第六百三話 最高かよ!
《読者様へのお願い》
お気を悪くする方がいるかもしれませんが、これだけはお伝えしておきたいと思いましたので書かせていただきます。
私の場合は、週一更新でやらせていただいておりましたが、それもその時々の状況によりお休みをいただいたりとしておりました。
それは他の作家さんも同じだと思います。
なるべく週一更新できるようにとは思っておりますが、前述のとおりその時々の状況によります。
事前にお伝えしていましたが、私事で10月初めころまで忙しいので更新が遅れがちになるかもしれません。
また、その時の状況によっては更新できないこともあります。
更新を楽しみにしていらっしゃる読者の皆様に対しては大変心苦しいですが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
それから、契約関係のある出版社様との期限は当然守るべきものですし守らなければならないものですが、小説家になろう様での更新は義務ではないということもご理解いただければと思います。
また、感想をお書きいただく場合は小説家になろう様のマニュアルに則ってお願いいたします。
以上、長くなりましたが何卒よろしくお願い申し上げます。
「あ~あ~、ったく。当然のごとく速攻で強請られるとはねぇ……」
昨日、丹精込めて作った“豚バラ肉の簡単ベーコン風”だけど、当たり前のようにフェルたち食いしん坊カルテットに強請られましたよ。
今日の朝飯に、ダンジョン豚のバラ肉とナスとピーマンのみそ炒め丼を出したんだけどさ、それを見たフェルが『なんだ、昨日お主が作っていたものではないのか?』って言ってきてさぁ。
そうしたらゴン爺も『確かに匂いが違うのう』とかって言い出すし。
ドラちゃんは『そういえば昨日は何か作ってたよなぁ』とか言って『何作ったんだぁ~?』なんて詰め寄ってきて、スイも『あるじー、何作ったの~? 美味しいやつー?』ってポンポン飛び跳ねながら寄ってくるしでさ。
そりゃ作ったけど、俺はすぐに出すなんて全然言ってないんだけどねぇ。
というか、みんな昨日は特になんにも言わなかったからバレてないと思っていたんだけど、しっかりバッチリ知られていたという。
みんなに出す前に、今日の午後にでもビールを一杯やりながらちょっと一人で楽しもうと思っていたっていうのに。
作り手の特権として、それぐらいしても罰は当たらんよね。
だからさ、先に俺に楽しませてくれよってことで、フェルたちには「いや、そのうちにね」とかって濁したんだ。
別に食わせないってわけじゃないし。
でもさ、それがいけなかったのか、食いしん坊カルテットに一斉にジト目で見られてさぁ。
『もしや、我らに食わせないつもりか?』
『主殿?』
『おいお~い』
『あるじ~?』
なんて言われて詰め寄られて……。
もう、こっちは諸手をあげて降参するしかなかったわ。
だって、みんな目がマジで怖いんだもん。
で、昼飯に昨日の“豚バラ肉の簡単ベーコン風”を出すってことで決着がついたんだけども……。
「さぁて何を作るかな。……そうだ!」
ビールを一杯やりながら~っての、実は庭でやろうと思ってたんだよね。
今日がめちゃくちゃいい天気っていうのもあるけど、この間のリヴァイアサンの件で王都に行った時に手に入れたものを使いたくてさ。
実は、買い物中に一目惚れしてイスを衝動買いしちゃったんだ。
背中の部分から座る部分までが一枚革でできたイスなんだけど、その革がまた濃い茶色で渋い感じで良いんだ。
もう一目で気に入っちゃってさぁ。
それでも値段が馬鹿高かったら、きっと思いとどまっていただろうけど、金貨13枚と安くはないけど高すぎるってほどでもなくてさ、思わず即決で買っちゃったよ。
食品以外で衝動買いってあんまりなかったんだけど、王都に次は何時来れるか分からないしなっていうのもあって思わず。
で、衝動買いして手に入れたはいいけど、カレーリナのこの家にはお貴族様が残していったゴージャスな家具類がそろっているしで今まで使いどころがなかったんだよね~。
だけどさ、俺、思いついちゃったわけよ。
このいい天気の中、広い庭で一目惚れしたあのイスに座って力作の“豚バラ肉の簡単ベーコン風”をつまみにしながらキンキンに冷えたビールをのんびり楽しんだら最高じゃねってさ。
もう、それはそれは午後のその時間を楽しみにしていたんだけど、フェルたちのお強請りでおじゃんになったと思っていたんだけど……。
BLTサンド作って、庭で食うってのもありだよな。
ついでに俺もキンキンに冷えたビールも楽しんじゃったりして。
うん、ありありのあり、だな。
よし、そうしよ。
昼飯はBLTサンドに決~めた!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
青空の下、BLTサンドにかぶりつく。
「うめ~!」
テレーザ特製の田舎パンをトーストして、一枚にはマヨネーズを塗ってもう一枚には粒マスタードを塗り、アルバン印の極旨レタスをちぎって載せて、これまたアルバン印の極旨トマトの輪切りを載せたら、フライパンでこんがり焼き目を付けたちょい厚めに切った“豚バラ肉の簡単ベーコン風”を載せてサンドした簡単だけど素材が生きる豪華なBLTサンドだ。
“豚バラ肉の簡単ベーコン風”の旨み、トマトの酸味、レタスのシャキシャキ感、マヨネーズのまろやかさと粒マスタードのピリッとした辛味、すべてが完璧にマッチした一品。
うむ、我ながらいい仕事した。
パンはテレーザ、レタスとトマトはアルバンとほぼ人頼りではあるけど。
まぁ、とにかく美味いからいいのだ。
BLTサンドを味わいゴクリと飲み込んだ後は……。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ。
「プハ~、美味い! 今日は気分でジョッキにしたけど、これもまたいいもんだな~」
キンキンに冷やしたジョッキにキンキンに冷やしたビール。
少し汗ばむ陽気も手伝って超絶に美味い!
