第四百七十六話 やっぱり風呂はいいなぁ~
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ニコニコでも本編19話、外伝17話が更新されておりますので、逃してしまった方は是非こちらも。
トンテンカン、トンテンカンと威勢のいい音が家の中に鳴り響いている。
風呂の拡張工事の音だ。
工事が始まって既に2日目。
フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの従魔ズたちは昨日の工事の音で懲りたのか、工事が始まる前に早々に庭に退避。
ポカポカ陽気の中、芝生の上で昼寝してるよ。
俺はというと、細かいところの仕様でブルーノさんからお声がかかるかもしれないからリビングで待機だ。
ネットスーパーで購入した耳栓が非常に役に立っているよ。
工事の方は、ブルーノさんの宣言通り順調に進んで、予定では今日無事に終わることになっている。
イラリオ商会で手に入れたイイ感じの風呂も、朝のうちにブルーノさんに引き渡してあるしね。
とは言っても、今は脱衣所の隅っこというか大部分を使い鎮座している状態だけど。
風呂は最後に設置して、魔道具から問題なく湯が出ることと排水の確認をして工事終了ということになるらしい。
今回、イラリオ商会で手に入れた風呂だけど、今あるうちの既存の風呂ともマッチしたデザインの良いのが買えた。
うちの既存の風呂は、大分金がかかっているらしく、丸い陶器製の風呂の地はアイボリーで外側の側面の上部にキレイな色とりどりの花が描かれているものなんだけど、それと似たようなものというとかなり高くなるだろうし、そこまでのものが在庫としてあるかどうかもわからなかったからね。
できれば色だけでも合わせて白っぽいのがあったらいいなとは思っていた。
まぁ、それでも一番はゴン爺が余裕を持って入れるっていうことだから、大きさが一番重要な条件だった。
最悪、色とかデザインは二の次で、既存の風呂とちぐはぐでもしょうがないかなとは思っていたんだけど、嬉しいことに既存の風呂に雰囲気の似たものがあったんだ。
ほんの少し黄色みがかった薄いクリーム色に赤とピンクの花模様の特大サイズの風呂が。
もう即決だよ。
お値段は金貨540枚。
これでも大分安くしてくれたみたいでさ。
店員さんから理由を聞いたら、特大過ぎて長い間売れ残っていたらしい。
長い間売れ残ってたものが売れたっていうんで、店員さんもホクホク顔だったよ。
俺の方も大きさもデザインも良いものが買えて大満足だ。
これぞWin-Winてやつだな。
そんなわけで無事にイイ感じの風呂が手に入ったわけだ。
ただし、あの厳ついゴン爺専用というのには可愛すぎるデザインだけどね。
ま、うちの風呂のデザインに合わせたから、その辺は我慢してもらうとしよう。
あとは工事が終わるのを待つばかり。
めっちゃ楽しみだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日が暮れる頃合、ブルーノさんから声がかかる。
「待たせたな。工事、終わったぞ」
早速、工事が終わった風呂場を見せてもらった。
「おお~、広くなった」
そのための工事なのだから当然ではあるが、風呂場は今までの倍くらいの広さになっていた。
今回新調したゴン爺のための風呂も、元々ある風呂の隣に設置されていい感じだ。
「水の通りも問題ない。どうだ?」
「はい、完璧です」
さすがドワーフというべきか。
こういう物づくりをやったら右に出るものなしだね。
「当然だ。あんな美味い酒もらっちまったら、下手なことはできねぇよ」
約束どおり、昨日の工事終わりにウイスキー配っておいたからね。
当然今日も……。
「約束の酒です。昨日よりも多めに出しますんで、皆さんと楽しんでください」
事前に用意しておいた、昨日渡したのと同じ大瓶のウイスキーを20本ほど取り出した。
「ありがとよ! 遠慮なくもらってくぞ!」
ブルーノさんも従業員の方もウイスキーを見てニッコニコだ。
酒がホントに好きだね~。
ここに工事に来てくれた方々10名のうち、ほとんどがドワーフでさ。
他にも人族と獣人の方もいたけど、そちらも無類の酒好きだって話だったし。
そういう方たちが揃ってるんだから量も必要かなと思って、昨日も大瓶を渡したんだ。
昨日は10本ほど渡したけど、案の定というか、ブルーノさんとこの事務所で大宴会やったらしい。
今日も当然その予定みたいで、俺も参加しないかってブルーノさんに誘われたけど、丁重にお断りしたよ。
酒は飲めるけど強いわけでもない俺が、ドワーフやそのドワーフに付き合える方々と飲んで無事でいられるわけないからね。
それに、今日はキレイになった風呂をみんなと一緒に堪能したいしね。
それから、話に出ていた奴隷の家のことだけど、俺の方で木の伐採をして更地にしてからブルーノさんのところにお伺いして工事の予定を組んでいこうということで落ちついた。
俺とブルーノさんがそんな話をしている間も、従業員さんたち一行は、既に宴会のことで頭が一杯らしく、ワイワイガヤガヤ盛り上がっていたけどね。
工事も終わり話も終わったと、ブルーノさんを含めた一行は酒を抱えてご機嫌に帰ろうとしていたが、まだ大事なことが残ってると俺はブルーノさんを慌てて止めた。
