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第四百六十八話 野菜たっぷり

 ハァ……。

 若干肩を落としながらの帰宅中。

 魔道具屋に寄ってきたんだけど、魔道コンロはやっぱりダメだった。

 厳密に言うと、ダメというか、新しく買った方が早いってことだ。

 魔道具屋の店主曰く「う~ん、どうしても直して使いたいっていうんなら、直せないこともないけどかなり時間も金もかかるよ」とのこと。

 金はいいとしても、どれくらい時間がかかるのか聞くと、俺の魔道コンロの状態からすると年単位になるだろうって話だった。

 まずは魔道コンロの外観を整えなければならないし、火が出る部分の魔法陣も新しく刻む必要がある。

 そうなると、それぞれ専門の職人の手に委ねることになるうえに、ここまでの大きさの魔道具ではそれなりの腕をもった職人に頼まなければならない。

 そういう腕の良い職人となると王都かもしくはドラン辺りの職人に頼むしかないらしく、そちらの都合や輸送の時間も考えると、早くて1年はかかるだろうとのことだった。

 それだけ手間が掛かれば、もちろんそれだけの金もかかるわけで、新しく魔道コンロを買うよりも遥かに経費はかかるだろうとのことだった。

 その話を聞いて、残念ではあるけど魔道コンロを直すのは諦めた。

 愛着はあるものの直すのに早くて1年待ちとなるとさすがにね……。

 それで、新しいものを購入しようと思って、店主に少なくともこの魔道コンロと同等の性能のものが欲しいんだけどと相談すると、「うちの店には置いてないね」と言われてしまった。

 これだけの性能の魔道コンロを置いてある店となると限られてくるのだそうだ。

 店主が言うには、この大きさとなると、ちょっとした街の食事処じゃあ値段が高すぎて買わないし、買うとすれば貴族のお屋敷とかちょっとお高めの飲食店くらいのものらしい。

 そうなると、そういう需要がある大きな街の店にしか置いていないわけで……。

 店主の話では、王都かドランの店。

 王都の店なら間違いなく置いているんじゃないかという話だった。

 だけど、王都はねぇ。

 王都に行ったら王宮に呼ばれそうだし、それにタイミング的にもさ。

 ギルドマスターに王様への献上品をお願いしていて、今から王都に向かうっていう時だぞ。

 そのタイミングで俺が王都に行ったら、それなら謁見しろよって話に絶対なるよな。

 お偉いさんに会うのは、正直面倒だしできれば避けたいところ。

 ドランもエルランドさんがいるからね。

 この間のことがあったのに、すぐにドランに行くと勘違いされそうだし、当然却下。

 王都とドラン以外でなんとか手に入れることができないのか店主に聞いてみると、「国内だったらロンカイネン。あとは約束はできないがエイヴリング辺りにはあるかもしれない。それ以外となると、国外へ行くしかないな」とのことだった。

 店主の言い方だと、ロンカイネンという街にはあるということなのか?

 そう思って聞いてみると、この街を出さなかったのには理由があった。

 ロンカイネンはクワイン共和国と小国群との国境に近く、交易で発展した街なのだそうだ。

 ここレオンハルト王国でも王都、ドランに次ぐ大きな街ではあるのだが、問題がないわけではない。

 場所柄、クワイン共和国や小国群から流れてくる者も多く、少々治安が悪い街なのだという。

 クワイン共和国は今はそれなりに安定しているが、小国群は未だに群雄割拠で争いが絶えない地だって話だからな。

 そこから流れてくる者も荒っぽいのが多いって話だった。

 そういうこともあって、店主は王都とドランを勧めたらしい。

 魔道具屋の店主から、ロンカイネンの街の情報を入手したところで店を後にした。

 そして、帰宅途中の今に至るわけだが……。

 魔道コンロの入手先は、いろいろ考えるとロンカイネンの街一択なんだけど、治安が悪いって聞くと考えちゃうよなぁ……。

 まぁ、今のところは家のキッチンがあるから困ってないし、急ぐことはないか。

 みんなとも相談してからどうするか決めよう。

 そう気持ちを切り替えて、家へと向かう足を進めたのだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ククククク、夕飯の時間がやってまいりました。

