30
護衛さんに、同じ部屋に泊まることを許可されませんでした。
誤解というか、僕が女の子ではないことを必死に説明しましたが、結局最後まで納得してくれなかったからです。
鎧と服を脱いで全裸になろうとしたら、全力で止められましたし。
最終的に部屋から追い出された僕は、1階の受付に戻り、部屋が空いてないか交渉することにしました。
お金は……借金するから!
「申し訳ありませんが、満室です」
orz。
くっ……ならば、古き良き伝統の宿泊方法──馬小屋はどうですか!?
「申し訳ありませんが、満室です」
……いくらなんでもそれは嘘でしょう?
まぁ、断る際の常套句ではありますが……。
そもそも、こんな高級な宿屋では、馬小屋に客を泊めるとか、あり得ませんですかね。
「何しているの……?」
「ぴゅ〜……」
ガックリしているところを、降りてきたヴィッキーさんに捕まって、ドナドナされました。
5階のVIP専用スイートルームに連れ戻されると、そこにはアナスタシアさんはもちろん、護衛さんもいました。
どうやら、僕を部屋から叩き出したあと、こちらにやって来て、事情を説明したようです。
それを聞いたヴィッキーさんが、僕を連れに階下に降りてきたのですね。
「で、シータは本当に男の子なの?」
……ヴィッキーさん、そこまで疑いの目で見ますか?
いや、アナスタシアさんと護衛さんの目もそう言っています。
目は口ほどにものを言う、とはよくいったものです。
今、初めてそれを実感しましたからね!
というわけで、信じてもらうべく脱いで──
「やめなさい」
「ぴゅっ!」
はい、すみませんでした。
即、土下座します。
ちなみに、全身鎧は既に外しています。
『ドレスチェンジ』という魔法を使うと、着脱が簡単にできるのです。
そして脱いだ鎧は〈道具〉に収納すれば、あら不思議、ゲームの如く一瞬で変身シーンが完了しちゃいました。
これは、鎧だけでなく、衣類でも利用できるので、着替えがとても楽になるのです。
「んー。
他に確認できる方法はないかしらぁ……」
ということで、僕の喉仏を触ってもらうことになりました。
実は、見た目にはわかりにくい僕の喉仏ですが、触るとあるのがちゃんとわかります。
これをもって、僕が男であるのが実証されることでしょう。
「え? これがそうなの?
わかりにくいわ……」
…………。
イマイチ反応が薄いですね。
やっぱりキャストオフしないと──
「だから、やめなさ『ううん、脱いじゃって』い……って、はぁ!? 叔母様、何言ってるんですか!?」
「だって、埒があかないもの、このままじゃ……。
そんなに脱ぎたいなら、そうしてもらった方が早いわぁ……」
……いや、そんなに脱ぎたいわけではないですけど……。
しまった、ヴィッキーさんをからかうために言っていたのに、これでは僕が露出狂の汚名を着せられる!
そんなわけで、魔法を利用した早着替えをして、護衛さんだけに見せましょう。
さすがに、本当に淑女のヴィッキーさんたちの前で全裸になるわけにはいきませんからね。
では、参ります!
はっ!
──『ドレスチェンジ』──
とうっ!
しゅっ、ぱっ、と一瞬で服を脱ぎ着しました。
同性なので、特に恥ずかしくはないです。
その護衛さんは、目をパチクリさせています。
驚いたでしょう、この早着替えの妙技──
「本当に男だった……」
そっちかよ!
さっきからそう言っているでしょうに!
「えー……本当に男の子なんだぁ……」
……何で、残念がるのですか、アナスタシアさん。
それと、ヴィッキーさん。
僕が服を脱いだときに顔を両手でも覆っていましたけど、指の隙間から見ていましたよね?
何故、そんなベタなことをするかな……?
っていうか、後ろからなので、どうせアレは見えないですよね……?
「僕が男だと、わかってもらえましたか?」
「わかったわぁ……」
「良かった。
じゃあ、これで部屋を替えてもらえますね」
「え? 何でぇ……?」
「ぴゅ?」
それこそ、何で?
何で、そんなリアクションなの?
何で、マシロも首を傾げるの?
「だって、部屋は満室で空きはないみたいだし……」
「自分の部屋も一人用なんで、ちょっと……」
ご、護衛さん、そんなこと言わずに、助けてくださいよ。
……何故、ソッと目を逸らす?
「それに、護衛なんだから、この部屋に泊まって、わたしを守ってもらいたいわぁ……」
それは嘘でしょう!
それなら護衛さんも同室にするべきだし!
ニヤニヤしながら言っても、説得力はないですよ!
ヴィッキーさん、なんとか言ってくださいよ!
「うーん、シータなら別に良いかしら……。
あんまり危機感はないかも」
……ナニヲイッテイルノデスカ、ヴィッキーサン?
「そうねぇ、シータちゃん、一緒のベッドに寝る……?
きっと楽しいわよぉ……」
くっ……この人、明らかにからかって楽しんでいますね……。
腕を組んで前屈みになって、胸の谷間を見せつけてきてるし。
ちくしょう……。
男の本能が、そこから目を離させないでいる……!
「ふふん。本当に、男の子なのね……」
「ぴゅぴゅん」
くっ……殺せ!
なんて手段で、確信を得るんだ。この人は!?
そして、何故、マシロまで勝ち誇る……?
「はぁ……。わかりました。
この部屋に泊まりますよ」
他に選択肢はないですからね……。
このリビングのソファーで寝れば、問題ないですかね。
「寝室で寝ても、大丈夫よぉ……」
「僕は護衛ですので、こちらの部屋で警戒しています。
寝室は、ヴィッキーさんにお任せしますので」
護衛だという理由でこの部屋にいさせるなら、僕はその仕事に徹しますから。
「ちっ……仕方ないわね……」
何故、舌打ちするし……?
「んー、でも、野宿していたときでも、シータはそんな目であたしを見てなかったと思うけど……。
だから、女の子だと思っていたわ」
いや、そこはヴィッキーさんも警戒していませんでしたか?
それに、危険な目にあったばかりの女性に、そんな邪な気配は出さないですよ。それくらいは配慮します、僕だって。
「あ、そうなんだ、ありがとう、気を遣ってくれて」
「いえいえ、お気になさらずに」
はふぅ……。
全く……宿屋に泊まるだけで、何でこんな大騒ぎになるんだか……。
「ぴゅっー!」
味方だと思っていたら、意外な伏兵だったよ、マシロ。
もう、あまりからかわないで欲しいものです、いや、本当に……。




