第四百五十二話 ブリクストの街でお布施&寄付をしましょう(後編)
外伝コミック「スイの大冒険」の15話がコミックガルドにて公開になっておりますので、まだのかたは是非是非どうぞ。
水の女神ルカ様の教会を後にして、次にやって来たのはフェルお待ちかねの風の女神ニンリル様の教会だ。
この大陸で信者数が比較的多いと言われる女神様の中で、ニンリル様の信者数は一番少ない。
そのためか、ヒルシュフェルトのボロ教会ほどではないにしてもここの教会もこぢんまりとしていた。
建物自体が大きくないので、フェルたちは外で待たせて、俺だけ教会の中へと入っていった。
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」
声をかけると、白が基調の修道服を着たシスターが姿を見せた。
「何かご用がおありですか?」
「実はですね……」
今までの教会と同じく、かくかくしかじかとお布施と寄付のことを説明する。
俺から話を聞いたシスターは驚いた顔をして、急ぎ足で司祭様を呼びに行った。
そして、息を切らせて登場したのは、ちょっぴりメタボ気味でつぶらな瞳の人の良さそうな中年の司祭様だった。
「ハァ、ハァ、私は、この教会の、司祭をしております、エレウテリオと申します」
「私は冒険者のムコーダです。よろしくお願いいたします」
「シスターから話を聞きましたが……」
エレウテリオさんにもお布施&寄付のことを説明。
そして、なるべく孤児院の子どもたちのために使ってほしいことも伝える。
ここの教会も他のところから比べれば規模は小さいけれど、孤児院も併設されているようだしね。
エレウテリオさんは快く承知してくれた。
ここも孤児院の運営には苦慮していたようだ。
特に食事については、常に頭を悩ませる問題のようで、ここでも質より量をってな感じで偏った食事しか出せないことに心苦しさを感じていたようだ。
食べ盛りの子どもだもんねぇ。
エレウテリオさんに白金貨3枚を渡したら、「子どもたちに久しぶりに肉を食べさせてやることができます」って感激して泣いていたよ。
涙声で教会の中や孤児院の様子を見ていってほしいと引き留められたけど、丁重にお断りした。
去り際には司祭のエレウテリオさんをはじめ何人かいたシスターも揃って何度も「ありがとうございました」ってお礼の言葉と共にお見送りしていただいたよ。
そして次に向かうのは、戦神ヴァハグン様の教会(?)だ。
トリスタンさんの話では、ヴァハグン様のところは教会と言うよりも、ヴァハグン様を信仰している者たちが集まって集団生活しているような場所らしい。
何でも強さを求めて日々切磋琢磨しているそうだ。
「ここか……」
何だか重厚感のある扉の向こうからは、「セイッ」とか「ハッ」とか威勢のいいかけ声と共にカキンカキンと金属製の剣か何かがぶつかり合う音が聞こえてくるんだけど。
「すいませーん。って、この扉やけに重いな」
うんしょと扉を開けて入っていくと……。
怖い顔をした何十人もの人間が剣や槍などをこちらに向けていた。
俺は反射的に敵意はないと手を挙げた。
「あ、怪しいものじゃありません。こ、ここは戦神ヴァハグン様の教会だと聞いてきたのですがっ」
「教会という形態ではないが、戦神を信仰する者が集まった場ではある。それよりもだ、そんなものを連れてきて何をする気だ?」
武器を持った中の一人が、剣呑な目つきのままそう言った。
「あの、えと、後ろにいるのは全員私の従魔です。私に危害を加えない限り何もしませんので大丈夫です」
ヴァハグン様の信者の方にそう答えたあと、フェルたちに念話で『手を出すなよ』と念押ししておく。
