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 護衛さんに、同じ部屋に泊まることを許可されませんでした。

 誤解というか、僕が女の子ではないことを必死に説明しましたが、結局最後まで納得してくれなかったからです。

 鎧と服を脱いで全裸になろうとしたら、全力で止められましたし。


 最終的に部屋から追い出された僕は、1階の受付に戻り、部屋が空いてないか交渉することにしました。

 お金は……借金するから!


「申し訳ありませんが、満室です」


 orz。

 くっ……ならば、古き良き伝統の宿泊方法──馬小屋はどうですか!?


「申し訳ありませんが、満室です」


 ……いくらなんでもそれは嘘でしょう?

 まぁ、断る際の常套句ではありますが……。

 そもそも、こんな高級な宿屋では、馬小屋に客を泊めるとか、あり得ませんですかね。


「何しているの……?」


「ぴゅ〜……」


 ガックリしているところを、降りてきたヴィッキーさんに捕まって、ドナドナされました。


 5階のVIP専用スイートルームに連れ戻されると、そこにはアナスタシアさんはもちろん、護衛さんもいました。


 どうやら、僕を部屋から叩き出したあと、こちらにやって来て、事情を説明したようです。

 それを聞いたヴィッキーさんが、僕を連れに階下に降りてきたのですね。


「で、シータは本当に男の子なの?」


 ……ヴィッキーさん、そこまで疑いの目で見ますか?

 いや、アナスタシアさんと護衛さんの目もそう言っています。

 目は口ほどにものを言う、とはよくいったものです。

 今、初めてそれを実感しましたからね!


 というわけで、信じてもらうべく脱いで──


「やめなさい」


「ぴゅっ!」


 はい、すみませんでした。

 即、土下座します。


 ちなみに、全身鎧は既に外しています。

 『ドレスチェンジ』という魔法を使うと、着脱が簡単にできるのです。

 そして脱いだ鎧は〈道具〉に収納すれば、あら不思議、ゲームの如く一瞬で変身シーンが完了しちゃいました。

 これは、鎧だけでなく、衣類でも利用できるので、着替えがとても楽になるのです。


「んー。

 他に確認できる方法はないかしらぁ……」


 ということで、僕の喉仏を触ってもらうことになりました。

 実は、見た目にはわかりにくい僕の喉仏ですが、触るとあるのがちゃんとわかります。

 これをもって、僕が男であるのが実証されることでしょう。


「え? これがそうなの?

 わかりにくいわ……」


 …………。

 イマイチ反応が薄いですね。

 やっぱりキャストオフしないと──


「だから、やめなさ『ううん、脱いじゃって』い……って、はぁ!? 叔母様、何言ってるんですか!?」


「だって、埒があかないもの、このままじゃ……。

 そんなに脱ぎたいなら、そうしてもらった方が早いわぁ……」


 ……いや、そんなに脱ぎたいわけではないですけど……。

 しまった、ヴィッキーさんをからかうために言っていたのに、これでは僕が露出狂の汚名を着せられる!


 そんなわけで、魔法を利用した早着替えをして、護衛さんだけに見せましょう。

 さすがに、本当に淑女のヴィッキーさんたちの前で全裸になるわけにはいきませんからね。


 では、参ります!

 はっ!


──『ドレスチェンジ』──


 とうっ!


 しゅっ、ぱっ、と一瞬で服を脱ぎ着しました。

 同性なので、特に恥ずかしくはないです。


 その護衛さんは、目をパチクリさせています。

 驚いたでしょう、この早着替えの妙技──


「本当に男だった……」


 そっちかよ!

 さっきからそう言っているでしょうに!


「えー……本当に男の子なんだぁ……」


 ……何で、残念がるのですか、アナスタシアさん。


 それと、ヴィッキーさん。

 僕が服を脱いだときに顔を両手でも覆っていましたけど、指の隙間から見ていましたよね?

 何故、そんなベタなことをするかな……?

 っていうか、後ろからなので、どうせアレは見えないですよね……?


「僕が男だと、わかってもらえましたか?」


「わかったわぁ……」


「良かった。

 じゃあ、これで部屋を替えてもらえますね」


「え? 何でぇ……?」


「ぴゅ?」


 それこそ、何で?

 何で、そんなリアクションなの?

 何で、マシロも首を傾げるの?


「だって、部屋は満室で空きはないみたいだし……」


「自分の部屋も一人用なんで、ちょっと……」


 ご、護衛さん、そんなこと言わずに、助けてくださいよ。

 ……何故、ソッと目を逸らす?


「それに、護衛なんだから、この部屋に泊まって、わたしを守ってもらいたいわぁ……」


 それは嘘でしょう!

 それなら護衛さんも同室にするべきだし!

 ニヤニヤしながら言っても、説得力はないですよ!


 ヴィッキーさん、なんとか言ってくださいよ!


「うーん、シータなら別に良いかしら……。

 あんまり危機感はないかも」


 ……ナニヲイッテイルノデスカ、ヴィッキーサン?


「そうねぇ、シータちゃん、一緒のベッドに寝る……?

 きっと楽しいわよぉ……」


 くっ……この人、明らかにからかって楽しんでいますね……。

 腕を組んで前屈みになって、胸の谷間を見せつけてきてるし。

 ちくしょう……。

 男の本能が、そこから目を離させないでいる……!


「ふふん。本当に、男の子なのね……」


「ぴゅぴゅん」


 くっ……殺せ!

 なんて手段で、確信を得るんだ。この人は!?

 そして、何故、マシロまで勝ち誇る……?


「はぁ……。わかりました。

 この部屋に泊まりますよ」


 他に選択肢はないですからね……。

 このリビングのソファーで寝れば、問題ないですかね。


「寝室で寝ても、大丈夫よぉ……」


「僕は護衛ですので、こちらの部屋で警戒しています。

 寝室は、ヴィッキーさんにお任せしますので」


 護衛だという理由でこの部屋にいさせるなら、僕はその仕事に徹しますから。


「ちっ……仕方ないわね……」


 何故、舌打ちするし……?


「んー、でも、野宿していたときでも、シータはそんな目であたしを見てなかったと思うけど……。

 だから、女の子だと思っていたわ」


 いや、そこはヴィッキーさんも警戒していませんでしたか?

 それに、危険な目にあったばかりの女性に、そんな邪な気配は出さないですよ。それくらいは配慮します、僕だって。


「あ、そうなんだ、ありがとう、気を遣ってくれて」


「いえいえ、お気になさらずに」


 はふぅ……。

 全く……宿屋に泊まるだけで、何でこんな大騒ぎになるんだか……。


「ぴゅっー!」


 味方だと思っていたら、意外な伏兵だったよ、マシロ。

 もう、あまりからかわないで欲しいものです、いや、本当に……。






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