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新作です。
よろしくお願いいたします。
目を開けると僕の前には、テーブルに両手を付いて、頭を下げている人がいました。
その様子はまるでテレビでよく見る謝罪会見のようで、フラッシュが焚かれていないことに違和感を覚えます。
周囲を見てみると、どことなく会議室のように思えて、それもあるからなおさら現状が謝罪会見みたいなんだな、と納得出来ました。
それはさておき。
いつまでも頭を下げられても、何故そうしているのか全くわからないので、どうにも居心地が悪いです。
ただ、どうやら僕が何か言わないとならなそうなので、ちょっとコワイですが、声をかけてみたいと思います。
「あのー……?」
「この度は、大変申し訳ありませんでした!」
わっ!?
急に声を出されたので、ビックリしてしまいます。
ドキドキと早くなった心臓を押さえながら、すーはーすーはー、と呼吸を落ち着かせて。
改めて、声をかけます。
「あの、突然のことなので何を謝られているのかよくわかりません。出来れば事情を説明してもらいたいのでまずは頭を上げてはくれませんか?」
先程のように急に声を出されないために、早口で言いました。
噛まずに言えたことにホッとしているのは、ナイショです。
僕の言葉を聞いて、目の前の人が頭を上げました。
その顔を見ると、20歳くらいの若い男性のように思えますが、髪の毛が白髪混じりだったりしていますし、何よりもその目がどことなく達観しているように思えて、もしかすると見た目通りの年齢ではないのかもしれません。
あと……なんとなくですが、その表情は疲れ果てていて、無精髭も相俟って、部下のミスにクレームを付けられた中間管理職のようで、なおさら年齢不詳に見えました。
「えっと……」
「事情がわからないのは、当然ですね。
お話しするので、まずは、そちらの椅子にお掛けください」
男性がそう言うので、僕は自分の後ろを見ると、座り心地の良さそうな椅子がありました。
ゆっくりと腰掛けると、見た通り座り心地が素晴らしいです。
どこに売っているんだろう、と気になりましたが、それは後回しです。
そういえば、座ってから気付きましたが、さっき部屋の中を見たときはこんな椅子はなかったような……あれ?
「突然のことで混乱しているでしょうけど、まずは謝らせてください。
本当に、申し訳ありません。
いくら謝っても足りないくらいだけど……」
男性はまた頭を下げたので、直前に僕の頭をかすめた疑問はどこかにいってしまいました。
「いえ、いきなり謝っても、君には意味がわからないですよね……」
「えっと……」
本当にそうです。
話を聞いて理解した上で、許す許さない、とかがあると思うのです。
と言っても、頭を下げられても、許さない、と言える人はどのくらいいるんでしょうかね?
まぁ、どうでも良いですけど。
「まずは、私のことなのだけど……」
あ、そうです。
この男性は何者なのでしょう。気になります。
「あー、信じられないかもしれないけど……神です。
いや、正確に言うと、神『のような』ものですね」
…………。
んー?
神様、ですか?
まぁ、百歩譲って、それは良いでしょう。
しかし、何故、そのあとわざわざ言い直して、『のような』を付け加えたのですか?
「……驚かないのかな?」
「いえ、驚いています」
「そうは見えないけど……」
「そんなことより、神様『のような』もの、とは、どういう意味でしょうか?」
「あ、気になるのは、そこなんだ?
えー、何て言えば良いかな……?
私は、神の仕事を代行している……んだけど、他人から見たらそんなことはわからないし、どっちでも良くて。
でも、だからといって、『神』と名乗りたくはないし、呼ばれたくない。
だから、今みたいな言い回しをしているんだ。
私のつまらない拘りとしか言えないけど……」
うーん?
よくわかりません。
「こんな話をしても、されても、面倒だから普段は言わない。
でも、君には誠実に話をしたいので、こうさせてもらったよ」
「えと、では、神様、とお呼びしない方が良いですか?
何と言えば……?」
「あー、気を遣わせてしまったね、申し訳ない。
そうだな……『管理人』と呼んでくれると、ありがたい」
「わかりました。
あ、申し遅れました。
僕は、四宮奏汰です」
僕は、神様──ではなく、管理人さん──に名乗りました。
でないと、失礼ですからね。
うん。
管理人さん、という呼称は、目の前のこの男性にピッタリです。
理由は、敢えて言いませんけど……。
「これはご丁寧に。こちらこそ、よろしく。
ところで、厳密に言えば、私が神ではなくとも、それに準じた存在ではあるのだけど。
それについては、何も言わないのかな?」
ふむ?
「いえ、話を聞いてから、判断をしようと思いまして。
それとも、僕が『嘘だろう』と言えば、何か変わるのでしょうか?」
「……。
いや、では、事情を説明しよう」
管理人さんの表情が、なんとも名状し難いものになっていますが、どうしたのでしょう……まぁ、今は事情を聞くことに集中します。
「私は先程も話したが『神のような』もので、とある世界を管理しています。
とある世界というのは、君からすると、異世界と呼ばれる場所です」
なるほど、それで『管理人』なのですね。
それに、異世界……。
そんなもの、フィクションではなく、本当にあるんでしょうかね。
「一応、今いるここも、君からしたら、異世界なんです。
便宜的に、こんな会議室みたいにしているけど。
例えば……」
と言うなり、管理人さんは唐突に指パッチンをしました。
すると、目の前に急に宇宙空間が広がりました。
僕と管理人さんが椅子に座っているすぐ横を、隕石が飛んでいきます。
「おや?」
これの解釈で一番手っ取り早いのは、夢……ですかね。
「夢ではない。
私が転移させている……んだけど、証明は出来ないな。
ちなみに、我々の周囲は結界で覆ってあるから、安全だよ」
へー、すごいんですね、管理人さん。
「でも、これは落ち着かないな……」
管理人さんはまた指パッチンをしました。
すると、今度はお花畑の真ん中にいました。
うわー。
スゴい濃密な花の香りが……。
どれも見たことのない花ばかりです。
尤も、僕の知っている花なんか、たかがしれていますが。
それに肌を撫でる風の感触は、とても心地好いです。
太陽の光もとても暖かくて、思わず眠たくなります。
ははぁ。ここが異世界なのですね?
「いや、厳密に言えば、ここは神界なんです。
ま、君には異世界と言っても違いはありませんが」
へー。
って言うか、宇宙空間よりもここに来た方が、異世界云々にはわかりやすかったかもですね。
「では、話を続けましょう)