「ほぅ、そうするとアンタに手を出せば後ろのフェンリルやドラゴンと戦えるわけか」
さっきとは別の信者がニヤリと笑いながらそう言う。
ちょっとぉ、何だかずいぶんと好戦的なんだけど。
ヴァハグン様に文句を言いたい気分だぞ、これは。
『フン、力量も分からぬとは、戦神の信者とは阿呆ばかりなのか?』
『そう言ってやるな。人の身で儂らに挑もうとする気概だけは認めてやらねばなるまい。気概だけじゃがのう』
フェルとゴン爺がわざわざ声に出して言うものだから、血気盛んなヴァハグン様の信者たちが「何だと?!」とエキサイトする。
「フェルもゴン爺も事をややこしくするなよぉ」
この状況をどうするんだよと頭を抱える俺を他所にフェルもゴン爺もどこ吹く風だ。
「静まれいっ!」
場を一喝するように大声が響き渡った。
筋肉がみっちり詰まっていそうな背が高くガタイがいい頬に傷のある30代半ばくらいの男が奥にあった建物から出てきた。
「師範……」
師範と呼ばれたその男がこちらに近づくと、信者の人垣が割れて道ができた。
「そのフェンリルと古竜 の言うとおりだ。お前らでは敵わん。この私でさえもな」
師範のその答えにザワつく信者たち。
いやいや、人の身でフェルやゴン爺と戦おうとすること自体が無謀なことだと思うんだけどなぁ。
「いいかお前たち、相手の力量を測ることも非常に重要なことだぞ。分かったら、修練を続けろっ」
「「「「「ハイッ」」」」」
師範の言葉に再び修練へと戻る信者たち。
というか、怖っ。
真剣で打ち合ってるよこの人たち。
虎の穴かよ、ここは。
「あなたはSランク冒険者のムコーダ氏ですな。それでは中へ……、と言いたいところですが、お連れの従魔が入れる部屋がうちにはありませんのでこちらへどうぞ」
師範に案内されたのは、信者たちの修練場と渡り廊下を挟んだ隣にある中庭。
そこに置いてあるイスにテーブルを挟んで座った。
「こんなところで申し訳ないですな」
「いえいえ、こちらもそんなにお手間を取らせることではありませんので」
「それでご用件は?」
「ええとですね……」
ここでもかくかくしかじかとお布施&寄付のことを師範に話した。
「小さい子もいるみたいですけど、ここで面倒みているんですよね?」
「ああ。孤児になった信者の子やら、武を身につけたいという子はここで預かり、みんなと共同生活している」
ここでは孤児院などは運営していないみたいだけど、小さい子もいたもんね(さっきの修練していた信者の中にもちんまい子どもが何人か交じっていたし)。
「その申し出ありがたく受けたいと思う。ありがとう」
師範の話によると、戦神の信者は群雄割拠の小国群に多く、ここにいるのも傭兵上がりやその傭兵の子どもが多いそうだ。
かく言う師範も元は傭兵だったそうだ。
「自分の故郷だが、あの辺りは戦続きで子どもを育てるには厳しい環境でな……」
師範曰く、エルマン王国とレオンハルト王国にある戦神の施設は、小国群に多くいる傭兵の子どもの受け皿としてできた面もあるそうだ。
わざわざここまで子どもを預けに来る傭兵も少なからずいると聞くから驚きだ。
そこまでするなら、こっちで子どもと一緒に暮らせばいいのではと思うが、そうもいかないらしい。
「傭兵ってのはな、骨の髄から傭兵なのさ。戦っていないと生きてる心地がしない」
そう言った師範は少し寂しそうだった。
この人も本当はまだ傭兵でいたかったのかもしれないね。
その感覚は俺にはまったくわからないけどさ。
「ま、それはいいとして、師範の俺をはじめ教えてるのが傭兵上がりばっかりだからな。対人戦には自信があるが、ここいらじゃあ傭兵の需要なんてこれっぽっちもないからなぁ。冒険者として活動してはいるが……」
