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 広大な雪原の中、なだらかな傾斜のある丘の上に、僕は立っています。


 ギリギリ……ヒュンッ…………ストッ!

 ギリギリ……ヒュンッ…………ストッ!


 僕は弓をギリギリと引いて、矢をヒュンッと射ると、僅かな間のあとでその矢がコボルトに突き刺さるのが、エルフ特有の長い耳に聞こえました。


──『マギマテリアライズアームズ』──


 魔法を使って魔力の矢を作り出し、それをまた(つが)えました。

 自分が固定砲台になったかのように、無心で矢を放ちます。


 バサッ!


 空からカンムリワシみたいな魔物が襲ってくるのを感知しましたが、矢が間に合いそうにありません。

 仕方ないので、集めておいた石を『マリオネットアーム』の腕で投げます。

 魔力で作られた腕は長いので、その分遠心力が働き、威力倍増です。


 バガンッ!


 カウンターみたいな感じで石が胴体に命中し、カンムリワシはしばらく滑空してから、僕の近くに落ちました。


 自分の腕で弓を射るのと、魔力の腕で石を投げるのを同時にできると、魔物の殲滅力が上がるのですが、未だにできません。

 タイミングをずらせば可能なのですけど……。

 練習あるのみ、ですね。


 またコボルトがやって来ました。

 矢を射って、殺します。


 今度はその死骸を得ようと、白い毛皮の野犬が走ってきました。

 ……漁夫の利を得ようとするとは、生意気な犬だなぁ。


 ギリギリ……ヒュンッ…………ストッ!


 おや?

 避けられた?

 ますます生意気な。

 じゃあ、魔法ですね。


──『スタン』──


 ギャンッ!?


 麻痺させる魔法で、白い野犬の動きを阻害しました。

 改めて、矢を射ちます。


 ……ヒット。

 よし、動かなくなればもはやあれはただの的です。


 ふぅ……。

 ぐるりと見回すと、動く魔物はもういませんね。

 コボルトの死骸が、死屍累々と転がっています。


 ふむ?

 100くらいはありそうですね。

 ちょっとした群れですが、どこかに集落でもできたのでしょうか?


 それが一斉に襲い掛かってきていたら危険でしたが、分散して現れたのは、運が良かったです。

 各個撃破できましたからね。


 あ、レベルが上がりました。




名前 :シータ

種族 :ハイエルフ

年齢 :21

レベル:16(+1)

クラス:冒険者LV.12(+1) 操蛇者LV.10(+1)


生命力:504(230+10)【+24】【+240】

魔力 :0

精神 :56(26+1)【+2】【+27】

敏捷 :79(36+2)【+3】【+38】

幸運 :37(17+1)【+1】【+18】

攻撃力:44(20+1)【+2】【+21】

防御力:44(20+1)【+2】【+21】


スキル:自動治癒 身体強化

    劣悪環境耐性

    全ダメージ軽減

    全状態異常耐性

    必中

    投擲

    弓術

    斧術


称号 :フォレストドラゴンの祝福




 僕が〈能力〉(ステータス)を確認していると、背後から声をかけられました。


「ご苦労様」


 あ、ヴィッキー。

 お疲れ様です。


「あれだけコボルトがいたのなら、もしかしたらコボルトリーダーがいたかも? と思っていたけど、いないみたいで良かった。

 いたら、こんなものじゃ済まなかったし」


「そうなんですか?」


「うん。

 残りのコボルトが逃げずに向かってきていたところだった。

 そうなると、ちょっと危険よ」


 ……コボルトリーダーって、督戦するのかぁ。

 イヤな相手っぽいですね。


「まぁ、キングとか出てくると、ちょっとした災害みたいになるから、早め早めに手を打っておかないと、すぐに増えて大変なことになるから、ゴブリン、コボルト、オークなんかは見かけたら、さっさと倒す。

 これは、鉄則ね」


「なるほど、理解しました」


「よろしい」


 そう言って、ニコリと微笑むヴィッキー。

 その赤毛が白い雪原に映えて、とっても綺麗です。

 こんな美人さんが自分の恋人だなんて、ウソみたいです。


「……どうかした? 何か異変が?」


「いえ」


 ジッと見ていたら、怪訝な顔をされました。

 ……いけない、ここはまだ危険な場所です。

 気を抜くのは、早いですよ。


「シータ……。

 怪我はない……?

