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とんでもスキルで異世界放浪メシ  作者: 江口 連


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第五百四十七話 随分と楽しんできたようだなぁ

書籍10巻、本編コミック7巻、外伝コミック5巻を購入してくださった皆様、本当にありがとうございます!

引き続き「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をよろしくお願いいたします!

「ハァ~、疲れた」

 そうボヤきながら家の中へと入っていく俺。

『疲れたって、お主はなにもしておらんだろうが』

「そうだけど疲れたの!」

 フェルにはわからないだろうけど、お前らのめちゃくちゃな狩りを見せられて精神的にね!

『あそこにはまた行きたいな!』

『うん! 今度こそスイ一人で倒すんだ~』

『俺だって!』

「ドラちゃん、スイ、だからね、あそこにはもう行かないよ」

『『エェ~』』

『主殿、絶滅を心配しているのなら大丈夫じゃぞ。あれからそれなりに数を増やしたようじゃったしのう』

『うむ。ゴン爺の言うとおりだ。まぁまぁの数の気配があったぞ』

「そうじゃなくてな。ってか、それもあるんだけど、一番の理由は、お前らの狩りが一方的過ぎて見ていられないからだよ。可哀想だろあれじゃ」

『一方的って、まぁ俺らは強いからな。なぁ、スイ』

『スイ、強いー!』

 ドヤ顔のドラちゃんとフンスと自分が強いと主張するスイ。

『うむ。我らは強いからな。そこはしょうがないというものよ』

 フェルも頷きながら同調する。

『強者の宿命というやつじゃな。そもそもの話じゃが、特に儂とフェルに関しては対等に戦えるものなどいないも同然じゃからのう』

 ドラちゃんとスイもめちゃくちゃ強くなっているし、フェルとゴン爺に関しては言わずもがなだし。

 なにせフェンリルと古竜(エンシェントドラゴン)なんだから。

 それは重々分かってはいるんだよ。

『しかし、主殿、我らの狩りが一方的と言うが、それはいつものことではないか?』

「それはそうなんだけどさ。いやね、今回のドラゴンタートルはさ、みんなが強いって察知してか防御一辺倒だったじゃん」

 俺たちが見つけたときには既に頭と手足を甲羅の中に引っ込めた防御態勢だったんだから。

「それなのに、みんなこれでもかってくらいボッコボコにするんだもん。見てて可哀想になっちゃったよ」

『そりゃあ狩りなんだから当然だろう。それにな、この世は弱肉強食だって常々言ってんだろ。お前は変なところで感傷的になるし、考え過ぎなんだよ』

 パタパタと飛ぶドラちゃんに拳でグリグリと頬を突かれながら説教される。

『うむ。ドラの言うとおりだ』

『儂もそう思うのう』

 フェルとゴン爺まで。

 というか……。

「頬っぺたグリグリすんのヤメテ!」

 ドラちゃんちっこいけど力強いんだからさ。

『フハハハハ。わりぃわりぃ』

 頬をさすりながらリビングに入ると……。

 リビングのイスにドカリと座り腕を組んで怖い顔をしたギルドマスターがいた。

 ヒェッ。

 な、なんか、とんでもなく機嫌が悪そうなご様子でいらっしゃる。

「えと、た、ただいま戻りました……」

「随分と楽しんできたようだなぁ」

 地を這うような低い声。

「いや、えっと、その、ちょっとばかり狩りに……」

 一応書き置きも残しては出掛けたんだけど……。

「書き置きがあったからなぁ~。しかし、お前、今日は家に居るって言ってたよな?」

「いや、そうなんですけど、フェルたちが……」

 俺はダメだって言ったし、行きたくなかったんですけどね。

 言い出しっぺであるフェルたちを見ようと振り返ると……。

 あれ?

 いない。

 後ろに居たはずなんだけど、どこいった?

