第五百四十三話 あの人が来るっ
5月25日「とんでもスキルで異世界放浪メシ10 ビーフカツ×盗賊王の宝」が発売となります!
今回も巻末に書き下ろし短編が収録されてます。
そして、同日に本編コミック7巻と外伝「スイの大冒険」5巻も発売となりますので、こちらも是非よろしくお願いいたします!
今日も今日とて、腹を空かせたうちの食いしん坊たちの飯作り。
まぁ、うちのみんなは飯が一番の楽しみって感じだからね。
ご期待に沿えるよう作りますか。
何を作ろっかな……。
立派な外観に違わぬ豪華なキッチンで考える俺。
肉であることは当然として、なんの肉を使おうか。
アイテムボックスの中を確認する。
うーむ……、よし、この肉にしよっと。
鶏肉が食いたい気分だったから、コカトリスの肉を使うことに。
肉は決まったけど、コカトリスの肉でなにを作るか……。
鶏肉……。
よし、あれにしよう。
パンにもバッチリ合うデミチキンだ。
そうと決まれば、ネットスーパーで買い物だ。
タマネギ、ニンジン、ニンニク、マッシュルーム、シメジとデミグラスソース缶をカートに入れる。
それと忘れちゃいけない生クリーム。
最後にこれをかけると見た目も良いけど味がまろやかになるんだよね。
「あとは……、あ、バターがなかったな」
バターを追加して精算。
いつものようにすぐに現れる段ボール箱。
そこから購入品を取り出したら、調理開始だ。
タマネギは半分にして5ミリくらいの厚さにスライスして、ニンジンは薄めの半月切りに。
今回はあまり調理に時間をかけたくないから、早く火が通るようにこのくらいの厚さでね。
ニンニクをみじん切りにしてと。
あとはシメジは石づきを切ってほぐして、マッシュルームは半分に切っておく。
そして、メインのコカトリスの肉は大きめの一口大に切る。
材料を切り終わったら、愛用の深めのフライパンを熱してバターとニンニクのみじん切りを入れて炒めていく。
ニンニクの香りが立ってきたら、コカトリスの肉を皮目から焼いていく。
皮目にほどよい焼き色が付いたら、コカトリスの肉をひっくり返して表面が焼けたら(この時点でしっかり火を通す必要はないからね)タマネギとニンジンを投入して軽く混ぜ合わせる。
そこに赤ワインを加える。
「お、これで最後か」
料理用に使ってる安めのやつだけど、また買っておかないとな。
なくても困りはしないけど、洋風の煮込み系には赤ワインを加えるだけで深みが出るからね。
赤ワインのアルコールが飛んだら、デミグラスソース缶、水、ケチャップ、コンソメキューブを入れて少し煮込んだら、最後に火が通りやすいシメジとマッシュルームを入れてさらに煮込んでいく。
キノコ類に火が通ったら、味を確認して塩胡椒で味を調えて完成。
あとは皿に盛り付けて、生クリームをちょろっとかけたら……。
「うん、イイ感じ」
なかなかよく出来たと思って満足していると、玄関の方から音がした。
「おう、戻ったぞ!」
ギルドマスターが戻ってきたようだ。
「タイミングいいね。そんじゃ夕飯にしますかね」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『うむ。まぁまぁいける味だな』
『この濃いめの味付けがなんとも言えぬのう。やはり主殿の飯は美味いわい』
『うんうん。美味いよな。俺、これ好きかも』
『スイもこれ好きー!』
デミグラスソースの濃いめの味付けが、みんなの好みにバッチリ合ったみたいでバクバク食っている。
『おい、おかわりだ』
『主殿、儂もおかわり頼むぞ』
『俺も俺も!』
『スイもおかわりー!』
「はいはい」
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイのおかわりの催促に、デミチキンをそれぞれの皿に大盛りにして出してやる。
再びそれをバクバク食い始める食いしん坊カルテット。
「改めて見てもスゲー食欲だなぁ。お前のとこの従魔たちは」
「ハハッ。まぁ、みんな飯が一番の楽しみって感じですからね~。でも、みんな残さず食ってくれますから作り甲斐はありますよ」
「というかよ、まず人間が食うのと同じ料理を食うってのが驚きだよな」
「うちのみんなはグルメですから」
味にはうるさいのよ、みんな。
「しかも、ドラゴンの肉なんつうとんでもないものまで普通に食ってるし」
「そもそも獲ってきたのは、そこのみんなですからねぇ」
まぁ、あの赤竜を獲ってきたときにはゴン爺はいなかったけども。
「これもウメーし、確実に儂よりイイ物食ってるわ……」
そう言って、なんだかズーンと落ち込むギルドマスター。
ま、まぁ、うちはいろいろと特殊なので。
だから、落ち込む必要はないと思いますけどね。
「ギルドマスター、このパンどうぞ。うちのテレーザが焼いたパンです。このパンをこうしてソースに付けて食うと絶品なんです」
スライスしてバスケットに入れたテレーザ特製の田舎パンを差し出した。
「おう」
ギルドマスターがテレーザ特製田舎パンをデミグラスソースに付けてモソモソ食っている。
「お、美味いな」
「でしょう」
パンをデミグラスソースに付けて食うのが余程美味かったのか、ギルドマスターが2枚目のパンをバスケットからいそいそと取り出している。
「そうだ、さっきのお二方の結界と警備の話だけどな」
「はい」
ギルドマスター、その話をしにまた王都冒険者ギルドまで行ってたんだもんな。
「是非お願いいたしますって話だ」
ギルドマスターの話では、すぐに高ランク冒険者に王都に集まるよう招集をかけたものの、依頼受託中の冒険者もかなりいて必要人数が集まるかどうか危うかったらしい。
そりゃあいきなりの話だもんなぁ。
「だがよ、王都冒険者ギルドとしちゃあ、お二方に任せっきりってわけにもいかないからな。招集した高ランク冒険者についてはそのまま警備につくよう手配するようだ」
「なんだか物々しい警備になりそうですね」
「なに言ってんだよ。物がモノなんだから当然だろ」
うーむ、やっぱそうなのか。
リヴァイアサンだもんな。
血とか内臓とか牙とか骨とか、いろいろと貴重な素材が取れるんだろう。
うちのみんなは肉にしか興味ないけどさ。
「でよ、物がモノだからよ、こういうのの解体なら詳しいアイツを呼ぶしかないだろって招集かけたらしいぜ」
「アイツ?」
「ドランのドラゴン狂いだよ」
「え゛っ! あの人呼んじゃったんですかーっ?!」
ゴン爺とドラちゃんの天敵!
悪い人ではないんだけど、ドラゴンのこととなると見境なくなる人、というかエルフ!
「ま、物がリヴァイアサンだからなぁ。アイツ、この間自分とこのギルドをほっぽってお前のとこに来てたろ。それで、大分お咎めを受けてお目付け役もつけられた状態らしいが、今回はアイツの知識が必要だってこった」
「あわわわわ」
あの人が来るとは……。
えらいこっちゃ。
「アイツ、招集がかかって泣いて喜んでたってよ。しかも、即日ドランを発ったって話だ。お目付け役をお供に嬉々として王都に向かってるらしいぜ」
「来なくていいっ、来なくていいよ! エルランドさぁぁぁん!」




