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朝……というか、まだ暗い未明の時間に、宿の従業員の方に起こされました。
まぁ、頼んだのは自分なので、文句を言うことではないですけど、まだまだ寝足りないです。
早目に寝たんですけどね。
日が昇りきってないから、身体がよくわかってないのでしょう。
しばらくすれば、シャッキリする……はず、たぶん。
──『ドレスチェンジ』──
着替えの魔法で、簡単に身支度を整え、部屋を出ます。
……また寝ているマシロも、連れていきます。
可哀想ですが、この子がいないと、僕は生き残れないので、心を鬼にして、無理矢理起こしました。
「ぴゅっ?」
若干寝呆けていますが、そのうちに目を覚ますよね?
不思議な踊りをするマシロを横目に、宿を出ました。
昨晩のうちに朝食を頼むのを忘れてしまい、あまりにも朝が早いので、何の準備もしていないと言われたので、朝食は後にします。
ギルドに着いたら、昨日買った〈道具〉の中にある食べ物を食べましょう。
「ぴゅ〜」
寒いよぅ、とマシロが鳴きますが、我慢してください。
モゾモゾと外套の中に潜り込むのですが、あまり効果はなさそうですね。
急いでギルドまで行きますからね!
冒険者ギルドに到着すると、暖かい空気が僕たちを包みました。
見ると暖炉があったので、そそくさと近寄ります。
受付に職員の方が1人いたので、ギルドマスターさんの呼び出しをお願いしました。
「ぴゅ〜……」
やたらと弛緩した声を出すマシロですが、これから行く山は、きっともっと寒いと思います。
何らかの対策が必要かもですね。
〈道具〉から買ってあったサンドイッチを取り出し、食べ始めます。
マシロにも食べさせますが、恐らくこの子には足りないでしょうから、後で残してある魔物の肉を用意しましょう。
そろそろなくなりそうだから、確保しなくてはなりませんね。
〈道具〉の中に入れておくと、時間が経過しないようで、冷めたり腐ったりすることがないようです。
実験はしてあるので、確かです。
大変ありがたいのですが、原理がなんなのかわからず、少々怖いですね──まぁ、魔法の一種だと思いますが。
その劣化版である(と思われる)アイテムボックス、もしくはアイテムポーチは、中の物が時間の経過によって変化してしまうので、忘れてしまうと中身が大変なことになると、昨晩ヴィッキーさんが笑い話として聞かせてくれました。
なんてことを考えながらお茶を啜っていると、ギルドマスターさんがやって来ました。
「おはようございます」
「ああ、朝早くからすまんな。
早速だが、裏に行って荷物を受け取ってくれ。
……っと、忘れてた。冒険者として登録をしてくれ。
でないと、仕事の依頼とならないんでな……手数を掛けるが、よろしく頼む」
ん?
「え? なんで?」
しまった! 思わずタメ口になってしまいましたよ。
尤も、ギルドマスターさんは特に気にする様子もなかったですが。
「あ? 今、言っただろうが。依頼できないからだよ。
……ああ、そうか。なんで、貴様が登録をしてないかわかったか、ということか?
それなら簡単だ。
俺様がギルドマスターだからだ!」
胸を張ってドヤ顔をするギルドマスターさんですけど……それ、答えになってないですよ。
まぁ、答える気がないんでしょうけど……。
「わざわざこんなクソ早い時間を指定したのは、そのためだ。
さっさと済ませて、出発しろよ」
…………。
これ、僕は怒っても良いところではないでしょうか?
……ムダっぽいなぁ。
「いや、なんかワケアリなんだろ?
だったら、人の少ない時間の方が良いと思ったんだが……マズイのか?」
むぅ……?
何故、急にデレた……?
いや、デレとはなんか違うのだけど、そんな気遣いのするようなキャラには見えなかったのに……。
僕の人を見る目は、当てにはならないみたいです。
「ほれ。俺様が特別に手続きしてやるから、こっちに来い」
ふむ。
あまり僕がエルフであることは、バレてほしくない。
だから、既に知られているギルドマスターさんに登録手続きをしてもらえるなら、持って来いではありますね……。
「では、お願いいたします」
「おう!」
ギルドマスターさんは、デカイ身体を無理矢理に受付カウンターに収め、何やら作業を始めました。
「この石板に手を載せろ……ああ、掌を下に向けるんだ」
鎧の籠手を外してから言われた通りにしますと、石板がピカリと光ります。
……その光がギルドマスターさんの頭に反射したのを見てしまい、必死に笑いを堪えていたのは、僕だけの秘密です。
「よし。登録完了だ!
このカードを常に持っていろ。
使い方は……知っているヤツに聞け、貴様のツレとかにな。
ギルドのルール……も、同じようにしろ。
今、説明するのは面倒……げふん、時間がもったいない」
面倒って言った!
……まぁ、良いけど。確かに時間がもったいないので、あとで暇なときに、ヴィッキーさんに聞きましょう。
「あ、そうだ。職業って、どうしたら良いですか?」
忘れてました。
なんかそういうのもありましたよね?
ゲームみたいだと思った記憶がありますよ。
「ああ、そうか、面倒くせぇな……」
……ハッキリと面倒臭いと言いましたよ、この人。
これで良いのか、ギルドマスター?
「えーと、どうすんだっけな?
おっとっと、間違えた、これじゃない、こっちだった!
おし!
今度は、この紙に手を載せろ」
そう言って出された紙には、幾何学的な模様がびっしりと描かれていました。
……正直言って、不安しかありませんけど。
「どうした? 早くしろ」
むぅ。
仕方ない、覚悟を決めて、エイヤッと!
触った感じは、ザラリとした感触で羊皮紙のような紙でした。
すると、描かれていた模様がザワッと蠢き、僕の手を這い始めます。
キモッ!?
ブツブツと全身に鳥肌が立ったのがわかりました。
咄嗟に手を引こうとしましたが、全く動けません。
蠢く模様は僕の腕に集まり、紙に描かれていたのと同じ模様が浮かび上がり、瞬く間に消えました。
「終わりだ。もう良いぞ」
と、ギルドマスターさんの声に我に返った僕は、慌てて手を確認しましたが、特に異常は感じられません。
……なんだったの、今のは?
あれで職業取得しているの?
「確認してみろ」
言われて、持っていたギルドカードを見てみます。
名前 :シータ
種族 :ハイエルフ
年齢 :21
レベル:7
クラス:冒険者LV.1 操蛇者LV.1
はて?
これはどういうこと?