 そう思いながら部屋の中を見渡すと、早々に避難したフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイが部屋の隅でくつろいでいた。

 お前らなぁ~。

「おい、従魔のせいにするのか? それを止めるのがお前の役目だろうが」

 ぐぬっ、正論ではある。

 正論ではあるんだけど、相手はフェンリルと古竜だぞ。

 どうやって止めろって言うんだよ~。

 そう言いたいけど、言ったら言ったでお小言が増えそうだから言わないでおく。

「ったく、ちょっと目を離しただけでこうなんだからよ~」

 まるで問題児を見るような目で俺を見ないでくださいよ。

 問題児なのは俺じゃなくてフェルたちなんですから。

「だいたいな、これからお前らのリヴァイアサンを解体する大仕事が始まるってんだぞ。その準備期間の短い間くらい大人しく待機できんのか」

 ごもっともです。

 俺もできれば静かに過ごしたかったんですけどね……。

「いいか、曲がりなりにもお前も最高位のSランク冒険者なんだぞ。その自覚をもってだな…………」 

 その後、ギルドマスターの説教は1時間も続いたのだった。

「分かったか? 頼むから大人しく過ごしてくれよ」

「ハィ……」

 力なくそう返事する俺。

 フェルたちの狩りに付き合って疲れていたところに、ギルドマスターの説教でもうヘトヘトだよ。

「でだ、一応聞くが、なにを狩ってきたんだ?」

「えと、ドラゴンタートルです」

 ギルドマスターに聞かれたからそう答えると、ギルドマスターが渋い顔をして眉間を揉みだした。

「もう一度言ってくれるか」

「ドラゴンタートル、です」

「ハァ~、お前という奴は……」

 なんか深い溜息を吐かれたんだけど。

「まさかとは思うが、それを王都の冒険者ギルドに持っていくつもりじゃねぇだろうな?」

「え、ダメですか?」

 フェルたちが『一番はリヴァイアサンだが、ドラゴンタートルも食いたいぞ』って言ってたから、早々に解体してもらうためにお願いしようかと思っていたんだけど。

 カメ肉っていうのがアレだけど、肉が増える分には俺としても歓迎するところだし。

「ダメですか? じゃねぇよ! ダメダメのダメに決まってんだろ! 今はリヴァイアサンの解体の件で大忙しだってのに、そこにドラゴンタートルまで持っていくつもりか?! 王都冒険者ギルドの職員が過労死しちまうわ!」

