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第四百九十話 サックサクのトロトロ

 帰ってきたところで、新・魔道コンロの試運転を兼ねての飯作り。

 まだ夕飯というには早い時間だし、時間的余裕があるなら取り置きしてあるカニで作ろうと思っていたアレを作ろうかなと思っていた。

 ただ、少し出来上がるまでに時間がかかるって言ったら、食いしん坊カルテットがガックリした顔してたからさ、作り置きしてたダンジョン豚で作った豚丼を出してやった。

 普通なら何人前あるんだっていうくらいの特盛りではあるけど、食いしん坊カルテットにしたらおやつ程度だろう。

 それでもまぁ、少し時間は稼げた。

 その間に、夕飯用にアレを作っていくことに。

 作るのはズバリ、カニクリームコロッケだ。

 たまにお裾分けでカニ缶をもらった時には、自分で作ってたんだよね~。

 自分で作った方が量の調節ができるし、贅沢にカニたっぷりで作れるからさ。

 このカニたっぷりのカニクリームコロッケがまた美味いんだ。

 カニ缶で作ったカニクリームコロッケがあんだけ美味かったんだから、バーサクマッドクラブの美味すぎるカニの身で作ったらどんだけ美味いんだろうってことだよな。

 今から想像するだけで涎が……。

 いかんいかん。

 そんなことよりも、早速作っていかねば。

 この家のキッチンにも文句なしの立派な魔道コンロが備え付けてあるけど、今回はもちろん購入したばかりの新しい魔道コンロを使う。

 試運転も兼ねてるからな。

 それと、これだ。

 アイテムボックスから取り出したのは、盗賊王のお宝の中にあった魔道冷蔵庫だ。

 一応、カレーリナでこれに合う魔石も見つけてセットはしていつでも使えるようにはしてあるんだよ。

 この家にも魔道冷蔵庫は置いてあるけど、ちょい小さめだから、手持ちのこれも使うことに。

 魔石で思い出したけど、昨日、ゴン爺とカニ味噌を食ってたらさ、ゴン爺が食った中に魔石が入ってたらしくてさ、『食ってしまってもいいかのう?』とか聞くから「別にいいけど」って言ったら、ボリボリ食ってやがんの。

 ビックリしたわ。

 美味いのか聞いてみたら、味はないらしい。

 多少の魔力の補給になるみたいではあるけど、ゴン爺くらいになるとあんまり意味はないみたいで、その時の気分によって食ったり食わなかったりなんだと。

 魔石を食うなんて聞いてなかったから、他のみんなにも聞いてみたんだ。

 そうしたら、フェルは俺と会うまではゴン爺と同じ感じだったらしい。

 でも、今じゃ『あんなもの食わん』だって。

 噛み砕くと口の中がザリザリしてどうしようもないって嫌そうな顔して言ってたよ。

 まぁ、そりゃあそうだわな。

 だって石なんだから。

 ドラちゃんは断然食わない派だった。

 魔力の補給になるっていうんで食ってみたこともあるようだけど、『硬くて食えたもんじゃねぇよ、あんなもん』って言ってた。

 噛み砕くのはフェルやゴン爺級じゃないと難しいみたい。

 魔石の丸呑みにも挑戦したらしいけど、翌日、腹痛に相当苦しめられたとかで『二度と食うか』って言ってたよ。

 どのくらいの大きさのを丸呑みにしたか分からんけど、ドラちゃんの体でそれしたらダメに決まってるわな。

 スイは当然というか、生まれたてで俺とフェルに出会ったんだから当然食ったことないわけだけど、『食べてって言うなら食べるけど、美味しくないなら食べたくないなぁ~』だってさ。

 当然、そんなもの食わせないって。

 ゴン爺も口の中に入ったから出すのもあれだからって食っただけってみたいだったしね。

 ま、魔石は買い取りに出せばいい値段で買い取ってくれるから、そのお金で美味い物に換えた方が断然お得だよねってことで、これからは魔石は食わないってことにはなったけど。

