異世界召喚
一章は読み飛ばしていただいても結構です。
俺は走っている。どこをって?
森だ。それ以外は不明... 以上。
気づいたら森の中にいた。そこには魔法陣的ななにかと死んだ年老いていて長い白ヒゲの爺さんが4人ばかりいた。
しばらく状況が呑み込めず、ぼうっとしていると、なんと木々の間から狼登場!そりゃあもう焦るよね。全力で逃げる。逃げに逃げる。
そして今に至る。マジ意味不。謎だわ。
そうして走っている内に狼の足音が消えた。
……まさかの逃げ切り。スゲーな。
でも考えてみよう。ヒトの足>狼の足... ??
おかしい。いやいやいや、あり得ないだろう。うん、あり得ないね。取り敢えず落ち着こうか。深呼吸。すーっはーっ…、よし。まずは今自分の置かれている状況を整理しようか。
1.気づいたら森。
2.その時、近くに爺さんと魔法陣。
3.狼。
ここはどっかの狼の保護区か?でもそれじゃ魔法陣は何のために?
そういえば、爺さんたちはローブ的なものを着ていたな。
なんでだ?疑問は尽きない。もしかして、夢か?でも、走った後の筋肉の疲労感もあるし、汗が不快だ。
まだ頭の中がパニックだよ。そりゃあそうだろ?なんせ俺は普通に学校に行って、部活して、帰って来る途中で……事故
も、していない。うん、してないね。歩いて駅に向かっていたよ。
ただ、そん時には隣に幼馴染みの夕姫と一緒に帰っていたはずだ。
当然彼女。と、いうわけではなく、たまたま学校帰りに鉢合わせた。
因みに学校は、違うところに通っていて隣人さんでもある。
と、まあそこでなんとなーく世間話をしながら一緒に帰っていた、という訳だ。決してやましい気持ちなどは、ない。ことはない。というかめちゃくちゃある。
だって仕方ないじゃないか。美人さんなんだもの。それはもうとても。
なんせ高校に入る前、つまりは中学校ではその美しさにより、毎日のようにラブレターだの告白だのを受けて来ている。しまいには噂が立ちすぎて、大学生、ひいては社会人の人たちにまで目をつけられていた。もうモデルさんもびっくりなスタイルで、まさにボンッキュッボンなのよ。これが。
それでいて顔は小さく、きりりとした目に、少し普通よりも赤い唇、シュッとした鼻、透き通るような真っ白な肌、175cmほどの高身長で、細すぎず長い足、そして、光をもろともせずに反射する艶のある漆黒の髪。これでは可愛いと表現するよりは美しいと表現したほうが良いだろう?
しかし、人気の理由はそれだけではない。
声は少し低く、テンポも良い。聞いている人たちを自然と虜にしてしまう。
それに加え、運動神経も良く、剣道では全国ベスト4に入る実力の持ち主である。
さらに極めつけは、その性格の良さである。道端で捨てられた子犬がいると、餌を与えに通って、新しい飼い主を探し、教室で問題があれば常に先頭に立ち、問題を解決してきた。
そういえばここの前はいじめ問題を解決してたっけか。その時のいじめっこなんてすぐに夕姫の魅力に惹かれて朝霧夕姫親衛隊なんてものに入っていたな。
あの集団はマジで危ない。何が危ないかって、その集団の心酔度。これがまた異常なのよ。
登校してくると夕姫の席の周りだけやたらと綺麗だったり、夕姫の歩く道も、歩く邪魔にならないように整理したりと、ここまでは、なんとなく、まあ十分に異常だが、考えられなくはない。これからが問題だ。
夕姫の親衛隊には、選ばれし約30人がいるのだが、その中にはサッカー部のイケメン王子もいているわけで、そいつや、あいつの容姿、能力エトセトラエトセトラが、周りの人たちがどんどん嫉妬や恨みつらみを持つようになって、悪口なんかついつい言っちゃったことがあったわけさ。
その時は悪口を言ったやつを拉致し、夕姫に、そんな感情を向けている輩を徹底的に粛正した。
それが学校で大問題となり、朝霧夕姫親衛隊は解散した。そこにいたメンバーたちはしばらく自宅謹慎された。しかし、噂によると、親衛隊は再結成され、勢力を拡大し、裏で暗躍しているらしい。
だが、たった一つの欠点は、幼馴染みだというだけで、陰キャ、いや、スーパークールでクラスでずっと独りで暮らす俺に
「一緒に弁当食べよ。」
と言ってくることだろうか。かわいい。あれ言われると、周りからの目がイタイ。なんかみんな噛み付いてきそうな勢いで睨み付けてくる。だから
「いいよ。別に。一人で食べるから。」
と断ると。あいつは悲しげに俺の元から去って行った。
かわいい。
その時の周りの人たちの目は俺を射殺そうとする勢いでおまえ何様?とでもいるように冷ややかに睨み付ける。
だからといって承諾すると、おまえ何様?というように冷ややかな目を向けられる。じゃあどうすれば良いの?とこんな感じだ。ホント、勘弁して欲しい。
人生で女性に好かれたことがないどころか、嫌われてすらいる。顔は可もなく不可もなくなのに、青春の一つのすらない。一度でいいからリア充してみたいのに。そんな俺は、平和を望んでいるというのに。
おっと、長く語り過ぎた。これで彼女の素晴らしさが伝わっただろうか。
こういう俺も夕姫が初恋の相手だったが、ウチの中学校にいたテニス部のスーパーイケメンエース(俺の幼馴染み)君と二人で楽しそうに買い物をしているところを見て、8年間の淡い初恋は撃沈した。あいつは今どこに?
はいっ、閑話休題。あっ、思い出した!ここへ来る前になんかピカッと光った気がする。
あれか?だとすると、召喚ってことになる。
だが、そんなのは物理的に、少なくとも今の時代には不可能だ。
つまりは、ああ。アニメとかラノベとかで最近よくあるあれか。てかあれ以外に考えられんな。つまりは『異世界召喚』か。
ふう。なんだか以外にすんなり納得できた気がする。だったらあれかね?狼から逃げきったのはチート的ななにかかね?だったら実験してみようか。思い立ったが吉日というし。
そう考えると、彼、松本勇人は学ランの袖を捲り上げ、無造作に右腕を引く。そして適当に選んだ硬そうな木に向かい、拳を打つ。
ドゴォ…
「まじか。」
呆然としている彼の真っ黒な瞳の奥には殴ったところからポッキリ折れた高さ5m程の木と、硬そうだった木を殴って無傷の拳がうつっていた。
「ははっ、こりゃまさしくチートだ。全然力入れてなかったのにこれか。」
と、呆れた声で言った。そして、
(もうこれはあれだ、あれをやるしかないな。そう、この世界では、テキトーにこの力使って、俺のハーレム作るぞ!)
と、決意するのであった。
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