第四百七十四話 ゴン爺の秘密と困ったお告げ
な、なんとかUPできました。
活動報告にも書かせていただきましたが、かねてからお知らせしていた通り「とんでもスキルで異世界放浪メシ」ドラマCD第2弾付き特装版8巻が来年2020年1月25日発売します!
今回のドラマCDにはドラちゃん初登場です!
キャストは下野紘さんです!!
デミウルゴス様へのお供えは、いつも通り。
メインは日本酒、あとはおつまみだろ、それから従者さんがお気に入りだという梅酒だ。
日本酒は高知、長野、山形、山口、新潟の有名酒蔵の大吟醸一升瓶飲み比べ5本セット。
一升瓶5本はちょっと多いかもとは思ったけど、チビチビやってくだせい。
それからおつまみは、いつものプレミアムな缶つま各種と今回は美味そうなホッケとキンメの干物があったのでそれも入れておいた。
干物って白飯とも合うけど、日本酒の肴にもバッチリだからね~。
梅酒は、北陸特産の高級品種の梅を使った梅酒のセットだ。
デミウルゴス様も梅酒は割と好きみたいで、最近は食前酒として愛飲してるそうなので、他にも芋焼酎仕込みの梅酒とブランデー仕込みの梅酒も一緒に。
「どうぞお受け取りください」
ドンとテーブルの上に置いた段ボール箱が消えていく。
『いつもすまんの~。感謝するぞい』
「いえいえ」
『今日は彼奴らもじゃったようだのう。姦しい声が儂のところまで聞こえてきているわい』
「はい、月一の約束ですので」
『迷惑かけてすまんのう』
「大丈夫ですよ。ちょっとだけうるさいなとは思うものの、皆さまには加護をもらったりでお世話になってますしね」
『ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。異世界のものが実際に手に入るのじゃ。神であっても興奮するわい。じゃが、迷惑かけるのはいかん。あまり迷惑かけるような者がいるようなら儂に言うんじゃぞ。その者にはよ~く言い聞かせるゆえ』
その『よ~く言い聞かせる』っていうのが意味深でちょっと怖いぞ。
でも、この間のデミウルゴス様のお仕置きが効いているようで、今のところ迷惑というほどのことはないし。
前みたいにワーワー騒いで勝手に個人的に神託してくるってこともないしね。
それはいいとして、加護って言葉でなんとなく思い出したことをデミウルゴス様に聞いてみた。
「そういえば、ちょっと気になってたんですけど、ゴン爺って加護がないんですね。フェンリルと双璧をなす古竜だからなにがしかあるのかなと思っていました」
『そのことか。そもそもじゃが、フェンリルとて、すべての個体に加護がついているわけではないのじゃぞ。たまたまお主の従魔にはニンリルの加護が付いているのじゃ。過去には確かアグニやルカの加護付きの者もおったはずじゃしのう』
「へぇ~、そうなんですね」
『そして古竜じゃが、この世界を生み出したときにちょっとした目的があって儂が創ったんじゃ。じゃがのう試行錯誤というか、もうちょっとこうした方がいいか、いやここはこうした方がなどと考えながら創っていったら楽しくなってしもうてのう。できた個体が全て予想していたよりも強くなってしもうたのじゃ』
デミウルゴス様はついうっかりって感じで話してるけど、突っ込みどころ満載だよ。
そんな軽い感じで古竜が生まれたとはさ。
『それでな、そこにさらに加護を付けると強くなり過ぎるので加護はつけなかったのじゃ』
神様が強くなり過ぎるって言うくらいなんだから、加護は付けなくて正解だったんだろうね。
古竜であるゴン爺のステータス値はぶっ壊れだもん。
それに匹敵するフェルも相当なものだけど。
『お主の従魔のあのフェンリルは別格じゃ。種としての強さで言うなら古竜が断然強いのじゃが、あのフェンリルは個の強さとニンリルの加護で古竜とも対等にやり合いよる。歴代最強と言ってもよいじゃろうな。大したものよ』
うおっ、考え読まれた。
も~、考え読まないでくださいよ。
『すまんすまん。お主のいた世界で言うところの“ぷらいばしー”というやつじゃな』
そうですよ。
しかし、あのフェルが歴代最強のフェンリルとはね~。
強いのは当然分かっているけど、フェンリル歴代最強とか言われても、肉肉言ってる食いしん坊な姿しか思い浮かばないな。
というか、話を戻すけど、デミウルゴス様の話では、世界を生み出したときに古竜もってことは、古竜がこの世界最古の生物ってことなのか?
