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 そんなわけで、冒険者ギルドから出て宿屋に戻ると、アナスタシアさんとヴィッキーさんに、かくがくしかじかと報告しました。


「んー……?

 面倒なことになったわぁ……」


 アナスタシアさんは溜息を吐きました。

 ……相変わらず、色っぽいですね。


「そうね……。

 山に異変か……。ギルドはその原因を、魔物だと思っているのかしら?」


 ヴィッキーさんは腕組みをしながら、首を傾げます。

 この人も胸が大きいので、そんなポーズをすると、谷間が強調されてしまっています。

 特に今は、室内だということでラフな格好をしているから、尚更でした。

 ……護衛さんの目が奪われてしまっているので、足を蹴っておきましょう。


「どうやらそうらしいです。

 まぁ、尤も他に原因があるかもですけど、いずれにせよ、確認のために山に入らなければならないことに違いないわけで。

 一応は、魔物を想定しているようです」


「もし、魔物がいなかった場合、どうなるのぉ……?

 国境の封鎖は解かれず、そのままかしらぁ……?」


「そうです。

 けど、その際でも、僕らは通してくれるらしいです、特別に」


「本当かしらぁ……?」


「うーん? でも、疑いだしたら、キリがないと思います」


「それもそうね……。

 それで、シータちゃんはどうするつもりなのぉ……?」


 ひたと僕の目を見て、アナスタシアさんはそう聞いてきました。


 どうするか?

 戻るまでの間、いろいろ考えましたが、答えはもう出ています。


「行きたくないですけど……行きます。

 このまま何もしないで待っていても、悪くなることはあっても、良くなることはないですからね。

 じっとしていたとしても、精神衛生上、イヤですし」


 もしかしたら、誰かが何とかしてくれるのかもしれない。

 でも、何ともならないかもしれない。

 さらにもっと悪くなるかもしれない。


「話によると、あまりにも事態が悪くなると、エルフがやって来るかもしれないようです。

 そうなると、僕が家出しているのがバレてしまう。

 それはちょっと、困ります」


 こうは言いましたが、恐らくバレることはないでしょう。

 住んでいた家に火を放って死んだフリをした上に、性別まで変わっているのですから。

 でも、近くにエルフがやって来ることがあれば、どうなるかわかりません。

 僕の知らない魔術での判別方法があるかもですし。


 君子危うきに近寄らず、です。


 知らないうちに近付くことはあるかもしれないけど、今回のようなパターンなら、さっさと離れることを選びましょう。


「うん。

 シータちゃんが決めたなら、それで良いわぁ……」


「ごめんなさい、護衛として雇われているのに……」


「構わないわぁ……。

 考えようによっては、これも護衛の一貫と言えなくもないかしらぁ……」


 ずいぶんな拡大解釈だけど、そうかもしれない。

 この町に滞在していることが危険だから、その原因を突き止め解明するのは、護衛の役割といえる……かなぁ?

 まぁ、アナスタシアさんに今のところ、危険はないですし。

 ここに僕が残っていても、できることは少ない。

 なら、できることをやろうか。


「あたしも行くわ!」


 ヴィッキーさんが手をあげますが……。


「それはダメよぉ……」


 アナスタシアさんは即座に却下しました。

 それはそうですよね。


「魔物が多くなっているみたいだし、何かあるかわからないから、ヴィッキーちゃんにはいてもらわないと困るわぁ……」


 護衛さんもいますけど、同性であるヴィッキーさんがいるのといないのとでは、大きな違いがあります。


「それなら、冒険者を新しく雇うとか……」


「この状況で、手の空いた冒険者はいないと思います」


 外の魔物を狩ったり、町の警備をしたり、さらに、町から出ていく人達がいるから、その護衛に冒険者が駆り出されるのではないでしょうか?

 国境は越えるトンネルは封鎖されていても、町から出るだけなら、特に制限はないですからね。


「うー。

 まさかとは思うけど、山に入るのは、シータだけなんてことないでしょうね?」


「いくらなんでも、そんなことはないでしょうね。

 僕は山に関しては素人ですし」


「なら、どうして、あなたが行くのよ?」


「んー。

 たまたま町にやって来たエルフが、この異変の解決に乗り出した、という形にしたいのでは?

 そうすることで、住民の不安を解消しようという魂胆なのかと。

 どうやらこの辺りでは、エルフの存在は大きいみたいですし……」


 ギルドマスターは、そんなことを言っていたような。


「むぅむぅむぅ!」


 ヴィッキーさんは頬を膨らまして不満を表現しています……子供か?


「ぴゅっぴゅっぴゅっ!」


 マシロも同じように頬を膨らましていますけど……なんだろう、このカワイイ生き物は?


 マシロの頭を撫でてから、僕は立ち上がりました。


「またギルドに行って、返事をしてきます。

 ついでに買い物をしてくるので、あとはお願いします」


「気を付けて……」


 手を振るアナスタシアさんに黙礼して、宿の部屋を出て、冒険者ギルドに向かうことにしました。






 冒険者ギルドで、ギルドマスターに依頼を受ける旨を伝え、軽い打ち合わせをしてから、出てきました。

 これから、必要そうなものを買おうかと思っていますが、大体のものはギルドが用意してくれるそうなので、それらは明日受け取る予定です。

 なので、それ以外の生活必需品を買い揃えたいと思います。


 どこに何が売られているかは、既に受付のお姉さんから聞いてあります。

 時間も遅くなってきたので、サクサクと済ませて、宿屋に戻りましょう。


 買い物を終えて宿屋に戻ると、まだヴィッキーさんは不機嫌そうでしたが、冒険者としていろいろとレクチャーをしてくれました。

 夕食の際の四方山話としてなかなか楽しい話題でしたけど、失敗談のときには、アナスタシアさんが眉を寄せています。


 身内として心配なんだな、とほっこりしましたが、次第に酔っ払い始めると、説教が開始され、お互い喧嘩腰になってきました。

 叔母と姪の関係というよりは、姉妹みたいに見えるので、見ていて微笑ましいです。


 熱くなってきたのか服を脱ぎ始めるようになるまでは傍観していましたが、それ以上はさすがにマズイと止めて、部屋に戻しました。

 ちょっと残念そうにしている護衛さんにグーパンをボディに入れて、悶絶している彼を横目に、もう寝ることにします。


 明日は朝早くから、山登りに行きます。

 それでは、おやすみなさい。






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