第五百五十九話 恐竜世界(異世界版)
皆様、ご心配をおかけしてすみません。
完全にこちらのミスです。UPし忘れてしまいました(汗)
書き上がったのが直前で、間に合った~とホッとしてすっかりUPした気でいました。
感想欄を読んで今気が付いたというアホっぷり……。
本当にすみません。
ただ、更新がちょっと遅れたことで「更新ストップ?」のような書き込みが多いのにはちょっとビビりました。
それだけ更新を楽しみにしていてくださる方がいるのかなと嬉しくなりましたが。
安心してください。エタったりしませんので。
来週ももちろん更新しますので、これからも「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をよろしくお願いいたします!
…………。
「本当にここ、山のてっぺんなんだよな?」
『うむ。主殿も儂の背中から見ていたじゃろう?』
ゴン爺の言うとおりなんだけどさ……。
「こんなとこに、こんな森があるなんて普通思わないだろう」
そうつぶやきながら呆然と目の前に広がる森を見つめる俺。
ここは、狩りだと連れてこられた森。
目を疑う光景だけど、ここは大きな山の頂上にできたカルデラの中にあった。
しかも…………。
「なんかさ、普通の森とはちょっと違うような」
やたらとシダっぽい植物が多い。
それに、生えている木々の幹がやたらと太く、上部の方に枝があって、葉が茂っているのだ。
なんというか、まるで、子どものころに図鑑で見たジュラ紀とか恐竜がいた時代の森のようだった。
今までに見てきた森の植生とは明らかに違う。
それに、この陽気だ。
王都は暑くもなく寒くもなく、春先の陽気のようで割と過ごしやすかった。
しかしながら、この山に近づくにつれて雪が積もっている場所もちらほらとあったし、この山の頂上付近は雪に覆われていたんだ。
ゴン爺に乗っている時は結界もあったからそれほど寒さは感じなかったけれど、雪が積もっているのはバッチリ見えていたから、もしかしたらけっこう寒い場所なのかもと防寒着の心配をしていたくらいだったのに。
それがどうだ。
ここは、じっとりと汗ばむくらいに暑い。
フェルとゴン爺が、“ウラノス”に似た場所と言っていたのがなんとなく分かる。
とにかく特殊なのだ。
きっといろいろなことが。
なんだかまたヤバい場所に来てしまったことに、少々ビビりながら思わずつばをゴクリと飲み込んだ。
『ねーねーあるじー、見てー。この葉っぱ面白いよ~』
そう言いながら、スイが近くにあったシダのような葉っぱを触手でチョンチョンと突いた。
すると、シュンと葉っぱが閉じていった。
それを見てキャッキャッとはしゃぐスイ。
『なんだそれー?! 俺もやってみる!』
そう言いながらドラちゃんがシダのような葉っぱをスーッと撫でていく。
そして、またしても触れられた葉っぱはシュンと閉じていった。
『おもしろっ!』
『スイももっとやるー!』
葉っぱに触ると閉じる面白植物。
ドラちゃんとスイにとっては格好のオモチャだったようだ。
葉っぱに触れて閉じる様を見てはキャッキャッとはしゃぐドラちゃんとスイ。
そんな光景に思わずほっこりする俺だったが……。
「いかんいかん。ここはそんなほっこりできる場所じゃねぇ」
それにだ……。
「今思い出したけど、冒険者ギルドに言ってないじゃん! 書き置きもできなかったし! そのままゴン爺に乗ってきちゃったじゃん! これまたギルドマスターに説教コースじゃんかぁ~」
そう言いながらガックリと項垂れる俺。
『なにを言い出すかと思えば、そんなことか』
『もう来てしまったし、諦めるんじゃのう』
背後からフェルとゴン爺の声が。
お前ら、冷たい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガサッ―――。
ビビクゥッ。
ちょっとの物音にもビクゥッとしてしまう俺。
「だ、大丈夫なのか、ホントに」
