第六百九話 きゅ、救世主キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
またも一日遅れの更新です(汗)
今のところ一~二日遅れることがあるかもしれませんが、お許しください。
休みの告知なしの時は遅れても更新はしようと思っておりますので。
あのエルランドさんが、ハイエルフのヨルゲンさんの身内だという衝撃の事実が判明してから一週間。
家の工事も無事に終わり、静けさを取り戻している我が家だが……。
エルランドさん来襲という新たな問題に直面している。
本当ならば工事が終わりブルーノさんたちと約束していた宴会を開催したいところなのだが、今の状況ではそれも楽しめそうにないということで、少しの間延期してもらっているところ。
なにより約束した張本人のゴン爺が、エルランドさん来襲という大問題を前にして宴会にまで気が回っていない様子だし。
そんなわけでいつあの変態がやって来るのかと、俺たち(主に俺とゴン爺とドラちゃんだが)は、戦々恐々と過ごしていた。
ヨルゲンさんが「あいつのことは任せておけ」って言ってくれたから多少は気も落ち着いたけど、エルランドさんの今までの所業を考えるとさすがに安心まではできなかったよ。
またあの厄介な人を相手にしないといけないと思ったら、いてもたってもいられなくなって何度こっそり街を抜け出そうかと考えたかわからない。
だけど、あの日以来毎日ギルドマスターが家にやって来てさ……。
来る度に「絶対に家に居ろよ」って釘を刺していくんだもの。
おちおち外出もできないよ。
それに気がかりなことがまだある。
日に日にゴン爺とドラちゃんの元気がなくなっていっているのだ。
なんと、ゴン爺とドラちゃんの食事量がわずかにではあるが減っている。
食う量が増えることはあっても減ることなんてない、あの食うのが大好きな食いしん坊カルテットの一員であるゴン爺とドラちゃんがだぞ。
まぁ、今までエルランドさんがやった数々のことを思い出すと、いくら肝の太いゴン爺やドラちゃんでもそうなってしまうのも頷けるというかなぁ。
もうすぐあれに遭遇することを考えると俺だって胃が痛くなるわ。
とは言っても、ギルドマスターから街を出ることは禁止されているし。
そんなこんなで頭を痛めてさらに数日が過ぎて……。
とうとうその日はやって来たのだった。
元冒険者組には、エルランドさんが来たらすぐに伝えてもらうようには言っていた。
今日の門番だったタバサが小走りにやって来て「来たよ」と伝えてくれた。
「まだ門には来てないけどね。ペーターには足止めしとくようにとは伝えてあるけど……」
「ああ」
あの人あれでも腐っても元Sランクの冒険者だからね。
ペーターではほんの少しの時間稼ぎにしかならないだろうよ。
「それから、ルークには冒険者ギルドに伝えに行かせたよ」
「ああ。ありがと」
エルランドさん来襲の際には、足の速いルークに冒険者ギルドに伝えに向かってもらう手はずになっていた。
「そんじゃアタシも戻ってできるだけ足止めしとくわ」
そう言って、来た時と同じようにタバサは足早に門の方へと戻っていった。
目の良い獣人のタバサだから家にたどり着く前に気が付いての早めの連絡だった。
足止めもありがたいよ。
とは言っても、ほんの少しの時間だろうけども。
それでも多少の心の準備はできるというものだ。
俺はリビングへと戻り「フ~ッ」と息を吐いてから、みんなに告げた。
「ついにエルランドさんが来たぞ」
その言葉にビクッとするゴン爺とドラちゃん。
『あぁ……』
『ゲ~……』
苦悶に満ちた表情だ。
ゴン爺とドラちゃんはドラゴンLOVEなあの人に絡まれることは必至。
気持ちは分かるぞ。
「大丈夫。俺もできるだけあの変態を抑えるようにがんばるから」
そう言ってゴン爺とドラちゃんを元気付ける。
『主殿、頼むのう』
『ホント、頼むからな』
ゴン爺とドラちゃんの切なる願い。
ドラゴンにこんなことを言わせるエルランドさんがある意味最強(最凶?)なのかもしれないな。
「もうあまり時間がない。とりあえずゴン爺とドラちゃんは玄関から目に付かない所へ」
変態に暴走されては困るので、ゴン爺とドラちゃんには見えないように隠れてもらうことに。
「正直、あの人はドラゴンのことになると何するか分からないからな。フェルとスイはいざという時には頼むぞ」
あの人も元Sランクだけに実力は折り紙付きだからな。
実力行使されるとさすがに俺では敵わない。
そんなときの防波堤にはフェルとスイにお願いする。
『面倒だがしょうがない』
『分かった~。スイ、エルフのおじちゃんとは仲が良いから『ダメだよ』ってちゃんと注意する~』
ん?
スイ、『エルフのおじちゃんとは仲が良いから』っていつ仲良くなったの?
