第六百二十五話 ご案内~
更新が遅くなり申し訳ございません(汗)
ついに病院通いするようになりましてちょっと忙しくて。手術が必要とかの大きな病気ではないのですが治療には時間がかかるみたいで。しかも、その件で検査したら結石が見つかった……。今のところは症状はないので経過観察ですが、まさか結石が自分にあるなんて思いもしなかったので驚いてます。みなさんも健康にはお気をつけて。
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本編コミカライズ10巻と外伝コミカライズ「スイの大冒険」8巻も同時発売となりますのでそちらもよろしくお願いいたします。
新しくうちの奴隷となるヴィクトル一家と“暁の旅団”ってそこを辞めたから違うのか、まぁ厳つい傭兵のおっさんたちを引き連れて家へと帰る途中だ。
みんなを受け入れるのに以前の倍以上の金額を払うことになったけど、フェルたちが息をつく暇もなく大物ばっかり獲るからぶっちゃけ有り余るほど(最近は多過ぎて俺自身も正確に把握していないほどだ)金があるから無問題。
ラドスラフさんにはニコニコ一括現金払いで払わせてもらったよ。
ついでに甘いもの好きの奥さんへのお土産にと作り置きしていたプレーンのパウンドケーキと紅茶のパウンドケーキとドライフルーツのパウンドケーキを渡したら、ラドスラフさんニッコニコだったさ。
帰り際には「是非またのお越しをお待ちしております」なんて言葉とともに見送られたけど、これだけ従業員が増えたらもう大丈夫そうだからお世話になることはないかな。多分。
まぁそんな感じでラドスラフさんの店を出てきたわけだけども……。
『おい』
そう言ってフェルが立ち止まり行きつけの屋台が集まる方を見つめる。
フェルの行きつけの屋台というのは当然ゴン爺やドラちゃん、スイも行きつけなわけで、みんなも一緒に屋台のある方を見て止まる。
「今はダメ」
『何故?』
「今は俺たちだけじゃないんだから」
まったくお前らはいつだって食い気が優先なんだから。
付いてきているみんなを見てちょっとは空気読んでほしいよ。
いろいろあったからなんだろうけどヴィクトル一家は未だビクビクおどおどしいているし、特にお子ちゃま二人はキョロキョロ周りを気にしながらも両親にしがみついて必死に足を動かしている感じなんだもん。
早いとこ家に帰って安心してゆっくりして欲しいじゃん。
それに傭兵のおっさんたちはただならぬその厳つい見た目から近くを歩いている冒険者らしき人たちからも「アイツら何者だ?」ってな感じでジロジロ見られているし。
こんなんで呑気に屋台なんて寄っていられるかって。
って、こら、屋台の前で立ち止まらない。
ちょうど通り過ぎようとしていた串焼き屋台の前でピタリと止まる食いしん坊カルテット。
行きつけの屋台ではないけれど、肉の焼ける匂いに惹きつけられた様子。
『ねぇねぇあるじ~、スイ、お腹空いた~』
『だよなぁ。ここまで来たんだし屋台寄ってこうぜ~』
『うむ。賛成』
『我も賛成だのう』
俺に群がってそう言ってくる食いしん坊カルテット。
「だからぁ……。もぅ、とにかく家に帰るのが先! 食事も家に帰ってからだってば」
『むぅ』
なにが『むぅ』だよ。
みんな不満そうだけど、家に帰れば飯はくえるんだからいいでしょうが。
『しょうがないから我慢してやるが、肉をたっぷりというか肉だけの美味い飯だぞ』
『うむ。分厚いステーキがいいのう』
『分厚いステーキか。いいな、それ!』
『スイもステーキがいい~』
「ああもう分かったから。帰ったらステーキなんていくらでも焼いてやるから、ちょっとは大人しくしててくれよ」
そう言うと、食いしん坊カルテットの目がキランと光った。
『その言葉に偽りはないな?』
え、フェル?
