第六百一話 酒の力は偉大だよね~(ドワーフ限定)
私事で恐縮ですが10月初めころまで忙しいので、申し訳ありませんが更新が遅れがちになるかもしれません。
今回のように少し遅れても更新はしていこうと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。
これからも「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をよろしくお願いいたします!
緑竜の狩りから家に帰ってきて一週間。
俺は、創造神様へのお供えやら、街に買い物へやらで、それなりに忙しく過ごしていた。
フェルたちは『暇だ~』って騒いでいたけどね。
ボソボソ『狩りへ』なんて言葉も聞こえてきたけど、さすがに聞こえなかったことにしたわ。
ハイエルフのみなさんはというと、相変わらず自由人ではあるけれど、うちの奴隷たちとも打ち解けてけっこう上手くやっているよ。
まだ新しい家ができていないから、一時住まいとして母屋を使ってはいるんだけど、食事などは従業員たちのところで世話になっているようだ。
代金は支払うからっていうことでお願いされたらしく、従業員たちの台所番のアイヤとテレーザから「もらってもいいのでしょうか?」って相談があったわ。
俺としては金の問題よりも、6人分も増えて負担にならないかが心配だったけど「作る量が少し増えるだけですし」と特に問題はなさそうだったから、ちゃっかりしてんなぁと思いつつ「もらっとけもらっとけ」と返しておいた。
まぁだけど、アイヤとテレーザからしたらハイエルフ6人分の食事が増えるわけで、調味料やらのネットスーパーからの支給品や、肉やらの現品支給は少し増やすようにしたよ。
小麦粉やアルバンの畑にない野菜の購入分としての食費も多少渡していて、それも増やそうと思ったらこっちは断固として断られたけどね。
アイヤとテレーザから「今でも多いくらいなんですから!」ってさ。
そんなわけで、うちの従業員たちとハイエルフのみなさんは食卓を共にする仲となっている。
島にいたころはもとより、街中で外食するよりも美味い飯が食えると、ヨルゲンさん、ヴェルデさん、ラドミールさんのハイエルフの男性陣はホクホク顔。
ハイエルフの女性陣も、自分たちが料理に向いていないことの自覚はあるようで、そういうことに手を煩わされずに美味い飯が食えることに何の文句もないようだ。
そうそう、ハイエルフのみなさんだけど、ギルドマスターの要望で冒険者ギルドでの解体の仕事も既に始めているんだけどさ、それもあって、良い肉が入るとそれをせっせと仕入れてアイヤとテレーザに献上しているらしい。
アイヤとテレーザも最初は「こういうのは困るし、みなさんの分だけ別の料理をというのは手間がかかるから、こういうことなら食事を一緒にすることを辞退したい」と伝えたそうだが、ハイエルフのみなさん曰く「みんなで食う分として使えばいいだけじゃん」ってことらしい。
そのことについてもアイヤとテレーザから相談があったけど、ハイエルフさんたちの言い分としては「自分たちとしては美味い飯が食えればいい。素材をどう使うかはお任せで」ということらしい。
要は、美味い飯さえ食えればいいんであって、その素材を従業員と食う飯の材料にされてもそこはまったく問題ないってことだ。
そんな感じで細かいことは全然気にしていないようだ。
それよりもハイエルフのみなさん、島にいた反動なのか美味い飯を食いたい欲求が相当に強いみたい。
そんなんだから、アイヤとテレーザには「みなさんが良いって言っているんだから、ありがたく使わせてもらいなよ」って言ってあるよ。
アイヤとテレーザは「ムコーダさんがそう言われるのであれば」って吹っ切って使うようにしたみたい。
ハイエルフのみなさんは美味い飯が食えるし、従業員たちはその美味い飯のご相伴に与れるしってんでお互いWin-Winの関係らしい。
そんな感じでハイエルフのみなさんと従業員たちの関係もすこぶる良好で、俺もホッと一安心だ。
