第四百三十二話 贅沢な悩み
明けましておめでとうございます!
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1月25日には小説6巻、本編コミック3巻、外伝コミック1巻が発売されますので是非是非よろしくお願いいたします。
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今年も「とんでもスキルで異世界放浪メシ」を何卒よろしくお願いいたします。
「いやぁ、どれもこれも素晴らしい品ばかりでした。こんなに興奮したのは久しぶりです」
フェルとドラちゃんとスイは家で留守番、俺1人で冒険者ギルドに来ていた。
行先が冒険者ギルドでそれもドロップ品の買取だと分かった途端に興味をなくして、みんなは家で昼寝してる方がいいって言うんだもんな。
冒険者ギルドに着いてすぐにトリスタンさんがいるギルドマスターの部屋へと案内され、そこで俺たちが取得したダンジョンのドロップ品の数々を披露。
それを見たギルドマスターであるトリスタンさんは興奮冷めやらぬといった状態だ。
しかしながら目利きは相当なもののようで、既に買取するドロップ品も選別は終わっている。
いちいち興奮しながらも、ちゃんと選別はしてるんだもんさすがギルドマスターにまで昇り詰めた人だなとちょっと感心した。
それでだけど、ここブリクストのダンジョンの特産でもある宝石類はすべて買い取ってもらえることになっている。
品質のいいダンジョン産の宝石は引っ張りだこでいつでも品薄らしく、大量に仕入れることができて大助かりだってトリスタンさんからは感謝の言葉までいただいちゃったよ。
そんな感じだったから、ここの冒険者ギルドならいけるかなと思ってトリスタンさんに「こんなのも持ってるんですけど……」とドランとエイヴリングのダンジョンの売れ残りの宝石類や盗賊王の宝も出してみたところ喜色満面の笑みを見せてくれた。
宝飾品の多かった盗賊王の宝に関してはさすがに全部とはいかなかったけど、ドランとエイヴリングのダンジョンの分についてはすべて買い取ってもらえた。
盗賊王の宝に関しては本当に残念そうだった。
買取にならなかった分を俺がアイテムボックスに仕舞うときは「クゥ~」とか悔しそうな声だしてたよ。
まぁ、それでも売れ筋の宝石や宝飾品が大量に手に入ったとトリスタンさんはホクホク顔だったけどね。
他にもゲイザーの魔石(極小)やストーンゴーレムの魔石(極小)、アイアンゴーレムの魔石(小)、オーガの魔石(極小)を全部と4アームズベアーの毛皮と肝、グレートウルフの毛皮、レッドタイガーの毛皮、フォレストパンサーの毛皮、マーダーグリズリーの毛皮、タイラントゴリラの毛皮も全てお買い上げ。
4アームズベアーの肝に関しては言わずもがなだ。
39階層に4アームズベアーがいたって言ったら、肝は強力な精力剤の材料になるんだって息巻いてたもんね。
毛皮もお貴族様の防寒着や敷物として人気の品らしく、高ランクの毛皮が良い状態で手に入ったとこれまた満面の笑顔を見せていた。
出来るならばズラトロクの毛皮も欲しかったようだけど、トリスタンさんは泣く泣く諦めたと言っていた。
これを買取するとなると、予算的に買取予定の宝石類を大分削らないといけなくなるとか。
そりゃあ王様に献上されるような貴重なものらしいもんね、金色のズラトロクの毛皮。
ズラトロクの毛皮をしまうときにはトリスタンさんが名残惜しそうに「ああ~」とか声を出してたけど、もちろんちゃんと回収させていただきましたよ。
それでもギルドマスターの部屋のテーブルの上を埋め尽くす宝石類や魔石、所狭しと並べられた毛皮を見てご満悦だったけどね。
まぁそんなこんなで買取の選定も終わって、冒険者ギルドの職員さんが出してくれたお茶をトリスタンさんと飲みながらホッと一息ついているところだ。
「大至急査定しまして、明日にはこれらの買取代金をお支払いするようにいたしますので」
ニコニコと笑顔のままそう言うトリスタンさん。
俺としては早く買取代金が受け取れるならそれに越したことはないので、明日またこちらに伺うことに。
「それで、またダンジョンに潜ることになるのですよね?」
「ええ、まぁ。うちの従魔たちが張り切ってますから、ハハハ」
俺としてはもう十分だと思うんだけど、フェルたちは踏破するまで絶対に納得しそうにないもんね。
デミウルゴス様が言っていたこともあるから(最終階層のことね)、本当はこのまま終わりたいってのが本音だけどさ。
「40階層まででこの素晴らしいドロップ品の数々。それ以降となれば……、期待に胸高鳴りますなぁ。グッフッフッフ」
グッフッフッフて、ちょっと下品な笑い声ですよ、トリスタンさん……。
俺から買い取ったドロップ品の品々だけど、冒険者ギルドから他へ卸すときにはもっと高値になっているんだろうから、莫大な利益を見込んで笑いが止まらないのもわかるけどさぁ。
なんかハイになっているトリスタンさんに引き気味になった俺は、ここからさっさと退散することにした。
トリスタンさんに「また明日に」なんて満面の笑みで見送られながら俺は冒険者ギルドを後にした。