「ブルーノさん、工事代金!」
「おお、忘れるとこだった。そんなことしたら母ちゃんにドヤされるだけじゃ済まなかった。危ねぇ危ねぇ」
そう言って、ちょっとホッとした顔のブルーノさん。
工事代金は〆て金貨270枚。
白金貨と大金貨での支払いでもいいということなので、白金貨2枚と大金貨7枚でお支払いした。
「白金貨なんぞ久しぶりに見たわ。さすがSランク冒険者、儲けてんなぁ」
なんてブルーノさんから茶化されたけど、ブルーノさんとここそ忙しく仕事して儲かってるくせに。
ま、そんなこんなでようやく全てが終わってブルーノさん一行は帰っていった。
そして、ブルーノさん一行と交代するように家の中に入ってきたのは、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの従魔ズだ。
『ようやく終わったか』
ノッシノッシと一番に入ってくるフェル。
「ああ。かなり広くなったし前にも増してキレイになったぞ、風呂場。これでゴン爺もゆったり入れる」
『それは楽しみじゃな』
ドラちゃんとスイを乗せたゴン爺は、風呂がかなり広くなったと聞いて嬉しそうだ。
『ここ最近毎日風呂に入ってたのに、昨日は入れなかったからな。今日は絶対入るぜ』
『スイもお風呂入る~』
ドラちゃんの言うとおり、ここのところ毎日風呂に入ってたもんね。
風呂好きとしては、入れないと気になっちゃうよ。
「それなら、早速今から風呂に入っちゃおうか」
『待て! 今から風呂などとんでもないぞ!』
この勢いでみんなで風呂に直行、と思っていたらフェルから待ったがかかった。
「何だよ、フェル~」
『飯が先だろうが』
『うむ、そうじゃな』
『なにはともあれ飯が先だよな』
『ごはん~』
そうでした。
食いしん坊カルテットには、何より飯が大事だよね。
そそくさとキッチンに向かい夕飯の用意をする俺だった。
夕飯を終えた俺とゴン爺とドラちゃんとスイは早速風呂場へ。
ちなみに夕飯のメニューは、作り置きしておいたギガントミノタウロスの肉の味噌漬けで、味噌漬け丼だった。
飯の上に1センチ幅くらいに切ったレタスを載せて、焼いたギガントミノタウロスの味噌漬けを載せて白ごまを少々ふりかけたもの。
自分で言うのも何だけど、大変美味しゅうございました。
ゴン爺がめちゃくちゃ気に入ったみたいでまた食いたいとか言ってたな。
まぁ、その夕飯を食って少しの食休みを挟んで、いざ風呂へ。
フェルも一応誘ったけど、相変わらずの風呂嫌いで『お主らだけで入ればいいだろ』ってめっちゃ嫌そうな顔してたよ。
そんなわけで、俺とゴン爺とドラちゃんとスイで風呂へ。
「どうだ、広いだろう」
『うっひょ~、めっちゃ広くなったなぁ』
『広~い!』
ドラちゃんは広い風呂場を飛び回ってるし、スイもポンポン跳び回っている。
『これなら儂もゆったり入れるのう』
ゴン爺もこの広さにご満悦だ。
二つある風呂にも、夕飯前に汲み始めたからちょうどいい感じで湯がたまっている。
「よし、まずはゴン爺の体を洗うぞ。スイ、ゴン爺の体にお湯かけてくれ」
『ハーイ』
スイが触手をシャワーのようにして、湯船から吸い上げたお湯をゴン爺の体にかけていく。
「ドラちゃんはこれを使って細かいところを擦ってくれ」
そう言いながら、あらかじめ買っておいたたわしをドラちゃんに渡す。
『しゃあねぇなぁ』
「それで自分の体も洗っていいぞ」
『バカヤロー! こんなんで洗ったら痛いだろ。俺はデリケートなんだよ!』
「プッ、はいはい。じゃあいつものようにスポンジで洗うよ」
『分かればいいんだよ、分かれば』
『おいおい、それではまるで儂が鈍感みたいではないか。ドラのような小さな軟弱な種族の若造ではなく、儂は古竜故にすべてにおいて丈夫な作りをしているというだけなんじゃぞ』
『軟弱言うな!』
『事実であろうが』
『なんじゃく~』
『くっそー、スイまでそんなこと言いやがって~』
「はいはい、ドラちゃんが強いのは知ってるから。ケンカしないの」
そんなことを言い合いながら、ゴン爺の体をデッキブラシでシャコシャコと磨いていく。
いつも思うけど、素っ裸に腰タオル姿で古竜を磨く俺、シュールだわ~。
そうは思っても、ゴン爺が『そこはもう少し力を入れて』とか『そこのところも』といろいろと注文が多いから腰を入れてしっかりと磨かねばならない。
けっこうな重労働だよ。
シャコシャコ、シャコシャコ。
シャコシャコ、シャコシャコ。
「ふぅ、こんなものか。スイ、流して」
『ハーイ』
ゴン爺の体をスイのシャワーが洗い流していく。
俺とゴン爺とドラちゃんとスイはようやく湯船に浸かった。
「あ゛あ゛ぁぁぁ~」
肩まで湯につかると、思わずジジ臭い声が漏れた。
さっきまでゴン爺の体をくまなく力を入れてデッキブラシでシャコシャコと磨いていたから余計にね。
炭酸入りのユズの香りの入浴剤が疲れた体に染みわたる。
『やっぱ風呂は気持ちいいなぁ~』
『気持ちーね~』
ドラちゃんとスイが湯にプカプカ浮くいつものスタイルでしみじみそう言った。
「ゴン爺はどうだ~?」
『…………』
「ゴン爺?」
横を見ると、ゴン爺、気持ち良すぎて寝てるわ。
「あ~、やっぱり風呂はいいなぁ~」
『だなぁ』
『だね~』




