表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/193

44

「はじめまして、なのです。シータ」


 鈴を鳴らしたような澄んだ声が、僕の脳に浸透してきました。

 それがあまりにも心地好く、我を忘れてしまいそうです。


「ぴゅっぴゅー!」


 マシロの声にハッと気付き、ごほんと咳払い。

 僕も返事をしなければ!


「はじめまして……ええと?」


「ルーナリア・ハートフォレスト、なのです。

 是非、ルナと呼んで欲しいのです。

 それと、マシロ? よろしくなのです」


「ぴゅっ!」


 ずっとこの声を聞いていたいけど、そうもいきません。

 いくつか疑問があります。


「あの中にいても意識はあったから、声は聞こえていたのです。

 だから、父様とあなたたちの会話から大体の事情を把握しているのです」


 あ、そうですか。

 話が早くて助かります。

 ちなみに、父様とは……。


「シータがFDさんと呼ぶ、あのドラゴンなのです。

 参考のために言うと、もう1人の方は、パパ様、と呼んでいるです」


 ……ありがとう。 

 別に聞きたくなかったけど……。


「それはそれとして。

 シータにお願いがあるです」


「なんでしょう?

 僕にできることなら、何なりと」


 僕の言葉に、ルナは微笑みます。

 海を思わせる瑠璃色の瞳は、艶やかに濡れていました。


 背中にぞくりとした何かが走り、僕の身体を震わせます。


「私と契約して欲しいのです」


「契約」


 それはなんのために?


「私はホムンクルスなので、生きるために魔力が必要です。

 しかし、ヒトのように外的魔力(マナ)を取り込むことはできず。

 契約者から直接、内的魔力(オド)を取り込まなければならないのです」


 んー?

 その理由は?


「私──ホムンクルスにとって、外的魔力(マナ)は毒のようなもので、それを除去して内的魔力(オド)にしてもらわないとダメなのです」


 ふむ?


「契約をするのは、そうすることで専用にチューニングされた魔力を得られるので、効率がずっと良くなるから、なのです」


 よくわからないけど、そうする必要があるのですね?

 そうしないと貴女が生きられない、ということなら、僕に否はありません。


 FDさんから貴女を預かるという覚悟したときから、そのために必要なことはなんでもやろうと決めました。


 なので、契約でもなんでもバッチコイです!


「ありがとう……なのです」


 近付いてきたルナはポツリと呟きます。

 目の前に立たれると、身長はそんなに変わらないですね。

 若干、僕の方が高いです。

 ……僅か数cmですけどね。


 ルナは僕の手を取ると、その人差し指を自らの口に含みました。

 彼女がガリ、と歯を立てると、指から僅かですが出血したのがわかりました。特に、痛みはありません。

 ルナは、出てきた血をこくりと嚥下し、そして傷を癒すように舌で舐めます。

 口内の熱が僕の指を伝わり、全身を熱くしていきました。


 うん、スゴいエロチックですよ、これ。


 今更ですけど、ルナは裸だし、これは端から見たら、ちょっとした事案ですよね?

 急いで〈道具〉(アイテム)から、替えの外套を取り出して、ルナに被せました。


 ゆっくりとルナが口から僕の指を出します。

 つぅっと、唾液の糸が引きました。

 それを舌で舐めとる仕草も、いちいちエロいです。


「これで、契約完了?」


「はい。

 シータの血液から、魔力を解析したのです。

 今後は、シータの魔力以外、摂取できません」


 え?

 それって、僕が死んだら、ルナはどうなるのですか?

 また、新たに契約者が必要になる?


「いえ、そのときは私も共に死ぬ、です。

 それが、ホムンクルスというものです」


 …………。

 うわぁ、責任重大ですよ、これは!

 迂闊なことはできなくなりました。


「気にしないで欲しいのです。

 どうせ、1度はこの命を諦めたのです。

 それをシータのために役立てられるのなら、本望なのです」


 それは嘘偽りのないことです、とルナが言います。


 このことについては、あとでしっかりと考えましょう。

 僕だけでなくルナの命を背負ったなら、2人でキチンと話し合う必要がありますからね。


「じゃあ、次の問題は、と……。

 僕は貴女にどうやって、魔力をあげれば良いですか?

 今みたいに、血を吸わせれば良い?」


 ふるふるとルナは首を横に振りました。

 ……ちゃんと外套を纏ってください。

 隙間からチラチラと見えちゃいます。

 おかしなもので、全く何も着ていないときよりも、今の方が気になります。

 これが、チラリズムというものですね……。


 でも、ルナはあまり頓着しない様子なので、僕が整えました。

 話が済んだら、服を渡すとしましょう。


「血は契約のときだけ、なのです。

 あんなものを常時飲んでいたら、気持ち悪くなります」


 ごめんなさい。


「もっと別のものです」


「具体的には?」


「体液、なのです」


 ……は?