 ギルドマスターの剣幕にタジタジになる俺。

「えと、その、ドラゴンタートルって……」

「Sランクの魔物だ。狩られたのも15年ぶりだ」

 やっぱりSランクか。

 あの大きさとフェルとゴン爺の口振りからそうじゃないかなぁとは思っていたけど。

「15年ぶり、ですか」

「ああ。15年前に儂たちのパーティーで狩って以来だ」

「え、ギルドマスターが?」

「そうだ。その手柄で儂はギルドマスターになれたんだからな。それに、まとまった金も手に入ったおかげで、儂たちのパーティーメンバー全員が冒険者を引退できたんだぜ」

 特に硬い甲羅は貴重なものとされ、剣にして良し、槍にして良し、盾にして良し、鎧にして良しの素材で高値で取引されるそうだ。

 あの強度の甲羅だもんね。

 確かに何にしても良さそうな素材ではありそうだ。

 だけども……。

「あの、俺たちが狩ってきたドラゴンタートルの甲羅、全部傷物ですよ。それでもダメですかね?」

 甲羅が高値だっていうのなら、傷物になっていたら買い取り金額も抑えられることになるだろう。

「おいおいおいおい、あの甲羅がどうやったら傷物になるんだよ……」

 ギルドマスター曰く「儂たちみたいに正攻法で倒したなら、甲羅に傷なんてつかんぞ」とのこと。

 正攻法というのが、四肢をひっこめた穴付近に魔法(特に火魔法が有効らしい)で嫌がらせをして、堪らず頭や四肢を出したところをチクチクと攻撃をするのだそう。

 それを繰り返して、ドラゴンタートルを徐々に弱らせていくのだという。

 ギルドマスターたちは、二日がかりで弱らせて倒したそうな。

 なるほど。

 あの硬い甲羅を持ったドラゴンタートルを相手にするには、普通はそういう感じになるんだなぁ。

 でもさ……。

「狩ったのがうちの従魔たちですから」

 俺のその言葉にガックリと項垂れるギルドマスター。

 そして「お前らに正攻法を説いてもしょうがないか……」と呟いている。

 でも実際そうなんだからしょうがないでしょ。

 うちのみんなは全てにおいて規格外だから。

「ハァ、カレーリナに戻ったらうちで買い取ってやるから、しばらく大人しくしとけ」

「分かりました。あ、3匹いるんですけど、大丈夫ですかね?」

「ちょっと待て。さ、3匹だと?!」

「はい。甲羅がパッカリ割れてるのと、粉々になってるのがいますけど」

「甲羅が割れてる……、粉々…………」

 そう言いながら頭を抱えるギルドマスター。

「あーったくもう! カレーリナに戻ってからだ! 現物を見せてもらってそれから応相談だ!」

「しょ、承知しました」

「とにかくだ! お前たちは王都に居る間は大人しくしておけ! 本当に頼むぞ!」

 俺の肩に手を置いてそう言うギルドマスターに、何度も頷く俺だった。

 それからはギルドマスターの言いつけ通りに大人しく(?)過ごした。

 いろんな物が集まる王都に来たからには買い物をしなきゃ損ってことで、俺たちは連日買い物へと繰り出していた。

 フェルたちは不満タラタラだったけど、俺としてはめちゃくちゃ楽しかった。

 特にお茶に関してはカレーリナでは見なかったものも多数あって、さすが王都という感じだった。

 もちろんいくつか購入もしていて、飲み比べを楽しんだりもしている。

 それから、ちょっと味見するつもりで入った店で初めて養蜂に成功したオパトルニー地方産のハチミツってのを店のイチオシ商品だってことで、店員さんにえらくオススメされてハチミツなら料理にも使うしいいかと思って衝動買いをしたんだ。

 衝動買いにしてはちょっと高かったんだけどさ。

 そのハチミツを家に帰ってからオヤツでホットケーキにかけてみんなで食ったんだけど、味も香りも抜群ですんごく美味かったんだ。

 俺自身もすごい気に入ったけど、うちのみんなも気に入ってさ。

 特に甘いもの大好きなスイが気に入っちゃって、一瓶あっという間になくなった。

 こりゃあ買わねばってことで、翌日には買い足しに走ったよ。

 大分散財しちゃったけどね。

 でも、あの素晴らしい味のハチミツなら悔いなしだ。

 あとは、カレーリナの家で待つみんなへのお土産なんかも買ったりしてさ。

 そんな感じで買い物三昧の日々を過ごし……。

『いよいよ明日だな』

『うむ。いよいよ始まるのう』

『やーっとリヴァイアサンが食えるのか!』

『りばいあさん~』

 明日が約束の10日後。

「冒険者ギルドからも連絡が来てるぞ。結界と警備をよろしくお願いしますってさ」

『うむ。当然だ』

『だのう』

 いよいよ明日リヴァイアサンの解体だ。

 ただ一つ心配なことは……。

「あの人も既に王都入りしているんだろうなぁ……」

 遠い目をしながら、傍迷惑なドラゴンLOVEなエルフを思い出す俺だった。






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― 新着の感想 ―
『どうやって止めろって言うんだよ~。』食い物で従魔になったんだから食い物でいう事を聞かせればいいんだ前に野菜料理で反省させたことあるんだからまた野菜尽くし料理にするぞとか、ニンニルにフェルが言うこと聞…
お金を使うのにケチケチしてるのはなぜ? 使い切れないくらい金があって困ってるって言うなら使いまくって経済まわせばいいのにすぐ高いとかいうの理解できない
ドラちゃんはムコーダさんの感性をいがいと理解してくれてるところあるね ムコーダさんが説教されてる時もそう感じる場面あったし
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