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第五百四十六話 ドラゴンタートルさん、ごめんよーーーっ

書籍・コミックを購入してくださった皆様、本当にありがとうございます!

まだの方は是非是非お手に取ってみてください。

「とんでもスキルで異世界放浪メシ 10 ビーフカツ×盗賊王の宝」、本編コミック7巻と外伝コミック「スイの大冒険」5巻、どうぞよろしくお願いいたします。

 目の前の山のように巨大なドラゴンタートル。

 俺の「こんなのをどうやって狩るんだよ?」という不安をよそに、うちのみんなは既にヤル気満々だった。

 うちのみんなは狩りとかダンジョンになると、俄然好戦的になるからなぁ。

『まずは俺たちからだ! フェル、ゴン爺、いいだろ?』

『ま、いいだろう』

『うむ。いいぞ』

『スイ、行くぞ!』

『うんっ!』

 ドラちゃんとスイが飛び出した。

『行けッ!』

 ドラちゃん得意の氷魔法が放たれる。

 無数の先が鋭く太い氷の柱がドラゴンタートル目がけて突っ込んでいった。

 しかし……。

 ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ―――。

 氷の柱は硬い甲羅によってすべて阻まれてしまった。

『チッ』

 苦い顔のドラちゃん。

『次はスイだよー! エーイッ!』

 ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

 スイの酸弾が放たれる。

 甲羅を広範囲で溶かす作戦なのか、放たれたのは大きめの酸弾だ。

 それが、ドラゴンタートルの甲羅に命中する。

 ジュワッと甲羅が溶けていく様子が見られたが……。

『あれ~?』

 溶けたのは硬く分厚そうな甲羅の表面だけだった。

『クソ、スイの攻撃もダメかよ。フェルとゴン爺の言うとおり、バカみたいにかったい甲羅だなぁこりゃ』

 ドラゴンタートルの周りを飛びながら、ドラちゃんがそんなことを言っている。

 しかし、あのドラちゃんとスイの攻撃を防ぎきるとはね。

 どんだけ硬い甲羅なんだよ。

 その硬い甲羅に余程自信があるとみえるのか、攻撃を受けたのにもかかわらずドラゴンタートルは微動だにしていない。

 硬い甲羅に引っ込んでいれば、絶対に大丈夫だと思っているんだろう。

『も~、なんで溶けないの~?』

 スイは、溶けない甲羅にプンスカ怒っている。

 そして……。

『エイッ』

 ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

 さらに大きな酸弾を放ち、酸を浴びせかける。

 それでも、やはりドラゴンタートルの甲羅の表面しか溶かすことができなかった。

 それを見ていたドラちゃんがスイの隣に降りてきた。

『スイ、作戦変更だ。この甲羅は、俺たちの攻撃じゃなかなか突破できない』

『エェ~、スイのが強いのに~』

『あー、ハイハイ。お前は強いよ。それでもなぁ、こういう風に俺たちの攻撃が通じないヤツもたまにはいるんだよ。それは認めないといけないぞ』

『むぅ、スイ強いのに~』

『ああ。俺も強い。そして、アイツも強いんだよ。だけどなぁ、だからといって俺たちが倒せないってわけじゃないんだぜ』