改めてそう聞かれると怖いんだけど。
『フェルよ、主殿が嘘を言うはずはあるまい』
ニヤリと笑いながらそう言うゴン爺。
あれ?
俺、なんかマズいこと言った?
『ハッハー! 帰ったらステーキ三昧だぜ~』
『ステーキ、ステーキ~!』
お、おぅ…………。
食いしん坊カルテットにステーキ三昧させるってことか。
俺の腕、大丈夫かな。
『よし、そうとなったら早く帰ろうぜ!』
俄然動きの速くなるドラちゃん。
『思う存分ステーキを味わえるとは楽しみじゃのう』
ちょっと。
お手柔らかにお願いしますよ、ゴン爺。
『ステーキ、ステーキ、ステーキ~♪』
ご機嫌にポンポン飛び跳ねながら進むスイ。
『よし、早く帰るぞ。お主らもさっさと動け』
ヴィクトル一家と傭兵のおっさんたちを急かすフェル。
「ちょっと、フェルは急かさないの!」
そんな感じでわいのわいのしながらなんとか家に到着。
「「ムコーダさんお帰り~」」
今日の門番担当のルークとアーヴィンが出迎えてくれた。
「そっちが新しいお仲間か」
そう言った二人の視線は傭兵のおっさんたちに向いている。
警備担当でもある二人はヴィクトル一家よりも傭兵のおっさんたちが気になるようだ。
「冒険者、ではなさそうだな」
「へぇ~アーヴィンは分かるんだ。彼ら元は小国群でも有名な傭兵さんらしいよ」
そう言うと興味深々というような感じの双子。
「こっちは……。この辺りの国出身じゃねぇな?」
ビクビクおどおどしているヴィクトル一家を見てルークがそう言った。
「あ~、彼らはルバノフ神聖王国の出身なんだ」
「うぇっ、そ、そうなのか……」
「まぁ、二人とも仲良くな」
「「あ、ああ」」
冒険者であった二人ならあの国の実情は知っているだろうからねぇ。
「あ、そういや新しいお仲間が来るっていうんで、トニたちもアルバンたちも姉貴たちもみんなソワソワして待ってると思うぜ。ヴェルデたちも気になるみたいで今日は冒険者ギルドの仕事が終わり次第にすぐ帰ってくるって言ってた」
「そうなんだ」
まぁ、これから仲間になるんだもんみんな気になるか。
「とりあえず今日は疲れただろうから簡単にみんなに紹介して休んでもらって、明日には歓迎の宴を開く予定だから、その時にゆっくり親睦を深めてよ」
「やった!」
「明日は酒飲み放題だぜ!」
そう言ってハイタッチするルークとアーヴィン。
「なに言ってんだよ。飲み放題じゃないぞ」
まったくこいつ等はアホなんだから……。
酒酒と盛り上がるルークとアーヴィンを放置して奥へと進む。
俺と二人のやり取りに呆気に取られているヴィクトル一家と傭兵のおっさんたちだが、今は保留。
どうせうちの奴隷のみんなに会えば分かるだろうしね。
テクテクと歩いていくと、母屋の前に最年少のロッテちゃんをはじめとする子供から大人までみんな勢揃いで待っていた。
「ただいま~」
そう言って手を上げると、人懐っこいロッテちゃんが「新しいお友達だ~!」とっ飛び跳ねて喜んでいる。
そんな姿を見ながら「はいはい、まずは住むところを案内しないとだから裏に行くよ~」とみんなを引き連れて母屋の裏手へ。
「ええと、まずは新しい仲間の紹介だな」
ということで、近くにいたヴィクトル一家から従業員のみんなに紹介していく。
「こちらがヴィクトルさん。そして奥さんのネリーナさんだ」
ヴィクトルさんが30歳でネリーナさんが26歳だってラドスラフさんが言ってたな。
「で、二人のお子さんのニコライ君とカトリーナちゃん。ちなみにニコライ君が9歳でカトリーナちゃんが7歳だよ」
「えー! ロッテより二人とも年上なの~?! ロッテがお姉ちゃんになれると思ってたのに~」