そして、それを見計らったかのように、工事業者のブルーノさんの事務所から「明日から工事に入れる」との一報を受けたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
トンカンコン、トンカンコン―――。
大工仕事の音が鳴り響いていた。
「しかし、早いなぁ~……」
工事の様子を見にきて、その進み具合に思わず声が漏れる。
工事が始まってわずか三日でもう枠組みができている。
「儂らが本気をだしゃあ、これくらいの家なら十日もありゃあ出来上がっちまうぞ」
通りかかったブルーノさんが俺の独り言にそう答える。
「十日…………」
ドワーフすげー。
「ま、内装を含めると、もうちっとかかるがな。特にお主の所は風呂やらなにやらと贅沢しとるからのう」
魔石が付いた水道やら魔道コンロやらなんかもあるもんね。
ここの元の家主は、使用人を相当大事に思っていたのか元からあった家に標準装備されてたからねぇ。
どうせ作るなら同じ仕様にしないとさ。
「長屋もそんなには時間はかからんな。それよりもお主から提案された“めぞねっと”だかの集合住宅の方がちと手間がかかるかもしれん。なにせ今までにない住宅だからのう」
今回、ブルーノさんに注文したのは、トニ一家やアルバン一家、冒険者組が使っている住宅と同じものを一軒と、単身者用の長屋、そしてメゾネットタイプのアパートだ。
ハイエルフさんたちはそれぞれご夫婦なので、メゾネットタイプのアパートに入ってもらうことを考えている。
そして、単身者用はというと、冒険者組のルーク、アーヴィン、バルテルが入ることになると思う。
というのも、住宅を建てる前にルーク&アーヴィンの双子からちょっと相談されてな。
どうもタバサとペーターが本格的にくっついたらしいんだよね。
いつ結婚してもおかしくない間柄らしいんだけど、奴隷っていう立場を気にして結婚は保留というかするつもりがないと言っているみたい。
そんなん気にしないでいいのにさ。
んで、双子の言い分としては、熱々カップルと同じ家にいるのはツライってことらしい。
しかも、実姉だからいたたまれないんだって泣きつかれたわ。
そんじゃあということで、単身者用の長屋も作ってルーク、アーヴィン、バルテルにはそっちに移ってもらって、タバサとペーターにはハイエルフさんたちと同じメゾネットタイプのアパートに移ってもらおうと考えたわけだ。
そうすれば、冒険者組が使ってた住宅が空いて、もう一棟作れば戸建て住宅が二棟確保できる。
戸建て住宅の方には、新しい奴隷に使ってもらう予定。
まだもうちょっと先の話ではあるけど、新しい従業員も家族丸ごとでを優先して考えているからな。
トニ一家やアルバン一家を見ていると、家族が一緒の方がやる気が全然違うもんね。
仕事も真面目に取り組んでるしさ。
どうせなら真面目でやる気がある人の方がいいし。
単身者用の長屋は、警備担当の従業員に入ってもらう予定。
元冒険者や傭兵上がりの独身者だろうからね。
そんな感じで考えてブルーノさんには注文したんだ。
メゾネットタイプのアパートにも単身者用の長屋にも、キッチン・バス・トイレ完備だからブルーノさんにはちょっと呆れられたけどね。
ま、まぁ、金はフェルたちのおかげでヤバイくらいにあるから少しは使わないとね。
そんなことを考えていると、バンバンと背中を叩かれる。
「ま、儂たちに任せておけ! 気合い入れて良い家建てちゃるって。その代わり今日も……」
「分かってますって。いつものアレですね」
「お主、よう分かっているのう! ガハハハハハッ」
豪快に笑いご機嫌なブルーノさんに苦笑い。
工事に入る前に、工事代金から差し引いて是非ともウイスキーをと頼まれているんだよ。
ウイスキーがあるだけでドワーフ連中のヤル気が違うから、工事代金からなんて考えずに渡しているよ。
やっぱドワーフには酒だわ。
酒の力は偉大だよね~(ドワーフ限定)。




