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第四百三十三話 みんなに相談

「ただいま~」

『おお、やっと戻ってきたか。腹が減ったぞ』

『俺も俺も』

『スイもお腹減ったのー』

 帰ってきて早々に腹が減ったの大合唱にガックリする俺。

「なんだよ、帰ってきたばっかでそれかよー」

『む、腹が減ったのだからしょうがないだろ。飯は最重要事項だぞ』

 フェル、そんな真剣な顔で力説しなくてもいいんじゃないかな。

『そうだぞ。美味い飯が俺らの力の源なんだからよ』

『あるじのおいしいご飯食べてるから、スイは元気なんだよー』

 力説するフェルに同意するようにドラちゃんとスイもそんなことを言ってくる。

 でもまぁ、そんなこと言われたらねぇ。

 悪い気はしないし、すぐ作らなくちゃって気持ちにもなってくる。

「あーあー、はいはい、今からすぐ作りますよ」

 俺がそう言うと、ドラちゃんから『今日もギガントミノタウロスの肉がいいな。やっぱ美味いしよ』などとリクエストが。

 フェルもドラちゃんの言葉に『うむ』と大きく頷いている。

 スイも『あのお肉がいいー』とのこと。

 ギガントミノタウロスの肉は大人気だね。

 あの肉は美味いから分かるけど。

「それじゃあギガントミノタウロスの肉で夕飯作ってくるよ」

 俺はリビングにみんなを残してキッチンへ移動した。

 そして、広々とした調理台を前に独り言ちる。

「ホントは相談したいことがあったんだけどな……。ま、夕飯の後でもいいか。さてと、夕飯作っちゃいますか」

 とは言っても、何を作るかも決めてないんだよな。

 うーむ、ま、ネットスーパーを見てから決めますか。

 そう思いながらネットスーパーを開いた。

「お、きのこが特売になってるな」

 きのことギガントミノタウロスの肉を合わせるとなると……、あ、あれがいいかも。

「確かあれも売ってたよな……」

 鍋やフライパン等があるページに移動した。

「あった。鍋にセットできる蒸し器」

 普通の鍋にセットできるプレート式の蒸し器だ。

 それを手持ちの大鍋に合わせた大きさのものを同じ個数カートに入れていく。

「よしと。これで牛肉のホイル蒸しができるな。いや、ギガントミノタウロス肉のホイル蒸しか」

 特売のきのこを見て思い出した、牛肉のホイル蒸し。

 肉となると焼くことがどうしても多くなるし、味付けも濃いめになりがちだからね。

 たまにはさっぱりと蒸し料理ってのも悪くないだろう。

「あとは特売のきのこ類とタマネギとピーマンとパプリカを買ってと……」

 材料を次々とカートへ入れて精算。

「よし、材料は揃ったな。調理開始だ」

 まずはきのこからだな。

 用意したのはマイタケとシメジとエノキ。

 きのこの石づきを切って食べやすい大きさにほぐしていく。

 それからタマネギを薄切りにして、ピーマンとパプリカは細切りに、ギガントミノタウロスの肉は薄切りにしていく。

 あとは大きめに切ったアルミホイルの真ん中にタマネギとピーマンとパプリカを載せたら次に各種きのこを載せてその上にギガントミノタウロスの肉を載せる。

 それをもう1度同じように重ねたら、だし醤油と酒とみりんを混ぜた調味液を振りかけてアルミホイルの真ん中を合わせて閉じて左右両端も折って閉じていく。

 あとは用意した蒸し器で蒸していけば出来上がりだ。

 キッチンにあった魔道コンロのほか俺の魔道コンロも使って蒸してどんどん作っていくぞ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




