第五百四十九話 オホォォォォォッ
誰かさんが喜びの奇声をあげております(笑)
「みなさん、お久しぶりです!」
ヴェルナーさんにラモンさん、ヴィンセントにリタにフランカ。
懐かしい面々に自然と笑顔になる。
「あ、もしかして冒険者ギルドに招集されました?」
高ランクの冒険者を招集するって言ってたからなぁ。
「ああ。俺たちは王都に滞在していたからな。真っ先に話が来た」
ヴェルナーさんが頷きながらそう言った。
「ムコーダさんの名前が出たら、我らも協力しないわけにはいかないですからな」
ラモンさんが笑みを浮かべながらそう続けた。
ありがたいねぇ。
「ところで、ムコーダさん。またすごいのを従魔に……」
ヴェルナーさんが俺の背後を見てそう言った。
そして、その言葉にラモンさんも、ヴィンセントにリタにフランカも頷いている。
間違いなくゴン爺のことだよね。
「いやぁ~その、成り行きでというか」
「成り行きで古竜を従魔にできるムコーダさんがすごいっす! というかとんでもないっす!」
今度はヴィンセントのその言葉にヴェルナーさんほかアイアン・ウィルの面々が頷いていた。
「まぁ、理由はフェルと同じようなものですよ……」
苦笑いでそう説明する俺。
大飯食らいが増えただけです。
「ということは、ムコーダさんのご飯に釣られて?」
『うむ。主殿の飯は何物にも代えがたいからのう』
「うおっ、しゃべった!」
リタの言葉に返したのはゴン爺だった。
「あ、うちの一員になったゴン爺です」
そう紹介したら、アイアン・ウィルの面々が下を見て肩を震わせているんだけど。
解せぬ。
「ハァ、苦しい。でも、フェル様は古竜とやり合ったって言ってませんでしたっけ? もしかして、ゴン爺様ではない古竜なんすか?」
ヴィンセントが以前フェルが話したことを覚えていたのか、そんなことを言い出した。
『いや、やり合ったのは此奴だ。だがまぁ、今は一時休戦だ。今のところは仲間だからな』
『うむ。そういうことじゃ』
フェルとゴン爺がそう言うと、「ふぉ~」っと変な声を上げながら興奮するヴィンセント。
「フェンリルと古竜のコンビなんて最強じゃないっすか! 無敵っすよ、無敵!!」
『おいおい、俺らも居るっての!』
『む~、スイもいるのー!』
自分たちもいるとヴィンセントの前に躍り出るドラちゃんとスイ。
「うおっ。そうだった、ムコーダさんにはちっこいドラゴンとスライムの従魔もいるんだったすね」
「フェルやゴン爺には及ばないけど、ドラちゃんとスイも十分強いんですよ」
Sランクの魔物を仕留められるくらいね。
「みんなムコーダさんのご飯に釣られてなんですよね?」
リタがそう聞くから「まぁ」と答える。
「それだと毎日ムコーダさんのご飯食べられるのかぁ。いいなぁ~」
そんなことを言うリタに、ラモンさんが「馬鹿者」と呆れながら怒る。
「我らは飯も食うや食わずの低ランク冒険者ではないのだぞ」
「ラモンの言うとおりだ。毎日ちゃんと食ってるだろうが」
ラモンさんに続いてヴェルナーさんもリタを窘める。
「それとこれとは別なの! ムコーダさんのご飯はめちゃくちゃ美味しいんだから」
このリタの言葉にはヴィンセントが力強く頷いていた。
「しっかし、ムコーダさんが王都にいるなら冒険者ギルドで会えるかなーと思ってたら、全然ムコーダさん冒険者ギルドに来ないんすもん」
口を尖らせながらヴィンセントがそう言う。
「ごめんごめん」
とある理由で冒険者ギルドには極力近寄らなかったんだよ。
ウザいあの人がいて絡まれるんじゃないかと思ってさ。
まぁ、その人にはさっき会っちゃったんだけどね。
「あなたはムコーダさんの美味しい料理を食べさせてもらいたかっただけでしょうが」
ちょっぴり呆れ顔でフランカがヴィンセントに突っ込む。
「うっさい。期待してたのは俺だけじゃねぇもん。リタなんて「ムコーダさんのご飯食べられるかも~」って涎垂らしてたんだからな」
「嘘言うな! アタイ涎なんか垂らしてないもん!」
「ハンッ、垂らしてたね~」
「垂らしてない!」
やんややんやと言い合うヴィンセントとリタ。
それを見ていたフランカは「あなたたちったら……」とさらに呆れ顔だ。
「二人ともやめぬか」
ラモンさんが止めに入ってようやく言い合いを止めるヴィンセントとリタ。
それでも子猫がフーフー威嚇するように睨み合っていたけれど。
ま、ケンカするほど仲が良いってことなのかな。
「騒がしくてすまないな」
ヴェルナーさんが申し訳なさそうにそう言う。
「いえいえ。逆にみなさん変わりないなと思って嬉しくなりました」
「ハハッ、確かに。ヴィンセントが調子いいのとリタがうるさいのは変わりないな」
「「リーダー?!」」
「おっと、変なところで耳が良いのもな」
その言葉に、ヴィンセントとリタを除いた面々が笑った。
そして、やっぱりパーティー仲間がいるっていいなと少し羨ましくなる俺だった。
