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名前 :シータ
種族 :ハイエルフ
レベル:7(+1)
生命力:160(+10)
魔力 :0
精神 :19(+1)
敏捷 :22(+2)
幸運 :10(+1)
攻撃力:13(+1)
防御力:13(+1)
レベルアップです。
まぁ、あんな大物を倒したのですから、むべなるかな、ですね。
しかし、よくわからないのが、そんな大物と戦うだなんて、僕もよくやったものです。
戦う前にも思いましたが、恐怖心はどこにいったのでしょうね?
こんな異世界に送り込んだ管理人さんが、何かしたのでしょうか?
……あり得そうですね。
そうだとしたら……ありがたいとこではあります。
恐怖で身体が動かせなくなったせいで、なにもできずに死んでしまう、なんてちょっとイヤですからね。
尤も、蛮勇というのも、どうかとは思いますけど。
ただ、今もそうでしたが、あの状況で怖がりもせずに立ち向かうのは、同行者がいるときは止めた方が良いですかね?
いらぬ心配をかけさせてしまいました。
少し、気を付けた方が良いかも。
……自殺志願者には見られたくないですからね。
ああ、そういえば、この身体の元の持ち主であったエルフのイー君は、自殺したがっていたんだった。
だとしたら、今の僕にその影響があってもおかしくないかも?
…………。
いずれにせよ、想像に過ぎないし、答えは出ないでしょうから、この件はこれで終わりにします。
強そうな魔物がいても戦闘に怖がらずにいられる、ということがわかっただけで十分です。
それはさておき。
少々のゴタゴタがありましたが、馬車は無事に国境の町に到着しました。
高く聳える連峰の麓にあります。
この辺りは、山のすぐ側だけあって、少し寒いみたいです。
僕は魔法のお陰で、外気の影響はほとんどないのでわかりませんけど、アナスタシアさんは馬車の中にいるのに外套を羽織っているほどですから。
……いや、これでも、車内の空気を魔法で調節しているんですけどね。
「冷え性なのよぉ……」
女の人は、大変ですね……。
「ぴゅ〜」
マシロも蛇だけあって寒そうにはしていますが、もふもふの毛があるだけマシみたいです。
……なんなら、アナスタシアさんに巻き付いた方が良いんじゃないかな?
「マシロちゃん、こっち来て……」
「ぴゅぴゅっ!」
合点、と言わんばかりに、マシロはアナスタシアさんに飛び付いていきました。
2人(1人と1匹)は、お互いに暖め合おうと抱き付いていますけど……美女が蛇に巻き付かれている図は、見ていてエロいですね。
特に、外套を纏っているから、その隙間からチラチラと見える身体がもう……。
心の中に、永久に保存しておきましょう。
そして、他の男には絶対に見せません。
僕だけの特権ということで。
……こほん。
あ、どうやら、宿屋に着いたみたいです。
さあ、降りますよ、マシロ、アナスタシアさん?
一夜明けて、さて、国境を超えますか、というところで、問題が発生しました。
出国のための諸々の手続きを済ませるために、朝イチで出掛けていた護衛さんが戻ってくるなり、
「どうやら、山の様子がおかしいようで……しばらく出られないようです」
と、溜息とともに言いました。
「どういうこと?」
朝食を食べ終わり、ずずず、とお茶を啜ってきたヴィッキーさんが聞きました。
足止めに一番困るのは彼女なので、特に気になるのでしょう。
「わからん。
山から魔物が下りてきていて、対応に困っているらしい。
ヨツデグマを見たヤツもいて、大騒ぎしている」
クマなら倒しましたよ。
「ああ、役人にその事を伝えたら、英雄のような目で見られた。
あとで、回収をした死骸を持ってくれば、報奨金その他諸々が出るそうだ。
……問題はそれだけでなくて、もっと大量の魔物が下りてきていることだ」
んー?
何が問題なんです?
冒険者にとって、儲け時では?
「山から下りて来るってことは、それだけのことがあるってことだ。
例えば……強力な魔物が現れたから逃げてきた、とかな」
ふむ。
でも、もしそうなら、ここに留め置く方が問題なのでは?
逃げてもらった方が良いと思いますけど?
