表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/193

103

「ふはぁ……。疲れた……」


 僕は大きく息を吐き、声も出してしまいました。

 思わず、地面に座り込みます。


 なんとか無事に悪魔(デーモン)を倒せました。

 全く……糞虫なのに、ここまで駆除に時間をかけさせるとは……地獄に落ちると良いです。

 そして、2度と僕の目の前に出てくるな。




名前 :シータ

種族 :ハイエルフ

年齢 :21

レベル:22(+1)

クラス:冒険者LV.18(+1) 操蛇者LV.16(+1)


生命力:630(290+10)【+30】【+300】

魔力 :0

精神 :69(32+1)【+3】【+33】

敏捷 :105(48+2)【+5】【+50】

幸運 :50(23+1)【+2】【+24】

攻撃力:56(26+1)【+2】【+27】

防御力:56(26+1)【+2】【+27】


スキル:自動治癒 

    身体強化

    劣悪環境耐性

    全ダメージ軽減

    全状態異常耐性

    必中

    投擲

    弓術

    斧術


称号 :フォレストドラゴンの祝福

    悪魔殲滅者(デーモンスレイヤー)(NEW)


装備 :魔鉄の弓矢 魔鉄の鉈 魔鉄の巨剣×2 魔鉄のナイフ

    ミスリルの小盾

    魔鉄の全身鎧

    ミスリルの鎖帷子

    フード付きの外套




 レベルが上がりました。

 立て続けに上がったのは、大物を倒したからでしょうか?

 多少は僕も、強くなりましたかね?


 謎の称号が増えていますが……検証などはあとにします。

 どうせわからないでしょうけど。


 ステータスの確認が終わったので、もう1つ深呼吸をしてから顔を上げました。

 そして、悪魔(デーモン)が死んだ場所にじっと立っているローズマリーさんを見遣ります。


 その顔は、晴れやか──ではなく、全くの無表情です。

 恨みを晴らしたのだから、喜べば良いと思いますが……もしかして?


 僕の視線に気付いたのか、ローズマリーさんはこちらに顔を向けました。


「こうなることを期待して事を起こしたわけだが……妾の心にはなんら変化が起きないのだ。

 嬉しい、とか、満足だ、とか、ざまをみろ、とか……いろいろ考えるのだが、なにもない」


 某アニメのヒロインの有名な台詞である、こんなときどんな顔をしたら良いかわからないの、が脳裏にリフレインしました。

 感情を知らないあのヒロインとは違って、ローズマリーさんは悪魔(デーモン)の力を取り込むために、記憶や感情を捨て去ったのです。

 これでは、笑えば良い、と言っても無駄でしょう。


「まぁ、良い。

 悪魔(デーモン)は滅んだ。

 妾の本懐は遂げたのだ。

 あとはどうでもよい」


 そう言って、無表情のままローズマリーさんは手に持っていた魔鉄の鉈を自分の首に当てて──


「では、世話になった。さらばだ」


「いや、やめてください」


 ──僕は彼女から鉈を奪い取りました。


「なにをする?」


 ローズマリーさんはなにも映していない目を僕に向けて、淡々と言いますけど……普通は目の前で自殺を決行されたら、止めるのですよ。

 あー、それもわからなくなったのか?


「もう妾にはなにもない。

 いや、あの悪魔(デーモン)に対する恨みや憎しみはある。それだけは捨てなかった。捨てられなかった──アレを殺すために。

 だが、それもアレが死んでしまった以上、無用のものなのだ。

 だから、妾にはなにも残っていない」


 ローズマリーさんはふっと僕から目を逸らして、ぽつぽつと呟きました。

 小さかった身体は殊更に小さく見えて、消えてしまいそうです。


 だから僕は──


「諦めたらそこで、終了ですよ?」


 そう言って、僕は超有名なバスケ漫画の名台詞をパクると、ずん、とクリスタルを〈道具〉(アイテム)から取り出しました。

 中にローズマリーさんの成長した姿の、悪魔(デーモン)のスペアが埋まっています。


「記憶や感情なんて、簡単に捨てられるものではないと思います。

 ……いや、あの悪魔(デーモン)がするみたいに、データを消去するようにしたらどうなのかなんてわからないけど。

 でも、わからないからこそ、いろいろ試すべきです」


 僕は記憶や感情は、身体や行動などに同期していると思っています。


 例えば、美味しいものを食べた。でも、そのあとに悲しいことが起きた。そうすると、同じものを食べたときに、美味しくて喜ぶべきなのに、その悲しいことが思い起こされる。

 あるいは、柱の角に足の指をぶつけた。メチャメチャ痛い。その柱に八つ当たりした。それを人に見られ笑われた。さんざんからかわれて恥ずかしい。柱に指をぶつける度に、その恥ずかしさを思い出す。


 などなど、こんなのは一部だけれど、いくらでも実例は挙げられます。


 だから、記憶や感情は、身体や行動、さらに五感が覚えています。

 いくら捨てたくても、捨てられない。

 そういうものだと思います。


「ここに、貴方の身体があります。

 悪魔(デーモン)に造られた身体だけど、それでも貴方の身体です。

 それには、貴方の生きてきた様々な記憶や感情が残っている。

 だから、それを取り戻せば良いです」


 元々、同じものだったのです。

 なんとかなります、きっと。


「ムリだ、そんなことはできない」


 ローズマリーさんは力なく首を振りますけど、そんなことはありません。


「さっきだって、ムリだと思ったことができたでしょう?」


 悪魔(デーモン)の力を無理矢理に詰め込んだのです。

 それと同じことをすれば良いのでしょう。


「だが、あの身体は悪魔(デーモン)残滓(ざんし)だ。それを取り込んだら、なにが起こるかわからないだろう」


「そのときは、僕が貴方を殺します。

 死にたいのでしょう? ならば、その前に足掻きましょう。そのあとからでも遅くはありません」


 どうせ死ぬなら、やることをやってみましょう。

 無駄にはなりません。

 仮に無駄になったら、僕が責任を持って殺します。


「でも、そんな後ろ向きなことを考えることはありません。

 上手くいって記憶や感情を取り戻したら、なにがしたいですか?

 今までできなかったことを、取り返してやりましょう。

 それは、あの悪魔(デーモン)に対する大いなる復讐になりますよ」


 僕の言葉にローズマリーさんはしばらく黙っていましたが、やがてコクリと頷きました。

 と言っても、恐らく未来のことを思い浮かべたのではなく、復讐という単語に反応したのだと思います。


 悪魔(デーモン)のことだけが、今のローズマリーさんを突き動かすのだから。

 

 しかし、それでも構いません。

 それが原動力となれば、ローズマリーさんはなんでもできるのではないでしょうか。

 無理なことでも、無茶なことでも、無謀なことでも。

 あの悪魔(デーモン)が嫌がることならば、ローズマリーさんは絶対に成功させると僕は信じています。


 現に──


 ゆっくりとクリスタルに近付いた彼女がそれに掌を当てると。


 パァッとクリスタル全体が白く発光し出して。


 その光は彼女をも包み込み。


 次第に光が収まってきて。


 クリスタルに埋まっていた身体はなくなり。


 彼女はその目から涙をぽたぽたと落として立っていて。


 ──ただただ、声もなく立ち竦み、慟哭するのでした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