やはり、魔物相手となると勝手が違うというのが本音らしい。
ここ出身の冒険者で高ランクになった人もいるそうだけど、そういう人はここを出て独立するから、結局ここにいるのは若手と子ども。
そうなると、どうしても収入もそれなりにしかならず、ここの運営資金はいつもカツカツだったそうだ。
なるほどねぇ。
すさまじい訓練をしてはいるけど、確かに対人か対魔物かによっても違うわなぁ。
しかし、ここは武を極めようとする者たちの集団かとばかり思ってたけど、それだけじゃないちゃんとした役割があるんだな。
群雄割拠の小国群が少しでも平和になるといいのにねと願いながら、師範に白金貨3枚を贈った。
師範には「こんなにいいのか?」と驚愕されたけど、ここのダンジョンで儲かったのでと言ったらゴツイ手で両手をギュッと掴まれて「ありがとう、ありがとう」と何度もお礼を言われたよ。
ゴツイ男に手を握られても全然嬉しくないから苦笑いだったけどね。
「しかし、やはりダンジョンは儲かるものだな。我々もここのダンジョンのおかげで、何とか存続できているしな。俺の故郷でも小競り合いなどやめて、しっかりとダンジョンに潜れる環境があればまた違うのだけどな」
師範がポロッと言ったその言葉に反応したのはフェルだった。
『おい、お主の故郷にはダンジョンがあるのか?』
いきなりしゃべったフェルに少し驚いていた師範だったが、律儀に「ああ」と答えてダンジョンのことを教えてくれた。
「俺の故郷はフォンデル王国っていうんだが、まぁ今じゃ亡国なんだが、そこにはダンジョンがあったんだ。あまり知られてはいないが。しかも、小競り合いばかりしてるものだから、ほとんど手付かずの状態でな」
師範が言うには、その辺は今も小競り合いが絶えない地域だから、おそらく今も手付かずの状態だろうという話だ。
ダンジョンの話に身を乗り出すフェルとドラちゃんとスイ。
『ほぉ、手付かずのダンジョンか。面白そうなダンジョンだな。その話、ちょっと詳しく聞かせてもらおうか』
………………
…………
……
通りを歩くフェルの尻尾が機嫌良さげに揺れていた。
飛んでいるドラちゃんの尻尾も揺れている。
スイもご機嫌にポンポン飛び跳ねながら『ダンジョン、ダンジョン、またダンジョン~♪』と歌っている。
『小国群のダンジョンか。良いことを聞いたな』
『だな。また楽しみができたぜ』
『ダンジョン楽しみだね~』
いやいや、楽しみって行かないよ。
小国群ってバリバリ紛争地帯じゃん。
そんなところは何を言われたって行かないからな。
ということで、フェルたちの言うことは無視だ無視。
『何だお主ら、ダンジョンが好きなのか?』
『まぁな。骨のある魔物に出会うこともあるし、美味い肉が手に入ることが多いからな』
『確かに言われると、暇つぶしにもなるし、飯にも困らないというのはあるかもしれんのう』
おいおい、その会話。
ダンジョンを食料庫かなんかと思ってるのはフェルとゴン爺くらいだぞ。
『ダンジョン、楽しいもんな』
『うん、楽しい~』
ドラちゃんもスイもダンジョン大好きだもんね。
だけど、無視だぞ無視。
みんなの会話に入ってはいけない。
俺は学んだんだ。
入ったが最後、なし崩し的にダンジョン行きが決まるんだから。
ということで、ここはお布施&寄付を続行だ。
「さぁて次へ行くぞ」
『チッ』
おい、フェル、舌打ちしたって俺は話を振らないからな。
そして、次にやってきたのは薬神の教会(?)だ。
神様ズには他の神様のことを聞いたことはないけど、薬の神様っているのかな?
