第六百十三話 ヨルゲンさんカッコいい~
一日遅れましたがなんとか更新です(汗)
そしてそして、アニメをご覧くださいました皆様、本当にありがとうございます!
たくさんの感想もいただきましたありがとうごまいました。
大変ご好評のようで嬉しい限りです。
みなさんもおっしゃっていましたが、料理作画の秀逸さはさすがMAPPAさんですね。
MAPPAさんありがとうです。
今日はアニメ2話の放送日となりますので、続けてご視聴よろしくお願いいたします!
当然今日も安定の飯テロ(になる予定)ですw
コンコンコン―――。
「ヨルゲンさん、ムコーダです。夜分遅くにすみませんが、少しお話が」
俺の声掛けに反応してカチャリとドアが開いて、ヨルゲンさんが顔を出した。
「どうした?」
「ええとですね……」
「ん? そちらは?」
「ああ、こちらは王都の冒険者ギルドのモイラ様とドランの冒険者ギルドの副ギルドマスターのウゴールさんです。お二人はエルランドさんを迎えに」
「そういうことか。ここではなんだから中へどうぞ」
ヨルゲンさんに促されて部屋の中へ。
アパートが出来上がった時以来の部屋の中。
家具もそろえられて、住み心地は悪くなさそうだ。
「アデラさん、夜分遅くにすみません」
「構わないわよ。あの子のことだってちょっと話も聞こえてたしね。あ、どうぞ、皆さん座って」
イスに座らせてもらうと、アデラさんがお茶を出してくれた。
それを一口頂いた後に、モイラ様とウゴールさんのことを話した。
お二人ともヨルゲンさんに今後の交渉をするつもりらしいから、今までのことを話して知ってもらっていた方が交渉もしやすいだろうからね。
ということで、かくかくしかじかとエルランドさんがやらかして本来なら王都の冒険者ギルドのお偉いさんのはずのモイラ様が監視に就いたことや、その監視を執念でかいくぐるエルランドさんのこと、ドランの冒険者ギルドではエルランドさんがギルドマスターの仕事をほぼ放棄していて副ギルドマスターのウゴールさんがいなければ成り立たないこと、エルランドさんが始終好き勝手やるのでウゴールさんは相当に苦労されていることなどを話させていただいた。
「ハァ~、そうか……」
一通り俺の話を聞いたヨルゲンさんは、ガックリと肩を落として大きなため息を吐いた。
「お二方にも相当ご迷惑をかけたみたいだな。身内として謝らせてくれ。本当にすまなかった」
ヨルゲンさんに謝られて、モイラ様もウゴールさんも恐縮している。
「いえいえ。あなたが謝ることではありませんよ。悪いのは彼奴」
「ええ。そうですとも」
「しかし、彼奴がハイエルフの血脈だったとはのう……」
「私も初めて知りました。しかし、普段はいい加減な癖にここぞという時はとんでもなく強かったのには納得です」
「小さい頃に俺たちが鍛えたからなぁ。その力はきちんとした場面で発揮してくれるのなら良かったのだがな……」
「「「ハァ~」」」
モイラ様、ウゴールさん、ヨルゲンさんが同時にため息をつく。
みなさんが憂う気持ちも分かりますよ。
今の所ほぼほぼ監視逃れにしか使ってませんからねぇ。
「そこでヨルゲン殿に私らからお願いがあるのだが、よろしいだろうか?」
モイラ様がそう話された。
お、いよいよ本題かな。
モイラ様がウゴールさんに目で合図すると、ウゴールさんが話始める。
「ムコーダさんから話のとおり、ギルドマスターの監視にはモイラ様と私が就いていたのですが、何度も逃げられるという苦い結果になっておりまして……。私たちも、監視を疎かにしているつもりはないのですが、いかんせんあの人はほんのわずかな隙でも見逃さないというか」
うんうん。
分かるよ、ウゴールさん。
困ったことに自分の欲には忠実だからねぇ、エルランドさん。
わずかな隙でも見逃さないし、隙がなければこじ開けてでもって感じだものね。
「そうなんだよ……。私らも通常の業務、というか、彼奴が溜めに溜めておった仕事をかたづけねばならんということもあってね。手を抜いているわけはないが、監視に隙ができてしまうこともある」
「すみません。私がもっとしっかりしてギルドマスターに仕事をやらせていれば……」
そう言ってちょっと落ち込むウゴールさん。
「いや、ウゴール、あんたが謝ることじゃないさ。それどころか良くやってるよ。この状況でドランの冒険者ギルドを滞りなく運営できていたのは間違いなくアンタの手腕さ」
