぉ。

 あとは、鉱物とか薬草とか。

 採っても、時間が経てばまた回復するから、キチンと管理できれば、その恩恵は計り知れないのよぉ……」


 ああ、そんなことを以前にも言ってましたね。

 つまり、なんだかよくわからないけどダンジョンとはそういうもので、よくわからないけど有為なもの、と理解されているのですね。

 まぁ、日本でもありましたね、そういうこと……。


「魔物がいくらでも出てくるから、新兵の訓練とかにも使われているわ。

 もちろん、冒険者の良い稼ぎになるから、ダンジョンに潜るのは人気があるのよね」


 確かに、RPGにおいて、ダンジョンといえば、素材を手に入れてレベリングができる場所、というイメージですね。


「ただ、危険なことに変わりはないから、そのダンジョンを使う(・・)かどうかは、慎重に判断されるのぉ……」


「そこで、そのためには、調査が重要になる……というわけ」


 ふぅ。

 ようやく、話が元に戻りました。


「では、今回の依頼は、オーガを探して、ダンジョンを見付けて、その調査をする、ということ……ですか?」


「調査まではしないかな。

 ダンジョンを見付けられたら、ボーナス。

 あたしたちがするのは、オーガを倒すこと」


 ……?

 じゃあ、ダンジョンは?


「もっと、上級の、実力のある冒険者がやるのよ。

 とれだけ危険かもわからないから」


 …………。

 つまり、面倒な探し物はぺーぺーがやって、美味しいところは、別の方々がやるわけですね。


「そういうこと。

 仕方ないわ、だって、初めて入るダンジョンは本当に危険なんだから。

 少なくとも、あたしでもやったことないし」


 ほう?

 そこまで、ですか?


「そうよ。

 だから、拗ねないでね」


 す、拗ねてなんかないですし!

 ずずず、とコーヒーを啜ります。

 なんか、シアとヴィッキーの視線が変な感じですが、気にしないです。

 ……ええ、気にしません──ニヤニヤしないで!


「確認します。

 今回の依頼は、オーガ討伐。

 可能ならば、ダンジョンを見付けること。

 ということですね?」


「そういうこと。

 ダンジョンの場所を発見できたら、ボーナスが出るから、是非とも見付けるわよ!」


 それで、あたしの装備を充実させるわ! と、気合いの入った様子のヴィッキー。


 でも……。


「先にわたしの武器の研究に使うから、ヴィッキーちゃんの装備はまだお預けよぉ……」


「なんでよ!?」


 ヴィッキーの悲痛な叫びが、部屋の中に響いたのでした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