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第五百九十六話 小学生の遠足の引率の先生の気持ちが痛いほど分かった

6月25日『とんでもスキルで異世界放浪メシ 12 鶏のから揚げ×大いなる古竜』発売となります!

今回は書籍のみの発売となりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 翌朝―――。

 昨日はちょっと遅めの昼食で、グリーンドラゴンのステーキを味わった後、夕食は食いしん坊カルテットの強い希望でローストグリーンドラゴンとなった。

 なぜか、ハイエルフのみなさんもいて「ちゃっかりしてんなぁ」とは思いつつも、美味い物はみんなで食った方が美味しいしなと思いみんなで美味しくいただいた。

 ローストグリーンドラゴンもめちゃくちゃ美味かった。

 そんな感じで、昨日はグリーンドラゴン尽くしでたらふく美味い肉を食って大満足の一日だった。

 とは言っても、毎日が肉の日がデフォなうちのみんな。

 食いしん坊カルテットことフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ。

 起き出して早々に『朝飯は?』と聞いてくるフェル。

 その表情は『お前、ちゃんと分かっているんだろうな?』とでも言っているようだ。

 一緒に起き出してきたゴン爺もドラちゃんもスイも、期待した顔をしている。

 俺は、そんなフェルたちを手で制して「分かってるって」と答える。

 朝から肉は当然な食いしん坊カルテット。

 当然のごとく『グリーンドラゴンの肉が食いたい!』とせっつかれると思って昨日のうちに準備しておいたのだ。

 昨日の夕飯のローストグリーンドラゴンを焼くときに余分に焼いておいてね。

 ということで、今朝のメニューはローストグリーンドラゴン丼だ。

 タレは水・醤油・砂糖・みりん・すりおろしニンニクをひと煮立ちさせたものだ。

 シンプルだけどローストビーフにもご飯にもよく合うんだ、これが。

 フェルたち用の深皿にご飯を盛って、薄く切ったローストグリーンドラゴンを放射状に隙間なく並べてタレをかけてある。

 今回は「グリーンドラゴンの肉と米との相性をダイレクトに味わうべし」ということで、あえてトッピングはなしにしてみた。

 それを……。

「はいよ」

 フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの前に置いた。

 みんな非常に満足そうな顔でローストグリーンドラゴン丼を頬張る。

 うんうん、美味かろう美味かろう。

 でだ、なんでハイエルフのみなさんが俺の前に並んでいるのかな?

 俺の前にはニコニコ顔で勢揃いしているハイエルフのみなさんが。

 まぁ、分かってはいるんだけどね。

 分かってはいるんだけど。

 ちょっとばかり釈然としないまま、しょうがないのでハイエルフのみなさんにもローストグリーンドラゴン丼をふるまった。

 俺に感謝の言葉を述べつつ、受け取ったローストグリーンドラゴン丼を実に美味そうに頬張るハイエルフのみなさんに「ちゃっかりしてんなぁ」とちょっと呆れる。

 家の中はちょっと狭いしなと、村の真ん中の広場で朝飯にしたのが仇になったな。

 そんなことを考えながら、俺用の朝飯を食うのだった。

 ちなみに俺用の朝飯は作り置きしてあるあっさり和食だ。

 食いしん坊カルテットやハイエルフのみなさんみたいに朝から肉っていうのは、俺じゃあさすがに胃がもたれそうだからね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「あれ、もういいんですか?」

 朝食を終えてまだ1時間も経っていないのに、ハイエルフのみなさんがもう集まってきた。

 朝食後の食休みとして、カレーリナで仕入れたお気に入りのモモっぽい香りのするフルーティーなお茶をみんなと飲んでいる時に(ちなみにフェルたちには、このお茶を濃い目に淹れて砂糖を入れて甘めにしたものを冷やしてアイテムボックスで保存していたものを出している。このお茶、最近アイスティーにしても美味いのを発見して、アイスティーにして保存するようにしているのだ)、この後カレーリナの街に帰ることになるから一緒に行くハイエルフのみなさんには荷物をまとめておくように伝えていたのだ。

 ハイエルフのみなさんはみんなアイテムボックス持ちとはいえ、この島での暮らしも長いわけだから、荷物の整理に早くても午前中いっぱいくらいはかかるだろうと思っていたんだけど。