モイラ様がそう言いながら、ウゴールさんの腕をポンポンと叩いて慰めている。
実際、モイラ様の言うとおりだよ。
俺もそう思うもの。
ドランにいた時だって、ものすごく自由にしてたもんね~、エルランドさん。
自分からギルドマスターの仕事なんてまったくする気配なかったし。
職員さんもなにかあればウゴールさんにお伺い立てていたし、あそこのギルドはウゴールさんで動いていたよなもんだったよ。
「ハァ~……。まったく聞けば聞くほど頭が痛くなってくるな。あいつの所業には」
「本当ねぇ。伝え聞いてはいたけど、実際に聞くとひどいものね。子どもの頃は素直なイイ子だったんだけど。どこで間違えたのかしら……」
ヨルゲンさんもアデラさんも頭を抱えている。
「まぁ、そういうこともあって、いずれ監視の強化はせねばならぬとは考えていたんだ。だけど、曲がりなりにも彼奴も元Sランク冒険者だ。その監視となると同等のSランク冒険者にでも頼むしかないが、そうなると…………」
モイラ様がそう言って渋い顔になった。
以前にもこういう話はしていたんだろうね、ウゴールさんも渋い顔をしているよ。
だけど、そりゃそうだよね。
Sランク冒険者となれば相当費用もかかることになるだろうしさ。
エルランドさんのためにそんだけ費用かけられるかって話だよ。
「しかし、ここに来て光明を得たよ。聞いた話ではここじゃあ逃げられたこともないというし、驚くことに彼奴もすこぶる大人しいというじゃないか」
「ええ。本当に驚きましたよ。あのとてつもなくしぶといギルドマスターが大人しいとは」
「そして、それがヨルゲン殿の手腕によるものだと聞いてね。それで居てもたっても居られなくて、無理を言って夜分にお伺いした次第なんだ」
「是非ともギルドマスターの監視の任に就いていただけないでしょうか?」
「こちらとしても出来る限りの給金も出させていただくつもりだよ。ヨルゲン殿、どうかお願いできないだろうか?」
モイラ様とウゴールさんの懇願にも近いお願い。
ヨルゲンさんは目をつむって考え込んでいる。
無音の時間がしばし続いた。
「…………あいつは身内だ。間違ったことをしたならば正してやるのも俺の役目。あいつの監視の任、承ろう」
「ありがたい!」
「本当にありがとうございます!」
モイラ様もウゴールさんもヨルゲンさんの承諾の返事にホッとしたような顔に。
そりゃあそうだよね。
あの面倒くさいエルランドさんの監視なんてどれほど神経を削られることか。
「アデラ、やっとこの街に落ち着いたところで悪いが、付いてきてくれるか?」
「付いていくに決まってるでしょ。妻が旦那に付いていくのは当り前よ」
そんな言葉を交わしてヨルゲンさんとアデラさんが見つめ合っている。
結婚何年目かはわかりませんが、未だラブラブなんですね。
良かったですね。
ってか、見せつけるんじゃないよっ。
「ムコーダ、世話になると決めて早々に他の街へ移ることになって悪いのだが……」
ヨルゲン&アデラ夫妻に見せつけられてくさっていたら、話が俺へ。
「いやいや、いいですよ。ヴェルデさんたちは残ってくれるんですよね?」
「ああ。その辺は俺の方から話しておくよ」
ハイエルフさんが四人残ってくれて、その中でも解体の要となるヴェルデさんがいてくれるのであればこっちは問題ない。
「ところで彼奴はどこに?」
モイラ様の問いにウゴールさんも疑問に思っていたのか部屋の中を見回している。
確かにそう思うのも無理もない。
エルランドさんの姿も見えないし、気配さえ感じられないもんね。
「隣の部屋にいるぞ。うるさくしたら鉄拳制裁だ」
「まぁ、結界が張ってあるから、私たちの承諾がなきゃ出られないしね」
ヨルゲンさんとアデラさんの力強い言葉に感動するモイラ様とウゴールさん。
そうだよね~。
散々苦労させられてきたんだから。
「あいつのことは俺たちに任せてくれ。腐った根性が直るまで何年でも付き合ってやるさ!」
ヨルゲンさんカッコいい~。
モイラ様とウゴールさん感動して泣きそうになってるじゃん。
まぁ、当事者のエルランドさんにとったら、地獄のはじまりかもしれないけど。
とりあえずガンバッテちょーだい。
さぁて、話も終わったみたいだし、早く帰ってみんなと風呂入ろ~。




