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僕を誉め殺そうとする町長さんたちから、あれこれと適当な理由を言って逃げ出しました。
あれ以上その場にいたら、僕の胃は確実に穴が空くでしょう。
……つか、もう既に胃が痛くなってきました。
仕方ない。
──『ヒーリング』──
魔法で胃を治しますが、ストレスまでは魔法ではどうしようもありません。
可及的速やかに、この町から出ましょう。
そんなことを考えながら、部屋に戻りました。
夕食は食べてませんけど、全く食欲はありません。
「ぴゅ〜」
が、マシロがお腹すいた、と切ない声を出すので、〈道具〉から適当な魔物の死骸を取り出しました。
あとは勝手に食べるでしょう。
僕はベッドに入って、横になります。
そういえば、アナスタシアさんたちに報告しなければ、と思い出しましたが……明日で良いか。
なんか、疲れました。
このまま、眠りましょう。
お休みなさい……。
「魔力が足らないのです。至急、補給させるです」
「ぐふっ……」
突然、僕の身体の上に何者かが飛び乗ってきました。
……いや、何者かっていうか──ルナなんですけどね。
扉を開ける音も、足音もなく、気配さえ感じさせないので、全く気付きませんでした。
無防備でいるところにアタックされたので、かなりキツいです。
……少しくらい手加減してほしい。
「さ、ヤるです。とっとと服を脱ぐです。それとも、私が脱がすです?」
手をワキワキさせながら言うルナ。
……なんか卑猥ですよ、その手つき。
「えっと、疲れているので、今日のところは魔力の補給は魔法で……」
「却下です」
……ですよねー。
「シータだったらどうなのです?
ご馳走があるのに、それを目の前にして、水と薬を渡されて『これで我慢しろ』と言われたら」
私はムリなのです、と言うルナの言い分はとても理解できます。
……理解できますけど、納得はできないんです!
が、しかし、ルナはそんなのお構いなしに、僕の服を脱がしに掛かります。
僕は抵抗しますが、まるでムダです。
「たーすーけーてー!?」
「ムダなのです。魔術で、防音してあるです」
用意周到!
「フッフッフ。大人しく天井のシミでも数えていれば、いつの間にか済んでいるです」
なに、そのセリフ!?
どこかの悪役が言うやつだよ、それ!?
ん?
顔が近付いてきたからわかったけど、ちょっと酒臭い。
もしかして……酔ってる、ルナ?
「くふふ、空腹に効いたです」
きゃー!?
酔い方が最低だ!?
と、2人でバタバタ暴れていると、バタン、と扉を乱暴に開けて誰かが部屋に入ってきました。
今度はなに!?
「ちょっと待ちなさい!」
おお!
その声は……ヴィッキーさん!
「わたしもいるわよぉ……」
アナスタシアさんも!
ヘルプミー!
とにかく今日のところは、助けて!
「むむ?
邪魔するなら、ヴィッキーとシアとはいえ、許さないのですよ?」
いやいや、許してあげて!
そんな心の狭いこと、言っちゃダメです。
あと、アナスタシアさんのことを愛称で呼ぶなんて、いつの間に仲良くなったのですか?
「ふふ、邪魔だなんて……しないわよ?」
……ん?
「そんな楽しそうなことなら、わたしたちも一緒よぉ……」
……んん?
「ふむ。それなら良いです。
美味しいものはみんなで食べると、より一層美味しいと聞くです。
ならば、みんなでヤるです!」
それはちょっと違う!
つか、2人はなにしてるの?
止めないとダメでしょ?
なんでノリノリなの!?
はっ!?
まさか、その手に持っているのは……お酒のビンでは?
もしかして、2人も酔っているのですか!?
「えい」
「……ぐぶっ!?」
と、信じられない思いでまじまじと酒瓶を見ていたら、ヴィッキーさんが僕の口に瓶を突っ込んできました。
……いや、飲みたかったのではないですよ!
っていうか、えらく強い酒ですね、これ!
こんなのを飲んだから、この3人は今、こんな状態なのですか?
「……ぷはっ。ごほごほ」
……やっばい。クラクラします。
「まだまだ、あるわよぉ……」
いつのまにやら、アナスタシアさんが大量のお酒を持ってきています。
……まさか、これ、全部飲む気ですか!?
正気、か……?
……いや、既に酔っているから、もう正気ではないのか。
うぁ、空腹だったから、一気に酔いが回ってきた……。
「ふふ、シータも元気になってきたです。
では、いただくです」
「じゃあ、次はわたしよぉ……うふふ」
「あたしが最後? まぁ、残り物には福があると言うから、それでも構わないけど……あはは」
いつの間にか、3人は服を脱いでいます。
……はい、とっても綺麗ですね。
ルナは……Dカップくらいかな?
ただ、細身のスレンダーな身体なので、その対比でとても素晴らしいお胸様になっていますし、形も綺麗です
なにより、手足が長いし、腰付きもお尻も全てが良いです。
うむ、美しい。
アナスタシアさんは……EかFカップはありそうです。
あまり運動はしないのか筋肉はなさそうですけど、その分柔らかい脂肪を全身に纏っています──もちろん太っているというわけでは全くなく。
うむ、美しい。
ヴィッキーさんは……圧巻のGカップです。
ただ大きいだけではなく、筋肉によってその胸を支えているので、張りもあって最高ですが、だからといって、バキバキに固い筋肉だけではなく、ほどよい脂肪が、女性らしい柔らかさを表現しています。
うむ、美しい。
……あはは、僕は何を論評しているんですかね?
どうやら……酔いがまわって……きました。
あぅ……もう……ダメ……だ……。
妖艶な顔をした3人に、身体をまさぐられる感覚を最後に、僕の意識は真っ白になったのでした。
……う、眩しい。
窓から射し込む朝日に、瞼の上から刺激されて、僕は目を覚まします。
カーテンが閉まってなかったようで、部屋の中は光で真っ白です。
むぅ……。
目が痛い……上に、頭痛も酷い。
もっと寝ていたいけど、眩し過ぎます。
……こりゃ、ダメだ、このままでは眠るどころではありません。
カーテン、閉めないと……。
「……よっこいしょ」
と、往年のギャグを思い出しましたが、口にするのはギリギリ自重して、なんとか身体を起こします。
むにゅ。
…………。
ナニコレ?
僕はとても柔らかい何かを触っているようです。
はて?
むにゅもにゅ、と確認するように揉んでみます。
手触り、感触などから、痛む頭の中からいろいろ検索しました。
その答えは……。
「……ん」
という艶かしい声が毛布の中から聞こえたので、慌てて毛布を捲ります。
オー、ジーザス……。
同時に、昨晩のことを思い出しました。
さらに狂乱の最中の出来事も、ボンヤリと覚えています。
すん、と鼻を鳴らしてみると、部屋の中はアルコールとアレな匂いが混じった、何とも言えない臭気が漂っていて。
オーマイガー……。
ルナ、アナスタシアさん、ヴィッキーさんがベッドの上で寝乱れていました。
もちろん、何も服を着ていません。
うん。
ギルティ。
しかも、シーツに赤い血が点々と付いています。
うむ。
さらに、ギルティです。
思わず宙を見上げました。
天井のシミを数えているうちに、何もかも終わらないですかね……。
僕はそんなことを考えながら、現実逃避するしかないのでした。