「そうだ。さっきムコーダさんは変わりないって言ったが、俺たちにも変わったことがある」
「そうなんですか?」
みなさんに変わった様子もないし不思議に思っていると……。
「ああ。パーティーランクがBに上がった」
「本当ですか! おめでとうございます!」
「ありがとう」
「それがあって我らにも今回の話がきたというのもありますからな」
ラモンさんの言葉になるほどと思った。
Bランク冒険者パーティーともなれば高ランク冒険者の域に入るらしいからな。
「これはお祝いしないとですね」
リヴァイアサンの解体が終わって一段落したら、みなさんを誘って、王都の美味いレストランにでも繰り出そうかと考える。
「ハイハイハイ! それならムコーダさんの美味い飯が食いたい!」
「アタイも!」
真っ先にそう言い出したのはヴィンセントとリタだ。
「え、ここは王都だから俺なんかより美味い飯を出す店はいっぱいあると思うよ」
ここはさすがの王都。
レストランも他の街とは比べ物にならないくらいにあるし、高級店と言われる店も数多い。
俺の適当な感じの料理よりも高級店に行った方が、いつもと違う美味い飯が味わえると思うんだけど。
というか、俺も行ってみたいし。
「そんなことないっすよ! 高級店でも食ったことあるけど、高級な肉に香辛料をこれでもかって使っただけで美味いとは思わなかったっす。ムコーダさんの飯の方が断然美味いっす!」
ヴィンセントの言葉にリタもうんうんと何度も頷いて「ムコーダさんのご飯はすんごく美味しい!」と言う。
そして期待に満ちた目で俺を見つめるヴィンセントとリタ。
そんな目で見られるとねぇ。
「それじゃあ俺の手料理でいいならば」
「よっしゃ!」
「ヤッター!」
諸手を挙げて喜ぶヴィンセントとリタ。
「ムコーダさん、うちの奴らがホントすまないな」
「いえいえ。手料理が美味いって言ってもらって、俺も悪い気はしませんから」
そんな感じで久々の再会に話を弾ませていると、集まっていた冒険者並びに冒険者ギルド職員に招集がかかったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
どんどん集まってくる関係者。
俺はというと別口でお偉いさん方に呼ばれて、アイアン・ウィルの面々とは一旦別れた。
「それじゃあリヴァイアサンを出してくれるかのう」
王都の冒険者ギルドのギルドマスター、ブラムさんにそう言われて躊躇する。
俺のアイテムボックスのことはバレてる人にはバレちゃってるけど、さすがにこんなに大勢の前だとなぁ。
『なにをしている、早く出せ』
『そうじゃ主殿』
『お前が出さなきゃ始まらねぇだろ』
『あるじー、どうしたの?』
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイから念話で急かされる。
『いやなぁ、ここで出したら俺のアイテムボックスのことが大勢にバレちゃうなぁってさ』
俺の懸念を念話で伝える。
さすがにここでリヴァイアサンを出したら、どんだけの容量のアイテムボックスなんだって話に絶対になるだろ。
『今更だろう』
『そうかもしれないけど、今までは「ちょっと容量が多いアイテムボックス持ち」で済んだのが、あのリヴァイアサンを出したら、さすがに勇者関係だってバレちゃうだろ』
『別にいいと思うがのう。そもそもの話じゃが、儂とフェルが主殿に付いているのだ。手を出してくる命知らずな輩はそうそうおらんじゃろう』
『そう言われるとそうかもしれないけどさぁ……』
『チッ、ウジウジしとらんでさっさと出さんか』
業を煮やしたフェルが俺をさらに急かす。
しかも、お偉いさん方も俺たちの念話が聞こえないもんだから「どうしたのじゃ?」とか「早くせぬか」とか言ってくるし。
『あーもう、分かったよ!』
俺は流れに任せてリヴァイアサンを取り出した。
ドドンと姿を現すリヴァイアサン。
既に頭を見て超巨大だということは分かっていたはずのお偉方も、初めて全体像を見てあんぐりと口を開けていた。
「まさかこれほどに巨大だったとはのう……」
「想像以上のデカさじゃな」
「うむ」
「ここでもギリギリだったわい」
「とりあえず収まって良かった……」
全体見たら、そりゃあ驚くよね。
気持ちは分かるよ。
ちょっと離れたところでミーティングをしていた冒険者たちも呆然としている。
そんな中、普通の感性からかけ離れた驚き方をしている者がいた。
「オホォォォォォッ」
なんとも言えない奇声をあげながら、リヴァイアサンにすがりつく姿が。
「リヴァイアサンッ、本物のリヴァイアサンですよぉぉぉっ!」
確認しないでも誰だか分かるよ……。
こんなヤベェことするヤツは一人しかいない。
エルランドさん、なにやってんのーっ?!
ようやくリヴァイアサンが出せました。




