第五百七十話 辛いー!
11月25日発売!
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是非是非よろしくお願いいたします!
既に並んでいる書店さんもあるようで、「購入済だよ!」という読者の方は本当にありがとうございます!
これからも「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をよろしくお願いいたします!
存分に買い物を楽しんでホクホク顔の俺だったが、急に眼前に広がる影が。
『もういいだろう?』
『主殿、買い物はお済みかのう?』
『いい加減に行こうぜ』
『屋台~!』
顔をズイと寄せてきたフェルとゴン爺。
その頭の上に乗ったスイとドラちゃん。
「あ、ああ。屋台な屋台」
正直、買い物も済んだしもう帰りたいな、なんて思っちゃったりしてたけど、そんなわけにはいかないね。
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの食いしん坊カルテットに急かされながら、屋台が集まる方へとズンズンと進んで行く。
「ほ~」
さすが市場の中にある屋台、いろんな屋台が集まっている。
お馴染みの串焼きに煮込みやスープ、それ以外にもドリンクを売っている店や、皮を剥いた果物を売っている店なんかもある。
美味そうな匂いが充満するその場に、テンション爆上がりの食いしん坊カルテット。
『よし、早速回るぞ!』
『楽しみじゃのう』
『食いまくるぜ~』
『いっぱい食べちゃうもんね~』
食欲全開でそう言いながら突進するフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ。
「ま、待てってば」
屋台しか目に入っていない暴走気味の食いしん坊カルテットの後を慌てて追う俺だった。
一番に足の速いフェルが目を付けた店へ。
『この店の匂いが気になって仕方なかったのだ』
爛々とした目で煮込みが入った鍋を見るフェル。
止めなさいよ。
屋台の親父さんがビビッてるでしょ。
フェルが目を付けるくらいだから美味そうなのは美味そうなんだけど……。
「なんか、辛そうだな」
匂いと色がもう辛そう。
「おう、辛いぜ! だが、それがまたいいって人気なんだぜ! 酒のアテにもおすすめだ」
俺のつぶやきを聞いていた屋台の親父さんがそう答えた。
「フェルとゴン爺とドラちゃんは大丈夫そうだけど、スイは大丈夫かな? 止めとくか?」
『んーん、食べてみたい!』
そうは言うが心配だ。
スイは辛いの苦手だからなぁ。
そう思いながら再び煮込みの鍋を見やる。
んー、どう考えてもけっこうな辛さっぽいよなぁ。
「なぁ、スイ。止めておいた方がいいんじゃないのか」
『スイもみんなと同じの食べるのー!』
ブルブル震えながら、どうしても『食べる!』と主張するスイ。
「じゃあ最初はちょっとだけね。それで大丈夫そうだったら、大盛りにしてあげるから」
『うんっ』
みんなと一緒に同じものを食えるとご機嫌だ。
手持ちの深皿に煮込みをよそってもらう。
木製のお玉のようなもの一杯で鉄貨5枚。
煮込みやスープ系はだいたい値段が一緒なのだが、その中ではちょい高めの価格設定かもしれない。
フェル、ゴン爺、ドラちゃんの皿には山盛りによそってもらい、スイの皿にはお玉一杯で。
ついでに俺もお玉一杯を俺用の深皿によそってもらった。
屋台が集まる場所近くに設置された飲食できる場所に移動して早速試食。
『肉はたいしたことはないが、このピリッとした味付けが良いな』
『うむ。濃い目の味とこの辛さは酒が欲しくなるわい』
『マズくはないけど、俺にはちょっと味が濃いかなぁ。米と一緒だとイイ感じかも』
そんな会話の後『お、それはいい考えだな。おい、米だ米。米を出せ!』とフェルが俺に白飯を強請ってきた。
「ハイハイ、ちょっと待てって」
そう言いながら土鍋を出して、米を皿に盛ってやった。
「程々にしておけよ~。この後も屋台巡りするんだろ」
そう言うと聞いているのかいないのか、『ドラの言うとおり米に合うな』とか『うむ。これはなかなか』とか『思った通り米と一緒に食った方が美味い』などと言い合いながらガツガツと白飯と一緒に煮込みを食っているフェル、ゴン爺、ドラちゃん。
『ピャッ?! 辛い~!』
「スイ?!」
『あるじー、辛いの~!』
イヤイヤをするようにブルンブルンと震えるスイ。
スイにはちょっとずつ食うよう言い聞かせていたのだが、ガッツリと食ってしまったようだ。