フェルたちがいなかったので、この街の商店街を散策しながら帰ることに。
特に目新しいものはなかったけど、何かと便利な麻袋だけは大中小と少し多めに買い足してからフェルたちの待つ家へと帰路についた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日の午前中はゆっくり過ごし、みんなに昼飯を食わせた後に再び俺は冒険者ギルドへと向かった。
昨日と同じ理由でまた1人でだ。
冒険者ギルドに入るとすぐにトリスタンさんが駆け寄ってきた。
「もうそろそろいらっしゃるのではとお待ちしておりました。ささ、2階の私の部屋へ参りましょう」
トリスタンさんの後についてギルドマスターの部屋へと向かう。
部屋に入ってテーブルを挟んで向かい側に座ると、すぐにお茶が運ばれてきた。
それを一口飲んだ後、ここに来た本題に早速入った。
「ええと、査定の方は無事終わりましたか?」
「ええ。最優先で進めさせていただきましたので。ちょっとお待ちください」
席を立ったトリスタンさんが部屋の奥にある金庫へと向かった。
「では、こちらが買取代金になります。〆て金貨4万枚です」
「…………は?……うわっととっ」
驚き過ぎてお茶を飲もうと手にしていたティーカップを落としそうになった。
1度深呼吸をしてから慎重にティーカップを置いて、トリスタンさんに聞きなおす。
「き、き、金貨、よ、4万枚って言いました?」
「はいっ! ありがたいことに宝石類をたくさん買取させていただくことが出来ましたからねぇ。それに需要の多い魔石や素晴らしい毛皮も! 私が冒険者ギルドのギルドマスターになって以来の大商いですよ!」
そう言いながらハイテンションでニッコニコのトリスタンさん。
「内訳をご説明しますとですね、アクアマリン(極小粒)が1つ金貨16枚で×22で金貨352枚、ガーネット(極小粒)が1つ金貨15枚で×11で金貨165枚、アメシスト(極小粒)が1つ金貨15枚で×13で金貨195枚、ターコイズ(極小粒)が1つ金貨14枚で×16で金貨224枚…………」
トリスタンさんが詳しく内訳を教えてくれたものの、金貨4万枚のインパクトがデカ過ぎてさっぱり耳に入らなかったぜ。
ただ端数切り上げで金貨4万枚にしてくれたというのはかろうじて覚えている。
「というわけで買取代金をご査収ください。さすがに金貨4万枚となると相当な量になりますので白金貨でご用意させていただきました」
そう言いながらドンと俺の目の前に麻袋を2つ置いた。
「白金貨できっちり400枚入っておりますが、一応確認のためにも数えてください」
中を覗くとパンパンに詰まった見覚えのある白金の金貨が。
「は、はい……」
ゴクリと唾を飲み込んだあと、白金貨を手ですくって10枚ずつ1セットで数えていく。
「3、3、4で10枚。3、3、4で20枚。3、3、4で30枚。3、3、4で…………」
俺の手でテーブルいっぱいに並べられた白金貨。
「3、3、4で400枚。はい、確かに白金貨400枚あります」
震える手で白金貨を麻袋に戻して、それをアイテムボックスに仕舞う。
「ムコーダさん、次も大いに期待していますぞ」
満面の笑顔のままそんな風に言ってるけど、大丈夫なのかな?
俺が心配することじゃないけど、俺に対して買取代金金貨4万枚も支払ったってのに、またドロップ品の買取する余裕あるのって感じだよ。
遠回しに「また買取していただけるんですか?」って聞いたら、トリスタンさんは「もちろんです!」と即答だ。
勘のいいトリスタンさんは俺の言ってる意味が分かったらしく「うちの資金の心配ですか?」と笑みを浮かべながら聞いてくる。
「実を言いますと、耳の早い方々から既に問い合わせが来ているくらいなのですよ」
え、マジで?
「フェンリル連れのSランク冒険者であるムコーダさんのことは、知っている方なら知っていますからなぁ」
トリスタンさんが言うには、俺がダンジョンに潜って戻ってきたってことはそれ相当のお宝を持って来てるはずだってことは見る人が見れば想像に難くない。
しかも、ダンジョンから戻ってきた後に俺が冒険者ギルドに出入りしているとなれば、ドロップ品の買取関係だろうと察しがつくという訳だ。
「まだ何の情報も出していないのにこの状態ですからな、今回のドロップ品を売りに出したら即完売になるのは間違いありませんよ。ムフフフフフフ、笑いが止まりませんなぁ」
ちょっとトリスタンさん、どこの悪代官だよ。
まぁ、そういうことだから資金の心配は無用ということらしい。
俺としては買い取ってくれるというならそれに越したことはないからいいけどさ。
その後、俺は超ご機嫌なトリスタンさんに見送られながら冒険者ギルドを後にした。
「しかし、白金貨400枚も何に使えばいいんだよ……」
ある程度金があった方がいいとは思うものの、ネットスーパーで買い物できて食うに困らない程度でいいっていうのにね。
「またフェルたちと相談しながら寄付しよう」
とは言っても、最近貯まりに貯まってきた金は多少の寄付だけでは減ってくれないんだよね……。
金が多過ぎて悩むという贅沢な悩みを抱えた俺だった。