 そう言ってニヤリと笑うドラちゃん。

『コイツのかったい甲羅は俺たちの攻撃を防いだかもしれないけど、それ以外のところはどうなんだろうな? ホレッ』

 ドラちゃんのその声とともにドラゴンタートルの真下の地面が隆起した。

 ズドーンッ―――。

 隆起した硬い地面が、山のように巨大なドラゴンタートルをかち上げてひっくり返してしまった。

 ドラゴンタートルは硬い甲羅を地面につけて腹を天に向けている。

 それでもドラゴンタートルは頭と手足を甲羅の中に引っ込めたままだ。

『よしと。甲羅は俺の攻撃を防いだけど、腹はどうなんだろうなぁ~。クククッ』

 そう言って悪人面で笑ったドラちゃんが、容赦なく氷魔法を放った。

 ドラゴンタートルに降り注ぐ鋭い氷の柱。

『グォォォォッ』

 くぐもった叫び声が聞こえてくる。

 ドラちゃんの放った氷の柱の半分くらいが、ドラゴンタートルの腹に突き刺さっていた。

『さすがに致命傷とはいかないが、攻撃は通ったみたいだな。もういっちょいっとくか』

 そして、間髪容れずに放たれるドラちゃんの氷魔法。

 ドラゴンタートルの腹に氷の柱が再び突き刺さった。

『グォォォォォォッ』 

 再びドラゴンタートルの悲鳴が聞こえてくる。

『ドラちゃんすごーい!』

 スイが、ドラちゃんの雄姿に興奮してポンポン飛び跳ねている。

『ドラもなかなかやるではないか』

『だのう。硬い甲羅を避けてひっくり返して腹に攻撃するとは、いい手じゃわい』

 フェルとゴン爺がドラちゃんの攻撃を見てそう評している。

 でもさぁ……。

 容赦なく弱い部分に攻撃を加えるドラちゃんが、悪魔に見えるのは俺だけだろうか。

 本来はちっこくてカワイイ姿のピクシードラゴンのはずなのに。

『お、出てきたか?』

 ドラゴンタートルもこりゃあたまらんと思ったのだろう。

 頭と手足を出して、ひっくり返ろうと必死にもがき始めた。

『スイ、今だ! 水魔法で首チョンパだ!』

『ハーイ!』

 シュンッ―――。

 スイからビームのように水が放たれる。

『グォッ……』

 ドラゴンタートルから、一瞬悲鳴のような声が漏れたが、その後沈黙した。

『あれー、全部切れてないや~』

『倒したんだからいいんだよ、そんなことは。とにかく俺たちの勝ちだ!』

『ワーイ、勝った勝ったー!』

 ドラゴンタートルを倒して無邪気に喜ぶドラちゃんとスイだった。

 しかしなぁ……。

「これがリアル首の皮一枚で繋がってる状態ってやつか」

 めちゃくちゃエグイな……。

『よし、次は我だ。もう次も見つけてある』

 フェルが意気揚々とそう言った。

「ええ、これ1匹でもいいんじゃないの?」

 こんなに山のようにデカいんだから、食うにしたって1匹で十分じゃないか。

『お前はここに何をしにきたと思っているのだ。狩りをしにきたのだぞ。それなのに我に狩りをするなというのか?』

「いや、そういうつもりじゃないけどさぁ」

『ドラゴンタートルの肉はリヴァイアサンの肉ほどではないが、まぁまぁ美味いのだ。あって困るものではない』

「はいはい、分かりましたよ。でも、フェルの狩るので終わりだぞ」

『いやいや、主殿。儂も狩るぞ』

「え、ゴン爺も?」

『うむ。儂が連れてきた狩場なのじゃ。当然じゃろう』

 それ、当然なのか?

