第四百二十七話 全員レベルアーップ
活動報告で書かせていただきましたが、書籍6巻の発売日が決まりました!
2019年1月25日です。
なんと本編コミック3巻と外伝1巻も同時発売となります!
書籍6巻、本編コミック3巻、外伝1巻が同時発売と盛りだくさんですが是非是非よろしくお願いいたします!
ダンジョンから出た後、とりあえずは冒険者ギルドへ報告へ向かった。
窓口の受付嬢に、俺たちがダンジョンから戻った旨をギルドマスターのトリスタンさんへ言伝を頼んですぐ帰るつもりだった。
しかし、目敏いトリスタンさんに見つかって腰の低い態度と話術でもっていつの間にかギルドマスターの部屋へと誘導されていた。
フェルたちも付いてきてはいるものの我関せずの態度。
俺が座るイスの後ろのスペースで横になってフェル、ドラちゃん、スイともに昼寝モードだ。
「いやぁ、よくぞ戻ってこられました! もしや、この短い期間でダンジョン踏破を?」
「いやいや、さすがにそれは」
トリスタンさんに40階層まで到達したこと。
そこのボスを倒したことで転移石が得られたことなどを話した。
「ふむふむ、なるほど。30階層の次は40階層で転移石が出ることになりますな。これは新情報ですぞ! しかし、40階層とは新記録ですな! これまでの最高到達階層が37階、それをすぐに上回ってしまうとはいやはやさすがはSランクの一言ですなぁ」
「いや、まぁ、そこは、ハハッ」
大部分というかほぼフェルとドラちゃんとスイの最強トリオのおかげですけどねー。
「ああ、それから……」
37階層ですれ違ったこの国屈指の実力派と言われる冒険者パーティー。
そのパーティーの持ち物だろう武器やらが37階層のボス部屋に散乱していたことを話して、一応拾ってきた物もトリスタンさんに見せた。
「まさか……。しかしこの武器は間違いなくあの方たちの物……。そうですか。ハァ……」
このダンジョンでの稼ぎ頭の1つでもあったようで、トリスタンさんもその報告には肩を落とした。
「しかし、冒険者という職業には危険は付き物ですからな。その辺は各々自覚されているはずです」
シビアではあるけど、まぁ確かに冒険者っていう職業はそうなるよな。
後のこと、遺族への通知やらは冒険者ギルドの方でやってくれるとのことだ。
拾ってきた武器類も、持ち主がいない以上は所有権は拾った俺ということになるらしい。
「話は変わりますが、これも重要なことですから……」
そう言いながら笑みを浮かべて揉み手でグイグイ来るトリスタンさん。
要は40階層までの情報を何でもいいから聞かせてもらえないかという話だった。
先行している冒険者にとっては、各階の情報は自分たちが有利にダンジョンを探索するための最重要事項。
下層階になればなるほどなかなか情報が集まらずに四苦八苦しているのだとのことだ。
まぁ、ギルドで購入できる地図も30階層までのものだしね。
これまでの最高到達階層の37階に至っては、情報が秘匿されていて出てくる魔物すらも分かってなかったみたいだし。
37階は俺たち、というかフェルとドラちゃんとスイにとってはウハウハの階層だったわけだけども。
「もちろん全てお教えくださいとは言いません。差支えない範囲で構いませんので是非とも」
「それはいいですけど、俺たちも各階層をくまなく回ったわけではないので、分かる範囲でですが……」
俺はトリスタンさんに各階層の形状や出てくる魔物などについて語った。
特に情報がなかった37階層以降についてはいろいろと聞かれて、俺も分かる範囲で話していく。
「37階層にはギガントミノタウロスですか。確か聞き覚えが……」
トリスタンさんは手持ちの魔物図鑑を引っ張り出してきてページをめくる。
「この魔物ですね?」
魔物図鑑をテーブルに置いて開いたページを俺に見せる。
「ええそうです。普通のミノタウロスの倍はありそうな大きさでした」
そう話をすると、図鑑を見ながら「ふむふむ、なるほどこの魔物は肉が大変に美味しく、皮と角も最高級品の武具の素材となるのですね」などとつぶやきながら口元に笑みを浮かべていた。
何でもこの魔物図鑑はトリスタンさん自前のもので、ここのギルドマスターに着任するときに、冒険者ギルドのギルドマスターになるからには魔物の種類やその魔物の買取部位なども把握しておいた方が良いと奮発して手に入れたものだそう。
魔物図鑑は言うまでもなく役に立っている様子。
「38階層もギガントミノタウロスなのですが、出てくる数が桁違いに多かったです」
「なるほどなるほど、そこを突破されたということは肉も皮も角も多く取得されたということですね」
そう言いながらトリスタンさんの目がギラリと光る。
いやそうですけど、肉は売りませんからね。
そんなことしたら肉好きトリオが怒り狂いますから。
トリスタンさんのギラリと光る目を無視して話を続ける。
「39階層は森でした」
「ほぅ、森、ですか。ダンジョンにはそういう階層があるとは聞いていましたが、ここブリクストのダンジョンもそうだったのですね。これは大きな収穫です」