最高かよ!
『主殿が容器を冷やせと言うから、何故と不思議に思うたが……。確かにこれは美味いのう!』
俺がビールを飲んでいたら、絶対にゴン爺も飲みたいって言うと思って、それならばとお願いして魔法でジョッキとビールをキンキンに冷やしてもらったんだ。
ゴン爺の場合ちょっとの魔法でも威力ハンパないから、何度も「凍る一歩手前だからな」って念押しして慎重にやってもらってな。
ちなみにゴン爺はネットスーパーで買った特大のガラスのボウルが、ビールジョッキ代わりだ。
『我は酒なんぞ美味いとは思わんがな』
『俺も~。それよりも、これ、なかなか美味いじゃん』
『美味しいね~! あるじー、おかわりー!』
皿に積み上げたBLTサンドだったが、スイは秒でたいらげてしまったようだ。
『あ、俺も俺も!』
『我もおかわりだ。だが、野菜はない方がいい』
ったく、野菜嫌いのフェルが出たよ。
とは言っても、そんなこと言いそうだなとは思ってたけど。
「そう言うと思って、一応野菜なしのも用意したけど」
『ほぅ。分かっているではないか。よし、野菜なしのを出すのだ』
「へいへい」
『俺の勘では、これは野菜も一緒にあった方が美味いと思うんだけど、一応試してみていいか?』
『儂も試してみたいのう』
『スイもお野菜入ってないのちょっと食べてみたいなぁ~』
「じゃ、お試しでな」
フェルには野菜なしBLTサンド(野菜なしだからBLTサンドとは言えないんだけどね)を皿に積み上げて出してやり、ドラちゃんとゴン爺とスイにはお試しで一つずつ出してやった。
野菜嫌いのフェルは『うむ。美味い』と満足げにバクバク食っている。
一方、ドラちゃんとゴン爺とスイは……。
『うーん、やっぱ野菜あった方が味のバランスがいい気がすんな。おかわりは普通のやつだな』
『うむ。ドラの言うとおりじゃ。儂も普通のでおかわりじゃな』
『スイもお野菜があった方が好きかな~』
「お~、ドラちゃん、ゴン爺、スイは分かってるな~。やっぱり野菜があってこそのBLTサンドだよな」
ドラちゃん、ゴン爺、スイには普通のBLTサンドを皿に積み上げて出してやった。
みんなにおかわりを出してやりつつ、俺はBLTサンドとキンキンに冷えたビールを堪能した。
王都で一目惚れして衝動買いしたイスにゆったりと座りつつ腹をさする。
「フゥ~、食った食った」
BLTサンドはかなりボリュームがあったけど、ペロッと二つも食ってしまった。
『主殿、酒のおかわりをお願いできるかのう』
「あー、はいはいビールね~」
ゴン爺のガラスのボウルにビールを注いでやる。
注ぐ前にボウルをキンキンに冷すとは用意がいい。
便乗して俺のジョッキも。
「ゴン爺、俺のもお願い」
再びキンキンに冷えたジョッキにビールを満たす。
ゴクゴクゴク。
「ハ~、うまい」
やはり冷えたビールは美味いなぁ~。
「あ、ゴン爺、つまみいるかー?」
『おお、いただこうかのう』
“豚バラ肉の簡単ベーコン風”をただ切っただけのつまみを自分用とゴン爺用に出す。
『む、肉だけのがあるではないか。我にもくれ』
『俺も!』
『スイも食べる~!』
「はいはい」
言うと思ったわ。
ということで、フェルとドラちゃんとスイにも同じものを出してやった。
フェルとドラちゃんとスイのお供はビールじゃなくてサイダーだけどね。
「こうやって青空の下でのんびりするのもいいもんだなぁ~」
傍らに美味い酒とつまみがあるんだから尚更だわ。
そんな感じでまったりと楽しんでいるとガヤガヤと声が聞こえてきた。
声のする方を見ると、小さいおじさんたちが母屋の陰に隠れるように集まっていた。
「…………」
あの、姿、バッチリ見えてますから。
というか、身を乗り出してますよね。
それに、声を潜めているつもりなのだろうけど「酒か?」「く~、昼間から羨ましいわい」とかいろいろとしっかり聞こえます。
「…………あの人たち、絶対隠れるつもりないよね」




