第四百七十二話 甘辛味噌のホルモン丼
お、遅くなり申し訳ありません。
窓の外をジーッと見るフェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイ。
外は土砂降りの雨だった。
家に帰って少ししてポツポツと降り始めた雨が、瞬く間に土砂降りになってしまった。
「残念だけど、この天気じゃホルモン焼きは中止だな」
そう言うと、ホルモン焼きを一番楽しみにしていたゴン爺が頭をガックリと下げてションボリしてしまった。
『内臓料理……』
厳ついドラゴンが哀愁漂わせてるよ。
「あー、炭火焼きじゃないけど内臓料理を出してやるからさ」
そう言ってポンポンとゴン爺の肩を叩くと、ガバリと頭を上げた。
『主殿、本当か?!』
あまりの食いつきに引き気味に「あ、ああ」と返事をすると、途端に元気になるゴン爺。
『いや~、そうかそうか。内臓料理が食えるのか。楽しみじゃのう!』
『内臓料理を食えるのか。いいな』
『ホントかよ! ヤッタ!』
『スイも楽しみ~』
ゴン爺とのやり取りを聞いていたフェルとドラちゃんとスイも、内臓料理を食えるとなってウキウキだ。
『よし、そういうことならさっさと作れ』
そう言いながらフェルが背中を前脚で押してくる。
「コラ、押すなって」
『主殿、早く作ってくれると嬉しいのう。内臓料理、楽しみにしているぞ』
ゴン爺まで目をキラキラさせてそんなことを言ってくる。
『俺も楽しみにしてるからな~』
『あるじー、スイもだよ~』
援護射撃なのか、ドラちゃんとスイまでそう言ってくるし。
「ハァ、分かりました。作ってくるから、みんなはリビングで待ってて」
俺はみんなに急かされて、キッチンへと向かった。
「しょうがない、作るか」
作るのはホルモン丼だ。
甘辛味噌で味付けて炒めたホルモンをご飯に載せて……。
プリッとしたホルモンが無性に食いたくなって、ネットでレシピを見て作ってみたことがあるんだよね。
言わずもがなで、飯に抜群に合うし、ビールにもよく合うんだ、これが。
ビールに合う、ココ大事。
今晩はホルモン焼きのつもりだったから、冷えたビールをキューッとやるつもりだったからさ。
ま、とにかくホルモンと言ったら、個人的には甘辛味噌味が一番合うと思うわけよ。
「材料もそんなに必要ないから、今あるものでほぼ足りるしね~」
足りないのは豆板醤と小ネギくらいなものだしね。
ということで、ネットスーパーでパパッと豆板醤と小ネギを購入したら調理開始だ。
まずは、ダンジョン牛のモツを取り出してと。
ローセンダールの孤児院の子どもたちがしっかり下処理してくれているから、キレイなものだ。
そのダンジョン牛のモツを一口大に切って、サッと湯通し。
ダンジョン牛のモツって臭みはないけど、脂落としも兼ねて一応ね。
それから、タマネギは薄めのくし切りにして、最後に載せる小ネギを小口切りにしておく。
あとは、味噌、醤油、砂糖、酒、おろしニンニク、豆板醤を混ぜて合わせ調味料も作っておく。
そうしたら熱したフライパンにごま油をひいて、モツを炒めていく。
脂が大量に出てくるから、余分な脂はキッチンペーパーで軽くふき取りつつな。
モツに火が通ったら、タマネギを入れて、タマネギがしんなりしたところで合わせ調味料をかける。
あとは全体に絡めるように炒めれば出来上がりだ。
フライパンを傾けてそちらに余分な脂を切りつつ、炒めたものを白飯の上にたっぷりと載せて、最後に小ネギをパラリとかければ……。
「甘辛味噌のホルモン丼の出来上がり! カ~、いい匂いじゃないの」
先にちょびっと味見をしようかななんて考えていると、ゾクッときた。
キッチンの出入り口を見ると、匂いに耐え切れなかったのかこちらを覗きにきていた食いしん坊カルテットがジトーッとこっちを見ていたよ。
「ゴホンッ。今、持っていくから」
ホルモン丼をみんなの前に置くと、待ってましたとばかりにガツガツと勢いよく食い始める。
『主殿、内臓がこんなに美味いとは思わなかったぞ!』
ゴン爺は念願だった内臓料理を食ってご機嫌だ。
味も気に入ってもらえたらしく、ガツガツ食う勢いは止まらない。
『前に食ったときみたいに香ばしさはないけど、これはこれで美味いな。飯によく合う』
『ふむ、確かに悪くないな。おかわりだ』
『美味し~。スイもおかわりー!』
ドラちゃん、フェル、スイも気に入ったとみえる。
『主殿、儂もおかわりじゃ!』
「はいよ」
みんなにおかわりを出してやり、俺も食い始める。
「さてさて、お供はこれだ」