そう言いながら図鑑の脇に置いた紙にメモを取るトリスタンさん。
「それでですね、39階層は蟲系の魔物が多かったです。ボスは4アームズベアーでした」
俺がそう言うとトリスタンさんが「4アームズベアーですと?!」とガタリと音を立てながら興奮気味に腰を浮かせた。
「え、ええ、そうですが……」
あまりの食いつきに理由を聞くと、4アームズベアーの毛皮はお貴族様に非常に人気が高いほか、肝が強力な精力剤の材料になるらしいのだ。
ここだけの話ですがとトリスタンさんが教えてくれたんだけど、4アームズベアーの肝を使った精力剤が売りに出されると、ご高齢のお貴族様方が金額に糸目をつけずにこぞって買い漁るそうだぞ。
何のためにとは聞きたくもないけど、4アームズベアーの肝は高値がつきそうだし熊の肝なんて持っててもどうしようもないから買取に出すこと決定だな。
「それで、素材の方はっ?」
トリスタンさん食いつきすぎだから。
「ええと、かなりのドロップ品が得られましたので、それについては自分でとって置きたいものもありますし、整理してからということでお願いします」
20階と30階から40階までの探索だったけど、量的にはドランやエイヴリングのダンジョンのドロップ品にも引けを取らないくらい手に入ったからなぁ。
やっぱり自分で把握するためにも整理しておかないと。
買取りに出すのはそれからだ。
「何とか今すぐにでも買取りさせていただくことはできませんか?」
「いやぁ、やっぱり1回きちんと整理してからでないと……」
気持ちはわかるんだけど、一応は確認してからじゃないとね。
「くぅ、そういうことでしたら仕方がありませんな」
非常に残念そうな様子のトリスタンさんではあるけど、ここは引いてくれた。
なるべく早く整理をして買取りに出しますから。
「ダンジョンについて続けますね。40階層ですが、ここも森でした。ここは獣系の魔物が多かったですね。それでボスはズラトロクという魔物でした」
「ズラトロク、ですか。それはもしや……」
そう言いながら魔物図鑑をペラペラと捲っていく。
「この魔物ですか?」
トリスタンさんが見せてくれた魔物図鑑のページには鹿っぽい魔物の絵が。
「そうです。角も体の毛も金色ですごく大きかったですよ」
「これはまたすごい魔物が出てきましたね。さすがに40階層のボスともなるとそういうのが出てきますか……」
トリスタンさんが言うには、ズラトロク自体非常に珍しいうえにその金色の角や毛皮は非常に珍重されるものらしく、直近の話だと100年ぐらい前にマルベール王国で当時のSランク冒険者が討伐したものは角も毛皮も王様に献上されたと聞いているということだった。
「直近で100年前、しかも王様に献上……。そういう類の物なんですね……」
「はい。お持ちなんですよね?」
「ええ。しかも2頭分を」
「に、2頭分ですか?」
1頭目を倒した後にヴィオレットベリーを採取していて、その最中に2頭目が出現してしまいというような説明をするとトリスタンさんがなんともいえない顔をした。
「あなた方は本当に規格外ですねぇ」
いやいや、規格外なのはうちの従魔トリオだけですからね。
そんなこんなで話を終えて、冒険者ギルドを後にした俺たち一行。
トリスタンさんには念押しでなるべく早くドロップ品をとお願いされたけどね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
冒険者ギルドから俺たちが借りていた豪勢な一軒家に戻ってきてから夕飯は簡単に済ませて、俺たちは久しぶりの風呂を堪能した。
「はぁ、やっぱり風呂はいいなぁ~」
『だなぁ』
『気持ちーねぇ~』
『我はまったく気持ち良くないぞ』
風呂を堪能していない約1名。
不貞腐れた顔でスイの触手の先から出るシャワーを浴びるフェル。
「しょうがないだろ。ダンジョン帰りで汚れてるんだから」
『我は汚れてなどない!』
「いーや、汚れてるね。見た目はそうでもないかもしれないけど、森やらを駆け回ってたんだから確実に埃っぽくなってる」
『ぐぬぬ』
「ぐぬぬじゃないの。もう諦めろよな」
『アハハ、そうそう。フェルが言うほど風呂は悪いもんじゃないんだぜ』
『フェルおじちゃん、気持ちーでしょー。いっぱいお湯かけたげるー』
『くっ、ドラもスイも風呂好きだからそういうことを言うのだ』
しかめっ面のフェルをネットスーパーで購入したいつもの獣医おすすめの低刺激の犬用シャンプーでワッシャワッシャと洗っていく。
嫌々の割にはフェルも『そこはもっと強く洗え』とか『こっちも念入りに』とかうるさい。
スイのシャワーで泡を洗い流して、ブルンブルンと豪快に体を揺すって水気を切ったフェルは一足先に風呂から上がって行った。
その後、俺とドラちゃんとスイはゆっくりと湯に浸かりダンジョンでの疲れを癒していった。
風呂から上がりリビングに行くと、風魔法で体を乾かし終わったフェルが横になっていた。
「ほら、やっぱ汚れてたじゃん。今のが全然キレイな毛並みになってる」
