第六百三十一話 慰安旅行へGO!
皆様、お久しぶりです。
大変お待たせいたしました。
母のことだけじゃなくいろいろとあってメンタルもあまりよくない状態だったものでなかなか執筆しようと思えなかったのですが、アニメの2期も始まって皆さんの感想を読ませていただいたりしたところ少しずつ執筆意欲もわいてきましたので少しずつ更新再開しようと思います。
待っていてくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
まだまだ本調子とは言えないので少し間が空くことも多々あるかとは思いますがゆるい目で見ていただければありがたいです。
「それじゃあみんな、後のことはお願いね」
今日の家の警備担当の元傭兵組のキリルさんとデルクさんを残してカレーリナの街の門まで見送りに来てくれたアルバン&テレーザとトニ&アイヤ夫婦、元冒険者組の古参奴隷たちとヴィクトル一家にアンドレイさんたち傭兵組の新規奴隷たちにそう声をかける。
「ああ、任しときな」
「これだけの戦力だ。心配無用だぜ」
タバサとアンドレイさんの言葉に元冒険者組や傭兵組のみんなが同意するように頷いている。
アンドレイさんたち傭兵組は、この一週間で警備の仕事も覚えて家の警備はより万全になっている。
というか、アンドレイさんたち傭兵組は元いた傭兵団の“暁の旅団”が商人たちとも伝手があった関係から建物の警備の仕事なんかもあったらしく慣れているようだ。
それとアンドレイさんたち傭兵組に「元」を付けないのは、アンドレイさんたちは傭兵を辞めたわけではないからだ。
本人たち曰く「自分を買い戻したら傭兵に戻るぞ!」ということらしい。
ちなみに元冒険者組は、うちに永久就職を決め込んでいる。
時間のある時に冒険者もやっているけど、これは小遣い稼ぎで完全に副業扱いらしい。
「お前たち、ちゃんと行儀良く過ごすんだぞ」
「特にロッテ。ムコーダさんたちに迷惑かけるんじゃないよ」
アルバンとテレーザがオリバー君、エーリク君、ロッテちゃんの三人の子供たちに言い聞かせる。
テレーザから特にと指摘されたロッテちゃんが「ロッテ迷惑なんてかけないもん」と頬を膨らませているが。
「コスティ、お前はしっかりしているから心配していないが、セリヤの面倒をしっかり見るんだぞ」
「二人ともムコーダさんたちの言うことをしっかり聞いて無事に戻ってくるのよ」
トニとアイヤの言葉にコスティ君とセリヤちゃんが大きく頷いている。
コスティ君はランベルトさんの店との取り引きを任せられるくらいのしっかり者だし、セリヤちゃんも大人しいけれど芯は強くしっかりしているからね。
オリバー君とエーリク君も少しやんちゃなところもあるけれど、俺の言うことはしっかり聞いてくれるいい子たちだ。
そう考えると一番心配なのはやっぱり好奇心旺盛でおませさんなロッテちゃんだな。
目を離さないように気を付けないと。
ロッテちゃんをジッと見ながらそんなことを考えていると、ロッテちゃんと目が合った。
「なぁに~?」
「いや、なんでもないよ。ロッテちゃん、ローセンダールの街は楽しみかい?」
「うんっ! 美味しいものもい~っぱいあるんでしょ?」
「あるぞ~。お肉が出るダンジョンがあるからお肉の屋台がいっぱいあるんだ」
「わ~楽しみ~。ロッテ、いーっぱい食べるんだー!」
『うむ。あそこはなかなかに美味い肉料理があるからな。我もたくさん食うぞ』
『儂も楽しみじゃわい。酒に合う肉があるといいのう』
『俺だってたらふく食ってやるぜ!』
『スイもいーっぱい食べるもんねー!』
「俺たちもたくさん食べるぞ」
「本当に楽しみね~」
「ダンジョンにも入るぞ。美味い肉を確保だ」
「フフフ、そうね。そうしたら料理は…………。帰ってきてからテレーザとアイヤに頼みましょ」
子供たちもキラキラした目をしているし、フェルたちは言わずもがな。
ハイエルフさんたちも楽しみにしているみたいだ。
ま、まぁ、肉を確保しても料理は人任せにする予定みたいだけど。
とにかく世界が変わっても美味いはやっぱりみんなをウキウキさせるものってことだね。
「それじゃ行こうか。みんな行ってくるね」
そう言うと、居残り組から「行ってらっしゃい」と声がかかる。
みんなに見送られて、テクテクと歩を進めた。
「ここからちょっと行ったところの草原から、ゴン爺に乗って飛び立つことになるから」
歩きながらそう言うと、コスティ君から「どれくらいで着くんですか?」と聞かれる。
「うーんと、どれくらいだっけ?」
