第六百三十二話 再びのローセンダール
アニメ2期は楽しんでいただけてますでしょうか?
2期はたくさんの企業様に協力していただけてありがたい限りです。
想定していたメーカーさんの商品の実物が出てきたり、アニメならではで出てくる商品もあったりで作者としても見ていてとても楽しいです。
バターサンドはとても美味しそうで思わずネットで注文してしまいました。
コーヒーと一緒に頂いたらめちゃうまでした。
「やっと入れたな……」
『スイ、お腹空いた~』
『前に来た時より時間かかったなぁ』
『フン、だから塀を飛び越えて入ればよかったのだ』
『じゃな。儂が皆を乗せていけばすぐじゃったわい』
「フェルもゴン爺もまだそんなこと言ってんの? そんなことしたら面倒になるって言ったでしょ」
ローセンダールの街から少し離れた草原にゴン爺に着陸してもらって、そこから歩きでローセンダールの街へ。
そこまでは順調だったんだけど、街に入るまでが大変だった。
ローセンダールの街の入り口の門には長蛇の列ができていてさ。
前に来たときはこんなんじゃなかったからびっくりしつつも「こりゃあ街に入るまでに時間かかりそうだわ」なんて思いながらみんなで最後尾に並んだ。
途中で焦れたフェルとゴン爺が『塀を飛び越えればいい』とか言い出して、それにハイエルフの皆さんも「それはいいな」とか言って同調するしで諫めるのが大変だった。
ゴン爺もハイエルフの皆さんも肉ダンジョンは初めてだから楽しみにしていたようで早く街に入りたいようでさ。
だけどそんなんで街に入ったのが知れたら衛兵さんたちに捕まるっての。
なんとか諫めたのも束の間、今度は食いしん坊カルテットが『腹が空いた』って騒ぎ出すし。
まぁ、昼も過ぎて子どもたちにも昼飯を食わせてあげないといけなかったからすぐに食事にしたけどさ。
作り置きで立ったまま食えるコカトリスの照り焼きサンドを作ってきた俺に拍手だったよ。
そんなんでフェルたちやハイエルフさんが無茶なことを言っている傍ら、子どもたちは本当にいい子にしてたんだ。
ホント感心しちゃったよ。
聞いたらコスティ君が「大きな街に入る時は時間がかかるってお父さんから聞いてる」って。
オリバー君も「村にいた時に街に野菜を売りにお父さんと行ったときも人がいっぱいいて入るまでに時間かかる時があったから」って。
子どもたちの方がちゃんと分ってるんだもん。
そんなこんなで待つこと三時間。
俺とハイエルフさんたちはそれぞれ身分証を呈示して、身分証がまだない子どもたちが街に入るための料金(大人の半額だそう)を支払ってようやくローセンダールの街に入ったのが今というわけだ。
しかし……。
「なんか人増えてるな」
前に来た時よりも明らかに人が増えて賑やかに。
その賑やかさに子どもたちとハイエルフさんたちは目を奪われている様子だ。
あと、なんか屋台がめちゃくちゃ増えて所狭しと並んでいた。
『ほ~、屋台も増えているな』
『肉の焼ける匂いがたまんねぇぜ!』
『あるじー、スイお肉食べたい~!』
『ふぉっふぉっふぉ。儂は初めてじゃが、肉の焼ける匂いが立ち込める街というのはいいのう』
ゴン爺、ヨダレ垂れてるぞ。
『よし、早速屋台巡りだ!』
『うんむ!』
『よっしゃ!』
『わーい、お肉ー!』
意気揚々と屋台に突撃しそうな食いしん坊カルテットを慌てて止める。
「待て待て待て待て! 屋台巡りは後で!」
『なに~?!』
不満顔の食いしん坊カルテット。
だがね……。
「まずは冒険者ギルドに報告に行かないとダメなの! それから宿も確保しないと。ったく今晩どこに泊まるつもりなんだよ」
今回もカレーリナの冒険者ギルドのギルドマスターに「ローセンダールの街に到着したら必ず冒険者ギルドに報告に行けよ!」って口を酸っぱくして言われているからな。
『面倒な』
面倒でも何でもしょうがないの。
ということで屋台の匂いに釣られそうな食いしん坊カルテット、だけじゃなく、多くの屋台に目を奪われそうになる子どもたちとハイエルフさんたちを牽制しながら引き連れて冒険者ギルドに向かう俺だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『よし、今度こそ屋台巡りだ!』
『うんむっ!』
『よっしゃー!』
『やったー! お肉ー!!』
「ホントお前らはぶれないよなぁ。あ、これが夕飯になるからなー。後で腹減ったーなんて言わないようにしろよー。……ったく、宿の確保ができた途端にこれなんだから」