『ただの物音じゃ。主殿は少々ビクビクし過ぎだのう』
呆れ気味にそう言うゴン爺。
「しょうがないだろう! お前らが脅かすから!」
周囲を気にしながらゴン爺に抗議するも、ドラちゃんに笑われる。
『ククク。それにしたってビクビクし過ぎだろう。俺らがいるんだから大丈夫だって』
『あるじはスイが守るよー!』
「優しいのはスイだけだよ~。ありがとうなぁ。頼りにしてるからなー」
フェルの背中の上に乗っていたスイをギュッと抱きしめる。
『まったくお主という奴は……、ハァ』
フェルは何ため息ついてんだよ。
失礼なヤツだな。
『別に脅かしたわけではないんだがのう』
ゴン爺がそう言いながら困ったように頬を鋭い爪でポリポリ掻いていた。
今回の狩りは、俺もフェルたちに同行していた。
本当は、みんなを待っていようと思っていたんだけどね。
一人じゃ不安もあるけれど、みんなの狩りに同行して恐ろしい魔物に相対するよりは、大人しく待っていた方が少しはマシな気がしたし、なんだかんだ言ってもフェルとゴン爺の結界は優秀だからさ。
だけど、フェルとゴン爺に『いいのか?』って念押しされてさ。
いつもはそんなこと言わないから、「何が?」って聞いたんだ。
そしたらさ……。
フェルとゴン爺曰く、『ここの奴らはほとんどが肉食だぞ』とか『頭は弱いんじゃがどいつもこいつもとにかく獰猛でのう』とか『結界は張って行くから、まぁ食われはしないだろうが』とか『こう言ってはなんだが、主殿は彼奴らにとっては良いエサじゃからのう。かなりの数に囲まれはするかもしれんのう』とか『お主に手を出せないことに焦れて、集まってきた者同士で食い合うくらいにはなりそうだがな』とか。
なにそれコワッてなって。
フェルとゴン爺の話を聞いて俺が顔を青褪めさせていたら、『お主は小心者なところがあるからな。一応聞いてみたのだ』っていうフェルの声が遠くに聞こえてさ。
『まぁ、しかし、我らの結界があるから大丈夫だろう』
『うむ。儂らの結界じゃ。まかり間違っても食われることはあるまい』
フェルとゴン爺がそう言って勝手に納得しててさ。
慌てて「行く! 一緒に行く!」って返事したんだ。
結界に守られて物理的に俺は大丈夫だったとしてもだよ、周りで食い合い?
そんな地獄絵図な展開は見たかないよ!
ってか、そんなん見ちゃったらしばらく眠れないよ!
相当なトラウマだよ!
食われなきゃOKというある意味呑気なフェルとゴン爺にガッカリしつつ、自分の精神衛生上よくないので俺はみんなに付いていくことにしたのだ。
そういうわけで、俺を含めた一行は、薄暗い森の中を進んでいた。
『魔物、いないねぇ~』
スイがつまらなそうにそうつぶやいた。
『フェル、ゴン爺~、この森の奴ら、本当に獰猛なのか?』
ドラちゃんもつまらないのか、フェルとゴン爺にそう聞く。
「いいじゃんか。来ないなら来ないで。もう少し行って出遭わなかったら帰ろうよ。うん、そうしよう」
そんな獰猛な魔物になんか遭わなくていいんだよ。
『フン、帰るわけなかろう。それに、もう来てるわ。雑魚だがな』
『うむ。集団で狩りをする小物じゃろう。そのうちの少数が、こちらを偵察しに来ているのう』
フェルとゴン爺にそう言われて、ギョッとして周囲を見回した。
スイとドラちゃんも周りを見回している。
と言っても、こちらは興味津々という感じにだけど。
そうこうしていると、ガサガサッと葉をかき分ける音がした。
そして、ヒョコンと小さい何かが飛び出してきた。
『なんか来たー。トカゲさん?』
俺たちの前に飛び出してきたのは、それほど大きくはない小さな生き物が3匹。
しかし、その姿に俺は大いに驚いた。
「え? 恐竜? なんで?」
その姿は2本足で立つ恐竜そのものだった。
そのことには驚いたが、小さいこともあってそれほど恐怖は感じない。
良いのか悪いのか、この世界でいろんな魔物を見てきたしなぁ。
もっと大きくて獰猛なのをさ。
しかし、この恐竜、どっかで見た覚えがあるんだよなぁ……。
図鑑だったろうか?