「あ、水水、いや、甘いのがいいのか?!」
ブルンブルン震えながら『辛いー』と騒ぐスイにテンパる俺。
飲食スペースの奥を陣取っていたことをいいことに、アイテムボックスから風呂上りに飲む用にストックしていたフルーツ牛乳を取り出して、すぐさま皿に注いでスイに出してやった。
「ス、スイ、これを飲むんだ!」
ゴクゴクと触手を使ってフルーツ牛乳を飲むスイ。
「スイ、大丈夫か?」
『うん。辛いのなくなってきたー。スイ、辛いのキライ。やっぱり甘いのがいい……』
ちょっぴりショボンとするスイに追加でフルーツ牛乳を注いでやった。
そして、件の煮込みを俺も食ってみる。
「かっら」
口の中がヒリヒリしてくるほどの辛味があった。
「なにこれ、思ったよりもさらに辛い。激辛って言ってもいいじゃん」
大人の俺がそう感じるのだから、スイにとっては相当だったろう。
もっと強く止めていればよかったと後悔。
「ごめんなぁ、スイ。ちゃんと止めてればよかった」
『ううん、スイが食べたいって言ったんだもん。でもね、あるじが「食べない方がいいよー」って言ったのはもう食べないようにする~』
スイが食べるものはもうちょっと気を付けなくちゃなと俺も反省した。
『ククク、お子ちゃまのスイにはちょっと早かったようだな~』
『うむ。この辛さはスイにはまだ早かったのかもしれんのう』
『ピリッとして美味いんだがな』
おいフェル、毒まで『ピリッとして美味い』なんて食らうお前と繊細なスイちゃんを一緒にすんな。
スイと俺の残した煮込みは責任を持ってフェルに処理してもらった。
フェルは追加の煮込みに嬉々としていたけどね。
『よし、次行くぞ! 俺が目を付けた屋台があるんだ~』
パタパタと羽を動かして嬉しそうにそう言いながら先導するドラちゃん。
『ここだ、ここ。すっげぇイイ匂いがしてくる店!』
ドラちゃんに連れてこられた店は串焼きの店だった。
確かに辺りには食欲を刺激するようなイイ匂いが立ち込めていた。
「これは、ニンニクの香り……」
「そうだぜぇ。ガーリケとハーブ、塩を混ぜた特製ダレで焼いた自慢のコカトリス肉! 兄さんも食ってってくれよ!」
ガタイの良いまだ若そうな兄ちゃん店主がそう言う。
フェルたちを見ても驚かないところを見ると、冒険者あがりとかか?
「兄さん、従魔連れってことは冒険者だろ? 俺の店は冒険者たちにも評判がいいんだぜ! ま、俺が元冒険者ってのもあって昔仲間が食いに来てくれるってのもあるんだがな。ガハハハッ」
やっぱり元冒険者だったか。
でも、この串焼きは冒険者がむっちゃ好きそうなんだよな。
大きめのコカトリスの肉を串に刺してニンニクたっぷりの塩ダレで香ばしく焼き上げたなんて、もろに肉体労働した後に欲するヤツやん。
そんな風に思っていると、頭の中に声が響く。
『話なんてしてないで、早く食わせてくれよ!』
この店に目を付けていたドラちゃんが、さっさと買わない俺にちょっぴりイラッときていた。
ドラちゃんを見ながら「へいへい」と返事して、串焼きを購入。
再び飲食スペースに戻り、串焼きを試食。
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイには各10本で、俺は1本。
『ふむ。これは良いな!』
『味も良いが香ばしい風味がたまらんのう』
『美味しいね~』
『だろだろ~。俺が目を付けるんだから絶対美味いんだっつうの!』
肉にかぶりつきながらも得意げなドラちゃん。
俺もニンニクの香りに釣られて串焼きにかぶりつく。
塩ダレへの漬け込みが少々甘いのか、肉がちょっとだけ硬く感じたけれど、それでも美味い。
ニンニクたっぷりの塩ダレが肉に合わないわけがない。
美味いけど、次の日にデートなんて時はアウトなやつだな。
まぁ、俺にはデートする相手なんていないけども、ハハ。
そんなことを考えてちょっぴり空しくなりながら串焼きを食べていると……。
『あるじー、美味しいね~』
ようやく美味い物にありついてご機嫌のスイ。
そうだ。
俺には癒しのスイがいるんだい。
スイを撫で繰りつつ串焼きを食い終えた俺だった。
フェル、ゴン爺、ドラちゃんは既にペロリと平らげていて、見計らったように『あっちから美味そうな匂いがするんじゃ』と言い出すゴン爺。
そんな感じで、その後もみんなの鼻の赴くままに屋台巡りを敢行。
日が暮れて屋台が閉まる寸前まで食いしん坊カルテットにあちらこちらへと連れまわされる俺だった。