冒険者ギルドに到着の報告に行くと、見たことのある顔のローセンダールの冒険者ギルドのギルドマスターがニコニコでお出迎えだった。
前回に納入したダンジョン豚とダンジョン牛の上位種がなかなかの売り上げになったらしく「是非ともまた10階層以降の肉を確保してきていただきたく!」とのことだった。
肉を確保しにダンジョンに入るのは確定しているから承諾して、次に商業ギルドに行くと俺を覚えていてくれたみたいでスムーズに話が進んだ。
それでなんと前回と同じ一軒家が借りられてさ。
なかなかにデカい一軒家だし賃料もそれなりだから、借り手が限定される物件で今のところは空いていたそうだ。
商業ギルドの担当者曰く「この物件実は売り物件でしてね。いかがでしょうか?」なんて勧められちゃったし。
さすがにそれは断ったけどね。
こちらとしては前回と同じ物件が借りられて万々歳だった。
まぁそんな感じで宿も確保できたしとなれば食いしん坊カルテットはこうなるわけで……。
『我の鼻ではあの屋台が美味いとみた!』
『儂はあそこのが美味いと思うんじゃ』
『俺はあっちだな!』
『スイはね~、えーと、えーと、全部ー!』
スイちゃん、さすがに全部回るのは無理かなぁ……。
「ヴェルデさんたちも美味しそうなのがあったら言ってくださいね」
「分かった。しかし、フェル殿の鼻に頼った方が確実に美味いものにありつけそうだな」
「確かに」
「間違いないわね」
「うんうん」
ハイエルフさんたちも分かってきたね。
うちはみんな食いしん坊でその辺目ざといけど、特にフェルは鼻も利くからその辺は抜け目ないんだよ。
しかも、肉については特にね~。
「君たちは……」
キョロキョロする子どもたちに目を向ける。
えーと、最年長のコスティ君と次に年長のオリバー君は大丈夫そうだけど、セリヤちゃんとエーリク君とロッテちゃんははぐれる心配がありそうだな。
それならば~。
「フェル、ちょっとかがんで」
『なぜだ?』
「ちょっと子どもたち乗っけてよ。はぐれたら大変だからさ」
『なっ?!』
「子どもたちが迷子にでもなったら屋台巡りどころじゃなくなるぞ~。そうならないためにもってことだよ」
『ぐっ……。小童ども仕方ないから乗せてやる』
屋台優先ってことで不承不承ながら体を伏せるフェル。
「セリヤちゃんとエーリク君とロッテちゃんはこっち。はぐれないようにフェルに乗ってもらうね」
セリヤちゃんは困惑気味、エーリク君は「いいのかな?」と思いつつも興味津々な様子、ロッテちゃんは「やったー! 乗ってみたかったんだ~」とはしゃぎながら真っ先にフェルによじ登ろうとしている。
こういうのは前が見えるように体の小さい子から順に乗せた方がいいかな。
そうなると、ロッテちゃんにセリヤちゃん、エーリク君の順だな。
「はいはい、ちょっと待ってロッテちゃん」
よいしょとロッテちゃんを持ち上げてフェルの背中にまたがらせる。
「ふわふわだ~」
フェルに乗って嬉しそうに体を揺らして喜ぶロッテちゃん。
『おい! 我の上で暴れるな!』
「はーい。ふわふわ、ふ~わふわ~♪」
フェルに叱られてもどこ吹く風でご機嫌のロッテちゃん。
さすがのフェルもロッテちゃんが相手じゃ形無しだ。
「プッ。……ンン、次はセリヤちゃんね」
『おい』
思わず笑ってしまったらフェルに睨まれたよ。
でも、見なかったことにしてセリヤちゃんをフェルの背中に乗せる。
「最後はエーリク君ね」
エーリク君もフェルの背中に乗せる。
「よしと。コスティ君とオリバー君は、はい」
二人に手を差し出す。
「「え?」」
不思議そうな顔をして二人の目が俺の手と顔を行き来する。
「はぐれないように手をつないでいこう」
「えっと、そこまでしなくても大丈夫です」
「あの、僕も」
く、拒否られた。
「そ、そう。じゃ、く、くれぐれもはぐれないように気をつけてな」
『フッ』
笑うなフェル。
くそう。
「ヴェルデさんたちは大丈夫だと思いますけど、万が一はぐれてしまった場合は直接さっき借りた家の方に向かってください」
「承知した」
ハイエルフさんたちには商人ギルドで借りた一軒家の場所は説明してあるから、もしもの場合はお互い探し回るよりもその方が確実だしね。
「それじゃ屋台巡りに行こうか」
『よし! まずはあっちだ!』
『楽しみじゃわい』
『よっしゃー! 肉食うぜ!』
『お肉ー!』




