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「────!」
ガンガンと金砕棒で大盾を打ち鳴らすウィルフレッド。
その音に、周囲を囲んでいるオークが注目して、ウィルフレッドに襲い掛かります。
……RPGで言うところの、挑発スキル、でしょうか?
ゲームならよくある光景なんでしょうが、実際には不自然に見えますね。
あ、いや、叩いているときに、魔力が生じています。
もしかしたらあれは、魔術の一種かもしれません。
それなら、わからなくもないですね。
それはさておき。
ウィルフレッドは、棍棒を手に襲い掛かってくるオークと交戦しました。
棍棒を大盾で受け止め、返す刀で突撃したり、金砕棒で殴ります。
特に金砕棒での上段からの振り下ろしの一撃は、オークの頭をミンチにするほどです。
あれを見たら、挽き肉が食べられなくなりそう……何てことはないですね。
今更、屠殺の現場を見たところで、食欲を無くすほど柔ではないつもりですから。
ふむ。
ゴーレムなのに、ウィルフレッドの戦闘力は相当高いです。
これなら、安心ですね。
シアによれば、経験を積むことで、より強くなるらしいですし。
次に、ヴィッキーは……と。
ウィルフレッドに襲い掛かるオークを、素早い動きで横手や背後に回り、脇の下や膝裏などを強襲しています。
あの辺りは、防具では覆いにくいので、狙えると効果は大きいです。
いくらオークの防具がボロくても、革製品を貫くのは骨です。
ましてや、鉄で補強されていては、手も足も出ないとまでは言いませんけど、角度によっては弾き返されてしまう可能性もありますので、ヴィッキーの攻め方は正しいかと思われます。
尤も……。
轟、とヴィッキーの持つレイピアが炎に包まれました。
その炎の剣で切りつけると、鉄で補強されていようと関係なく、まるでバターを切るかのように、抵抗なく刃が進んでいきます。
そして、その切断面が燃え上がり、オークはゆっくりと倒れていきました。
これは、ヴィッキーが魔剣士にクラスチェンジしたことで新たに得たスキルの【魔術剣】です。
魔剣士は、その名の通り、魔術の使用に補正のかかる剣士です。
とても強力な職業なのですが、魔術の適性がある上に、クラスチェンジする前に魔術を頻繁に使わないと、なかなかなれない職業のようです。
ヴィッキーはギリギリで適性があったようで、なおかつ、僕がバンバン支援魔法を彼女に使っていたからか、クラスチェンジが可能でした。
そうなのです。
本人が魔術を使わなくても、他者に使ってもらえれば、条件が満たされるようです。
意外な抜け道でした。
まぁ、何はともあれ。
ヴィッキーは無事に魔剣士になり、僕たちのパーティーは大きく戦力アップです。
が、しかし。
問題がなくはありません。
先ず、この魔剣士という職業は、魔術は使えるのですが、基本的には支援魔術が得意なのです。
しかし、他者を強化することはできません。
そして、その支援魔術の発展形として【魔術剣】がありますけど、これも同様に、自らの武器の強化です。
つまり、どこまでいっても、自分のみを魔術で強化する職業なのでした。
攻撃用の魔術が使えたらなぁ、と思いましたが、まぁ、ヴィッキーの攻撃力が大幅に上昇したので、良しとしましょう。
現に今も、サクサクと草を刈るように、オークを切っているので。
……なんと言うか、楽しそうです。
端から見ると。アレですね。
無双ゲームみたい。
ただ、あの【魔術剣】。
武器の耐久力が激減するみたいで、数戦すると、もう刃がボロボロになってしまうのです。
シアがいるので応急処置的に研いだりして直していますが、根本的にもっと強力な武器が必要そうです。
ミスリルみたいな魔術に強い金属で作られた剣なら、こんな心配はしなくても良いとのことですが……ミスリル製の武器は高価です。
そのためにお金を貯めたいのですが……ゴーレムに大金を使った(幾ら使ったのかは、怖くて聞いてないです)後なので、しばらく先のことになりそうです。
最悪は、僕が魔法で魔力の剣を作れば良いのですけど、1回戦う毎に作るのも面倒です。
……早めになんとかしたいですね。
「……というわけで、【魔術剣】は緊急時以外は使用禁止で」
「えーっ!?」
確かに、【魔術剣】でスパスパと魔物を切り刻むのは爽快そうなので、不満に思うのも理解はできますね。
「それか、安物の剣を、シアが量産して、使い潰していく」
「それは、わたしがイヤよぉ……」
……まぁ、職人からしたら、そんな使われ方は許容できないでしょうね。
「お姉様、そこをなんとか!」
「イヤなものはイヤぁ……」
「そんなぁ……」
「じゃあ、そういうことで、【魔術剣】は使用を制限する方針で。
これが最後だと思って、オークを全滅させてください」
「ぴゅっぴゅー!」
頑張って! というように、マシロは身体をくねらせ、ヴィッキーに声をかけました。
「ヒドイ!
絶対にお金に貯めて、ミスリル製の剣を買うからね!」
そう言うと、ヴィッキーはオークを親の仇の如く、切って捨てていきました。
……プギャーと悲鳴をあげる哀れなオークたちに、合掌しましょう。
「……どこかに、ミスリルって落ちてないですかね?」
「うーんとぉ……?
銀の採れる鉱山に、魔力が溜まった結果銀が変化する、って聞いたことがあるけどぉ……。
あとは……ダンジョンかしらぁ……?」
聞くと、ダンジョンで採掘しても、時間が経過するとそれらは元に戻るらしいです。
魔力が影響するみたいですけど、理由はよくは知られてないそう。
……危険だから、研究できないのかな?
「でも、ミスリルが採れるようなダンジョンは、国が管理してるから、簡単には入れないのぉ……」
だから、市場に出ると、あんなにお高いのですね。
初めて見たときは、マジでビビりましたから。
例えるなら、銀座の高級寿司屋の大トロ1貫の値段を見たときのような……ってわかりにくいかな?
まぁ、それだけ驚いたってことです。
冒険者は命の危険があるからか、比較的、高給です。
なので、頑張れば手を出せない値段ではないのですが……。
オークの足止めに活躍しているウィルフレッドを、僕は見遣ります。
こう考えると、アレにお金をかけずに、みんなの武具を充実させるのを優先するべきだったのでは……?
「それは言わないで……」
お金を使い込んだシアの額に汗が流れますが……まぁ、良いでしょう。
役には立っているし。
何よりも、割りを食ったヴィッキーが一番あのウィルフレッドを気に入ってますからね。
彼女には、当分我慢してもらいますか……。
パキン。
「ああ!?
剣が折れちゃったぁっ!?」
──『マギマテリアライズアームズ』──
僕はヴィッキーの叫び声が聞こえると、魔力でできた剣を作って投げて渡しました。
「やっぱり、剣を量産してあげようかしらぁ……?」
「そうしてください……」
「ぴゅ〜……」
あるいは、どうにかして良い剣を見付けてあげよう、と僕は考えるのでした。
名前 :ヴィクトリア・エマーソン
種族 :人
年齢 :19
レベル:24
クラス:魔剣士LV.6
生命力:■■■
魔力 :■■■■
精神 :■■■■
敏捷 :■■■■■
幸運 :■■
攻撃力:■■■■■
防御力:■■