ネットスーパーで買っておいた缶ビールをアイテムボックスから取り出した。
用意したのはA社の銀色の缶のキリッと辛口ドライなビールだ。
もちろんキンキンに冷えている。
プシュッと口を開けて準備OK。
「いただきま~す」
ホルモン炒めと白飯を豪快にすくって口の中へ。
「ーーーッ、美味い!」
甘辛味噌味のホルモン炒めと白飯。
この最高の組み合わせで合わないわけがない。
甘辛味噌味のホルモン炒めと白飯をしっかりと味わって、ゴクリと飲み込んだあとは当然コレ。
ゴクゴクゴクゴク、プハーッ。
「く~、最高!」
濃い目の味のホルモン丼のあとを、キンキンに冷えた辛口のビールが口の中をリセット。
そしてまたホルモン丼を豪快にパクリ。
こりゃ止まらんね。
ガツガツ食っているフェルたちに負けないくらいに、俺もガッツリとホルモン丼を堪能したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕飯を食い終わって、みんなで風呂に入って、あとは寝るだけ。
フェルたちは既に夢の中だ。
俺だけちょっとやることがあって、一人カフェオレを飲みつつ起きている。
「フェルの風呂嫌いは筋金入りだな。もうそろそろ入ってキレイにしたらって言っても『風呂なんぞに入らんでも我はいつでも綺麗だ』とか言って、絶対入らないんだもんな」
風呂嫌いのフェルについて独り言つ。
逆にゴン爺は風呂が気に入ったみたいだけどさ。
でもなぁ、さすがに今の風呂は狭いし、あの大きさで毎日一緒には無理があるから何日かおきになっちゃうのが申し訳ないところではあるんだけど。
今日はゴン爺も一緒に風呂に入ったんだけど、3日ぶりの風呂だったからめっちゃ喜んでたな……。
ゴン爺もゆったり入れるように、早めに風呂の拡張工事はしたいところだな。
「明日、マリーさんに聞いた工事業者に行ってくるか」
そう明日の予定を決めたけど、その前にもやることが。
俺が一人起きている理由でもある、あの件についてやっとかないと。
「ゴホン、ええと、みなさんいますかー?」
そう声を掛けると、ダダダダダッと駆け寄る足音が聞こえてきた。
『やっと声を掛けてきたかー!』
この声はニンリル様か?
やっとって、1か月ごとの約束に遅れてはいないんだけどな。
『待ってたわ~。いろいろ調べて準備万端よ~、ウフフ』
キシャール様、そのウフフ笑いが怖いです。
いろいろ調べて準備万端って、俺のネットスーパーのテナントはあくまでドラッグストアですからね。
デパコスとか海外コスメは買えないですから。
お手柔らかに願いますよ。
『よっしゃ! 待ってたぜ~。もう少しでビールが切れそうだったから、ちょびっと焦ってたんだからな』
ビール大好きアグニ様。
あれだけの量で、あと少ししか残ってないなんてちょっと飲みすぎかもです。
『アイス。あとケーキも……』
ルカ様は相変わらずアイスがお好きなようで。
そして……。
『来たな。儂は腹を決めたぞ! 戦神の、お主はどうするんじゃ?』
『おう、俺も腹を決めた! あんなもの見たら、飲んでみたくてしゃあねぇわ!』
いつにない真剣な声を出しているのはヘファイストス様とヴァハグン様か。
というか、腹を決めたって何を決めたんだよ。
怖いな。
「ええと、それじゃあリクエストを聞いていきますね。まずはニンリル様から」
………………
…………
……
「ハァ、終わった終わった」
ようやく神様ズからリクエストを聞き終えた。
しかし、みんなここぞとばかりにああだこうだとリクエストしてくるね。
お供え物も月一になったからわからないでもないけどさ。
しかも、最近はしっかりリサーチしてくるから、ここのこの商品がいいとか言ってくるから、しっかりメモを取っておかないと間違って買っちゃいそうだし。
特にキシャール様のリサーチ力はハンパないね。
この間出た新商品がどうとかこうとか。
そこまで詳しく言われると俺もわかんないよ。
日本にいるわけじゃないしさ。
ったく、どんだけ美容製品リサーチしてんだよって話だよね。
しかし、今回一番驚いたのはヘファイストス様とヴァハグン様の酒好きコンビだよな。
このお二方もかなりウイスキーについてリサーチしてたようでさ。
まさか、あんなの頼んでくるとは思わなかった。
ずいぶん思い切ったよなぁ。
とにかくだ、お渡しするのは明後日の夜という約束だし、明日は工事業者のところへ行ったあとは、しっかりとみなさんのリクエスト品を調達しますかね。
「さてと、明日もなんだかんだとやることがあるし、もう寝よ」
俺は欠伸をしつつみんなが眠る寝室へと向かった。




