第六百二話 豚バラ肉の簡単ベーコン風
ちょっと短めですが。
トンカンコン、トンカンコン―――。
今日も大工仕事の音が鳴り響いている。
しかし、ドワーフの仕事は本当に早い。
ブルーノさんが戸建て住宅くらいなら十日もあれば建つと言っていたけど、あれマジだったわ。
きっかり十日で側が出来上がって、二日で内装まで仕上げちゃうんだからすごいよな。
で、今は、単身者用の長屋の工事に取り掛かっている。
こちらはミニキッチンとバス・トイレ付のワンルーム仕様で六室だ。
ブルーノさん曰く「こっちも十日もありゃあ建つな。内装が個別じゃから、三・四日もらうかもしらんがのう」という話だった。
それでも二週間程度で出来ちゃうんだからホントすごいよね。
メゾネットタイプのアパートは、今までにない住宅ということで少しだけ時間がかかるかもしれないらしいけど、それでもブルーノさんの話では「一月もみてもらえれば大丈夫じゃろ」ってことだからね。
メゾネットタイプのアパートが一か月で経つんだからすさまじい早さだよ。
まぁ、とにかくだ、建築工事のことはブルーノさんとこに任せておけば間違いない。
そんなことで、俺はゆっくりさせてもらうことに。
ゆっくりというか、やりたかったことをさせてもらうんだけど。
少し前にネットスーパーでスモークチップを売っているのを見つけて、初めて挑戦した燻製の味が忘れられなくてなぁ。
時間が取れた今だからこそ、燻製に再び挑戦してみようと思ってさ。
で、挑戦しようと思っているのが、豚バラ肉の簡単ベーコン風だ。
ネットスーパーのスモークチップのページで紹介されていたんだよね~。
本格的なベーコンを作ろうと思うと、一週間程度の塩漬けが必要だけど、ここで紹介されていた豚バラ肉の簡単ベーコン風は塩漬け一日なんだ。
豚肉のジューシーさを残しつつのお手軽燻製。
しっとりした燻製で、そのまま食っても美味いし、サンドイッチにしても、チャーハンの具にしても美味いし、いろいろな使い方ができるって書いてあった。
これを見て「絶対に作ろう!」と思ったもんね。
それから酒との相性も抜群らしく、その辺も楽しみにしている。
ハ~、ビールのつまみにしたら最高だろうなぁ。
とは言え、この“豚バラ肉の簡単ベーコン風”も一日でできるわけではないし、燻製した後は味を落ち着かせるためにも一晩置いた方がいい。
だからこそ時間のある今というわけだ。
ネットスーパーで“豚バラ肉の簡単ベーコン風”を見て作る計画を立てて準備もバッチリ。
昨日のうちにちゃんと下ごしらえも終えている。
使う素材はダンジョン豚のバラ肉。
その塊肉にちょっとお高いけれどここ最近気に入って使っているメルカダンテ産の塩だけをすり込んだものと、王都で購入した肉によく合うというハーブソルトをすり込んだものを用意した。
前回の悲しい出来事(酒のつまみにと思っていた燻製したソーセージやらを結局食いしん坊トリオに食い尽くされてしまった)を鑑みてダンジョン豚のバラ肉の塊も多めに用意してある。
燻製に使うカセットコンロや中華鍋やらもネットスーパーで買い足して、この日のためにしっかり準備してあるしね。
今日のために準備万端。
ということで、庭で燻製作り開始だ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
土魔法で作った作業台の上にカセットコンロをセット。
そして、中華鍋からはみ出すようにアルミホイルを置いて、その上にスモークチップを載せる。
今日使うのはサクラのチップだ。
ダンジョン豚のバラ肉の他にタマゴとチーズも一緒に燻製するつもりだから、一度に異なる食材を燻製したいときにも使いやすいというサクラチップがベストだろう。
サクラチップを載せたら、その上に網を置いて、網の上に食材を並べていく。
キッチンペーパーでしっかりと水気を拭いたダンジョン豚のバラ肉に味付け卵、6Pチーズにカマンベールチーズ。
チーズはそのまま網に載せると溶けてしまうから、網の上にアルミホイル置いてその上にチーズだ。
そうしたらフタをして、はみ出したアルミホイルでフタを覆うようにする。
こうするとフタの隙間から煙が漏れるのを防ぐことができる。
あ、フタは中の様子が見やすいようにガラス製のがおすすめだ。
あとは……。
「コンロ、点火!」
最初の15分くらいは中火で、弱火でじっくり。
食材の表面部分に水分があると嫌な酸味の原因にもなる。
燻製中にフタに付く水滴や、食材にその水滴がついてしまった場合は、キッチンペーパーでふき取っておく。
「うん、イイ感じだね。こっちはこんくらいでいいかな」
味付け卵、6Pチーズにカマンベールチーズがほどよく色付いている。
この三種はここで引き上げる。
ダンジョン豚のバラ肉はまだまだじっくり火を通していく。
「もうそろそろ大丈夫かなぁ~」
竹串を刺してみて透き通った肉汁が出てくればOKだ。
肉に火が通った火が通ったのを確認したら火を止めて……。
「よっしゃ、ここまでできたらこっちのもんさ」
ニマニマしながら中華鍋を覗く俺。
中華鍋をズラッと並べて燻製している途中に、奴隷たちが通ったりもしたけど、「また何かやってるわ」くらいなもんで何事もなく通り過ぎて行ったわ。
ま、まぁ、ありがたいけどね。
後はフタをしたまま冷めるまで放置。
「ハァ~、スモークの香りがたまらないね。美味そう」
すぐにでも食いたい気持ちを抑えつつもう一仕事。
味を落ち着かせるために、冷めたダンジョン豚のバラ肉をキッチンペーパーに包んだら魔道冷蔵庫で一晩。
味付け卵、6Pチーズにカマンベールチーズの燻製ももちろん一晩置く。
魔道冷蔵庫の中が燻製でギッチリだわ。
今まで魔道冷蔵庫の中に入っていたものは取り出して一時アイテムボックスに避難させた。
面倒だけど美味い物のためにはしょうがないね。
「明日が楽しみだね~」




