第五百十三話 タイラントソードフィッシュ尽くし
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さてと、タイラントソードフィッシュを使った夕飯を作っていきますか。
明日は、待望の休み。
誰が何と言おうとゆっくりまったり過ごすつもりだから、明日の飯は全部作り置きを出す予定だ。
だから、今日の夕飯はちょっぴり豪華にカジキ尽くしのメニューにしてやるか。
タイラントソードフィッシュは超巨大なカジキっていう見てくれだったけど、その身もカジキにそっくり。
カジキなら、やっぱり照り焼きは欠かせないよね。
白飯がすすむんだ、これが。
ニンニク醤油ソテーも捨てがたい。
バターも加えてガリバタ醤油ソテーにしたら、これもまた白飯が進みそうだな。
しかし、それだと焼き料理ばかりになっちゃうなぁ。
そうなると……あ、あれにしよう。
カジキの野菜炒め。
カジキって淡白な味わいだし、身がしっかりして崩れにくいから、炒め物にしても美味いんだよね。
一緒に炒める野菜は……、そうだなキュウリにしよう。
アルバンからのお裾分けのキュウリがしこたまあるし、キュウリって意外と炒めても美味いからな。
あとは……、焼き以外でいくと、カジキの竜田揚げなんかがいいかも。
そうきたら、さっぱりとした味わいのものを加えたいところだね。
うーんと、そうなると、マリネなんかいいかもしれない。
よし、決まった!
今日の夕飯のメニューは、カジキ……じゃなくて、タイラントソードフィッシュの照り焼き、タイラントソードフィッシュのガリバタ醤油ソテー、タイラントソードフィッシュとキュウリの炒め物、タイラントソードフィッシュの竜田揚げ、タイラントソードフィッシュの和風マリネの5品。
こういろいろ作りはするけど、ほぼ材料は揃ってるから作り始めていくか。
足りなかったら、その時にちゃちゃっとネットスーパーで買えばいいしね。
ということで、最初に作るのはマリネかな。
あとは、竜田揚げの下準備。
他の料理は作ってアイテムボックスに入れておけば、出来立てのまま保存できるけど、マリネは味が馴染む時間が必要だし、竜田揚げも下味をつける時間が必要だもんね。
マリネと竜田揚げの下準備をして味を馴染ませている間に、他の料理を作っていくことにしよう。
まずは、マリネ液を作っておかねば。
今回は醤油を加えた和風マリネにしようと思う。
ボウルに醤油、酢、砂糖、オリーブオイル、粗びき黒胡椒を入れて混ぜればOK。
マリネ液ができたら、野菜とカジキもといタイラントソードフィッシュの身を切っていく。
野菜はオーソドックスにタマネギとピーマン、ニンジンを使っていこうと思う。
どれもアルバン印のがたっぷりあるからね。
タマネギは薄切りで、ピーマンとニンジンは千切りにして、タイラントソードフィッシュは一口大のそぎ切りにしていく。
切ったタイラントソードフィッシュには、塩胡椒を振って片栗粉をまぶす。
そして、熱したフライパンにオリーブオイルをひいてタイラントソードフィッシュを焼いていく。
タイラントソードフィッシュに火が通り両面こんがり焼けたら、マリネ液に漬け込んでおく。
そうしたら、タマネギとピーマン、ニンジンもしんなりするまで軽く炒めて、これもマリネ液の中へ。
あとは軽く混ぜ合わせて、粗熱が取れるまで放置。
それから冷蔵庫へ入れて、冷えれば食べ頃だ。
とりあえず粗熱が取れるまで、竜田揚げの下準備を進めよう。
タイラントソードフィッシュを食べやすい大きさに切り分ける。
次に、ボウルの中におろしニンニクとおろしショウガ、醤油、酒、みりんを入れて混ぜ、その中にタイラントソードフィッシュを入れて揉み込む。
あとは30分程度漬け込んで味をしみこませれば、竜田揚げの下準備はOKだ。
粗熱が取れたマリネも魔道冷蔵庫に入れてあるから、次の料理へ取り掛かろう。
次は、カジキとキュウリの炒め物にするかな。
キュウリはヘタを取り縦半分に切って斜め切りにしたら、塩もみして水分をギュッと絞っておく。
タイラントソードフィッシュは一口大のそぎ切りにして、塩胡椒を振って片栗粉をまぶして、油を引いたフライパンで焼いていく。
まぁここら辺は、さっきのマリネと同じだな。
そこに、醤油、オイスターソース、酒、みりん、おろしショウガ、ゴマ油の合わせ調味料を入れて、アルコールが飛ぶまで炒めていく。
アルコールが飛んだら、塩もみして水気を切ったキュウリを加えてサッと炒め合わせれば、カジキとキュウリの中華風炒めの完成。
六つ口の魔道コンロを最大限に使って作ったそれを皿に盛り、いったんアイテムボックスの中へとしまった。
「竜田揚げは最後にするとして、次は照り焼きかガリバタ醤油ソテーだな。うーんと、とりあえず照り焼きを先に作るか」
1センチくらいの厚みに切ったタイラントソードフィッシュを、熱したフライパンに油をひいて焼いていく。
