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圧倒的力で異世界無双  作者: firy
第1章 はじまり
4/11

雨の中で

3/20 魔術→魔法 に変更しました。

先程まで少ししか降っていなかった雨が、ザーザーと降り始める。


その雨により、森は霧に包まれたかのように白いモヤがかかり、少し先が見えなくなっていた。


「なんか降って来ちゃいましたね。ちょっと前が見えません。」


「そうだな。全くもって面倒なことになった。これじゃ、どの方向に行けばこの森を抜けられるかわからんな。」


「そこは大丈夫です。私たちの国の魔法師たちが、どこにいても国に帰って来れるようにと、この魔動羅針盤マジカルコンパスをくれました!」


「すごいな!それ!でも、それは世紀の発明品だったんじゃないのか?それをぽんと渡せるもんなのか?」


「いいえ。ですが、このような貴重な国の宝とも言うべきものを渡さざるを得ない状況だったのです。それは、貴方ですよ。勇人様。

貴方の力がなんとしてでも必要なのです。」


祈るような格好で、そう言った。


「それが俺を召喚した目的か…あんな羅針盤を発明できる国が、どうして俺なんかのことを…」


「実は、私たちの国、クランツ王国と、隣の国のアガペー帝国が、現在戦争をする目前の状況になっているのです。


しかし、私たちの国には命を大量に奪う兵器はなく、相手の国にはそれがあります。


幸い、私たちの国には魔力がありますから簡単には倒されないと思いますが…今は戦争をする為の準備期間のようなもので、互いの兵士が、互いの国で隊列し、そこで互いを睨みあっています。」


ホント、ラノベみたいな理由だな。まあ英雄になることは、男の夢だよな。


「そんなことが…よし、俺の力でどうにかなるなら力を貸そう!」


「ありがとうございます!では、早速行きましょう!」


彼女は勢い良く頭を下げた後、そう言った。


「えっ?このままか?何の準備もしてないけど。」


「その心配はございません。貴方が戦争に出てくれさえすれば解決しますから。」


そう言われて勇人は、


「はあ」


と、生返事をするのであった。


意味わかんねーよ。それじゃあ何のために戦争をするんだ?


まあ解決するに越したことはないか。


「そういうことなら、さっさと行こうか。」


「はい!」


そうして2人は、歩いて行く。






「結構歩いたな。」


「ええ。しかし、ここは深い森の中ですし、雨で地面がぬかるんでいますから。思っているより歩いていませんよ。


先程、私たちが出会ったところは、森の中間地点ですから、後もう一度、先程までの道のりがあると考えたほうが良いでしょうね。」


「なるほど。」


結構歩いたと思ったんだが、モンスターが出ないか気を張っているからな。その分もあって、身体的にはともかく、心理的に疲れているのかも知れない。


「それにしても、約束が果たせて本当に良かったです。」


「何なんだ?その約束って?」


身に覚えが全くない。何を言っているんだ?


「またまた。ご冗談を。」


彼女はクスクスと笑いながらそう言う。


「だから、ホントに何?」


俺は異世界には友人はいないぞ?


「そんなっ。でも、応えてくれたではありませんか!」




「何のことだ?」


「貴方を呼んだもう一つの目的です!本当に覚えていないのですか?」


彼女は勇人の服につかまりながら、両の目尻に涙を浮かべ、上目遣いで勇人を見ている。


そんな顔されても、全くだな。


「すまんが、人違いでは?」


そう尋ねると、


「そんなことはありません!このとっても良い香りとオーガを相手に素手で戦えるのは貴方くらいしかいないのですから!」


と、顔を興奮で真っ赤にしながら、勇人が約束の相手である「勇人」だと訴えかけてくる。


「記憶にないな。」


あっさりと勇人は切り捨てた。しかし、大事はその直後に起こった。


ガルルルァァァァ!!


「ぐおあ!? ぃってーーーーーー!!」


勇人は何が起こったのかもわからないまま自分の右肩から下がなくなくなったことに気づき、そこから噴き出して止まらない血を見ていた。


「勇人様!?一体何が…?」


勇人と女性の目の前には勇人の右腕を加えてこちらを見つめる魔狼獣フェンリルの姿があった。


勇人が気付けなかった理由は、雨だ。雨によって前はみえず、音は消され、さらには、匂いまで消されてしまっていたのだ。魔狼獣は、じっとこちらを見つめたまま動こうとしない。まるで何かを待っているかのように…


このやろう、何を見てやがる!俺の腕を噛み切ったことがそんなに嬉しいか?クソが!余裕そうな顔をしやがって……!


あっ、ヤバイ。血が出過ぎてるな。こりゃ。意識が…も……う…もた…ない………。


「勇人さん!?勇人さん!しっかりしてください!せっかく会えたのに!もっとお話ししたいです!私の魔力では足りないかも知れないですが。『ヒール』!」


おあ?何かあったかいな。何か、スゲー気持ちいい。確か、元の世界では死ぬのは最高の快楽だって聞いたことがあったが、ありゃ、本当だったのか。


せめて、戦争は止めたかったな。残念だ。


「勇人さん!勇人さん!勇人さ……勇……ん!……人……いっ…や……す…………勇…




ただ、彼女の声にならない声だけが灰色の森にこだまするのであった。




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