 フェルとゴン爺は、当然肉を食えると思っていることだろう。

 しかし、そうは問屋が卸さない。

 俺だけギルドマスターから説教受けた理不尽さは忘れてないんだからなぁ。

 ということで、ぎゃふんと言わしたる。

 俺が主導権を握れて、かつ、一番効きそうなことといったら、やっぱり食事でしょ。

 肉至上主義のフェルとゴン爺に、野菜たっぷりの料理を出したらどうなるかな?

 今までも意趣返しで野菜多めの料理は出したことあるけども、今回はたっぷり使うよ。

 野菜だけだとさすがにかわいそうだから、肉も少し使うけど、ほぼ野菜。

 ドラちゃんとスイには悪いけど、付き合ってもらう形になっちゃうな。

 後日ちゃんと肉マシマシのフォローをするつもりだから、ちょっとだけ付き合ってなと心の中で手を合わせる。

 ドラちゃんとスイは、野菜もそんなに嫌いってわけじゃないから大丈夫だと思うけどね。

 そんなわけで、野菜たっぷりの料理を作っていこうと思う。

 フフフ、野菜は連日のアルバンからの差し入れで山のようにあるからなぁ、使い放題だぞ。

 作ろうと思っているのは、久しぶりにカレーが食いたくなったこともあって野菜たっぷりのドライカレーだ。

 そしてお供には、野菜たっぷりの具だくさんコンソメスープ。

 野菜がメインだけど、ちょびっとは肉も入ってるもんね~。

 フェルとゴン爺に文句は言わせないぞ。

 そうと決まったら、ネットスーパーで足りない材料を調達だ。

 と言っても買い足すのはウインナーとカレールーくらいのものだ。

 今回は市販のカレールーを使ってドライカレーを作るつもりだからね。

 ちなみに今回はこくとまろやかさに定評のあるカレールーを買ってみた。

 それを購入したら、まずは、野菜たっぷりの具だくさんコンソメスープから作っていこうかな。

 キャベツはざく切りにして、ジャガイモは皮をむいて一口大に、ニンジンも皮をむいて乱切り、そしてタマネギは薄切りに。

 それから、ネットスーパーで買ったウインナーを半分に切っておく。

 あとは、鍋に水を入れてジャガイモとニンジン、タマネギを入れて火にかけて、固形コンソメスープの素を入れて、ジャガイモとニンジンが柔らかくなるまで煮ていく。

 ジャガイモとニンジンが柔らかくなったら、キャベツとウインナーを入れて、キャベツがしんなりして煮えたら、塩とブラックペッパーで味を調えて出来上がりだ。

 次はメインのドライカレー。

 まずは、タマネギ、ニンジン、ナス、ピーマンを粗みじん切りに。

 もちろん野菜は多めでな。

 そうしたら、フライパンに油を熱してダンジョン豚とダンジョン牛の合いびき肉を入れ、おろしニンニクとおろしショウガ(ともにチューブ入りでOK)、塩胡椒を入れて炒めていく。

 ひき肉に火が通ったら、みじん切りにした野菜を入れて、野菜がしんなりするまで炒めたところに、水、ケチャップ、ウスターソース、顆粒のコンソメを混ぜ合わせ調味料を入れて、細かく切ったカレールーを入れる。