 毎日一緒にいるけど、未だに知らないこともあるんだなぁとフェルたちについての新発見にちょっとだけ嬉しくなった。

 おっと、そんなことを思い出して手を止めている場合じゃないな。

 夕飯に間に合わなかったら、それこそ食いしん坊カルテットにドヤされちゃうわ。

 まずは足りない材料をネットスーパーで購入っと。

 と言っても、足りないのはバターと牛乳くらいのものだけどね。

 それを買ったら、調理開始だ。

 まずは、ゴム手をはめて、取っておいたバーサクマッドクラブの脚に詰まった身を取り出してほぐし身にしていく。

「ふぅ、終わった」

 特大ボウル4つ分にこんもり山となったカニのほぐし身。

 お次は、アルバンからお裾分けでもらったアルバン印のタマネギをみじん切りにしていく。

 このタマネギ、火を入れると甘味が強くてすっごく美味いんだ。

 タマネギは俺の料理でけっこう使うから、アルバンがたくさんくれるのはホントありがたい。

 そうしたら、深めのフライパンに油をひいて、タマネギがしんなりするまで炒めていく。

 そこにカニのほぐし身を加えてさっと炒めたら、塩と胡椒を振り白ワインを加えてさらに炒めてアルコール分を飛ばす。

 そこまでできたら、次はホワイトソースだ。

 深めのフライパンを弱火にかけてバターを入れて溶かしたら、小麦粉を篩い入れて焦がさないようにかつ粉っぽさがなくなるまで炒めていく。

 そこに、牛乳を何回かに分けて入れて、その都度しっかり混ぜ合わせていく。

 全体がねっとりしてきたら、残りの牛乳を加えて焦がさないように泡立て器でよく混ぜ合わせる。

 もったり滑らかでツヤっとしてきたら、炒めておいたタマネギとカニを入れて軽く塩胡椒を振り、混ぜ合わせる。

 あとはバットに移して粗熱がとれたら、ラップをかけて冷蔵庫で1時間。

 その間にバッター液や付け合わせを準備しておく。

 卵と水と小麦粉を入れてバッター液を作ったら、パン粉も用意。

 あとは付け合わせのキャベツとトマトだ。

 キャベツは千切りに、トマトはくし切りだな。

 オーソドックスな付け合わせだけど、俺的にコロッケにはこの付け合わせがベストだと思っている。

 ちなみにこのキャベツとトマトもアルバン印だぞ。

 その準備が終わったところで……。

「1時間にはちょい早いけど、ま、大丈夫だろう」

 冷やしていたカニクリームコロッケの種を、冷蔵庫から取り出した。

 あとは、冷えてまとまりやすくなった種をドンドンと俵型に成形していく。

「よっしゃ、後は揚げていくだけだ」

 俵型にした種を、バッター液に浸けてパン粉を付ける。

 それを、180度くらいに熱した油でカラッときつね色になるまで揚げたら出来上がりだ。

「味見味見~」

 作った者の特権で味見をば。

 サクッ―――。

「アチチッ。ホフホフッ、熱いけど、うまっ!」

 周りはサクッで中はトロ~リで最高の状態。

 カニたっぷりだからカニの風味もして、文句なく美味い。

 自分で作っておいてなんだけど、めっちゃ美味くて大成功。

 どんどんどんどんカニクリームコロッケを揚げていく。

 揚げたてを維持するために、カラッと揚がったカニクリームコロッケはアイテムボックスで一時保管することも忘れない。

 そんな調子でカニクリームコロッケを量産していった。

「ふぅ~、ようやく揚げ終わった。あとは盛り付けを……」

 大皿にキャベツとトマトを盛り付けて、カニクリームコロッケを形よく山型に積み上げていく。

「よし、完成だ。さてと、首を長くして待っている食いしん坊たちに食わせてやるか」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『なんだ、これは』

 皿の上のキャベツとトマトを見た途端に顔を顰めるフェル。

「カニクリームコロッケだよ。キャベツとトマトは付け合わせだよ。最初だけだし、食えないわけじゃないんだから、それくらい食いなよ」

 俺がそう言うとムスっとした顔をしながらも、嫌なものは最初のうちに処理とでもいうようにバクリと一口でキャベツとトマトを平らげていた。

 おいおい、マヨはいらないのかよ。

『主殿、カニというと、昨日のを使った料理かのう?』

「そう。バーサクマッドクラブの身がたっぷり入ってるから美味いぞ~。あ、キャベツとトマトにマヨネーズかけとくな」

 皿に野菜が残っているゴン爺とドラちゃんとスイの分にマヨネーズをかけていく。

『むぅ、我のにはなかったではないか!』

「フェルは、かける前に食っちゃったじゃん。もう、野菜は出さないから、口直しにカニクリームコロッケ食いなよ。最初はそのままで。何にもつけなくてもイケるから。あ、熱いから気をつけろよ」

『へぇ~、昨日のカニを使った料理か。美味そうじゃん』

 美味そうじゃなくて美味いんだよ、ドラちゃん。

『中トロトロで美味し~! スイ、これ大好きー!』

 一足先に食っていたスイがブルブル震えながら大興奮だ。

『ホントだな! サックサクだしトロトロでカニの味もして美味いな! 俺も好きだわ、これ』

 ドラちゃんもカニクリームコロッケを気に入ってくれたみたいだ。

『美味いのう~。このようなもの初めて食った。まぁ、主殿が出してくれるものは、全部初めて食うようなものじゃがな。しかし、主殿と一緒にいるとホント飽きないのう~。主殿についていく決断をした自分を褒めてやりたいわい』

 カニクリームコロッケをバクバク食いながら、しみじみとそう言うゴン爺。

 ゴン爺がついてきたおかげで、俺の手間は増えたけどね。

『おい、おかわりだ。もちろん、こっちだけだぞ』

 キレイになった皿を前足で押し出してそう言ってくるフェル。

 全部平らげたってことは、フェルもカニクリームコロッケは美味いと思っているようだな。

「はいはい、分かってるって。はいよ」

 カニクリームコロッケだけが載った皿をフェルに出してやる。

「あ、ソースかけるか? そのままでも美味いけど、ソースをかけても美味いぞ」

『うむ。かけろ』

 カニクリームコロッケにソースをかけてやると、それをバクバク食い始めるフェル。

 そして、再びきれいになった皿を前に、フェルがソースまみれになった口をペロリと舐め……。

『明日はカニを獲りに行くぞ。これは決定だ』

『それはいいのう』

『賛成~』

『カニさん獲りに行くー!』

 明日の予定がいつの間にか決まっていた。

 一日エレメイ川でカニ獲りとは……。

 カニクリームコロッケを食わせたのは間違いだったかも。






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― 新着の感想 ―
この話を再読するたび、懸賞で当たったカニ缶(タラバガニ)をお裾分けしたら、料理人の義兄(姉の夫)がカニクリームコロッケを作ってくれたのを思い出します。 (中のタネ状態を冷凍して日時指定配送→自宅で揚げ…
[一言] ムコーダはLVが100に近いけどステータスは能力に反映されてない?腕力なんてかなりのものだと思いますが。
[一言] 何回読んでも楽しい。 変な意見に負けないで書いてください。
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