第六百十九話 うるせっ
二日遅れての更新です(汗)
前にも書きましたが、いろいろと忙しく更新が何日か遅れてしまうこがあることをご承知ください。
なるべく更新はするようにしたいと思いますが、三日経っても更新がないときは忙しいんだなと思って見逃がしていただければと。
翌朝、いつも通りの時間に起きると……。
「ゴン爺、いないな」
寝室を見回すもゴン爺の姿が見当たらない。
『また前みたいに無様な姿をさらして寝コケているのだろうよ』
クワァ~ッと大きな口を開けて欠伸をしてそう言うフェル。
「おはよ~、フェル。ったくほどほどにってあれほど言ったのになぁ」
頭を掻きながらベットから立ち上がると、ドラちゃんとスイも起き出してくる。
『ファ~ア。おはよ~』
欠伸をしながらパタパタと上昇するドラちゃん。
『おはよ~!』
寝起きでも元気なスイがポヨンとジャンプ。
「ドラちゃん、スイ、おはよ~」
『あれ? ゴン爺がいねぇな』
『ホントだー』
「前と一緒だよ。酒飲み過ぎてきっとそのまま寝たんだろうよ」
そりゃああんだけ飲んでたらね。
ほどほどにって言ったのに。
『ハァ~? ったく何やってんだ、あの爺様は』
『彼奴は誇りというものを忘れてしまったんだろう』
ドラちゃんもフェルもそう言って苦々しい顔をしている。
『あるじー、ゴン爺ちゃんまたお腹出して寝てるのかなぁ~?』
「だろうねぇ」
無防備に腹見せて爆睡してるぞ、きっと。
「しょうがない、朝飯だって呼びに行ってやるか」
『放っておけ』
『そうそう。アホウの酔っ払いなんて放っておけばいいのさ』
「それもそうか」
あんだけほどほどにって言っても聞かなかったんだから自業自得だわな。
ということで、ゴン爺は放置で俺たちは朝飯にすることにした。
「ビニール袋に入れてタレに漬け込んだダンジョン牛の肉が一袋だけ残っちゃったんだよな……」
昨日のBBQのために用意した肉が残っていたからそれを使って焼き肉チャーハンを作ることに。
ダンジョン牛の漬け込み肉を適当な大きさに切って、ネットスーパーで購入したニンニクの芽は1センチくらいに切っていく。
あとは卵を溶いておいてと……。
フライパンに油をひいて熱したら、溶き卵を入れて炒り卵にして一旦取り出しておく。
再びフライパンに油をひいて熱してダンジョン牛の肉とニンニクの芽を炒めていく。
火が通ったらご飯と炒り卵を加えて炒め合わせて、いつも使っている定番の焼き肉のタレを加えてさらに炒め合わせたらできあがりだ。
ただこれだけだとフェル辺りが『肉が少ない!』とか言いそうだから、ダンジョン牛の肉に定番の焼き肉のタレを軽く揉み込んで焼いたものをトッピング。
トッピングって言うには多過ぎなんだけどね。
それを出してやったら、みんな美味いってバクバク食ってたよ。
フェルも文句も言わずにバクバク食ってたね。
俺としてはしてやったり。
それ残りものなんだけどね~って思わずほくそ笑んじゃったよ。
あ、ちなみに俺は自分用のあっさり朝飯を食ったぞ。
まぁそんな感じで朝飯を終えて、フェルたちはオレンジジュースを俺はコーヒーを飲みつつゆっくり食休みも取った後、ようやく腰を上げた。
「それじゃあそろそろゴン爺を起こしに行くか」
『我も行くぞ。彼奴の情けない姿を見てやる』
『俺も。嫌味でも言ってやんなきゃ気が済まねぇ』
『スイもスイも~。またお腹出して寝てるかどうか見に行くの~』
さてさてどんなことになっているやら。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うわぁ…………」
母屋の裏へと足を運ぶと、そこには惨状が広がっていた。
『此奴らなにをやっているのだ……』
『ゴン爺もだけど、こいつ等もヒデェな……』
フェルとドラちゃんも呆れ顔だ。
