第五百六十話 いやまぁ、ノリでのう
ちょいUPが遅くなり申し訳ありません。
書き直してたりしたら遅くなってしまいました(汗)
『へっへ~、全部やっつけたー!』
『はっ、手応えのない奴らだったな!』
ドラちゃんとスイは、小手調べとばかりに瞬く間に小さい恐竜の集団を全滅させた。
『うむ。ドラとスイならば当然だな』
『ドラとスイの相手をするには、あれでは格が違い過ぎじゃな』
あの、ピラニアみたいに獰猛な恐竜が……。
しかも火を噴いていたのに……。
それが、ひどい有り様で転がっていた。
「あー、倒したのはいいけど、これじゃあ素材が取れそうにないな……」
丸焦げ&一部が溶けた屍ばかりだ。
『別にいいだろう。ここのは肉も美味くないしな。それに、そんな雑魚は持って帰っても仕方ないだろう』
『素材として狙うなら、断然大物じゃろうな』
フェルとゴン爺がそんなことを言う。
俺もそうかと流されそうになったけれど、いや、待てよと思う。
フェルとゴン爺は雑魚雑魚って言うけどさ、これって実は珍しいんじゃないの?
だって、こういう恐竜みたいな魔物がいるなんて聞いたことないもん。
フェルやゴン爺の言うとおり、ここが“ウラノス”並に特殊な場所だとしたらさ、それこそ何百年も人が入ったことがないとかだぞ絶対に。
だとしたら、フェルとゴン爺が雑魚雑魚言っているこの小さい恐竜だって、冒険者ギルドにしたら十分な参考資料になるんじゃないかと思うんだ。
ウラノスの魔物を買い取りに出した時、ギルドマスターがそんなようなことをチラッと言っていたし、それもあったからだろうけどウラノス産の魔物は全部買い取りになったんだから。
そういうわけだから、一応回収。
もちろん比較的キレイな遺骸をな。
『おい、そんな雑魚を回収しても何の足しにもならんと言っているだろう』
「いやさ、フェルとゴン爺はこれのこと雑魚雑魚言ってるけどさ、そもそもここって人が来たことある?」
ジト目でフェルとゴン爺を見ながらそう聞くと、フェルは『知らん』と言い、ゴン爺も『儂も知らんのう』と返ってきた。
「あのねぇ……」
さっき考えていたことをフェルとゴン爺にこんこんと言い聞かせた。
「要はそういう人の手が入ってない場所の魔物っていうのは、冒険者ギルドにとっても貴重な資料になり得るってことだよ」
『む、むぅ、そうか。好きにしろ』
『そ、そうじゃな。主殿が回収する分には、好きにしたらいい』
うむ。好きにするよ。
というわけで、貴重な資料となるだろう倒した魔物は全部回収だ。
これでギルドマスターの説教を回避できるかもしれないし。
というか、それが本命。
ギルドマスター、貴重な資料は回収していくから怒らないといいなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ギャーッ、早くなんとかしろー!」
『ちょっと黙ってろ! お主がうるさくて戦闘に集中できんだろ!』
『主殿! そんなに心配せんでも儂らの結界はそうそう壊れはせんわい!』
『そうだぞ! 俺らは戦ってんだからちょい静かにしてろって!』
『スイのが強いんだからねー! エイッ!』
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ、みんな只今絶賛戦闘中。
みんな俺に文句言っているけど、実は戦いを楽しんじゃってるよな?
俺は絶賛襲われ中だってのに~。
確かに結界で、攻撃は防がれているけど、こいつらそんなのおかまいなしにガンガン咬みついてこようとするんだよ!
なんでこんなにアグレッシブなんだよ!
