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とんでもスキルで異世界放浪メシ  作者: 江口 連


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第五百八十九話 メシマズ嫁

みなさんご心配をおかけしました。

3回目のコロナワクチンを受けたのですが、その副反応で体調を崩しまして。

1回目・2回目の時は全然平気だったのですが、今回は体の節々は痛くなるしめちゃくちゃ体がだるいしで。

最初は風邪かと思っていたのですが、そういえばと副反応を調べたらめっちゃ当てはまっていました。

油断していましたが、3回目にして副反応が出ることもあるんだなぁと実感。

みなさまもお気を付けくださいませ。

 なんだかんだで時間は過ぎていって、結局、ハイエルフの村に一泊することに。

 目的だった緑竜(グリーンドラゴン)狩りは翌日へと持ち越されることとなった。

 俺たちは、ハイエルフの村のちょっと広めの空き家を貸してもらい宿に。

 そこに布団を敷いて、みんなで横になる。

 しかし、そこでも気になるのは先ほどの出来事だ。

「まったく、フェルもゴン爺も勝手にスカウトするのは止めてくれよな~」

『いいではないか。これで解体も捗って肉もすぐに手に入るようになるではないか』

『そうじゃ。彼奴らの長生きも伊達ではなさそうだからのう。これからは遠慮せずに狩りができそうじゃ』

「いやいやいや。ゴン爺、何言ってるの? 今までも遠慮なんてしてなかったでしょ」

 ゴン爺の言葉に思わず突っ込みを入れる。

「まぁ、今はそれは置いておいて。解体を頼むって言っても、冒険者ギルドとの兼ね合いもあるし。うちで狩ってきたもの全部、自分とこで解体してっていうのもさぁ……」

 冒険者ギルドの事業として、冒険者への魔物の討伐依頼やらはもちろんのこと、冒険者が狩ってきた魔物の解体やその素材の買い取りなんかの一切を取り仕切っているわけだからさ、それを無視して「これからは解体は自分のところでやります~」ってなってもねぇ。

 肉以外を買い取りに出すとしても、恐らくいい気はしないと思うんだよ。

 カレーリナのギルドマスターもヨハンのおっさんも良い人だから、これからも良い付き合いをしたいし、あんまり角が立つようなことはしたくないんだよなぁ。

『それならば、冒険者ギルドで解体は難しいと言われたものだけにすればいい話だろう。我らは誰が解体しようが、肉さえ手に入れば良いのだからな』

『うむ。そもそもがじゃ、先だってのドラゴンタートルや今回のドラゴンなど、解体が難しくてすぐに食えないというのが儂らの不満だったわけじゃからのう』

「そういう魔物の解体だけってことか。うーん、それならばアリ、か? でも、そんな大物ばっかり手に入れているわけではないし、ないときだってあるよな……。うちにってフェルとゴン爺が言っちゃったから、やっぱうちで雇うってことなんだろうし。そうなると給料を出さないとだけど、仕事してないときも払うのか?」

 雇用するってんなら、というかこっちが勧誘しておいて、バイトみたいに仕事したときだけお金払いますってのはさすがにないよなぁ。

 そうなると正社員並みにと考えると、仕事があるないにかかわらずやっぱり給料は払わないといけないか。

 でも、それはさすがにうちの奴隷(従業員)の手前できないよなぁ。

 みんなあんなにがんばっているのに、そんなに差があったらやってらんないよね。

 俺だったら絶対にブチ切れちゃうよ。

 悶々といろいろと考えてしまう。

 雇い主って立場は、めっちゃ大変だったんだなって今更ながら思うよ。

「あー、もう! フェルとゴン爺が勝手にスカウトするから、こういう風にいろいろ考えなきゃならないんだからな! せめて一言俺に言ってからにしてよ!」

 俺が悩んでいるというのに、どこ吹く風で目をつむり寝る体勢に入っているフェルと大欠伸をかますゴン爺にますますイラッとする。

 ちなみにだけど、ドラちゃんとスイは満腹になって眠かったのか既にグッスリ。

 ドラちゃんはゴン爺に寄りかかりながらポコンと膨らんだ腹をさらして気持ち良さそうにグースカ寝ているし、スイもフェルのモフモフの腹毛にうずまって気持ち良さそうに夢の中だ。

 俺も気持ちよく眠りたいってのに、いきなり持ち上がったハイエルフの雇用問題がそれを許さない。

 そして、また一つそれに関係する問題が頭に浮かんだ。

「そうだ! うちに来るっていうなら、住まいも用意しなきゃならないじゃないか! あ、それはブルーノさんとこに頼めばなんとかなりそうか」

 幸いというかタイミングが良いことに、うちに工事が入る直前。

 ブルーノさんに追加工事をお願いするしかないな。

 ハイエルフの夫婦が3組……。

 うちの母屋の裏の家と同じような家を2棟お願いする手はずだったけど、さらに3棟追加ってなると、お願いするはずだった仕事が倍以上になっちゃうよなぁ。

 さすがに怒られるかな?

 ブルーノさんのとこ仕事が忙しそうだから、次の仕事のスケジュールも入ってそうだし。

 メゾネットタイプのアパートみたいな感じにしたらどうかな?