 あとはカレールーが溶けて、水分が飛ぶまで炒め合わせたら出来上がりだ。

「う~ん、いい香り~」

 久しぶりのカレーの香りに食欲がそそられる。

 炊き立ての飯を器に盛って、その上にドライカレーを載せて、乾燥パセリをパラリとかける。

 うん、なかなか美味そうな見栄え。

 フッフッフ、みんな、特にフェルとゴン爺はどんな反応をみせるかねぇ~。

「みんな、飯だぞー」

 リビングで寝ていたみんなの下に夕飯を持っていく。

 そして、フェル、ゴン爺、ドラちゃん、スイの前に野菜たっぷりの具だくさんコンソメスープと野菜たっぷりのドライカレーを置いていくと……。

『何だこれは?』

 逸早く反応したのはフェルだ。

 見ると明らかに不服そうな顔してるよ。

「何って夕飯だろ。具だくさんのコンソメスープとドライカレーだよ」

 俺が平静を装ってなんでもないように答えると、フェルの奴ったら鼻にしわを寄せてるな。

『主殿、これに肉は入っているのかのう~?』

 ションボリしたようにそう聞いてくるのはゴン爺だ。

「入ってるよ。いつもより少ないけど」

 少ないっていうか大分少ないけどね。

『あるじ~、お肉少ないけど、美味しいよ~』

「おー、そうかそうか。ありがとな~、スイ」

『ま、たまにはこういうのもありか』

「だろ、ドラちゃん。おかわりもいっぱいあるぞ」

 思った通りドラちゃんとスイは普通に食ってくれるね。

 俺も食おうっと。

 まずは、ドライカレーだ。

 うん、やっぱカレーと飯って美味いねぇ。

 どんどん進んじゃうよ。

 このままでも美味いけど、温泉卵をのっけても味がまろやかになって美味いかも。

 そう思ったらやるしかないよね。

 ネットスーパーを開いて温泉卵を購入。

 早速パカッと割って、温泉卵をON。

 卵を潰して、黄身と絡めてパクリ。

「う~ん、美味い! 味がまろやかになってさらに俺好みだ」

『あるじー、なぁにそれー』

「これか? 温泉卵だよ。これを載せると、カレーの味がまろやかになって美味しいんだ。スイも載せるか?」

『うんっ、ちょーだい!』

『お、美味そうだな。俺のにも載せてくれ!』

「はいはい」

 スイとドラちゃんのドライカレーの上にも温泉卵を載せてやった。

 そして、潰してカレーと絡まるようにしてやる。

「どうだ?」

『ホントだぁ。こっちの方が美味しいかも~』

『確かに。辛みがまろやかになっていいな』

 俺たちはこんな風に普通に食い始めたわけだが、フェルとゴン爺は野菜たっぷりの具だくさんコンソメスープと野菜たっぷりのドライカレーを前にして未だ口を付けていない。

 そして、フェルは俺を睨むように、ゴン爺は『何故じゃ?』と言いたげな困惑した目で俺を見ていた。

「何? 食いたくないなら食わなくてもいいけど」

 サラリとそんなことを言った後に、「言い出しっぺはお前らなのに、俺だけギルドマスターに説教されたのは忘れてないからなぁ」と言ってやった。

『ぐぬぬぬぬぬ』

『ぬぅ』

 フェルもゴン爺も、野菜ばっかり出てくる意味がようやく分かったみたい。

 ムスッとした顔しながら、野菜たっぷりの具だくさんコンソメスープと野菜たっぷりのドライカレーを食ってたよ。

 おかわりまでしてね。

 うーむ、おかわりまでしてたってことは、ぎゃふんとまではいってないってことか?

 よし、明日の朝も野菜たっぷりメニューでいってみるか。

 さてさて、何を作ろうかな~。






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― 新着の感想 ―
馬車で輸送中だし今ならまだドランにエルランドさんいないよね ダンジョン潜りたいって言われてもエルランドさんが来るぞって言えば多数決で勝てるとか思ったけど新しい街ワクワクするなぁ
[良い点] ぎゃふんといわしたる作戦 [一言] たまには自分の最大の武器で、逆襲してもいいと思う。 フェル達は、ちょっとムコーダさんを甘く見てるね。 一応、主だからね。 飯使いじゃなくて、大切な仲間…
[一言] スイとドラちゃんは若いからお肉いっぱい食べてもいいですが、 フェルとゴン爺は健康も考えて野菜をもっと食べるようにさせた方がいいですね。
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