焼き目がついたら、ひっくり返して反対側にも焼き目をつける。
あとは、醤油、酒、みりん、ハチミツ(砂糖でもいいけど、今回は味によりコクをだしたかったからハチミツを使ってみた)の合わせ調味料を入れて煮絡めれば出来上がりだ。
超簡単だね。
素材がいいからなのか、タイラントソードフィッシュは生臭さを一切感じないから調理も楽だよ。
これも皿に盛ったら、いったんアイテムボックスの中へとしまう。
そして次は、タイラントソードフィッシュのガリバタ醤油ソテーだ。
こちらもタイラントソードフィッシュを1センチくらいの厚みに切ったら、軽く塩胡椒を振る。
そうしたら、ニンニクをみじん切りにして、バターと一緒にフライパンに入れて熱し、ニンニクの香りが立ってきたら、タイラントソードフィッシュを焼いていく。
両面いい感じに焼き色が付いたら、醤油と酒とみりんを入れてアルコールを飛ばしつつ焦がさないように煮詰めていく。
あとは、そのソースに絡めたタイラントソードフィッシュを皿に盛り付けて、上から残ったソースをかける。
照り焼き、ガリバタ醤油ソテーは彩りがなかったから、こちらにはパセリのみじん切りを散らしてみた。
うん、いい感じ。
これもアイテムボックスへとしまった。
大トリは、食いしん坊カルテットも大好きな揚げ物、竜田揚げだ。
漬け込んで下準備してあったタイラントソードフィッシュに、片栗粉をまんべんなくまぶして油でカラッと揚げれば出来上がりだ。
「よし、全品完成だ」
これを皿に盛ったら、みんなのところへ……。
「みんな、待ちきれなかったんだね」
俺の背後には、食いしん坊カルテット+食いしん坊エルフが雁首揃えていた。
『いろいろ作っていたようではないか。早く食わせろ』
『儂も早く食いたいのう』
『俺も腹減ったー。早く食わせろー』
『スイもお魚さん早く食べたい~』
「私も食べたい」
腹が減りすぎて今にも涎が垂れそうな面々に苦笑いしつつ、ガウディーノさんとギディオンさんとシーグヴァルドさんも呼んで、急いで作り上げた5品を出してやった。
ガツガツと食い始める食いしん坊カルテットと食いしん坊エルフ。
『肉ではないが、悪くはないな。特にこれとこれが気に入った。もっと出せ』
そう言ってガツガツ食いながら、タイラントソードフィッシュのガリバタ醤油ソテーと竜田揚げの皿を前足で指すフェル。
『儂は一番にこれが気に入ったのう。やはり揚げ物は美味いわい。次はこれじゃな』
ゴン爺は竜田揚げが特にお気に入りのようだ。
揚げ物はやっぱり不動の人気だね。
次点は意外にもマリネだった。
ゴン爺曰く『揚げ物を食った後に食うとサッパリしていいんじゃ』とのこと。
『どれも美味いけど、俺も一番はやっぱり揚げ物かなぁ。揚げ物は魚でも美味いんだな』
ドラちゃんもやっぱり竜田揚げが一番のお気に入りのよう。
予想通りだけど、やっぱ揚げ物人気はすごいね。
『スイもこれ好きー! あとね、これも、これも、これも、これもー!』
「って、全部じゃん」
『うんっ! 全部美味しいよー、あるじー』
「そっかそっか。良かった」
「私はこれとこれが好き。白い粒々と一緒に食べると最高。おかわり」
フェオドラさん、そこ乗ってくるのね。
フェルとゴン爺の声しか聞こえていないはずなのに、ドラちゃんとスイと話している間を空けて話に入ってくるとは。
こういうときだけ空気が読めるなんて、恐ろしい子。
それはともかく、白飯に合う照り焼きとガリバタ醤油ソテーを選ぶとはねぇ。
分かっているじゃないですか。
しかも、さりげなくおかわりを要求しているところも、さすが食いしん坊エルフなフェオドラさんだ。
みんなの気に入ったもののおかわりを出しつつ、俺はタイラントソードフィッシュの照り焼きで白飯をかっ込む。
そして、明日は休みということもあって、竜田揚げをおつまみにビールも。
“アーク”の面々が目の前にいるので、ビールはネイホフの街で買った自動冷却コップに注いである。
これ、あんまり使ってなかったけど、冷たいままでいいね。
ちなみにだが、明日は休みということで、ガウディーノさんとギディオンさんとシーグヴァルドさんにもピッチャーに冷えたビールを入れて陶器製のコップと一緒に渡したから、タイラントソードフィッシュ尽くしの料理を肴に既に3人で酒盛りしているよ。
酔いが回ってきたのか、「俺は絶対に死なんぞー!」「俺もだー!」「みんなで生きて帰るぞー!」などと叫んでいるが、聞こえないフリをするのが大人というものだ。
しかし、酒が飲めるらしいゴン爺にも「飲むか?」って勧めたんだけど、「今日はやめておくわい」って断られた。
話の雰囲気では酒は嫌いじゃなさそうなんだけど、何でだろうね。
ま、今日は飲む気分じゃないってだけかもしれないけどさ。
それよりも、明日は休み!
のんびり昼寝なんてしちゃったりして。
フフ、楽しみ~。