 俺が心配なのはさ……。

「で、ドラゴンタートルはまだいるんだよな? 絶滅なんて嫌だぞ」

 ドラゴンタートルってこの大きさだから、数がたくさんいるってもんでもないだろうしさ。

 せっかく『絶滅させてやろうか』って言ってたゴン爺の手から逃れたのに、これで絶滅なんてなったら寝覚めが悪いってもんだ。

『それは大丈夫だ。まだいる』

『うむ。子の気配もあるようだしのう』

「ならいいけど。フェルとゴン爺で1匹ずつだからな」

 そういうとフェルもゴン爺もしょうがないというように『うむ』と頷いていた。

 ドラちゃんとスイの倒したドラゴンタートルをアイテムボックスにしまい、フェルの獲物の下へと向かった。

 そして現れるこんもりとした山。

「これまたデカいな」

 さっきのドラちゃんとスイが相手をしたドラゴンタートルよりは少し小さいもののデカいことには変わりない。

 さっきと同じでフェルとゴン爺という強者の気配を感じたのか、既に頭と手足を甲羅の中に引っ込めていた。

『では、行くぞ』

 ドッゴーンッ、バリバリバリバリィィィッ―――。

 ドッゴーンッ、バリバリバリバリィィィッ―――。

 ドッゴーンッ、バリバリバリバリィィィッ―――。

 稲妻が走り、轟音とともに雷が落ちた。

 それも3連続で。

「おわぁっ」

 ものすごい光と轟音に耳を手でふさぎ目をギュッと瞑ってその場に蹲った。

『おい、なにをやっておる。もう終わったぞ』

 そう言うフェルの声がして恐る恐る目を開けると……。

 パッカリと甲羅が割れたドラゴンタートルが。

「あの硬そうな甲羅が割れてる……」

 呆然とした俺がそう零すと、フェルがドヤ顔で『我にかかればこんなものよ』と返してきた。

 あ、そ……。

『チェッ。悔しいけど、さすがだな、フェル』

『フェルおじちゃんすごーい!』

『まぁ、これくらいは当然だ』

 ドラちゃんとスイの言葉に満更でもない様子のフェルだった。

『次は儂の番じゃのう』

 そうか、ゴン爺がまだ残ってたんだったな。

 ドラちゃんとスイ、フェルの狩りで既にお腹いっぱいなんだけど、止めにはしてくれないよね……。

 フェルの狩ったドラゴンタートルをアイテムボックスにしまい、今度はゴン爺の獲物の下へ。

『儂の獲物はあれじゃな』

 本日三度目となるこんもりとした山。

 大きさはフェルのときと同じくらいだ。

『それじゃあ狩ってくるとするかのう』

 そう言ったゴン爺がどんどんと大きくなっていく。

 そして、元の大きさになったゴン爺は、ドラゴンタートルを鋭い爪に引っ掛けてがっしり掴むと飛び上がった。

 どんどんと高度を上げて小さくなっていくゴン爺。

「おいおい、なにするつもりだ?」

 ゴン爺が豆粒ほどの大きさになったところで……。

「え?」

 ゴン爺がなにかを落とした。

「えっ、ちょっ、まっ……」

 ズドーンッ―――。

「ギャーッ」

『うおっ』

『わわわっ』

 体を持っていかれるくらいの風が吹き抜け、辺り一面前が見えなくなるほどの砂埃が舞う。

 フェルの背に乗っていた俺は、必死にフェルにしがみついた。

 ドラちゃんとスイもフェルにしがみついてる。

 風が止み、埃っぽい中を進むフェル。

 立ち止まったフェルの先には大きな窪地ができていた。

『チッ、野蛮な狩りをするな』

 小さくなったゴン爺が砂埃の中から現れる。

『フェルには言われたくないわい。それに、硬い甲羅の此奴を狩るには、これが一番なんじゃ』

 ゴン爺のその言葉に顔を引き攣らせながら窪地を覗き込むと、粉々に砕け散った甲羅の破片の中に埋もれ、力なく四肢を投げ出したドラゴンタートルがいた。

 ………………。

「ゴン爺~」

『なんじゃ、主殿』

「なんて狩りをするんだよーっ!!!」

『ヒュ~ッ! 上から落とすなんて、ドラゴンならではの狩りだな! 俺もやってみたいぜ!』

『ゴン爺ちゃん、すごーい!』

『ハハ、そうじゃろうそうじゃろう』

「ダイナミックな狩りだな~、すごいな~……、とでも言うと思ったか! ってか、喜ぶなー!」

『フン、そうだ。我の方がすごい』

「そうじゃなくって、これじゃああまりにも、あまりにもっ……」

 ドラゴンタートルが可哀そうだろー!

「もう絶対にここには来ないから!」

『なぬ? どうしてだ?』

『そうじゃ。それだと、もうここのドラゴンタートルは狩れぬということになるぞ、主殿』

『そうだぜ。なかなか骨のあるヤツだし、俺とスイのコンビもイイ感じだったってのに』

『スイ、今度はスイだけで倒してみたいなー』

「お黙り! 二度とドラゴンタートルは狩らないの!」

『何故そうなる?』

『そうじゃ。ドラゴンタートルは美味いのにのう』

 も~、三匹も狩ったんだからもう十分だろ!

 鋭い氷の柱に突き刺されて、首チョンパされて、雷を三連チャンで落とされて、最後は数千メートル上空から落とされたんだぞ!

 もうっ、もうっ……。

「とにかくっ、もうドラゴンタートルは狩らないのっ!」

 ドラゴンタートルさん、ごめんよーーーっ。

 ゴン爺に絶滅の危機にさらされて、また今回も。

 こいつ等もう来させないから!

 安らかに過ごしてね。






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― 新着の感想 ―
戦闘じゃ無く狩りに来てるんだからある程度一方的になるのは仕方ないかな ドラゴンタートル強く生きろよw リヴァイアサンでドタバタしてるギルドに解体しろって持っていくのメンタル強すぎww
[良い点] ドラゴンタートルさん、ごめんよーーーっ。 弱い者いじめに見えてしまうのわかる! [一言] フェル達にとっては、弱肉強食で当たり前のことだってのもわかる。 でも、私は人間なので、ムコーダさん…
ムコーダ内弁慶だしなぁ
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