よくわからんけど、いても不思議ではない気はするね。
ここもヴァハグン様のところのように、薬神を信仰する方々が集まった施設のような感じだ。
まぁ、いるのはほぼ薬師らしいけど。
トリスタンさん情報では、世間では1日中研究三昧の変人集団と言われているけど、有用なポーションの開発もいくつかしている優秀な集団らしい。
それに、薬師の能力によってはポーションの薬効にバラつきが出てくる中、ここのポーションはしっかりとした薬効があるらしく、冒険者ギルドにも定期的に卸してもらっているとかで、冒険者ギルドにとってもなくてはならない存在なのだそう。
そのポーションを一般向けにも販売しているようで、小さな店舗だがポーション販売店が併設されていた。
俺的にはそちらの方が入りやすかったので、フェルたちに待ってもらって俺1人で店へと入っていった。
「あの~……」
「いらっしゃいませー」
いたのは店番の少年が1人。
「ええと、ここは薬神の教会? でいいんですかね?」
「教会というか、薬神様を信仰している者たちの運営する施設ではありますね」
「なるほど。実はですね……」
店番の少年にかくかくしかじかとお布施&寄付のことを話した。
「本当ですか?! ありがとうございます!」
少年はめちゃくちゃ喜んでくれた。
聞くと、研究やらポーション作りやらにはやはり金が嵩むそうで、寄付は年がら年中募っているのだそうだ。
医学の発達していないこの世界では、ポーションはなくてはならない存在だもんね。
ということで、白金貨3枚を少年に手渡したところ、少年は目を見開いて口をパクパク。
俺と手渡した白金貨とに目線が行ったり来たり。
そして、ついに……。
「師匠ーーーッ!!!」
あらら、飛び出して行っちゃったよ。
でもまあ、一応白金貨は渡したし終了ってことで、次へ行こう。
そして最後にやって来たのは、鍛冶神ヘファイストス様の教会(?)。
「ていうか、ここ完全に鍛冶場なんじゃないの?」
カンカンカンと金属を叩く音と熱気が扉の外にまで伝わってきていた。
恐る恐る扉を開けると、そこはドワーフ人口が急上昇した場所だった。
熟練ドワーフが金属を叩き、見習いドワーフがちょこまかと歩き回っていた。
俺が入ってきたことにも誰も気づかない、というか、誰も気にしていないようだ。
「あの~……」
普通に声をかけるが、誰も気が付きもしない。
「ンンッ、あのー、すみません!」
大声で声をかけてようやく熟練ドワーフがこちらを向いた。
「なんじゃい! 今は忙しいんじゃっ!」
ピシャリと怖い顔でそう怒鳴られたけど、ここだけスルーするのもねぇ。
「いえ、とても大事なことなんですよ!」
「ハァ?! しょうがねぇな、一段落するまでちょっと待ってろや!」
熟練ドワーフにそう言われて、仕方なく待つことに。
その間、フェルたちに『腹が減った』と散々言われたけど、ここで最後だからと何とか宥めすかしながら待つこと約1時間。
ようやく仕事を終えた熟練ドワーフが俺たちの前へ。
「そんで、何の用なんじゃ?」
「ええとですね……」
かくかくしかじかとお布施&寄付の説明をした。
したのだが、熟練ドワーフの答えは「いらん」だった。
「儂ら鍛冶師ってのはな、その技術で作ったもんを買ってもらってなんぼじゃ。ただでもらうなんちゅうのはもっての外だ。そんなことすりゃあ鍛冶神様に顔向けできん。そんなことよりも、お主、従魔連れっちゅうことは冒険者なんだろう? そんなら儂らが作った武器を買ってくれた方がよほどありがたいわ」
「買えるんですか?」
「もちろんじゃい。こっちに店もあるぞ。ちなみに冒険者御用達じゃ」
熟練ドワーフに案内してもらって店へと向かう。
「おぉ~」
ダガー、ククリ、ショートソード、クレイモア、シャムシール、バスタードソード、レイピア。