『わぁ~、またゴン爺ちゃんお腹出して寝てるよ~! 髭のおじちゃんもいっぱい~』
前回の再来か。
スイがゴン爺の腹の上に登ってポヨンポヨン飛び跳ねている。
そしてその周囲には小さいおっさん共が大の字で寝ていた。
グゴ~、グゴ~、グガガガガ、グゴ~。
「うるせっ」
大イビキの大合唱。
ゴン爺のイビキもうるさいが、小さいおっさん共のイビキも負けないくらいにうるさい。
「よくもこんな中で寝ていられるな」
というか、ゴン爺だけじゃなくブルーノさんたちも全員ここで寝コケているとはねぇ。
ドワーフは酒好きとは言うけど、ここまで飲まなくてもいいのに。
寝るなら自分の家に帰りなよ。
呆れながらこの惨状を眺めていると……。
「帰ってこないと思ったら、やっぱりかい」
足早に小さいおばちゃんが登場。
「アニカさん……」
「おはよう、ムコーダさん。昨日はありがとね~。大いに楽しませてもらったわ。……うちの男衆は楽しみ過ぎたみたいだけどね」
そう言って腰に手を当てて大の字になってグースカ寝ている小さいおっさん共を見てフンッと鼻を鳴らすアニカさん。
「仕事があるんだからほどほどにしなよってあんだけ言ったのに」
あらら、今日は仕事が入ってるんだ。
でも、ブルーノさんをはじめみんなこんな状態だけどどうすんだろ?
そう思っていたら、アニカさんがやおらブルーノさんに近付いて……。
バチコーンッ。
アニカさんがブルーノさんの頭をぶっ叩いた。
「ホラ起きな! 仕事だよ!」
「んぁっ。痛ぇな」
頭をさすりながらブルーノさんがむくりと起き上がる。
アニカさんは慣れた手つきでブルーノさんに続いて次々と小さいおっさん共も頭をぶっ叩いて起こしていく。
「ホラッ、みんなシャキッとしな! そんでさっさと仕事に行きな!」
「今日は休みにするっちゅうのは……」
ブルーノさんがそう口走るのに周りの小さいおっさんたちもウンウンとうなずきながら「それがいいのう」なんて言っている。
「ハァ? なに言ってんだい! 飲み過ぎて仕事を休むぅ? そんなことすんならこれから一月は酒ナシだよ!」
アニカさんがそう宣言すると、小さいおっさんたちがビシリと立ち上がる。
そして……。
「さ、さぁて今日も仕事じゃぞい! 行くぞ!」
「「「「「「応!」」」」」」
「あ、楽しかったぞいムコーダさんよ! ありがとな!」
「うむうむ。また呼んでくれい!」
「昨日は本当に楽しかったわい!」
「また美味い酒、飲み明かそうや!」
「ドラゴン様と飲めて楽しかったぞい!」
「うむ。ドラゴン様にもよろしく言っといてくれい!」
わいのわいの言いながら去っていく小さいおっさんたち。
「それじゃあお世話かけたね、ムコーダさん。またなんかあったらうちで請け負うからね」
そう言ってアニカさんも去っていった。
それを唖然としながら見送る俺。
嵐みたいに去っていったドワーフ連中。
というか……。
「つよっ。おばちゃん、つよっ」
なんてアニカさんの強さに感心している場合じゃない。
あれだけ騒がしくしていたのに、うちのドラゴン様は未だにイビキをかいて爆睡中だ。
「ゴン爺、まだ寝てるんだな……」
『あれだけ騒がしくしていたのにまだ寝ているとは、此奴の危機感はどこにいったのだ?』
『本当にガッカリだぜ』
『ゴン爺ちゃん気持ち良さそうだね~』
俺、フェル、ドラちゃん、スイが爆睡中のゴン爺を見やる。
「そのうち起きてくるだろうし、もうこのままにしとくか」
『それでいいだろう。起きた時に己でどう思うのか見物だ』
『だな。ま、なんにしても呆れたドラゴンだぜ』
「スイ~、お家戻るぞー」
『ハーイ』
ゴン爺の腹の上でポヨンポヨン飛び跳ねていたスイを抱っこする。
「あれほどほどほどにって言ったのにねぇ……」
気持ち良さそうにいびきをかいて寝るゴン爺を尻目に家に戻る俺たちだった。
 