 うーむ、ブルーノさんに要相談だな。

 カレーリナに帰ったら、すぐにブルーノさんに相談しなきゃなと考えていると……。

 コンコン―――。

 ドアをノックする音が。

「ちょっといいか?」

 これはヨルゲンさんの声かな。

「はい、今開けます」

 布団から出てドアを開けると、ヨルゲンさんとヴェルデさん、そしてラドミールさんの男性ハイエルフ3人がいた。

「えーと、ちょっと頼みがあって訪ねたんだが……」

「間が悪かったな……」

「なんというか、ハイエルフは耳が良いもんでな……」

 そう言ってバツが悪そうな顔をする3人。

 あ~、さっきの会話を聞かれちゃったかぁ。

「えっと、困らせるつもりはなかったんだぞ。というか、解体の給金なんぞいらんぞ。多分妻たちもそう言う」

「そうそう。それよりも、俺たちが解体した魔物の肉のご相伴にあずかれればそれで大丈夫」

「ああ。それと、今日みたいな料理をたまにご馳走してもらえればな」

 へ?

 そんなんでいいの?

 驚いていたら、ヨルゲンさんが「そもそも、俺たちはけっこういろんなことができるから、仕事にも困らないと思うしな」と言って、ヴェルデさんとラドミールさんもそれに頷いている。

 話を聞いていくと、やはり年の功か、冒険者みたいに魔物を狩ったりはもちろんのこと、広く浅く一通りのことはできるし、それぞれにその中で得意なものがあり特に人の街で暮らすときに職に困るということは今までもなかったんだそうだ。

 ヴェルデさんが解体が得意中の得意だというのは話に出ていたので知っているが、ヨルゲンさんは弓矢を作らせればハイエルフの中では右に出る者がいないほどの腕前だそうだし、ラドミールさんは木工が大得意で家具の類は大抵のものは作れるそうだ。

「そういうわけだから、あんまり深く考えなくても大丈夫だぞ。街に行ったら、自分たちで住むところも探すし」

「いやいや、そういうわけには。うちの方から誘ったんですし。うちは家も土地も広いんで、その辺は大丈夫かと思います。ちょうど従業員を増やす予定で、住まいの工事をお願いしているところだったんです。ついでにみなさんの家も建てることは問題ないんです。ただ、建つまでは俺の家に仮住まいってことになっちゃうんで、その辺だけ了承いただければ」

「全然大丈夫だぞ。なぁ」

「ああ。上等すぎる」

「俺たちは雨風凌げれば文句ないしな」

 雨風凌げればって、ハイエルフってけっこうワイルドなんだね。

「まぁ、新しい家というのを妻たちは大喜びするだろうがな。世話を掛けるが、その分きちんと家賃は支払うから、どうかよろしく頼む」

 お三方に頭を下げられた。

 というか……。

「家賃なんていりませんよ。だって、解体の対価が肉と俺の料理だけっていうのは安すぎでですよ。というか、俺の料理が対価にならないでしょ」

「いや、なる!」

「そうだ!」

「俺たちは美味い料理が食いたいんだ!」

 えー、なんでみなさんそんな力説してるの?

 困惑していると、ヨルゲンさん、ヴェルデさん、ラドミールさんが互いの顔を見合わせてため息を吐いた。

「いやなぁ、こんなことを言うのはアレだが、俺たちハイエルフはまぁまぁ器用だし、大抵のことはできるんだ。だけどなぁ、どうも料理だけは別らしくてなぁ……」

「まぁ、それでも、中にはそこそこ料理が美味いヤツもいたんだ。もちろんから揚げやとんかつと言った料理の足元にも及ばないんだけどな……」

「俺たち3人も料理は苦手で、なんとか食えるもんを作るので精一杯だ。妻たちには……」

「「「料理を作らせてはいけないんだ」」」

 ゲンナリした顔でそう断言するお三方。

 ああ、奥様たちメシマズなんですね……。

「というわけで、美味い料理ってのは俺たちにとって価値あるものなんだ」

「そうだ! 美味い飯を腹いっぱい食える幸せ」

「最高!」

 美男美女のご夫婦でみんな仲も良さそうだし、なんじゃこのリア充どもと思ったけど、そんな欠陥があったのね。

 美味い飯が食えないのは、ちょっとというかかなり嫌かも。

 その点では同情するかも。

「だから家賃はしっかり払う」

「いや、いいですって」

 ハイエルフのみなさんにとって美味い飯に価値があるのは分かったけど、素人の俺が作る料理だぞ。

 それをって言ってもなぁ。

 だってハイエルフのみなさんに解体を頼むのは冒険者ギルドでも躊躇する魔物だろ。

 その対価が、その肉と俺の料理ってのはいくらなんでもねぇ。

 家賃を相殺しても、もしかしたら足りないんじゃないかってこっちが心配なくらいなんだけど。

「いやいや、それは」

「そうだぞ」

「家賃は払わねばならんだろう」

「いやいやいや、いりませんって」

「いやいやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいや」

 すったもんだの末に、なんとか解体の対価としてはその魔物の肉と俺の料理、そして家賃の相殺ってことで決着がついた。

 なんか、これで本当に良いんだろうかと思うところはあるけど、ようやくハイエルフのみなさんが納得したところだからな。

 まぁ、俺の料理でいいんなら回数も量も多めにご馳走することにしよう。

「そうだ、そういやみなさん何の用事で?」

「そうだった。ここに来た当初の目的を果たさねばな」

 ヨルゲンさんが真剣な顔になる。

 ヴェルデさん、ラドミールさんもだ。

 その様子に余程大事な用件なのかと、こちらも身構える。

「ムコーダよ、酒を持っていないか?」

「……ハァ?」






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― 新着の感想 ―
味覚が特殊な訳でもないのに?味見の概念ないの? フェル達は料理しないからムコーダさんが味見してると先に食ってズルいとよく言ってたけど レシピ通り作らないでいきなりアレンジぶち込むタイプならもうどうしよ…
いいハイエルフ達だなぁ
飲食店のキッチンスタッフバリに経験有るなら素人でもなくね?
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