39
午前11時になりました。
サクサクと山を登り続けて、何事もなく中腹付近まで到着しました。
大抵の魔物は山を下りていたため、邪魔されることがなかったのが、功を奏したのだと思います。
『マップ』で確認した限りでは、たまーに離れたところに魔物の反応があったのですが、近寄ってくることがなかったので、無視しました。
離れるものは追わず、近寄るものは撃退する、ということを考えていた結果ですね。
慣れない山歩きだったので苦労するかと思いましたが、意外に歩けました。
これがエルフの特性なのか、あるいは『身体強化』のお陰なのか、もしくは、新しく得たスキルである『劣悪環境耐性』のせいかな、とも考えられましたが、答えはわかりません。
楽だったのは確かなので、良かったのだろうとは思いましたが。
検証とかできないし。
そんなこんなで、休憩をしています。
体力的には問題ないのですが、ここから先に気になることがあるので、調査しがてら、昼食がてらの休憩です。
──『ホークアイ』──
──『スクリーンショット』──
この『ホークアイ』という魔法は、周辺の光景を鳥瞰図で見ることができるのです。
さらに、『スクリーンショット』という写真を撮る魔法と組み合わせることで、その使い勝手の良さは劇的に上がりました。
欠点は、1枚撮ったら1分程度で消えてしまうので、保存できないというところでしょうか。
なんとか戦闘に利用できないかな、と考えましたが、すぐに諦めました。
……偵察にはベストなので、構わないですけど。
進む先に『マップ』で魔物の反応が多数あったので、確認していますが、見た限りでは何もなさそうです。
まだそこまで高い標高ではないから、低木の林があるくらいです。
魔物が隠れているようには思えないですけど……。
んー?
なんだろう……地面に潜っているのかな?
「ぴゅ?」
以前に倒した狼の魔物の一部を丸呑みしながら、悩んでいる僕を見て、マシロが首を傾げました。
なんでもない、というふうに首を横に振って、マシロの頭を撫でます。
気温が低くなりつつあるので、マシロの身体が少し冷たいですけど、この子にも僕と同じ『劣悪環境耐性』のスキルがあるので、寒さの影響はほとんどなさそうです。
もっと寒くなったらどうなるかわかりませんけど……。
「ぴゅぴゅっ!」
さあ行こう、というマシロの声に頷き返し、僕は歩き始めます。
魔物の反応は気になりますが、先に進まないということはないので、仕方ありません。
警戒心を途切れさせないように、気を付けて行くとしましょうか!
低木の木々が立ち並ぶ一帯にやって来ました。
そこまで密集していないので通ることは可能でしょうけど、走ったりするには枝が邪魔ですね。
葉は少ないですけど、落ちているわけでもないので、枯れたか、そういう種類の木なのでしょう。
相変わらず魔物の反応はこの辺りにあるのですが、目に見える範囲でおかしなものはありません。
地中かと思って目を凝らしますが、そんな様子もないです。
……なんですかね、これ?
無視して進むのも気が進まないですし……。
──『プロテクト』──
──『フィジカルアップ』──
──『シャープエッジ』──
──『マギマテリアライズアームズ』──
──『マリオネットアーム』──
──『フロートシールド』──
支援魔法6点セットを掛けます。
こうしてボンヤリと眺めていても仕方ないので、先に進みましょう。
『マップ』で見ながら反応のある地点に、じりじりと近寄ります。
うーん……。
こうしてみると、木と反応が一致している。
もしかして、木の中に隠れている?
突然の奇襲にも対応できるように、ゆっくりと近付き──
「っ!?」
1本の枝が鞭のようにしなり、襲い掛かってきました!
慌てて回避すると、別の木の枝が攻撃してきます。
マズイ!?
『フロートシールド』によって浮かぶ魔力の盾が僕の前に到達し、枝の攻撃を受けました。
バチッ、と鋭い音がしましたが、魔力の盾が壊れるほどの威力はなかったようで、2度、3度と受けても盾はびくともしません。
その間に、僕は『マリオネットアーム』で大剣を操り、動く枝の根本を切り落としました。
ぐぉぉん、と呻き声のような、変な反響する音が聞こえます。
周囲を見回すと、しゅるしゅると枝を腕のように動かし、根を地面から引き抜き足のように動かして移動する、何本もの木がいました。
これは……トレント、というヤツでしょうか?
ゲームならそこそこ定番の魔物です。
なるほど……。
道理で、『マップ』で魔物の反応があるのにも関わらず、目には木しか見えないわけです。
木それ自体が、魔物だったのですね。
全部の木がトレントではないところも、曲者です。
普通の木があると、ついつい油断してしまいますからね。
僕も、『マップ』と『サーチエネミー』の魔法がなかったら、全然気付かずに、低木林に足を踏み入れ、ボコボコにされていたでしょう。
まぁ、考察は後です。
とりあえず、目の前のトレントを倒しましょう。
もう奇襲は凌いだし、そんなに大きな魔物ではないから、そこまで怖くありません。
手早く、片付けたいと思います。
では、参りましょう!
名前 :シータ
種族 :ハイエルフ
年齢 :21
レベル:8(+1)
クラス:冒険者LV.2(+1) 操蛇者LV.2(+1)
生命力:357(160+10)【+17】【+170】
魔力 :0
精神 :42(19+1)【+2】【+20】
敏捷 :50(22+2)【+2】【+24】
幸運 :25(10+1)【+1】【+11】
攻撃力:29(13+1)【+1】【+14】
防御力:29(13+1)【+1】【+14】
スキル
自動治癒
身体強化
劣悪環境耐性
全ダメージ軽減
全状態異常耐性
レベルアップです!
なんか続けて上がった気がしますが、その前はヨツデグマを倒した際に上がったので、そのときの経験値が残っていたのかもしれませんね。
職業の影響でステータスが倍くらい違うせいか、ちょっと身体が慣れずに序盤は苦戦しましたが、それも次第に慣れると、トレントはただの雑魚でした。
まぁ、動く木というだけですからね。
動きも鈍いですし、『マギマテリアライズアームズ』の魔法で魔力の斧を作り出したら、あとは普通に伐採するだけでした。
今後気を付けるとしたら、状態異常魔法はほぼ効果がない──特に精神に異常をもたらすもの──ので、それを使わないようにすることくらいですかね。
周辺の被害を考えないならば火を放つのですが……攻撃魔法が使えないので、考えても仕方ないですね。
……いや、待てよ。
大量の油を用意すれば、できなくはないか……。
〈道具〉の中なら、重さや保存方法のことを考えなくても良いわけだし、調理にも使えるのだから、無駄にはならないだろうし。
うん。
次回から用意しておきましょう。
できたら、火炎瓶でも作製しますか。
僕の弱点は、広範囲に攻撃する手段に乏しいことです。
1対1ならそうそう負けないと思います。
けど、1対多数だと弱い相手なら良いですが、そうでないと倒しきれずにじり貧になって苦戦してしまい、そのうちに、体力気力が尽きて殺られる怖れがあります。
なんとか対処法を考えておかないと、いずれ詰むかもしれません。
ふぅ……。
なかなか前途多難なことです。
「ぴゅぴゅぴゅぴゅー!」
勝利の喜びに踊りまくっているマシロを見ながら、僕は溜息を吐かずにはいられませんでした。




