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 午前11時になりました。

 サクサクと山を登り続けて、何事もなく中腹付近まで到着しました。


 大抵の魔物は山を下りていたため、邪魔されることがなかったのが、功を奏したのだと思います。


 『マップ』で確認した限りでは、たまーに離れたところに魔物の反応があったのですが、近寄ってくることがなかったので、無視しました。

 離れるものは追わず、近寄るものは撃退する、ということを考えていた結果ですね。


 慣れない山歩きだったので苦労するかと思いましたが、意外に歩けました。

 これがエルフの特性なのか、あるいは『身体強化』のお陰なのか、もしくは、新しく得たスキルである『劣悪環境耐性』のせいかな、とも考えられましたが、答えはわかりません。

 楽だったのは確かなので、良かったのだろうとは思いましたが。

 検証とかできないし。


 そんなこんなで、休憩をしています。

 体力的には問題ないのですが、ここから先に気になることがあるので、調査しがてら、昼食がてらの休憩です。


──『ホークアイ』──


──『スクリーンショット』──


 この『ホークアイ』という魔法は、周辺の光景を鳥瞰図で見ることができるのです。

 さらに、『スクリーンショット』という写真を撮る魔法と組み合わせることで、その使い勝手の良さは劇的に上がりました。

 欠点は、1枚撮ったら1分程度で消えてしまうので、保存できないというところでしょうか。


 なんとか戦闘に利用できないかな、と考えましたが、すぐに諦めました。

 ……偵察にはベストなので、構わないですけど。


 進む先に『マップ』で魔物の反応が多数あったので、確認していますが、見た限りでは何もなさそうです。

 まだそこまで高い標高ではないから、低木の林があるくらいです。

 魔物が隠れているようには思えないですけど……。


 んー?

 なんだろう……地面に潜っているのかな?


「ぴゅ?」


 以前に倒した狼の魔物の一部を丸呑みしながら、悩んでいる僕を見て、マシロが首を傾げました。

 なんでもない、というふうに首を横に振って、マシロの頭を撫でます。

 気温が低くなりつつあるので、マシロの身体が少し冷たいですけど、この子にも僕と同じ『劣悪環境耐性』のスキルがあるので、寒さの影響はほとんどなさそうです。

 もっと寒くなったらどうなるかわかりませんけど……。


「ぴゅぴゅっ!」


 さあ行こう、というマシロの声に頷き返し、僕は歩き始めます。

 魔物の反応は気になりますが、先に進まないということはないので、仕方ありません。

 警戒心を途切れさせないように、気を付けて行くとしましょうか!






 低木の木々が立ち並ぶ一帯にやって来ました。

 そこまで密集していないので通ることは可能でしょうけど、走ったりするには枝が邪魔ですね。

 葉は少ないですけど、落ちているわけでもないので、枯れたか、そういう種類の木なのでしょう。


 相変わらず魔物の反応はこの辺りにあるのですが、目に見える範囲でおかしなものはありません。

 地中かと思って目を凝らしますが、そんな様子もないです。


 ……なんですかね、これ?

 無視して進むのも気が進まないですし……。


──『プロテクト』──


──『フィジカルアップ』──


──『シャープエッジ』──


──『マギマテリアライズアームズ』──


──『マリオネットアーム』──


──『フロートシールド』──


 支援魔法6点セットを掛けます。

 こうしてボンヤリと眺めていても仕方ないので、先に進みましょう。


 『マップ』で見ながら反応のある地点に、じりじりと近寄ります。

 うーん……。

 こうしてみると、木と反応が一致している。

 もしかして、木の中に隠れている?


 突然の奇襲にも対応できるように、ゆっくりと近付き──


「っ!?」


 1本の枝が鞭のようにしなり、襲い掛かってきました!

 慌てて回避すると、別の木の枝が攻撃してきます。


 マズイ!?

 『フロートシールド』によって浮かぶ魔力の盾が僕の前に到達し、枝の攻撃を受けました。


 バチッ、と鋭い音がしましたが、魔力の盾が壊れるほどの威力はなかったようで、2度、3度と受けても盾はびくともしません。


 その間に、僕は『マリオネットアーム』で大剣を操り、動く枝の根本を切り落としました。

 ぐぉぉん、と呻き声のような、変な反響する音が聞こえます。


 周囲を見回すと、しゅるしゅると枝を腕のように動かし、根を地面から引き抜き足のように動かして移動する、何本もの木がいました。


 これは……トレント、というヤツでしょうか?

 ゲームならそこそこ定番の魔物です。


 なるほど……。

 道理で、『マップ』で魔物の反応があるのにも関わらず、目には木しか見えないわけです。

 木それ自体が、魔物だったのですね。


 全部の木がトレントではないところも、曲者です。

 普通の木があると、ついつい油断してしまいますからね。


 僕も、『マップ』と『サーチエネミー』の魔法がなかったら、全然気付かずに、低木林に足を踏み入れ、ボコボコにされていたでしょう。


 まぁ、考察は後です。

 とりあえず、目の前のトレントを倒しましょう。

 もう奇襲は凌いだし、そんなに大きな魔物ではないから、そこまで怖くありません。

 手早く、片付けたいと思います。


 では、参りましょう!






名前 :シータ

種族 :ハイエルフ

年齢 :21

レベル:8(+1)

クラス:冒険者LV.2(+1) 操蛇者LV.2(+1)


生命力:357(160+10)【+17】【+170】

魔力 :0

精神 :42(19+1)【+2】【+20】

敏捷 :50(22+2)【+2】【+24】

幸運 :25(10+1)【+1】【+11】

攻撃力:29(13+1)【+1】【+14】

防御力:29(13+1)【+1】【+14】


スキル

自動治癒

身体強化

劣悪環境耐性

全ダメージ軽減

全状態異常耐性




 レベルアップです!

 なんか続けて上がった気がしますが、その前はヨツデグマを倒した際に上がったので、そのときの経験値が残っていたのかもしれませんね。


 職業(クラス)の影響でステータスが倍くらい違うせいか、ちょっと身体が慣れずに序盤は苦戦しましたが、それも次第に慣れると、トレントはただの雑魚でした。


 まぁ、動く木というだけですからね。

 動きも鈍いですし、『マギマテリアライズアームズ』の魔法で魔力の斧を作り出したら、あとは普通に伐採するだけでした。

 今後気を付けるとしたら、状態異常魔法はほぼ効果がない──特に精神に異常をもたらすもの──ので、それを使わないようにすることくらいですかね。


 周辺の被害を考えないならば火を放つのですが……攻撃魔法が使えないので、考えても仕方ないですね。


 ……いや、待てよ。

 大量の油を用意すれば、できなくはないか……。

 〈道具〉の中なら、重さや保存方法のことを考えなくても良いわけだし、調理にも使えるのだから、無駄にはならないだろうし。

 うん。

 次回から用意しておきましょう。

 できたら、火炎瓶でも作製しますか。


 僕の弱点は、広範囲に攻撃する手段に乏しいことです。

 1対1ならそうそう負けないと思います。

 けど、1対多数だと弱い相手なら良いですが、そうでないと倒しきれずにじり貧になって苦戦してしまい、そのうちに、体力気力が尽きて殺られる怖れがあります。

 なんとか対処法を考えておかないと、いずれ詰むかもしれません。


 ふぅ……。

 なかなか前途多難なことです。


「ぴゅぴゅぴゅぴゅー!」


 勝利の喜びに踊りまくっているマシロを見ながら、僕は溜息を吐かずにはいられませんでした。






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