「ああ、町から出るだけなら問題はない。
ただ、国境を越えるのが止められている」
国際問題になるかもしれんからな、と、護衛さんは続けます。
確かに、もし仮に強力な魔物が現れたとして、それがただ山を越えて行くのと、町を経由して国境を超えるのでは、大きな違いですからね。
それなら、国境を越えるためのトンネルを封鎖してしまおうというのは、考えとしてはアリですかね。
「いつまでなのかしらぁ……?」
「わかりません。
が、恐らくしばらくは無理でしょうな」
アナスタシアさんの問いに、護衛さんは首を振りました。
少し目を閉じて考えていた彼女は、しかし良い考えが浮かばなかったようで、
「少し様子を見ましょう……」
そう言うしかありませんでした。
話し合いが済みましたが、どうすることもできずに待機するしかないので、僕は少し町を歩くことにしました。
何かあるかわからないので、護衛さんも一緒です。
目的は、冒険者ギルドに行くことと、町の様子を見ることです。
冒険者ギルドには、ヨツデグマを倒したことを報告するのと、素材を売るために行きます。
お金が欲しいのと、何らかの情報が得られないかと思っているのですが、どうでしょうね?
「ここだ」
そう言って、護衛さんは一軒の建物を指し示します。
2階建ての普通の建物に見えます。
かなり屋根が傾斜していますが、この辺りは雪が多いそうなので、そのためでしょう。
ギィと扉を開けて、中に入りました。
ザワザワと慌ただしい様子が見えますけど、まぁ、それも当然ですよね。
町の外は、多数の魔物が彷徨いているのですから。
彼らにとっては、魔物がお金に見えているのかもしれませんね。
僕と護衛さんは、そんな冒険者たちの間を縫って、受付のあるところまで向かいます。
ちなみに、交渉などは全て護衛さんにお任せしています。
僕は冒険者ではないので、得られる金額が目減りするからです。
ただ、護衛さん一人の成果にはしないそうです。
彼は現在、アナスタシアさんの護衛という依頼を請け負っているので、その一貫である、というようにするとのことです。
これなら、護衛を受けている面々で魔物を倒した、ということになり、その功績は皆のものになります。
それらの功績は、護衛の依頼を終えたときに一括した後に分けられるということになり、今この場にいないヴィッキーさんと、まだ冒険者として登録していない僕も、後々にそれらを受け取ることが可能なので、そうした方がお得らしいです。
ならば、ヨツデグマ討伐の報告も後ですれば良いのでは、と思ったのですが、今の状況でヨツデグマを倒したことを黙っていると、事態の解決に冒険者たちが無駄足を踏みかねないということで、報告だけはすることにしたのでした。
「……ということで、ここに来る途中でヨツデグマを倒したのだが」
「本当ですか!?」
護衛さんの報告に、受付の女性(40代の美人さん)が大声を出しました。
その声がとても響いたので、ギルド内の喧騒が静まりました。
そして、僕たちに注目が集まります。
……うーん、恥ずかしいです。
まぁ、もっと恥ずかしいのは、大声を出した受付のお姉さんなんでしょうけど……。
ただ、すぐに平常心を取り戻したのは、さすがです。
僅かに頬が赤いですけども。
「どこにあります?
まさか死骸は放置してある、とか言いませんよね?」
「もちろんだ。仲間が『アイテムボックス』を使える。
すぐに出せるが、ここはダメだろう? どこに行けば良いんだ?」
「では、こちらに……」
席を立ったお姉さんに付いていきます。
じろじろと無遠慮にこちらを見遣る視線が感じられますけど、無視しました。
「ところで、国境のトンネルが封鎖されているが、原因は何だとギルドは考えているんだ?」
歩いている受付のお姉さんに、護衛さんが聞きます。
「えーと、今のところはまだ何とも……」
「それでも何か予想はあるだろう?」
「うーん、強い魔物が出たんじゃないか……とは言われています。
確かではないですけど。
そのせいで、ヨツデグマまで麓に下りてきたんで、よっぽどの魔物なんじゃないかと、みんな戦々恐々としてます」
「やはりか」
「繰り返しますけど、魔物だという確証はないので、言い触らさないでくださいね」
「もちろんだ」
などと話していると、そこそこ広い部屋に案内されました。
聞くと、ここで魔物の解体をしているそうです。
確かに、数人の人が魔物を捌いていて、なかなかの光景です。
……ちょっと酸っぱいものが込み上げてきたのは、内緒です。
「では、こちらにお願いします」
お姉さんがそう言うので、僕は〈道具〉からヨツデグマの死骸を出しました。
ズン、と軽い地響きがするほどの重量です。
……こんなものを収納しているけど、どこに仕舞われているのかな?
そんなどうでも良いことを考えていたとき──
バンッ!
「ヨツデグマを倒したヤツがおるというのは、本当かぁっ!!!」
あまりの大声に、身体がびっくぅと震えました。
何事が? と振り向くと、部屋の出入り口の扉がぶらんと壊れているのがまず目に入り、次に見えたのは──
「貴様らかぁっ!!?」
身長が2mはあろうかという、ごっつい筋肉に覆われた、こちらを睨み付けているハゲとヒゲのおじいさんでした。
……誰?




