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 先日倒した約50匹のオークは、なかなかの稼ぎになりました。


 今の季節が寒い冬ということもあり、他所から商人がやって来て商品が入荷されることが少ないため、食料を売りに出すと喜ばれるのです。


 特に魔物の肉の中でもオークは美味しい部類に入るので、高く買ってくれます。


 しかも、僕の〈道具〉(アイテム)は重量制限がないので、魔物を倒しただけ持ち帰ることができますが、通常の魔術や魔道具ではそれができないみたいで、大量に持ち帰ったオークの肉は高値になりました。


 僕の懐はホクホクですが、パーティーとして考えると、欲しい装備品が多数あり、ちょっと困っています。


 シアとヴィッキーは辺境伯家の令嬢ではありますが、だからといって彼女たちの実家の財産を当てにするわけにもいきません。

 そんなの本人たちはイヤでしょうけど、僕もイヤです。

 泊めてもらっているだけでも少し心苦しいのに、装備品などを援助してもらったら、申し訳なさで一杯です。


 己の甲斐性でなんとかしたいものです。

 切実に、そう思います。


 そんなことを考えながら、商店の立ち並ぶ大通りをヴィッキーと歩いていました。

 ヴィッキーの折れてしまった剣を買い替えるべく、やって来たのです。

 ちなみに、ルナは槍の特訓中で、シアは武具のメンテナンスなどの生産活動をしているため、別行動をしています。


 なにか掘り出し物はないだろうかと歩いていますが、まぁ、それにかこつけたデートみたいなものです。


 ヴィッキーは数年ぶりの故郷だからでしょうか、懐かしそうに歩いています。

 ここに戻って来てから3ヶ月ほどですが、それなりに変わっている街並みにまだ慣れてないみたいですね。


「あ! あのお店、前にはなかったわ! 行ってみよう!」


「ぴゅっ!」


 と言うや否や、僕を引っ張り新しい店構えのパン屋に向かったり。


「あ! あそこの店、まだ潰れてなかったんだ!? なんでかしら?」


「ぴゅ〜?」


 と言って、それが聞こえたらしい店員に睨まれて、慌てて逃げ出したり。


「あ! この古着、可愛いわね! シータ、着てみて! ……あはは、似合う似合う!」


「ぴゅぴゅっ!」


 たまたま入った古着屋で、僕を着せ替え人形にしてみたり。


「あ! ミスリルの剣がある! けど、高いわ! もっと安くして……え、ダメ? どうしても? 残念……」


「ぴゅ〜……」


 値切りに失敗して、落ち込んでいたり。


 その一喜一憂が見ていて楽しそうで、なによりです。


 なんて言うか、ヴィッキーはクールでかっこいいイメージがあったので、こうしている姿を見ると、どこかホッとします。

 考えてみれば、彼女は20歳前なので、日本でいうなら、高校を卒業してすぐの女子大生くらいです。

 こうして故郷ではしゃいでいるのも、彼女の一面なのですね。


 うん、今日はこんなヴィッキーが見れただけで、良い1日であったと胸を張って言えるでしょう!


「なぁおい、そこのおねーちゃんたち。

 ちょうど俺たちも2人だから、一緒に遊ばねぇ?

 なんでもおごるからよ」


──『スタン』──


「しびっ!?」


 僕は男だし。

 ヴィッキーは僕の彼女なので、ナンパはお断りです。


「なにがしたかったのかしら?」


「さあ?」


「ぴゅっ?」


 ばたり、と倒れるナンパ2人組をその場に置いて、僕たちはデートを続けるのでした。






「2人だけで出かけるなんて、ズルいです」


 その日の夕食で、ルナは頬を膨らませて言いました。


 今日の献立は、オーク肉のステーキに、オーク肉をよく煮込んだシチューです。


 分厚い赤身の肉はジューシーで、シンプルに塩と胡椒で焼いただけですが、とても美味しくて満足です。


 それとは逆に、とても丁寧に下処理をして煮込まれたシチューの肉は、柔らかくとろけてしまうほど。

 ブラウンソースも味が濃厚で、オーク肉に負けないどころか、お互いに引き立てあって、これ以上ないのではないかと思わせます。


 口をサッパリさせようと、付け合わせのジャガイモとニンジンのソテーを食べると、野菜本来の甘味が広がり、そしてまた肉を食べたくなるのです。


 箸が……じゃない、ナイフとフォークが止まりませんね!


「聞いているのです!?」


 そう言っているルナも、肉を口に運ぶのを止めないままなので、頬がパンパンになっています。

 ……それでは、怒っているのが伝わらないよ。


「でも、誘ったのに断ったのは、ルナじゃない?」


「2人だけで出かけるとは思わなかったです」


「マシロもいたけど……」


「ぴゅっ!」


「マシロに別枠なのです!」


「ぴゅっ!?」


 ルナの一言に、焼いただけのオーク肉の塊をもしゃもしゃと食べていたマシロが、ショックを受けています。


 ……けど、考えてみれば、ヴィッキーとのデートのつもりだったけど、そこにシレッとマシロが付いて来てましたし、僕たちもそれに違和感がなかったですね。


「邪魔しちゃダメじゃない、マシロ……」


「ぴゅぴゅっ!?」


 シアが言うと、マシロは慌てて首を振ります。

 そんなつもりはなかった、寝ていて、気付いたら一緒だった……ですか?


 ふむ?


「まぁ、楽しかったから良いわ」


 あ、良いんですか?


「また別の機会に、2人で遊びに行けば良いじゃない?」


「それもそうですね」


 ニッコリと微笑むヴィッキーに、僕も笑って答えます。


「ズルいです! 私も行くです!」


「そうよ……。次は、わたしも行きたいわぁ……」


「じゃあ……みんなで行く?」


「ああ、それも楽しそうですね」


「違うです! 2人っきりです!」


 バンバンとテーブルを叩いて言うルナ。

 こらこら、マナーが悪いですよ。


「でも、今晩はルナの番よぉ……。

 ちゃんと2人っきりになれるじゃない……?」


「あ、そうです。

 2人っきりです!

 なら、オッケーです」


 ……うん、まぁ、そうなのですけど。

 ルナはそれで納得するのか……?

 いくらなんでも、それは……。


「だからぁ……次はわたしの番よぉ……。

 シータ、明日はわたしと2人で出掛けましょう……?」


「うん、明日のデートは、シアの番です……あれ?」


 首を捻るルナに、シアがニコニコ──というかニヤニヤして、見ています。

 ここで種明かしはしないですけど……いつ気付くでしょうね?


 そのうちルナは、詐欺に遭いそうです。

 気を付けておきましょう。


 なんやかんやあっても、晩餐はいつものように穏やかに終わるのでした。






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