第五百七十五話 神様チョロい(後編)
皆様、今年も一年「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をご愛読いただきありがとうございました。
来年も「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をどうぞよろしくお願いいたします!
皆様良いお年を!
『はいはい! 次はオレの番だ~』
はいはい、次はアグニ様ですよ。
俺は、重量感のあるいくつかの段ボール箱をアイテムボックスから取り出して並べた。
「アグニ様の分がこちらです」
もちろん中身はアグニ様が大好きなビールだ。
今回も様々なビールをご用意したよ。
リクエストのあった、安定のS社のプレミアムなビールとYビスビールを箱で。
それから『あともう一つ箱であるといいなぁ』とのことだったので、S社で出している季節限定のビールが箱であったのでそれをチョイス。
あとは、前回の贈答用の瓶に入ったちょい高めのプレミアムなビールがめちゃくちゃ美味かったとのことで、今回も同じものをご所望されていたのでそれをご用意。
他はいつものように飲み比べセットをできるだけ多く頼むとのことだったので、いろいろ入れてみた。
地ビールのコンクールで賞をとったことのある地ビールセットやら海外産の黒ビール飲み比べセットやら、北海道産地ビール飲み比べセット等々、リカーショップタナカ厳選の今まで未購入だった飲み比べセットをこれでもかと入れておいた。
十分な量と種類を確保できたと思うから、満足されること請け合い。
『よっしゃ! これで今日は浴びるほどビールが飲めるぜー! ありがとよー』
じゃんじゃん飲んじゃってください。
しかし、本当にビールが好きなんだねぇ。
ビールなんてS社かA社かくらいにしか思ってなかった俺だけど、アグニ様に献上するようになって普通なら手を出さなかった地ビールやら海外産のビールやらを知るようになったことにはちょっと感謝かな。
いろんな味を楽しめるっていいよね。
『次は私。早く』
おう、ルカ様が急かすなんて珍しいね。
『アナタが遅かったからいけないの』
1か月後に合わせてチビチビ食ってたのが、それを過ぎちゃったから尽きたってことか。
『そう。アナタが悪い』
さーせん。
次は気を付けます。
「こちらになります。お受け取りを」
置いた段ボール箱が淡い光とともに消えていく。
中身は、ルカ様ご所望のいつも通りのケーキとアイスだ。
まずは、ニンリル様と同じように不三家の厳選素材スイーツフェアの限定ケーキ。
それから、イチゴのショートケーキに桃のミルクレープ、ブルーベリーのタルト等々のショートケーキを。
あとはアイスをネットスーパーと不三家から買えるだけご用意した。
もちろんルカ様が大好きなバニラアイスは多めでね。
『うん、満足。ありがと』
中身確認したのね。
満足されて良かったです。
そして、次は……。
『よしっ、儂たちの番じゃな!』
『よっ、待ってました!』
『ほれっ、ウイスキーを出せ出せ!』
『ウイスキー! ウイスキー! ウイスキー!』
酒好きコンビことヘファイストス様とヴァハグン様。
なんか、暑苦しさ感マシマシになっている気がするよ……。
さっさと出して早く退散してもらお。
前回に続いて、入念なリサーチは欠かしていないのか、またもや高級ウイスキーをリクエストされたよ。
しかもどんどんと情報を仕入れているから、あれやこれやとうるさいのなんのって。
キシャール様に並んでこのお二人のリクエストを聞くのは時間がかかるんだよ。
今回のリクエストは、特に注文が多かった。
一つ目は、世界初の12年熟成プレミアムバーボンで、『世界初っちゅうのが儂らの心を鷲掴みなんじゃ! 絶対に手に入れてくれ!』と鼻息も荒くリクエストされたバーボンウイスキー。
二つ目は、アメリカを代表する小規模独立スピリッツメーカーのウイスキーで、厳選された4種のオーガニックの原料をブレンドしてヘビーチャードオークの新樽で熟成させたというこだわりウイスキー。
ヘファイストス様もヴァハグン様も『小規模ならではの拘りじゃな!』『これは是非とも味わわないとな!』とこちらも鼻息荒く意気込んでいた。
三つ目は、昔ながらの製法にこだわった本格派のウイスキー。