俺がそう言うと、フェルは悔し紛れに『フン、我の毛並みはいつでも美しい』なんて言っている。
『あるじー、甘い飲み物ちょーだぁーい』
「はいはい、いつものフルーツ牛乳ね。フェルとドラちゃんも飲むだろ?」
『もちろん』
『当然だ』
しばしの風呂後の一休みを終えると、フェルとドラちゃんとスイは一足先に2階の寝室へ。
『じゃあ俺たちは先に寝るからなぁ~』
「ああ、おやすみー」
『まったく、ひどい目にあった。さっさと寝るぞ』
「フェルー、ひどい目にあったってダンジョンの後なんだからキレイにするのは当然だろ。風呂嫌いでもこういうときはしょうがないの」
『おやすみなさい、あるじー。早く来てねー』
「はいはい、終わったらすぐ行くから」
フェルたちが寝室に向かったあとは、俺のステータスチェックと問題のテナントなんだけど……。
「しかし、フェルとドラちゃんとスイのレベル上がってたなぁ。特にスイが大分上がってた」
ダンジョンじゃスイが1番戦ってたから、当然と言えば当然かもしれないけど。
ちなみにフェルとドラちゃんとスイの今のステータスはこうだ。
【 名 前 】 フェル
【 年 齢 】 1014
【 種 族 】 フェンリル
【 レベル 】 947
【 体 力 】 10151
【 魔 力 】 9778
【 攻撃力 】 9442
【 防御力 】 10172
【 俊敏性 】 9974
【 スキル 】 風魔法 火魔法 水魔法 土魔法 氷魔法 雷魔法
神聖魔法 結界魔法 爪斬撃 身体強化 物理攻撃耐性
魔法攻撃耐性 魔力消費軽減 鑑定 戦闘強化
【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護 戦神ヴァハグンの加護
【 名 前 】 ドラちゃん
【 年 齢 】 116
【 種 族 】 ピクシードラゴン
【 レベル 】 202
【 体 力 】 1243
【 魔 力 】 3469
【 攻撃力 】 3324
【 防御力 】 1173
【 俊敏性 】 4048
【 スキル 】 火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 氷魔法 雷魔法
回復魔法 砲撃 戦闘強化
【 加 護 】 戦神ヴァハグンの加護
【 名 前 】 スイ
【 年 齢 】 6か月
【 種 族 】 ヒュージスライム
【 レベル 】 50
【 体 力 】 1756
【 魔 力 】 1709
【 攻撃力 】 1714
【 防御力 】 1734
【 俊敏性 】 1758
【 スキル 】 酸弾 回復薬生成 増殖 水魔法 鍛冶 超巨大化
【 加 護 】 水の女神ルサールカの加護 鍛冶神ヘファイストスの加護
フェルはさすがに元々が高レベルなのもあって1つしか上がってないけど、この高レベルでまだ上がってるってこと自体がすごい。
それにしてもいつ見ても飛びぬけたステータスだ。
そこだけはさすが伝説の魔獣だよね。
ドラちゃんは、確か3レベル上がってることに。
ドラちゃんも元からレベルが高いからなぁ。
それでもレベルアップしてるんだから、どんだけ戦ってるんだよって感じだよ。
スイに至っては8レベルも上がっていた。
スイも思いっきり戦ってたからなぁ。(遠い目)
上がらないわけないとは思ってたけど、戦闘しすぎだよスイちゃん。
「そして、俺なんだよな。ま、まぁ、ヴァンパイアモスキートを大量に倒してからはそんなには上がってないだろうけど……」
俺は「ステータス」と唱えた。
【 名 前 】 ムコーダ(ツヨシ・ムコウダ)
【 年 齢 】 27
【 種 族 】 一応人
【 職 業 】 巻き込まれた異世界人 冒険者 料理人
【 レベル 】 90
【 体 力 】 508
【 魔 力 】 499
【 攻撃力 】 495
【 防御力 】 480
【 俊敏性 】 394
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 火魔法 土魔法
従魔 完全防御 獲得経験値倍化
《契約魔獣》 フェンリル ヒュージスライム ピクシードラゴン
【固有スキル】 ネットスーパー(+1)
《テナント》 不三家 リカーショップタナカ
【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護(小) 火の女神アグニの加護(小)
土の女神キシャールの加護(小) 創造神デミウルゴスの加護(小)
「なぁっ?!」
え、え、え?
レベル85から何で上がってる?
しばし考えて思い出した。
「…………あー! アリか、アリッ!」
39階層でフォレストアーミーアントの巣を殲滅したのを思い出す。
「燻煙タイプの殺虫剤を設置しただけなのに……。考えてみりゃあヴァンパイアモスキートだって蚊取り線香を夜通し焚いてただけであんだけ上がったんだから、フォレストアーミーアントでも上がるわな」
レベルはいいとして、それよりも問題なのは……。
「やっぱりテナントだよなぁ」