真っ先に目に入った剣の中で、俺が分かるものだけでもこれだけある。
他にもいろいろな剣が所狭しと並んでいるし、他にも槍や斧もそれぞれいろいろな種類が並んでいた。
すごい。
すごいけど、俺の武器としてはスイが作ってくれたミスリルの剣と槍があるから十分ちゃあ十分なんだよね。
「どうじゃ? なかなかのもんじゃろう」
「はあ。でも、俺にはミスリルの剣と槍があるので……」
「何? ミスリルじゃと? 見せてみろ」
「いいですけど」
アイテムボックスからスイ特製ミスリルの剣と槍を取り出して熟練ドワーフに見せた。
剣と槍をじっくりと見分する熟練ドワーフ。
「実に見事なものじゃな。どこで手に入れたのかは知らんが、これを作った鍛冶師は素晴らしい技を持った鍛冶師じゃわい。やはり上には上がいるもんじゃ。儂ももっともっと精進せねばならんわい」
「いや、えと、ハハハ……」
いえ、これを作ったのは俺が肩から掛けている鞄の中で眠ってるスライムです。
とはさすがに言えないよねぇ。
苦笑いしつつ、店内を見ていると、あるものが目に留まった。
「これは……」
「それは儂が作った魔鉄製のウォーハンマーじゃな。なかなかいい出来じゃぞ」
そう、魔鉄製のウォーハンマーだ。
これと似たものを俺も前に見たことがある。
エイヴリングのダンジョンで出会った“アーク”のシーグヴァルドさんが持っていた武器。
出会いたくもないし戦いたくもないけども、ゴーレムとかガーゴイルとかをどうしても相手にしなきゃならなくなったときのためにも打撃系の武器は1つ持っててもいいかもしれないな。
「これにします。これください」
「うむ。これは金貨86枚じゃな」
俺はもちろん白金貨3枚を渡した。
「おつりは取っておいてください。出来れば、見習いの子どもたちに美味いもんでも食わせてやってください」
「フッ、ありがとうよ」
俺は魔鉄製のウォーハンマーを受け取ってアイテムボックスにしまうと、鍛冶神の店を後にした。
「さーて、帰ろうか」
『腹が減ったぞ。帰ったらすぐに飯だ』
『儂もさすがに腹が減ったわい』
『俺もだぁ~』
『スイもお腹ペコペコ~』
ようやくお布施&寄付が終わったと思ったら、みんなの腹減ったの大合唱だ。
腹が減り過ぎたからか、鞄の中で寝ていたはずのスイも起き出していた。
「ハハ、分かった分かった。確か作り置きしておいたハンバーグが残ってたはずだから、帰ったらハンバーグで夕飯だ」
『ハンバーグー! ねぇねぇ、あるじー、スイの好きな白いの入ってるやつあるー?』
「チーズINハンバーグか。もちろんあるぞ」
『ヤッター!』
『何だそのチーズなんちゃらというのは』
『ゴン爺ちゃんあのねー、トロッとした白いのが入ったお肉でとーっても美味しいんだよー!』
『ほぅ、美味いのか。それは楽しみだ!』
『チーズが入ってないのも美味いけどな』
『うむ。我は白いのが入っていない肉だけの方が好みだぞ。もちろん入っているのも美味いがな』
「ちゃんとチーズINのとそうじゃないのと半々くらいに作ってあるから大丈夫だよ」
『うーむ、我慢できん。乗れ』
強制的にフェルの背中へと乗せられて……。
「コラーッ、街中で爆走はダメだろぉぉぉっ」
『我にとっては速足程度だ』
「またそんな屁理屈を言うー! みんなもフェルを注意してくれよー!」
『いや、これくらいならそんなに速いとは言えんだろうて。儂でも付いていけるぞ』
『腹減ってるしなー』
『あるじー、大丈夫だよー。早く帰ってご飯にしようねー!』
「ちょっとみんなぁっ」
『いいから黙って乗っていろ。舌を噛んでもしらんぞ』
「フェルーーーーッ」
その日、バヒュンとすごい勢いで通りを走り抜ける俺たち一行がブリクストの大勢の住人に目撃されたのだった。