なんでも、原料の大麦の発芽から瓶詰めまで一貫して蒸留所内で行っているというこだわりで、カラメルなど色調整のための添加物を使用しない無添加というのもこだわりの一つだそうだ。
華やかな香りが最大の特徴らしく『ウイスキー好きとしてその香りは確かめねばならんわい』と意気込んでいた。
四つ目は、スコッチウイスキーの中でも強烈な個性のアイラ島産のウイスキー。
ピート・ヨード・海藻・ウッド・フルーツといったものが合わさった独創的な風味が16年もの歳月をかけて熟成されて、その個性を一層際立たせるとともに一体感ももたらした豊かな味わいに仕上がっているのだそうだ。
酒好きコンビは『あの独特な味わいが16年の熟成でどう変化しているのか味わわねばなるまい!』と息巻いていたね。
五つ目は、アルコール度数は50度と高めのクラフトバーボン。
なんでも、低温と高温で二度焼きしたオーク材の樽で9年間熟成させたことで複雑な香りと芳醇で奥深い味わいを楽しめる非常に人気のバーボンウイスキーとのこと。
ヴァハグン様が『人気があるってんなら俺らも味わっておかないとな』と言って、ヘファイストス様も『確かにそうじゃな』と。
どういう理屈だよ。
六つ目は、酒好きコンビ曰く『やっぱりアレだよなぁ』とのことで、原点回帰で国産の世界一にもなったウイスキー。
あのウイスキーは純粋に『やっぱり美味い』のだそうだ。
今回はこの6本と残りは価格低めウイスキーとのことだったので、リカーショップタナカのランキングを参考にしながら手ごろな価格帯のウイスキーを本数勝負で多めにご用意した。
そんなウイスキーがしこたま詰まった重量感のある段ボール箱をアイテムボックスから取り出していく。
「それではこちらになります」
『ヒャッハー、待ってたぞい! ありがとよー!』
『よっしゃウイスキーだ! いつもありがとなー!』
『今日は飲み明かすぞ、戦神の!』
『おうよ! 味わい尽くそうぜ、鍛冶神の!』
掛け声の後、カチャカチャと瓶がぶつかる音が遠退いていった。
しかし、毎回夜通し酒盛りとは元気な神様たちだね。
「は~、終わった終わった。さてと、最後はデミウルゴス様だね」
今回は期間も空いちゃったし大奮発しちゃったよ。
リカーショップタナカ店長厳選日本酒飲み比べセットTOP5というランキングがあったので、TOP5を全部ご用意。
5位の信州諏訪五蔵飲み比べセットに4位の金沢地酒5本飲み比べセット、3位の秋田人気銘酒5本飲み比べセットに2位の全国人気酒造大吟醸5本飲み比べセット、1位の新潟五蔵飲み比べセットを全揃え。
それからいつもの梅酒もランキングTOP10を全部ご用意。
いつものプレミアムな缶つまも全種制覇な勢いでどっさりと用意したよ。
あと、前にお送りしたモツ鍋を気に入っておられたようなので、それもご用意。
もちろん〆の中華麺も込みでね。
ちなみにそれを用意していたら、フェルたちが今日は『モツ鍋か!』とか騒ぎ出しちゃって、俺たちの今晩の夕飯もモツ鍋になったわけなんだが。
最近は、リヴァイアサンの肉だなんだだったから、久々のモツ鍋はしみじみ美味かったわ~。
ま、そんなことはいいとして、デミウルゴス様にはそんなラインナップでご用意したよ。
日本酒、梅酒、缶つまの詰まった段ボール箱とモツ鍋の土鍋を用意して……。
「デミウルゴス様、お待たせいたしました~。こちらお納めください。今回は期間が空いてしまい申し訳ありませんでしたー」
『ふぉっふぉっふぉっ、気にするでない気にするでない。忘れずにいてくれるだけで儂は嬉しいんじゃからのう。梅酒にハマった儂の従者の方が落胆しておったくらいじゃわい』
従者さん、なにやってんの。
「今回はモツ鍋もご用意したので、ご賞味ください」
『おお、あれか~。日本酒にも合うんじゃよなぁ。彼奴も喜ぶじゃろうて。早速楽しませてもらうことにしようかのう。ありがとうのう』
そして、段ボール箱と土鍋が消えていった。
うんうん、モツ鍋楽しんじゃってください。
しかし、モツも大分食ったし、少なくなってきてるんだよな……。
これは早々に調達することも考えなきゃいけないかもしれないなぁ。
今年の更新はこれで最後となります。来年1月3日(月)の更新は正月休みとさせていただき、1月10日(月)より更新再開とさせていただきたいと思います。