「汗とか唾液とかですが、これらは効率があまりよくありません」


 いやいや。


「汗の場合、裸で抱き合うですね。汗腺から吸収されますが、1日中そうしていなければならないので……」


 いやいやいやいや。


「唾液は、ディープな口付け(キス)なら、そこそこ効率が良いです。緊急時ならこれを推奨するです。

 ただ、あくまでもそこそこなので、普段からこれで維持しようとするなら、30分おきくらいに、頻繁にするです」


 …………。


「でも、一番良いのは、なんと言っても精液、つまり性行為、なのです。

 最も効率が良いです。

 1日1回です。2日に1回でも大丈夫ですけど、何かあったら動けなくなる可能性があるので、やはり1日1回がベスト、なのです。

 もちろん、2回でも3回でも良し、です」


 ……この子は何を言っているのでしょうか?

 そうか、これが世に言う、ジェネレーションギャップというものですね!

 ははは、最近の若い子ってやつは……。


「現実逃避、ダメなのです」


 あ、やっぱり?


「ちなみにあの培養槽は、外的魔力(マナ)内的魔力(オド)に変換して液体化させる装置、なのです。

 私はそれに浸かっていましたが、汗腺から吸収するので、1日中あの中にいなければならなかった、です」


 なんというか、こういう言い方は悪いけど、ホムンクルスって欠陥品なんじゃないかな?

 生命維持に苦労しすぎるでしょうに……。


「パパ様はそれをどうにかしようと研究していたです」


 なるほど……。


「それと、性行為云々については、気にすることない、です。

 理由があって、サキュバスの因子が私にはあるです。

 ある意味、食事と変わらないです」


 えー?

 そういう問題なのかなぁ……?


「大丈夫なのです。

 私は処女ですが、キチンと満足させられる、です!」


 絶対にそういうことじゃない!


「なら、どういうことです?

 それとも……私ではダメなのです?」


 ぐぅ……。

 そういう言い方は、ズルい。

 しかも、上目遣いで言われると……。

 チクショウ! かわいすぎる!


「というか、もう契約は交わされたし、そもそも、なんでもするって、シータは言ったです。

 それを反故にするですか?」


 ぐっはぁ……。

 言質を取られてました。

 過去の自分を殴りたい。


「男なら潔く据え膳を食え、です!」


 そう言って、ルナは僕に飛び掛かってきました。

 避けられずに、簡単にマウントポジションを取られます。


「イヤだー! こんなところでなんてー!」


 こんな山の中はイヤだ!


「初めてじゃないのだから、別に構わないだろう、です。

 私は初めてですが、全く気にしないです」


「そういう問題じゃない!」


 あと、それは女性側から言う台詞じゃない!


 なんとか拘束を外そうとしますけど……ナニコレ、ムリだ。

 何でこんなに力強いの?


「ふっふっふっ。私にはフォレストドラゴンである父様の因子があります。さらに、サキュバスはこういった手管に通じているです。

 簡単には、逃がさないです」


 ニヤリ、と口の端を上げるルナ。

 その唇を舐める仕草が……ああ、もう!


「鎧、邪魔です」


 と、ポイポイと外されていく鎧。

 こんなに簡単に脱がされて良いのか、全身鎧?


「これも、サキュバスの技術、なのです」


「きゃー! 助けて、マシロー!」


「ぴゅ?」


「マシロ。これをあげるです」


 どこからともなく肉の塊を出したルナは、それをポンとマシロに渡しました。


「ぴゅっぴゅっぴゅっ!」


「ドラゴンの肉です。

 それは前払いです。あとで、焼いたドラゴンステーキを一緒に食べるです」


「ぴゅー! ぴゅっぴゅっ!」


 マシロが肉をくわえて、離れていきます。

 なんてことでしょう、アッサリと買収されてしまいました。

 さらに気を利かせたつもりか、魔法を使って結界を張っていきました。

 防寒が施されているのは、風邪引くな、というメッセージでしょうか?


「む? 良い仕事するです、マシロ」


 その間にも僕の服は脱がされていき、もはや風前の灯です。

 なんか泣きたくなってきました。


「では、いただきます、なのです」


 いやー、おーかーさーれーるー!

 アーーーーーッ!?




 ──肉食系女子って、本当にコワイです……。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