『うむ、そうじゃぞ。ちなみに寿命は2万年近くあるかのう』
うう、また読まれた。
「古竜の寿命って2万年もあるんですね……」
『そうじゃ。原初の古竜は、お主の従魔の古竜の先々代じゃな』
……ゴン爺、全然若かった。
ジジ臭いから、ゴン爺なんてつけちゃったよ。
ゴン爺が定着しちゃってるから、今更変えられないけどさ。
『問題なかろう。古竜は、2000年も生きれば知識をためて爺や婆のようになるもんじゃ。ふぉっふぉっふぉっ』
も~、また~。
『すまんて。まぁ、今じゃったら問題なかろう? それこそ若いお主が悶々として、女人とあれやこれやしているところを想像しているところを読まれるよりの~』
「ちょっ、デミウルゴス様! そんなことしたら、それこそプライバシーの大侵害ですからね!」
『ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、例え話じゃて』
何がふぉっふぉっふぉっだよ~。
ホント、絶対やめてくださいよ。
べ、べ、別に女性とどうこうっての想像してるわけじゃないけどさ。
俺にもプライバシーってものがあるんですから。
頼みますよ、ホント。
『大丈夫、大丈夫。分かっておる』
何が大丈夫なんだか。
ハァ~。
でも、ゴン爺は「ゴン爺」って名前でセーフってことだな。
「あの、デミウルゴス様の言葉で、ちょっと気になった点があるのですが、お聞きしてよろしいですか?」
『うむ。お主には世話になっとるから、何でも答えてやるぞい』
何でもって軽いよ、デミウルゴス様。
「ええと、さっきちょっとした目的があって古竜を創ったという話ですけど、どのような目的なんですか?」
『ありていに言えば、抑止力と保険じゃな』
「抑止力と保険?」
『そうじゃ。ああいう強いのがいるだけで、愚かな行為をけん制することができるじゃろ』
まぁ、確かに。
『それにのう、神が地上にあまり手出しできないのはお主も知っておろう?』
「はい、そう聞いています」
『もちろん世界の始まりは我ら神々が種を蒔くのじゃがのう、それからはただ見守るだけじゃ。その世界を一喜一憂しながら見守り続けるのじゃ。だがのう、悲しいことじゃが悲惨極まりない世界になってしまうこともやはりあるのじゃ。そうなった場合の保険も兼ねておるというわけじゃ』
「ん? そうなった場合の保険って……」
『お主、古竜のステータスを見たじゃろう。その中に【 究極魔法 】古竜の魂というのがあったんじゃが、覚えておるか?』
「究極魔法、古竜の魂……。確かに見たような気が……」
『これは、その時代を生きる古竜のうちのどれか一頭が引き継いでいく魔法なのじゃが、今代はお主の従魔が引き継いだようじゃ。【 究極魔法 】古竜の魂とは、その名のとおり、古竜の魂を使った究極魔法じゃ。世界を終わらせるな』
………………は?
サラッと言いなさったけど、ハァァァァァッ?!
世界を、終わらせる?
世界の終わり?
「ハァァァァァァァァッ?!」
『ふぉっふぉっふぉっ、心配せずとも大丈夫じゃ。お主の従魔は、今を楽しんでおるようじゃしのう。世界を終わらせるなどとは露ほども思っとらんじゃろうて。それにの、そもそも【 究極魔法 】古竜の魂を使う場合は、儂の許可がなければ発動せんからのう』
いやいやいや、逆を言うとデミウルゴス様が許可すれば世界が終わるってことじゃないかぁぁぁっ。
『まぁの。儂、こう見えてこの世界の創造神じゃし』
「またサラッとそういうこと言ってーーーっ」
『ふぉっふぉっふぉっ、大丈夫じゃって。この世界にはまだまだ希望が満ちているわい』
「え~、デミウルゴス様はそう言いますけど、ルバノフ神聖王国とか酷いみたいですよ」
あの国はガッチガチの人族至上主義の宗教国家だっていうし、属国扱いのルバノフ教を国教としてる国もそんな感じみたいだしさ。
ちょっと前に会ったルバノフ教の人たちのあの態度を見たら、推して知るべしだよね。
『まあのう。愚か者はどんな世界にも涌いてくるものじゃ。じゃが、大丈夫じゃ。お主が何とかしてくれよう。期待しておるぞ』
「え? 期待って、なんで俺に振るんですか? デミウルゴス様、無茶ぶりはやめてくださいよ」
『大丈夫、大丈夫。今すぐでなくてよいわい。暇なときにでもちょろっと行ってとっちめてきてくれれば、あの愚か者どもも大人しくなろうて』
「いやいやいや、だからなんで俺に振るんですか。ちょろっと行ってとっちめてきてって、そんなことよりもデミウルゴス様が神託でもなんでも授けた方が効き目あるでしょ」
『ただの詐欺師でエセ宗教者の彼奴らが、神である儂の言葉に真剣に耳を傾けるものか。彼奴らなど力で捻じ伏せるくらいがちょうどいいわい』
「力で捻じ伏せるって言われても……」
どう力で捻じ伏せるんだよ。
『何を言っておるのじゃ。この世界の最高戦力であるフェンリルと古竜が供におるではないか。チョロいチョロい』
チョロいチョロいって軽いんだから、も~。
だいたい何で俺なんだよ。
こういうのこそ、勇者がやるもんじゃないの?
俺、巻き込まれた異世界人なんだからね。
『ま、そういうことじゃから頼んだぞい。達成の暁には良いことが待っているかものう~。さらばじゃ~』
「あっ、ちょっと待ってくださいよ! デミウルゴス様?!」
『暇なときでいいからの~』
その言葉を最後に、デミウルゴス様からの通信は途絶えた。
「も~、何だって言うんだよ~。今回は無茶ぶりが過ぎるでしょうが。……でも、良いことが待ってるって、何が?」
壊滅的な恋愛運を上げてくれる?
もしかして、嫁さんができちゃったりして?
いやいやいや、惑わされちゃダメだ。
これは期待し過ぎて、ひどいオチになるパターンや。
…………ちょっとは、期待しても大丈夫なのか?
「良いことって何なんですか、デミウルゴス様~」
答えの分からない、悶々とした気分のままベッドに潜り込んだ俺だった。




