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僕が森の中に足を踏み入れると、周囲の空気が変わりました。
冷たくて、濁っている感じがします。
んー?
確かに、森の中の木々は大きく太い樹ばかりで、葉が生い茂っているため空がほとんど見えない。
けれど、そういう意味での気温の低さとは違う冷たさが、この森にはあるような気がしています。
まぁ、感覚的なものですし、そこまで気にすることもないでしょう。
一応、警戒はしておきますけど。
「ぴゅ?」
木々が大きく根が出ていて歩き難いので、杖か何か欲しいですね。
周囲を見渡しても、枝が落ちてはいないので、自分で何とかするしかないようです。
……ここは魔法の出番、ということで、マシロさん、お願いします。
「ぴゅー!」
──『マギマテリアライズアームズ』──
僕の手に、魔力でできた杖が現れました。
約120cmほどの長さで、シンプルな造りの杖です。
転ばないようにざるするためなので、これで充分。
万が一、危険な獣などが出てきたら、これで叩きます。
周りは樹だらけなので大振りはできませんけど、素人なので適当に振り下ろすか、突くかしかできないから、これくらいで丁度良いでしょう。
食べ物はないけど、そんなにお腹は空いてないので、大丈夫だと思いたいです。
元々、少食ですしね。
ただ、水がないと困ります。
森の中に何かしらありそうですけど、サバイバルの経験など全くないので、よくわかりません。
どうしたものでしょう?
「ぴゅぴゅっ」
ふむ。
魔法で何とかなる、と?
「ぴゅ!」
では、のちほどお願いします。
「ぴゅー!」
うん、便利ですね、魔法。
ならば、森を歩くのに必要そうな魔法をピックアップしましょう。
こんな森の中を、ド素人が何もなく歩いて無事で済むとは思えません。
何かしらあると思うのですが……。
〈魔法〉の一覧の中から探すのは、骨が折れます。
便利そうなのは、とりあえずショートカットできるようにしますかね。
…………。
……。
これかな?
マシロ、お願いします。
「ぴゅぴゅぴゅっ!」
──『サーチエネミー』──
──『アラーム』──
僕の視界の片隅に、先ほど使ってあった『マップ』の魔法によるレーダーがありましたけど、そこに赤い光点が点灯しました。
恐らく、僕にとって危険な相手がいるのでしょう。
これを避けつつ、先に進むことにします。
仮に相手に気付かれても、警報がなるので、万全かと思います。
「……慎重に、行きますよ」
「ぴゅ!」
マシロの力強い返事を聞いて、僕は足を前に出しました。
どれくらい時間が経ったのか、太陽がないのでわかりませんけど、そこそこ歩いて疲れたので、休憩します。
マシロ、水をお願いします。
「ぴゅー」
──『アクアクリエイト』──
僕の目の前に水の塊がふよふよと浮かび上がりました。
……どこからこの水は出てきたのでしょう?
まぁ良いか。
大気中の水分が集まった、とでも思っておけば良いですかね。
僕は気を取り直して、浮いている水に口を付けて飲みました。
……美味しい水です。
疲れているから、というのもあるのでしょうが、これこそ甘露と呼ばれるものなのでしょうね。
マシロも一緒に飲みましょう。
ごくごく。
「ぴゅ」
そういえば、マシロは何を食べるのかな?
そもそも、蛇ってどうなんでしたっけ?
肉食……だった気がするけど、確かじゃないですね。
いや、蛙を丸呑みしていた映像を見た記憶があるから、肉食ですね。
ふむ。
危険な獣から避けていましたけど、敢えて近付いてみるのも考慮した方が良いかもしれません。
もしかしたら、食糧になるかも。
「ぴゅ?」
ここから脱出するのに、どのくらい時間がかかるかわかりません。
ならば、食糧調達も視野に入れないと、肝心なときに空腹で動けなくなるでしょう。
それに、管理人さんは言っていました。
『魔物がいるから、安全ではない世界』と。
ここが、そういう世界なのだとしたら、危険に対処する術を身に付けないと生きていけないかもしれません。
避けてばかりでは、ダメでしょう。
安全な街などに引きこもることも考えられますが、先立つものが必要ですし、余所者がそう簡単に受け入れてもらえるかもわかりません。
ここは、最悪の可能性も考慮に入れておかないとなりません。
──エルフは迫害されている。
そういった創作物に、枚挙に暇はないのです。
そうなると、1ヶ所に留まることはできず、街から街に転々としなくてはなりません。
道中は危険なものとなるでしょう。
それらを避け続けるのは、とても難しいと思います。
なので、ここは覚悟を決めて、戦いましょう。
マシロと2人なら、何とかなるはずです。
いえ、何とかします。
「ぴゅっ!」
マシロもこう言っていますし、やるだけやりましょう。
そのためには、準備が必要です。
まずは、魔法の確認です。
攻撃魔法は使えませんけど、それ以外で使えそうな魔法を探します。
武器は……このまま杖で良いですね。
剣なんか扱えませんし。
防具がない。
『マギマテリアライズアームズ』の魔法は、防具のような複雑なものはできません。
せいぜい盾にするくらいですけど、僕は盾を使えません。
どうしようか……っと、良い魔法がありました。
これはいつでも使えるようにしておきましょう。
回復魔法はいるかな?
僕の身体には、『自動治癒』と『身体強化』の魔術が常時発動しています。
少々の怪我は大丈夫そうですけど……念のために、準備だけはしておきますか。
重ね掛けで効果は倍増するかもしれないですしね。
阻害魔法はどうだろう?
相手の動きが止まったり、そうでなくとも鈍くなるだけでも、かなり違うはず。
状態異常魔法とかも、ないですかね?
麻痺とか、混乱とか。
よし。
戦法としては、こうです。
まずは、相手が単体であるのが、絶対条件ですね。
そこに気付かれないように近付いて、阻害魔法か状態異常魔法を仕掛ける。
動きが悪くなったところを、殴ります。
これで、ミッションコンプリートです。
完璧とは言い難いですけど、こんなものでしょう。
1から10まで全て決めていくと、いざというとき動けなくなるものです。
臨機応変にやるのが、吉なのですよ。
では、休憩を終わらせて、初めての戦闘と参りましょうか。