そうブーブーいうロッテちゃん。
フハッ、やっぱりそこ気にしてたんだ。
以前に従業員を増やすかもって話をしていたら、それを聞いていたロッテちゃんが「ロッテより年下の子がいるといいなぁ。そうしたらロッテがいろいろ教えてあげるんだ」なんて言っていたからさ。
ロッテちゃんもお姉さんに憧れるお年頃ってやつかな。
「フハハ。でもさ、ロッテちゃんの方がここでの生活は長いんだから二人にいろいろ教えてあげたらいいよ」
「そうか! ロッテがいろいろ教えてあげるね!」
ニコニコしてニコライ君とカトリーナちゃんにそう言うロッテちゃんにオロオロする二人。
「ヴィクトルさんたちはソレス王国で雑貨屋を営んでいたそうだ。ということで読み書き計算もバッチリだから家の即戦力になってくれると思う。とは言ってもまぁ、仕事の方は追々ね」
そう言うと、コスティ君が嬉しそうにしていた。
コスティ君、今までごめんなぁ。
めちゃめちゃ忙しかっただろう。
もう大丈夫だからなぁ。
「で、こちらが小国群出身で傭兵の…………」
「アンドレイってもんだ」
“暁の旅団”の元幹部でもあるアンドレイさんが俺から紹介される前に自分から名乗る。
傭兵のおっさんたちは自分たちで名乗るようだ。
「俺はヴァジムってんだ」
「俺はキリル」
「俺はマルティンだ」
「俺はデルク」
「俺はネストリ」
ちなみにアンドレイさんが35歳、ヴァジムさんが31歳、キリルさんが34歳、マルティンさんが36歳、デルクさんが30歳、ネストリさんが29歳。
この傭兵のおっさんたちはみんな筋肉ムキムキ&無精ひげのなかなかにむさ苦しい集団となっている。
「そうそう、彼らは小国群で有名な“暁の旅団”のメンバーなんだって」
俺がそう付け加えると、アンドレイさんから「“元”なぁ」という声が上がった。
タバサやバルテルから「ほぅ」という声が聞こえたので元冒険者組は心当たりがあるようだ。
「それで、みんなの住む場所なんだけども……」
ヴィクトル一家には新しく建てた戸建てを。
傭兵のおっさんたちには単身者用の長屋を案内した。
むさいおっさんたちが一つの家で共同生活っていうのもさすがに息が詰まるだろうからさ。
『よし、終わったな。飯にしろ』
『うむ。主殿、儂は早く肉が食いたいぞい』
『よっしゃ! たらふく肉食ってやるぜ~!』
『お肉~! ステーキ―!』
「あ~もう。まだちょっと残ってるのに……」
肉を待ちきれなかった食いしん坊カルテットが声を上げた。
「あ、テレーザ。みんなに支給しているものと同じものはそろえて各家に置いてあるから、あとはみんなで使い方とか諸々教えてあげて」
「あいよ」
こういう時は肝っ玉母さん的なテレーザに頼めば、みんなを動かしていいようにしてくれるだろう。
「あ、明日は新しく入ったみんなの歓迎の宴を開く予定だからそのつもりでね」
そう言うと従業員一同が「ワッ」と沸いた。
バルテルなんぞは「ホッホー! 酒がたらふく飲めるわいっ」なんて諸手を上げて喜んでいる。
だから飲み放題じゃないってば。
ったく、酒好きが多くて困るわ。
見たらゴン爺まで厳つい顔をニマニマさせているし。
「ゴン爺、飲むなとまでは言わないけど、本当にほどほどにしろよ。ほどほどに」
そうじゃないとまたみんなに白い目で見られるからな。
『ングッ。わ、分かってるわい』
ってか既に、フェルもドラちゃんも胡乱げな目で見ているぞ。
スイはスイで『ゴン爺ちゃんまたお腹出して寝るの~?』とか言っているし。
「それならいいけど。んじゃ、帰って飯にするか」
『うむ。ステーキ三昧だ!』




