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「おっとっと……」
一頻り泣いたあと、ローズマリーさんは気絶するように倒れてしまいました。
僕は慌てて、その身体を支えます。
ふむ?
疲労もあったと思いますが……もしかしたらですけど、空っぽになりつつあった記憶や感情が一気に戻ったので、悪魔を倒したことによる喜怒哀楽やその他諸々がオーバーフローして、その反動で気絶してしまった……のかな?
タラリと冷や汗が流れるのがわかりました。
ちょっと無茶なことをさせちゃいました……かね?
──『メディカルチェック』──
──『キュアオール』──
念のために診断の魔法を使って異常がないことを確認してから、回復魔法を使いました。
……これで大丈夫ですよね?
見たところ、顔色は悪くないですし、呼吸もしっかりしているので、そのうち起きるでしょう、きっと、たぶん、メイビー……。
「あれ?」
「ぴゅ?」
呼吸で上下する胸を見ていたら、違和感を覚えました。
…………?
もしかして、ローズマリーさん……成長している?
さっきまでは11、2歳くらいの小学生に見えていましたが、今は14、5歳くらいの中学生か高校生に見えます。
手足もスラッと伸びているし、身体付きも女性らしく曲線を帯びていて、それまでは繭に包まれていたのが、それを破り羽化しかけているような感じで、穏やかな寝息を立てている彼女からは仄かな大人びた色気が感じられます。
なにが起きた……って、答えはさっきの出来事以外になさそうですよね。
記憶や感情を取り戻したことで、これがローズマリーさん本来の姿となったのでしょうか?
今後、身体が成長していってあの悪魔くらいになるのかはわかりませんけど、まぁ、良かった……のですかね?
とりあえず、特になにかできることはなさそうなので、このまま眠っていてもらいましょう。
さて。
これ以上この場にいても仕方ないし、移動したいですね。
ローズマリーさんをベッドに寝かせたいですし。
あ、ヴィッキーたちを探さなきゃ!
どこにいるかな?
ローズマリーさんなら知っているだろうけど、今は眠っているから……魔法で探してみるか。
──『サーチフレンド』──
仲間を探す魔法なのですが……『マップ』に仲間を示す青い光点が表示されましたが、そこは僕がまだ行ったことがない場所なので、周辺は真っ暗です。
これでは意味がないですね……。
せめて行ったことがあるならば、空間転移魔法で行けるのですが……そういえば、ここだと転移魔法って使えなかったんだっけ?
ん?
でも、ローズマリーさんや悪魔は使ってたよね?
なんでだろう?
ふむ?
疑問に思うよりも、試しに使ってみましょう。
──『ディメンションゲート』──
僕の目の前に次元の扉が開きました。
あー、使えるんですね。
となると……最初に転移魔法が使えなかったのって、悪魔がいたからかな?
阻害していた、とかありそうですし。
ともあれ。使えるようになったのなら、良しとしますかね。
──『ピーピングホール』──
偵察用の魔法で、反対側の様子を確認します。
出口側は、あの謁見の間っぽい場所にしたのですけど……うん、ちゃんとできてますね。
では、行きましょう。
ローズマリーさんをお姫様抱っこで抱えて……と、忘れ物はないかな?
キョロキョロと周囲を見回して──あ、このクリスタルをどうしようか?
……慰謝料変わりにもらっちゃいましょう。
すんごい頑丈だし、なにかに使えそうですしね。
〈道具〉に収納して……これで良し。
改めて、周囲を見回して……うん、大丈夫そうです。
ではでは、行きますよ……と。
僕は扉をくぐると、そこは数時間前に地底湖へと落とされた玉座のある謁見の間です。
……もういろいろありすぎて、10日くらい前の出来事のように思えますけど。
当然ですが、誰もいません──いや、僕たちのゴーレムが破壊されて放置されていました。
なんてことを……。
これをやったであろう悪魔は既に死んでいるので、どこにこの悲しみをぶつけて良いのかわかりません。
はぁ……と、溜息を吐いて、僕は、バラバラの破片になってしまったウィルフレッドを回収しました。
また、シアに新たに作ってもらうしかないかな……?
新生ウィルフレッドに、今後の活躍を期待することにします。
うん。
気を取り直しましょう。
この謁見の間には、正面の出入り口とは別に、奥に小さな扉がありました。
どこにヴィッキーたちがいるのかわからないので、そっちに行ってみます。
でも、このお城って、外から見たときかなりの大きさでしたけど……。
適当に探し回って、見付けられるかな?
なんか、不安になってきました……。
うーん?
ローズマリーさんを起こして、案内してもらった方が良いでしょうか?
でも、よく眠っていますしねぇ……?
どうしたものでしょう?




