表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/193

42

『いや、厳密に言うと、子供とは少し違うか。』


 ……本当に何を言っているのですか?

 そもそも、この培養槽みたいのに入っているのは、人型をしていて、ドラゴンとは似ても似つかないですよ。

 まぁ、溶液が濃くて、ハッキリとは見えないのですけど。


『私には(つが)いにしたいほど愛する者がいてな……。名もその者にやったから、他者に名を呼ばれるわけにはいかなかったのだ。』


 はあ。

 急に何を言っているのですか?


『幸いなことに、あれ(・・)も私を受け入れてくれたのだが……。

 私たちは子を()すことができなかったのだ。』


「え? それって……?」


 おっと、これは聞いてはいけないことかも。

 デリケートな問題ですからね。


『いやいや、気を遣わなくても大丈夫だ。

 ただ、我が伴侶は私とは違う種族──人だったのだ。』


 おおー。

 ドラゴンと人の恋物語か……。

 ロマンチックですなぁ……。

 FDさんのお相手だから、さぞかし美人さんなんでしょうね。

 想像が膨らみます。


『私たちは愛し合い、だからこそ子を生したいと考えた。

 我が伴侶は人だから、尚更な。』


 ……でしょうね。

 寿命が違うだろうから、その人はどうしても子供をFDさんに残したかったのだろうな。


「良い人なんですね……」


『ああ、私にはもったいないくらいだ。』


 うん。


『頼り甲斐があって。』


 うんうん。


『逞しくて。』


 うん……うん?


『あれは良い夫だ。』


 …………。

 ……え?


 えっと、えっと……奥さんの話でした……よね?

 良い……夫? ……男?


『ああ、私の夫にはもったいないくらいの良い男だ。

 種が違うというのに、躊躇うことなく私を受け入れたのだからな。』


 …………。

 あ、そうか!

 勘違いしていた!

 FDさんの声が低めの男性的な声質に聞こえたものだから、ついつい勝手に男性だと思っていましたけど、実は、女性だったのですね!

 それは、大変失礼しま──


『私は雄だが……?』


 orz。


 ……まさか異世界にいて、リアルBLを目の当たりにするなんて。

 しかも、ドラゴンが……だなんて、想像だにしていませんでした。


 現実は小説よりも奇なり。

 異世界もそれは変わらないのでした。


 ショックを受けている僕を尻目に、FDさんは話し続けています。


『我々は子供を作ることはできない。

 そこでいろいろ考えた結果、答えは1つだった。

 それは──ホムンクルス。』


 …………。


『それが、この子だ。』


 そう言って、FDさんは足元の培養槽を指し示しました。

 我が子を(いと)おしむその目は、人もドラゴンも変わらないようです。


 そうかー。

 そうだよなー。

 ここは異世界だものなぁ。

 LGBTの問題も、魔法チックでどうにかできちゃうんだな……。


 それにしても、養子とかを想定していたけど、まさかホムンクルスとは……。

 ビックリです。


『我が伴侶は研究者でな。

 それぞれの因子を備えたホムンクルスを作成することができたのだ。』


 うーん、スゴいのかどうなのか、僕には知識がないのでわかりませんけど、この話しぶりからすると、スゴいことなんでしょうね。

 よくわからんけど、はは。


 なんかいろいろ衝撃的な事実がありましたが、気を取り直して、話を戻しましょう。


「それが、どうしてこんなところに?」


 まさかこんな山の中で、研究してたわけではないですよね。


『転移させられたのだ。』


 んん?

 今、何と?


『最初から話そう。

 と言っても、私も詳しいことはわからないのだが……。

 我が伴侶が研究者だと話したな?

 その成果を欲した何者かが、研究施設を襲撃したようなのだ。』


 え、でも……。


『そう。もちろん、私もそこにいた。

 普通に考えれば、ドラゴンのいるところに襲撃をするなど狂気の沙汰だが、しかし、私には弱点があった。』


 あ、子供ですか。


『そうだ。

 それを知っていた何者かは、まず子供を転移させた。

 培養槽ごとなので、それほど難しくなかっただろう。

 我が伴侶はそれを知り、私に追跡するように言った。

 私がその場からいなくなれば、自分がどうなるかなど火を見るより明らかだったのだがな……。』


 むぅ……。

 親の愛とはスゴいものです。

 自らを省みず、子を優先するのだから。

 ……僕にはまだわかりません。


『転移先を追跡するのは難しくなかった。

 ……というよりは、意図的にわかりやすくしたのだろう。』


 なるほど。

 でないと、ドラゴンが探しに行ってくれないわけですからね。

 見付けられず、引き返して来られたら、目も当てられない。


『見付けたのが、この山だった。

 その結果、麓に迷惑をかけたわけで、申し訳なく思うが……。』


 まぁ、事情を聞くと不可抗力だな、とは思いますけど……。


「その子を連れて、えっと、培養槽ごと戻れないのですか?」


 培養槽の中に入っているということは、まだ培養槽が必要なんですよね?

 それを掴んで、飛んだりはできないのでしょうか?

 FDさんが移動すれば、問題は解決するのですから。


『すまない、それはできない。』


 それは何故?


『この培養槽はそれほど丈夫ではない。

 飛行速度に耐えられないのだが、そもそも、私が掴めば確実に壊してしまうだろう』


 ふむ。


『次に、この子は生命維持に魔力が必要なのだが、自ら魔力を作り出せない。

 外部から何らかの方法で賄うしかないのだ。

 今は私が渡しているが、ドラゴンの魔力は強すぎるため、培養槽を通して慎重に行う必要がある。

 移動しながらなど不可能だ。』


 培養槽からその子を出しても、ドラゴンの魔力は強すぎて直接受け取れず、いずれ死んでしまう。

 だから、その子を培養槽から出すわけにもいかず、移動もできず、この場に留まるしかないのですね。

 ……難儀な。


『そこで、だ。

 森に棲まうエルフの王たるハイエルフよ。

 世界に偏在する森を守護するフォレストドラゴンである私の頼みを聞いてほしい。


 我が子の面倒を見てもらえないだろうか。』






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