『おい……』

 ギガントミノタウロス肉のホイル蒸しを前にして文句を言いたそうな顔のフェル。

「あー、肉以外が多いって言いたいんだろ? ま、文句言うなら食ってからにしろって」

『むぅ』

『ゴクン。フェル、これなかなかいけるぜ!』

 先に口をつけていたドラちゃんがそう言う。

『んとね、ジュワって染み出たお汁も美味しいんだよ~』

 うんうん、スイの言うとおり。

 野菜から染み出た汁が旨味があるんだよ。

 これを絡めながら肉と野菜を頬張るのがめちゃくちゃ美味いんだぞ。

『そこまで言うなら食わぬことはないが……』

 そう言いながら渋々という感じでホイル蒸しに口をつけるフェル。

 最初は様子を見ながら少量を食っていたのが徐々にバクバクと多めに頬張るようになり、最後にはガツガツとガッツくように食っていたのにはちょっと笑っちゃったよ。

 4つ出していたホイル蒸しもキレイに平らげて、汁までキレイになくなってたしさ。

 結局みんなペロリとギガントミノタウロス肉のホイル蒸しを平らげて、すぐにおかわりとなり出してやる。

「そうだ、このすだちっていうのを絞ってかけると柑橘系の風味が加わってさっぱりした味わいになるぞ」

 俺の分は、半分はそのままで残り半分にはすだちを掛けて食おうと思ってたからフェルたちにも教えてやる。

『ふむ、それを掛けるとサッパリした風味になるのか。よし、掛けろ』

『俺の分にも!』

『スイのにもー!』

 とのことで、みんなのおかわり分にすだちを絞り掛けてやった。

『さわやかな風味が加わってこれはこれでイケるな』

『俺はこれ掛けた方が好きかも』

『さっぱり~』

 すだちを掛けたホイル蒸しをパクつくみんなを見ながら、俺も食い始める。

 ギガントミノタウロス肉のホイル蒸しをメインにインスタントの味噌汁と作り置きしてあった味付けは塩昆布のみのキュウリの浅漬けを添えた。

 そして大事な炊き立ての白飯だ。

 ホイル蒸しを食った後に白飯をパクリ。

「ウメェ……」

 やっぱり白飯に合うおかずっていうのは正義だね。

 そんな感じで俺たちはギガントミノタウロス肉のホイル蒸しを心ゆくまで堪能したのだった。

 そして、夕食後の一休み。

 フェルとドラちゃんとスイは例によって不三家のケーキやらプリンやらをパクつき、俺は今日の気分だった紅茶を飲みつつホッと一息ついていた。

「なぁなぁ、みんなに相談があるんだけどさ」

 俺は懸案である莫大なドロップ品の買取代金について相談を持ち掛けた。

『何だ、改まって』

「いやさ、今日、ダンジョンのドロップ品の買取代金を受け取りに行ってきたじゃん」

『うむ』

「それがまたびっくりするような金額だったわけよ。今までだって多過ぎたってことで、この前相談して寄付とかしたばっかりなのにさ。今回ので減った分よりさらに莫大に増えちゃったんだよね……。どうしたらいいと思う?」

『うーむ、どうしたらいいと言われてもな……』

『だよなぁ。俺たちは美味い飯さえ食えれば、それ以外は別に欲しいもんもないしよ』

『スイも美味しいものが食べられればいいの~』

 だよねぇ。

 俺も別にこれと言って欲しいものもないし、現状まったく困ってないんだよな。

『この前、孤児院とかいうのに寄付しただろ。同じでいいんじゃねぇの』

 ドラちゃんがそう言うとフェルが頷く。

『うむ。それと女神様たちへの教会へのお布施だ。これは忘れてはならんだろう。ニンリル様もお喜びになるだろうしな』

 ドラちゃんに続けてフェルがそう言った。

「今考えられるのってやっぱりそうだよなぁ」

 現状としては俺もそれしか思い浮かばないわ。

 フェルたちと話し合った結果、立ち寄った街の孤児院や女神様たちの教会への寄付をしていくということになった。

 まぁもちろん前と同じく情報収集をして実際に見てみて、変なところだった場合は寄付を見送る場合もあるだろうけどね。

 そうやって社会奉仕で少しずつ所持金を減らしていくしかないんだろうけど、近々またダンジョンに潜ることになるだろうから確実に所持金が増えるのが分かっているだけに頭が痛いね。

 本当は、俺たちで食う肉以外のドロップ品については拾って来ないのが一番手っ取り早い対処法なのかもしれないけど、それはそれでねぇ……。

 せっかくみんなが戦って得たドロップ品を放置っていうのももったいないし、なによりなんだか切ないじゃん。

 何よりギルドマスターのトリスタンさんが目をギラギラさせながら期待しているしさ。

 やっぱりとりあえず拾えるものは拾ってくるしかないよな。

 あとは他に何か方法があるか探りつつ、寄付なんかの社会奉仕で減らしていくしかないな。

 そんな結論にまとまってから数日。

 いよいよダンジョンへと戻る日がやってきた。

 フェルたちには5日と言ったところを、ダンジョンでの飯を作り置きするためにと粘りに粘って1日だけ延ばして6日地上にいたことになる。

「もっと地上にいたかったな……」

『おーい、いい加減諦めろよ』

『そうだぞ。いくら我らがいるとはいえ次は最下層を目指すのだからな、お主も気を引き締めていけ』 

『ダンジョン、ダンジョン、ダンジョン♪』

「はいはい、分かりました」

 俺たち一行を期待を込めた目で見つめるのは、ギルドマスターのトリスタンさんだ。

「皆さまのご帰還を心よりお待ちしております」

 トリスタンさん、その期待に満ちた満面の笑みに揉み手はやめなさいってば。

『では、行くぞ!』

 フェルの掛け声とともに、俺たちは再び難関と言われるブリクストのダンジョンへと入っていった。






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― 新着の感想 ―
豪邸賃貸の更新はしなかったんかな?
孤児院の経営状態が良くわからないなら調査員雇うか調査のできる奴隷買って調査すれば手間が省けるし人材や人脈が増えるのは自分達のためになる お金あるんだから人を使おうよバンバン外注して経済回すべき 商人(…
[気になる点] 世界の経済がどんなか知らないけど一人で富を集中するとインフレがおきそう
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