ゴン爺に振ると『今からだと昼過ぎくらいかのう』とのことだった。
「えーそんなに早く着いちゃうの? すごーい!」
『まぁ、ドラゴンじゃからのう』
ロッテちゃんの驚きにまんざらでもなさそうなゴン爺。
『フン。我が走ればそれよりも早く着くわ』
『それはお主だけの場合じゃろう。儂だって誰も載せていないならもっと早いに決まっとろうが』
「ほらほら、そんなことで言い合いしないの」
まったくどっちも自己主張が強いんだから。
ッとこの辺で大丈夫かな。
「ゴン爺、お願い」
『うむ』
そう言うと、俺たちから少し離れた場所でズンズンと巨大化していく。
今回は搭乗人数も多いからゴン爺にはちょっと大きめにと頼んである。
ちなみにだけど今回のゴン爺に乗ってローセンダールに行く話はちゃんと事前に冒険者ギルドに話は通してある。
ギルドマスターには渋い顔をされたけどね。
そもそもの話、こういう話を通すには2、3か月はかかる話なんだぞとかブツブツ言われたし。
それを肉ダンジョンの肉をカレーリナの冒険者ギルドにも少々卸すということにしてなんとかもぎ取った。
フェルたちはブツブツ言ってたけど少しなんだからいいでしょうに。
どうせみんな今回も狩り尽くす勢いでいくつもりなんだろうしさ。
ホント肉のこととなるとうるさいんだから。
慰安旅行のためにはしょうがないの。
『主殿、このくらいでいいじゃろうか?』
「うん。十分十分。それじゃあみんなゴン爺の上に。って言っても子供たちは難しいか」
「おれたちが手伝うぞ」
ヴェルデさんとセルマさんが軽い身のこなしでゴン爺に飛び乗る。
「みんなおいで。私たちが手伝うから」
ラドミールさんとラウラさんが子どもたちを呼び寄せてヒョイと持ち上げると、ゴン爺の上で待ち構えていたヴェルデさんとセルマさんが引き継いで次々と子どもたちをゴン爺に載せていく。
仕事の早さに感心しているうちに子どもたちの搭乗が完了してしまった。
「ムコーダさんも手伝う?」
ラウラさんにからかうように言われてブンブンと首を振る。
「俺は一人でも大丈夫ですよっ」
とは言ってもハイエルフさんたちみたいな身軽な身のこなしはできないけどね。
いつものようにゴン爺によじ登るようにして背中に乗った。
「フ~。みんな乗ったね」
「はーい!」
ロッテちゃんの元気な返事とともに子どもたちの「ハイ」という声が。
フェルとドラちゃんとスイは慣れたもので早々に搭乗済。
ハイエルフさんたちもちゃんと乗っている。
「それじゃあゴン爺、出発だ!」
俺の掛け声とともにゴン爺の巨体が浮き上がった。
子どもたちの間から歓声が上がる。
そして、ゴン爺の巨体がグングンと高度を上げつつスピードを上げていく。
あっという間に小さくなっていくカレーリナの街にあっけににとられる子供たち。
そんな子供たちにクスリと笑いながら声をかける。
「これから少しの間、空の旅だ。危ないからあんまり端に寄るなよ~」
いざという時のためにゴン爺とフェルの二重の結界を張ってもらってはいるけれど、そのいざという時が訪れないのが一番だからね。
「すごい、すごい! お空を飛んでるよ~!」
ピョンピョン飛び跳ねて興奮気味のロッテちゃん。
「ハイハイ、ロッテちゃん危ないから飛び跳ねない」
「ハーイ!」
他の子どもたちも恐々しつつも空から見る景色に興味津々の様子。
「立ってるのも疲れちゃうからみんな座って」
子どもたちをゴン爺の背中の真ん中辺りに集めて座る。
「ヴェルデさんたちも」
「俺たちは大丈夫だ」
いつものごとくではあるけどハイエルフさんたちホント自由だね。
「いいなぁ~。ロッテも端っこ行ってみたいなぁ~」
ロッテちゃんがそう言うと、アルバン家の長男オリバー君がロッテちゃんの頭をポコンと叩いた。
「ロッテ、わがまま言うな。母ちゃんからも言われただろ」
オリバー君の言葉に次男のエーリク君も「そうだぞ。あんまりわがまま言ってると帰ったら母ちゃんに言いつけるからな」と続く。
「!!! ロッテ、いい子にするもん。わがまま言わないもんっ」
ロッテちゃんもテレーザに怒られるのは怖いらしい。
「ここからでも景色は楽しめるさ」
そう言うと、改めて空からの景色に圧倒されるように見入る子どもたちなのであった。
…………そういやデミウルゴス様が肉ダンジョンを一階層増やしたとかなんとか言っていたな。
一階層増やしたって、そこに何がいるんだ?
簡単に『大丈夫じゃろ』とか言ってた気がするけど……。
あの神様やらかすからなぁ。
本当に大丈夫なのか?
ちょっぴり不安だぞ。