ま、まぁ、そこはいいか。
とにかくだ、今はあの人をどれだけ抑えられるかが勝負だ。
絶対に家には入れないようにしながら待つのだ。
対エルランドさん最終兵器のヨルゲンさん到着をね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
緊張しながら玄関扉の前で待っていると、声が聞こえてきた。
「ゴン爺様~っ、ドラちゃぁぁんっ、エルランドが来ましたよぉぉぉっ!」
おい。
最初っからゴン爺とドラちゃん目当てって言っちゃってるやん。
近頃はドラゴンLOVE全開を隠しもしない。
俺に魔剣を返却しにきたって建前はどうしたんだよ?!
ゴン爺とドラちゃんが目前となったら建前もへったくれもないな。
そんなことを思いながら様子を窺おうとそっと扉を開くと、遠目に見ても分かるような満面の笑みを浮かべながら疾走するエルランドさんが。
コエェ……。
思わず扉を閉めそうになるがなんとか押し止める。
そして…………。
「あ、ムコーダさんお久しぶりです!」
いや、久しぶりって程じゃないでしょ。
この間王都で会ってから2か月も経ってないですけど。
「それで、ゴン爺様とドラちゃんはどちらに?」
ニッコニコでそう聞いてくるエルランドさん。
いきなり?
というかさ、ここにまで来た用件それじゃないでしょうが。
エルランドさんにとっては建前かもしれないけど、大事な用件があるでしょ!
「いや、もちろんいますけど」
「会わせてください!」
そう言って、ズンズンと家に入ってこようとするのを踏ん張ってなんとか阻止する。
「ちょちょちょちょちょっと! ゴン爺とドラちゃんに会いにきたわけではないですよね!」
ちゃんとした目的があるだろっ。
エルランドさんにとっては建前だろうけどもさ。
「は? 私はゴン爺様とドラちゃんに会いにきたんですけど。それ以上に大切なことはないですから」
当たり前のように言い放つエルランドさん。
ハァ~…………。
頭痛くなってきた。
ゴン爺とドラちゃんに会いにきたって、あんた俺が貸した魔剣はどうするつもりだったんだよ!
「あのですね! 聞いた話では、俺が貸した魔剣を返却にってことだったんですけど、違うんですか?!」
俺が呆れながら強めにそう言うと「あ~、そうでしたそうでした」とか言って自分のアイテムボックスを探るエルランドさん。
そして…………。
「あ、これです」
そう言ってエルランドさんが“魔剣カラドボルグ”を俺に押し付けてくる。
「ちゃんと返却しましたよね。これで問題ないですね」
エルランドさんに念押しのようにそう言われ、気圧されて思わず「え、ええ」と答えてしまう。
こ、怖いってば、エルランドさん。
笑顔なのに目が笑ってなかった。
ゴン爺とドラちゃんに会うの邪魔すんなってこと?
そんな顔されたら、ますますゴン爺とドラちゃんには会わせられないだろうが。
そう思うがエルランドさんの暴走は止まらない。
「これでゴン爺様とドラちゃんに会うのに支障はないですよね。で、どちらにいらっしゃるのですか? 早く会わせてください」
そう言いながら笑顔で家の中に押し入ろうとするエルランドさん。
「い、いや、あのっ、まだっ、まだ、魔剣のことで話がっ」
俺がそう言うと、エルランドさんがピタリと止まり「どんなことです?」と聞いてくる。
「えっと、えーっと………………、そ、そうだ、賃料っ! 魔剣の賃料はどうなってますかっ?」
冷や汗をかきながらなんとか話題を捻り出した俺。
それに対してエルランドさんはというと……。
「それは王都の冒険者ギルドと取り決めをなされたのではないですか? 問い合わせがあるのであればそちらに聞いてください」
ピシャリとそう返してきた。
「ということで、もういいですよね? ゴン爺様~、ドラちゃ~ん、永遠の友であるエルランドが参りましたよ~」
ちょっ、なに言ってんの?!
アナタいつからゴン爺とドラちゃんの永遠の友になったの?!
というかっ……。
「ちょっ、とりあえず止まって! 中に入ってこないで!」
俺を押し切るように家の中に強引に入ろうとするエルランドさんを必死に押さえる俺。
「ゴン爺様~、ドラちゃ~ん」
俺の言葉を無視するようにエルランドさんがゴン爺とドラちゃんを呼ぶ。
ぐぐっ、お、俺だけではもう抑えられそうにないっ。
こうなったら……。
「フェルッ、スイッ、助けてー!」
フェルとスイにヘルプコールだ。
『む、大丈夫そうだぞ』
「なにが?!」
こっちは全然大丈夫じゃないんだけど!
『外を見てみろ』
エルランドさんの背後に目をやると……。
『ハイエルフのおじちゃんだー』
きゅ、救世主キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
こちらに向かって爆走するヨルゲンさんの姿が。
「エルランドッ!!! お前という奴はぁぁぁぁっ」
鬼の形相のヨルゲンさん。
その声に「は? 誰ですか?」と若干不機嫌そうに振り返るエルランドさん。
そして……。
「ヨ、ヨ、ヨッ、ヨルゲン爺っ?!」




