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 え?

 今、何と仰いましたか?


 レベルアップ?

 クラスチェンジ?


「え? それがどうかしたの?」


「……ごめんなさい。

 世間知らずなもので……。

 えっと、良ければ教えていただけると……」


「あー、うん、まぁ、構わないけど……」


 どこか残念な子を見るような目をするヴィッキーさんだけど。

 たぶん、今後もこういうことが多いと思います。

 そのときはよろしくです。


 ……いや、まぁ、言葉の意味とか現象それ自体がなんなのかはわかる。

 さっき、自分の身に起きたから。

 でも、これって、転生者とか転移者のチートだと思ってましたよ。

 だって、それが定番(テンプレ)でしょう?

 ……違うの?


「んー。

 改めて説明を……って言われると、なんか困るなぁ。

 えっと。

 ざっくりと言うと、生物にはレベルがあって、様々な経験を積むと、それが上がる……魔物を倒す、とか。

 普通に生きてたら、成人する頃には、レベル5くらいになっているかな?」


 ん?

 あー、様々な経験っていうのは、日常的な生活の中の行動でも構わないんですね。

 子供の頃ならば、初めてのことをたくさんするから、経験値が多くもらえるとか、そういうことかも。


「それで……もしかして、ステータスもわからない?

 ……そう、じゃあ、説明するわね。

 さっきのレベルもそうだけど、これらは産まれたときに神様から授かる恩寵だとか言われているわ。

 あまり詳しいことはわかってないけど……。

 それで、自分の身体に関することを、数値化されて見ることができるのがステータスなの。

 ただし、見ることができるのは、基本的に自分だけ。

 例外は、そういう見ることができるスキルがあるのだけど、その場合でも数字としては見れないわ。

 えーと、見た方が早いわね」


 そう言って、ヴィッキーさんがポーチから取り出したのは、ちょっと小さめの手帳くらいのサイズのカードでした。


「これは、冒険者ギルドカード。

 ギルドに入るともらえる……身分証みたいなものね。

 様々なデータを確認することが可能なの」


 ヴィッキーさんはカードの表面を軽く触ると、僕にそれを見せてくれました。

 そこには、このように表示されています。




名前 :ヴィクトリア・エマーソン

種族 :人

年齢 :19

レベル:22

クラス:軽剣士LV.19


生命力:■■■

魔力 :■

精神 :■■■

敏捷 :■■■■■

幸運 :■■

攻撃力:■■■■

防御力:■■




「へー。

 ヴィッキーさんは愛称だったんですね、本名はヴィクトリアさんでしたか」


「きゃーっ!?

 隠すの、忘れてた!」


 突然叫んで、僕の手にあったカードを引ったくると、ヴィッキーさんは何やらカードを触り出しました。

 ……えっと。


「……こほん。

 今、見てもらったように、カードの情報は多岐にわたります。

 でも、ステータスは数字ではなかったでしょう?」


 何事もなかったかのように話してますけど、顔が真っ赤ですよ、ヴィクトリアさん。


 カワイイなぁとマシロを見たら、なんと寝ていましたよ。

 道理で静かだと思ってました。


 まぁ、良いでしょう。

 話を進めます。


「確かに、棒グラフみたいになってますね。

 これは……相対的なものなのかな?」


「見せたくないものは、隠すことができるわ……というか、普通は全部見せないのだけど。

 ステータスなんかも、基本的に見せない。

 ギルドのクエストで、依頼人に自分の能力はこうですよ、という感じで証明することが、主な使い道かしら?」


 ふむ。

 なんとなくわかりました。


 ……つか、もうこれって、ゲームですよね!?

 レベルを上げて、ステータスを上昇させていけば良いのですか!?


 なんなの、このシステム?

 こんなのが(まか)り通っているのですか、この異世界は?


 管理人さーん!

 こんなの、聞いてないですよー!


 ……はぁ。

 何て言うのかなぁ。

 自分だけなら、まだわかるんです。

 チートで優遇されている、というか、元一般人なんだから、危険な目に遭わないようにするための非常的な措置、というか。


 でも、それが、誰にでも当たり前にあるというのは、異常に思えるのですよ。

 小説とかなら良くあるのかもしれませんけど、それが自分の身に起きたのが、とても怖いです。

 ……今更、ですけどね。


 むぅ……。

 これは、そういうものだと割り切るしかない……のですけど。

 慣れるまでに、時間がかかるかもですね。


「レベルには、その人のレベルと、職業(クラス)のレベルがあるわ。

 職業は様々な種類があって、ステータスに補正されるから、あるとないとでは、かなり違う。

 レベルが高いと補正値も高くなって、それが上限まで上がっていくと、いずれクラスチェンジできるようになる。

 上級職になれると、もっと補正値が高くなって、スキルもたくさん覚えられるようになるわ」


 うん、いわゆるゲームでいう職業システムですね。

 なんとなくわかります。


 うーみゅ……。

 レベルとかクラスだとか、ここら辺は完全に、ゲームだと思ってやった方が良さそう。

 あまり深く考えると、ダメだと思いました。


「間違えてはいけないのが、レベルが高いからとか、クラスが上級だからとか、そういうのはその人の人格なんかに全く関係ないわ。

 レベルが高いから、クエストを必ずしも成功させるわけじゃない。

 クラスが上級だから、善人というわけじゃない。

 これは、しっかりと覚えておいた方が良いわ。

 他人どうこうではなく、自分のこととして」


 なるほど……。

 自分のレベルが高くても、優れていると思うな、ということですね。

 自戒しましょう。


「ぴゅ〜……」


 む?

 マシロが起きたみたいです。

 ごめんよ、退屈させてしまいました。


「もう少し進んでから、休もう。

 それから、ご飯にしようか」


「ぴゅぴゅぴゅっ!」


「ヴィクトリアさんに任せます」


「やめてぇ。その名前で呼ばないで……」


 両手で顔を覆い隠して恥ずかしがるヴィクトリアさんは、とてもかわいかったのでした。






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