それともテレビだったろうか?
思い出せないけれど、巨大な魔物が多いこの世界では、それほど脅威には思えない感じだ。
見た目は恐竜だけれど、足から頭までの体高が俺の膝丈程度という小ささと、頭を左右に振る姿が首を傾げる仕草に見えてコミカルで愛嬌さえ感じる。
スイもそう思ったのか、俺の腕から飛び降りて近付くと『トカゲさ~ん。お友達になろ~』と触手を伸ばしている。
そんな交流にほんわかしていると……。
『おい、小さいがそいつも肉食だぞ』
フェルがそう言った直後。
ガブッ―――。
スイの触手に小さい恐竜が咬みついた。
それが合図のように他の2匹の小さい恐竜もスイの丸いボディに咬みつく。
「ギャーッ、スイーッ?!」
『むー! スイ、こんなんじゃやられないもんっ! エイッ!』
スイがそう言った途端に、3匹の恐竜が苦しみだした。
『『『ギギィィィッ』』』
咬みついていたスイから口を放して手足をバタつかせたあと、バタリと倒れる。
『うへぇ』
『酸を放ったか』
『えげつないのう。しかし、確実に仕留めるという意味では悪くない攻撃法じゃな』
グズグズに溶けだした恐竜の腹。
『へへ~、スイ、強いもんね~』
「スイちゃん……」
小躍りするように左右に体を揺らすスイを見てガックリと項垂れる俺だった。
『おい、気を抜き過ぎるな。すぐに本隊が来るぞ』
「本隊?」
『主殿、その3匹は謂わば斥候じゃよ』
「え? てことは……」
『来たぞ。雑魚だが数が多い。ドラ、スイ、お前たちで仕留めてみろ!』
『雑魚相手ってのがちょっと癪だが、やってやんよ!』
『やるよー! スイ、がんばっちゃうもんね~!』
直後、ドドドドドドッという足音と共に小さい恐竜の大群が現れた。
「って、多すぎぃーっ」
そして、この恐竜をどこで見たのかをはっきりと思い出した。
「この恐竜、映画で観たんだった! 小さいけど、ピラニアみたいに獰猛だって!」
その俺に反応したのか、一部が猛然と俺に迫ってきた。
「ギャッ、こっち来んなーっ!」
『あるじをいじめるなー! エイッ!』
ビュッビュッビュッ―――。
『スイにだけいいカッコさせるかよ! とりゃっ!』
ザシュザシュザシュザシュッ―――。
スイの酸弾とドラちゃんの氷魔法が飛び交う。
『あ、ドラ、スイ。そ奴らにはあまり近付かん方がいいぞ』
ボウゥッ―――。
『うおっ』
『ほれ、そのように火を噴くからのう』
『けっ、そういうのは早く言えよゴン爺!』
『すまんすまん。じゃが、ここにいるのは火を噴くものが多いぞ』
『そうなんか。ま、でもそれなら俺の方がもっと強力なんだけどな! 食らえ!』
ゴォォォォォォッ―――。
小さい恐竜を焼き尽くす勢いのドラちゃんの疑似ドラゴンブレスが炸裂した。
「ドラちゃんやり過ぎー! 森林火災が起きちゃうって!」
というか……。
「なんでこの世界の恐竜は火なんて噴くんだよぉぉぉっ」