 それと、弓の出来はどうだったかしらぁ……?」


 ヴィッキーから視線を外して、周囲の警戒をしようとしたら、アナスタシアさん──シアがやって来ました。

 

「スゴく使いやすいです。

 でも……」


 金属製の弓はおおよそ1mくらいで、それほど大きくありません。

 しかし、弦まで金属製なので、その破壊力は尋常ではないのですが、うっかり素手で引くと、確実に指が取れるという、危険物になっています。

 尤も、僕の場合は、指も鎧の籠手でしっかりと覆われているので、その危険はないですけど。


 矢に関しては、ちゃんとしたのもありますが、今回は実験の意味もあり、魔法を使ってみました。

 結果としては、いちいち魔法で矢を作るのは面倒なので、今後はやらないと思います(なくなったら別ですが)。


「なぁに……?」


「全力で引こうとすると、ちょっと異音が……。

 寒さの影響でしょうか?」


「うぅん……。

 ないとは言わないけど……単にシータの力に弓が耐えられないのだと思うわぁ……。

 鉄製じゃダメなのね……。

 ミスリルにしようかしらぁ……。でも、予算がぁ……」


 シアがブツブツと呟き出しました。

 こうなると、しばらくは声をかけても聞こえないでしょう。

 放っておくしかありません。


 現在、僕の使っている武具は、ほとんどがシアの作ったものです

 こんな感じです。




装備 :鉄の弓 鉄の鉈 鉄の大剣 鉄のナイフ

    ミスリルの小盾

    鋼鉄の全身鎧

    ミスリルの鎖帷子

    フード付きの外套




 と、なっています。

 この中で、大剣と鎧は今まで使っていたもので、ミスリルの小盾は国境の町の町長さんから頂いたものです。

 それ以外は、新調しました。


 どれもこれも、シアが丹精を込めて作製したものです。

 その出来は素晴らしく、とても良いものなのです。


 特に、防具に関してはいっそ偏執的で、僕は多少のダメージがあっても回復できるからそこまで気にしない、と言っても聞き入れてくれず、高価なためたくさん使えないミスリルを鎖帷子にしてしまうほどでした。


 ……僕の身を案じてくれているので大変ありがたいのですけど、できればそのミスリルで武器を作って欲しかったです。


 今のところ、彼女の次の予定は、お金を貯めてミスリルで全身鎧を作るのだそうです。

 それが終われば、高レベルの魔物の毛皮を使ったマントを作ることで、防具は一区切りとするようです。


 それだけの防具なら、そうそう怪我をすることはないのだと力説されましたが、正直、過保護じゃないかなぁ……と思っています。

 ……口には出しませんけどね。


 そもそも僕は後衛なので、そんなに魔物の攻撃を受けることはないのですが、シアにしたらそんなことは関係ないのでしょう。


 まぁ、逆の立場ならわからなくもないので、好きなようにさせています。


 そんなシアの職業(クラス)は、クラフトマスターという特殊なものです。

 武具だけでなく、大抵のものは作れるそうで、生産系の職業の中でも最上位なのだそうです。

 〈能力〉(ステータス)はこんな感じ。




名前 :アナスタシア・エマーソン

種族 :人

年齢 :23

レベル:36

クラス:クラフトマスターLV.40


生命力:■

魔力 :■■■■

精神 :■■■■

敏捷 :■■

幸運 :■■■

攻撃力:■

防御力:■




 あまりステータス値は高くないですが、生産能力に補正が掛かるのだそうです。

 特にこの職業に就いたシアは、天才と言っても過言ではないほどなのだそうですが、それが故に、そこまでこの能力は好きではないのだとか。

 その理由を聞いたら、


「だって、ろくに苦労しないで、なんでも高性能のものが作れちゃうんだものぉ……。

 つまらないわぁ……」


 とのこと。

 彼女には、彼女なりの葛藤があるのでしょうね。


 それに、エマーソン家では今まで、彼女の才能を隠してきたそうです。

 何故なら、それがわかると、無理矢理アイテム作りを強制させられるからです。

 過去の先祖に似たようなことがあってから、エマーソン家では細心の注意を払っているそうです。


 僕は恋人という立場から教えてもらいましたが、このことを周囲にバラしたら、恐らくエマーソン家に暗殺されるでしょう。


 それだけ、このクラフトマスターという職業(クラス)はスゴいみたいです。

 

 成人を過ぎても、結婚せずに家に居続けることになったのも、このことが理由の1つだったそうで、それを思えば、シアがこの才能を好きになれないのもわからなくはないですね。


 ……っと、シアが思索から復帰しました。


「やっぱり、弓はこのままで……。

 全力でなくとも、十分な威力はあるし……。

 先ずは、防具を優先するわぁ……」


 そうですか……。


「では、倒した魔物の死骸を回収してから、帰りましょう」


「そうね」


「はぁい……」


「ぴゅっ!」


 ……マシロ、静かだと思っていたら、何を食べているのですか?

 落ちてきたカンムリワシ?

 羽はむしってあるから大丈夫?

 そうですか……できれば、頭の方を残して欲しかったですが……食べてしまったものは仕方ないですね。


 キミは自由だなぁ……。






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