「みんなアイテムボックス持ちだからな」

「そうそう。それに、持っていく荷物もそんなにあるわけじゃないしね」

「服と、各自使っている得物と、それから細々した生活用品が少しくらいだからなぁ」

「そんだけあれば困らないもんね」

「あとは、この島で狩った魔物の換金できそうな素材だな。これはまとめておいたから、そのままアイテムボックスに突っ込めばいいだけだったしな」

「あ、昨日報酬としてもらったグリーンドラゴンの素材も忘れずにしまったから大丈夫だよ」

 昨日の解体の報酬としてハイエルフのみなさんが希望したのは、牙1本と血を少々だった。

 牙は一番太くて長いのを渡したからナイフ二本作れそうだって喜んでたよ。

 血は、とある薬草数種と混ぜて丸薬にするらしい。

 なんでも“ハイエルフの秘薬”と呼ばれる効果の高い丸薬らしく、とても貴重な薬なのだそうだ。

 ヨルゲンさん曰く「俺たちの居た村は、ハイエルフの村でも比較的大きい村だったけど、それでも保管されていたのは一つだけだったからなぁ」とのこと。

 その貴重な丸薬が、グリーンドラゴンの血が手に入ったことで、ここにいる六人全員にいきわたる分が作れそうだとのことで、こちらも喜んでいた。

「忘れ物はないですか?」

「「「「「「大丈夫」」」」」」

 なんかすっごく短い時間でパパッとまとめてきたみたいだけど、本当に大丈夫かな?

 あ~、そっか。

 息抜きで人間の街に遊びに行ってしばらく生活していたりって話だから、そういうのは割と手慣れているってことか。

 長寿だから、そういうのも何回も繰り返していそうだしね。

「それじゃあ、カレーリナの街へ帰ろうか。ゴン爺、お願い。あ、いつもよりちょっと大きめにね。今回はハイエルフのみなさんも一緒だから」

『承知したぞい』

 そう言って、村の広場で大きくなるゴン爺。

 その体はいつもよりも一回り大きかった。

 体が大き過ぎて、村の建物がいくつか潰れてしまったが、ハイエルフのみなさんは気にしていないようだ。

 ゴン爺が大きくなるのを見て「おお~」とどよめくハイエルフのみなさん。

 フェル、ドラちゃん、スイが勝手知ったるでいつものようにゴン爺の背中に乗り込んでいく。

「ささ、みなさんもどうぞ」

 そう言うと、興味津々という感じで嬉々としてゴン爺の背中に乗り込んでいくハイエルフのみなさん。

 ハイエルフのみなさんが長い足でジャンプしながら華麗に乗り込んだ後に、四苦八苦しながらゴン爺の背中によじ登る俺。

 その差に嫉妬しながらも、平静を装いつつゴン爺に声を掛ける。

「それじゃあゴン爺、カレーリナに向けて出発だ」

『うむ!』

 ゴン爺がフワリと浮き上がり、どんどんと高度を上げていく。

 そこまではいつも通りだったのだが……。

「おおっ、あれが島か!」

「あんな形してたのね~」

「島があんなに小さく見えるぜ」

「本当に空を飛んでるのね!」

「空を飛ぶなんて初めての経験だな!」

「ホントホント。長生きしているといろいろな経験できるものね~」

 高高度を飛んでいるというのに、物怖じしないハイエルフのみなさんはゴン爺の背中を歩き回っている。

「ちょっ、みなさん! 落ち着いて! 危ないから座ってください!」

「大丈夫だって」

「大丈夫じゃないでしょ! 落ちたらどうするんですか!」

 自由気ままに歩き回るハイエルフのみなさんに気が気じゃない俺。

「ヤダわぁ。そんなマヌケは私たちの中にいないわよー」

 いや、そう言う問題じゃなくって。

「おーい、こっち来てみろよ! 眺め最高だぜ!」

 いつの間にかゴン爺の頭の上に立っているヨルゲンさん。

 ヨルゲンさんの言葉に他のハイエルフのみなさんがワラワラと集まる。

 そして、ゴン爺の頭の上からの眺めにワイワイとはしゃぐハイエルフのみなさん。

 そんな中、ゴン爺からの念話が入る。

『主殿、此奴ら振り落としてもいいかのう?』

「ダメ! 絶対にダメだからね!」

 焦って言葉にしてゴン爺に叫ぶ俺。

 そんな俺とゴン爺のやり取りなどそっちのけで、好奇心旺盛にかつ自由に空の旅を楽しんでいるハイエルフのみなさん。

 恐ろしく自由人なハイエルフのみなさんの行動に神経をとがらす俺だった。

 小学生の遠足の引率の先生の気持ちが痛いほど分かった旅だったよ…………。





 

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― 新着の感想 ―
ムコーダが成長しないのも悪いけどあまりにも扱いが不憫で作者がムコーダ虐めたいだけのように思えてきた
もう滅茶苦茶じゃねーか なんでこうエルフは年取ってんのに頭の中はガキなんだよ? ゴン爺もてめぇらが勝手にコイツラ誘っておきながら なんなのそれ? ムコーダが成長しない云々も苛つくが、周りも酷すぎる
他の人も書いてるけど、ムコーダの扱いが酷すぎるのでは。従魔が増えてからは従魔同士で結託して事を起こし、巻き込まれて流されるムコーダ…というパターンばかりで、ある意味奴隷より酷い生活だと思う。可愛がって…
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