「とにかくそっち早く終わらせて助けてくれよ~!」
そう叫びながら身を縮こませるばかりの俺だった。
こうなる前、小さい恐竜を倒した俺たち一行は、再び森の中を進んでいた。
そこで初めにそいつがやって来たのだ。
フェルが最初に仕留めた恐竜。
見上げるほどに大きな巨体で、首のところに特徴的な棘のような突起が並んでいた。
そして、俺たちを睨みつけるような赤い目。
フシューッと鼻から息を吐き出した後、パカリと開いた口の中には鋭い歯がズラリと並んでいた。
不思議だけれど、その姿は映画で観るように鮮明に俺の目に映っていた。
その姿に呆然としていると、映画で聞いた恐竜の咆哮みたいななんとも表現しにくい声で一鳴きした後、その巨体に見合わない素早い動きで俺たちに襲い掛かった。
『ハッ、そこそこの大物が掛かったな! 我が相手をする!』
そう言ってフェルが戦闘に入った。
フェルが相手なら大丈夫だろうと、ちょっとゴン爺、ドラちゃん、スイと俺は少し離れた場所に退避。
獰猛そうな恐竜を鑑定してみたら、“アクロカントサウルス”と出た。
もちろん肉食で、ここでおかしいのがやっぱり火を噴くと出たこと。
そして……。
「おい、そいつ酸も吐くみたいだぞ!」
『フンッ、酸など我には効かんわ!』
フェルに咬みつこうと何度も素早く頭を振るアクロカントサウルス。
しかし、その程度の動きではフェルを捉えることは叶わない。
焦れたのか、アクロカントサウルスが頭を振りかぶって何かを吐き出すモーションに入った。
『だから我に酸など効かぬわ。それに、お前はここでは素早い方かもしれぬがな、我にとっては止まっているようなものだ』
そう言って前足を振り下ろした。
ザンッ―――。
フェルの十八番とも言える爪斬撃だった。
アクロカントサウルスの胸元がザックリと切れ、頭がボトリと地に落ちた。
決着がついて、ホッとしたのも束の間。
フェルとアクロカントサウルスの戦闘の音に引き寄せられたのか、次々と恐竜が現れたのだ。
それも、どいつもこいつも見ただけで獰猛だとすぐに分かるようなのが。
当然、戦いのゴングが鳴り戦闘開始。
フェルが相手にしているのが、やって来た獰猛そうな恐竜の中でもひときわ大きい恐竜で、鑑定では“ギガノトサウルス”と出た。
そして、説明書きには、これも火を噴くとあり、さらにヒヒイロカネをも噛み砕くと書いてあった。
ゴン爺が相手にしているのは、言わずと知れた暴君Tレックスだ。
こちらも鑑定の説明書きには、火を噴くとあり、アダマンタイトをも噛み砕くとあった。
そして、さらに爪に即死級の毒があるとも。
ドラちゃんの相手は、鑑定で“カルカロドントサウルス”と出た。
これも説明書きには、火を噴くとあり、アダマンタイトをも噛み砕くとあった。
それに加えて、アダマンタイトを切り裂く爪を持つとも。
スイの相手は、“カルノタウルス”と出た。
他の恐竜に比べると一回り小さいけれど、頭に二本の角のような突起がある姿で、素早い動きだったアクロカントサウルスの比じゃないくらいにすばしっこい。
その素早さで猛然とスイを追い回す姿は恐怖でしかない。
これも説明書きには、火を噴くとあり、アダマンタイトをも噛み砕くとあり、さらにその強靭な脚力で獲物を逃さないとあった。
そんな恐ろしい恐竜たちと四方で激しい戦闘がある中、俺は「とにかく早く終わってくれ!」と思いながらジッと待っていたわけだが、ここの恐竜は待ってくれなかった。
俺のところにも、恐竜はやって来たのだ。
フェルたちが相手にする恐竜よりもはるかに小さいのだが、見ただけで分かる獰猛さ。
というか、俺に目を付けた瞬間から、集団で襲ってきた。
俺に張られた結界に攻撃を阻まれようが、そんなのおかまいなしにガンガン咬みついてこようとする凶暴さ。
俺のところにやって来たのは、そんな好戦的過ぎる恐竜“ヴェロキラプトル”だった。
そして、今……。
ガンッ、ガンッ、ガンッ―――。
「うおーっ、まだそっち終わらないのかっ?!」
ボォォォッ―――。
「こいつら火まで噴いてきた!」
絶え間ない攻撃に身が縮む思いだ。
というか……。
「異世界とはいえ、絶対にこの恐竜たちおかしいって! この世界を創ったのはデミウルゴス様なんでしょ?! なんでこんなの創ったんですかぁぁぁっ!!!」
知り合いの創造神に思わず文句を言うと、頭の中に声が響いてきた。
『いやまぁ、ノリでのう。お主の世界の恐竜を参考にしつつ、ちょいと「おりじなりてぃ」というものを加えてのう』
「なんですかその軽いノリは! というかそんなオリジナリティ加える必要ないですから!」
『しかし、すっかり忘れておったが、生き残っていたんじゃのう。うむ、うむ』
「ちょっ、忘れてたって?!」
『いやまぁ、そういうこともあるわい。それに、お主にはこの世界最強のフェンリルと古竜がいるんじゃから大丈夫じゃて』
「大丈夫とかじゃなくってですね!」
『おっと、呼ばれたわい。まぁ、そういうことじゃ。さらばじゃ~』
「ちょっと、デミウルゴス様?! デミウルゴス様ぁぁぁっ」




